2013-01-14 00:00:00

雑話162「リキテンスタイン②、漫画の次は」

テーマ:絵画

恋愛に失望したリキテンスタインは、戦争漫画のシーンを使った作品を描いて、結婚生活の破綻に対するさらなる暴力的な感情をコントロールする助けにしようとしました。


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「Whaam!」(部分)

戦争漫画も1950年代のアメリカで1大ブームとなり、それは1960年代にまで続きました。1962年から、リキテンスタインは「ラヴ・コミック」と同様に、外見上の理由で戦争漫画のシーンを使い始めました。


このシリーズの代表的な作品「Whaam!」は「スター・ジョッキー」という、戦闘機パイロットが主人公の漫画のシーンを元に描かれました。


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ロイ・リキテンスタイン「Whaam!」1963年

ここでも、リキテンスタインは芸術的な資質を高めるために、原画に様々な変更を加えました。


戦闘機以外の詳細部分を取り除き、線描と形を強くはっきりとしました。また、ミサイルの軌跡と画面の水平線を平行にととのえ、2機の構図上のバランスを合わせました。


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「スタージョッキー」の一コマ、オール・アメリカン・メン・オブ・ワー第89号

リキテンスタインは、妻とのプライベートな戦争の真っ最中に、このシリーズを制作していました。この頃の彼は、常に妻に対して怒っていましたが、そのことを口にすることはめったにありませんでした。


そんな彼は、戦争漫画シリーズを自分の怒りのはけ口としたのです。この「Whaam!」のような作品では、リキテンスタインは空想上の仕返しをしていました。


ですから、彼の妻に対する怒りがおさまると、戦争に対する関心も薄れていきました。1965年までに夫妻の間の離婚調停もすすみ、彼らの関係も険悪なものではなくなりました。


リキテンスタインはまだ戦争漫画のシリーズを描いていましたが、その頃になるとモティーフとしては、爆発の部分だけが取り上げられるようになりました。


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ロイ・リキテンスタイン「爆発」1965-66年

1964年後半から1965年にかけて、恋愛漫画のシリーズにも同じように変化がありました。以前の作品では、構図や描線などの芸術的な問題は、作品のストーリー性ほど重要視されていませんでしたが、この関係は逆転しました。


例えば、「脅える少女」では、大きくなったドット、太くなった髪の毛のラインによるダイナミックなリズム、色彩の大胆なコントラストが、単なるイラストではなく、芸術家の作品であることを主張しています。


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ロイ・リキテンスタイン「脅える少女」1964年

半ば開いた口、伏せられた視線、涙などの少女の悲しみのサインと、鮮やかな色彩と大胆な模様との間に生じた知覚的な緊張が、この作品の主要なコンテンツなのです。


このような「ラヴ・コミック」シリーズの変化は、リキテンスタインのプライベートな生活の向上が大きな原因だと理解されています。


1964年の秋、まだ不倫相手と暮らしているときに、彼はマンハッタン・ギャラリーでアシスタントをしていたドロシーと出会いました。すぐにデートを始めた彼らは、1968年に結婚しました。


ある雑誌によると、ドロシーは、リキテンスタインが描いた恋愛漫画シリーズに出てくるような女性だったそうです。


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晩年のドロシー・リキテンスタイン

こうして彼は1960年代前半の荒れた生活に必要だった、心理的な葛藤のための図像が必要でなくなったおかげで、より高尚なテーマに取り組むことができるようになりました。


ピカソが描いた過去の巨匠を自分風にアレンジした作品に触発されて、リキテンスタインはモネの「ルーアン大聖堂」のシリーズやピラミッド、アポロ神殿、アールデコのデザインなどを自分風にアレンジした作品を描きました。


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ロイ・リキテンスタイン「ルーアン大聖堂 セットⅤ」1969年

※3枚のうちの左のキャンバス

1965年に、漫画をベースにした作品を描くのをやめたリキテンスタインは、1970年から2つのシリーズに特化しました。


そのひとつは、絶妙に引用した「中国風の風景」シリーズを含む、過去の作品やスタイルを自分流にアレンジしたものです。


リキテンスタインの動機は純粋に美学的なもので、ピカソのように過去の巨匠に対する自己主張と言う意味合いはありませんでした。


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ロイ・リキテンスタイン「高い山々」(中国風の風景画シリーズ)1996年

もうひとつは、彼流のキュービスム・シリーズです。


ピカソやブラックは、静物や女性の断片を組み合わせて、分析的キュービスムの作品を構築しました。リキテンスタインは組合せる材料を芸術の分野に求めました。


例えば、彼の巨大な作品である「青いブラッシュストロークのある壁画」では、自分の作品を含む過去の作品の断片で構成されています。


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ロイ・リキテンスタイン「青いブラッシュストロークのある壁画」1986年

漫画のシーンに着想を得た作品をやめた後も、他人の作品をベースに作品を作り続けたリキテンスタインは、自分をどう考えていたのでしょう。


下図にある、中身のないTシャツの顔の部分に、何も映っていない鏡を描いた「自画像」のような作品が、そのことを物語っているのかもしれませんね。


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ロイ・リキテンスタイン「自画像」1978年

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