世紀末の婀娜花として咲き誇ったフランスの大女優サラ・ベルナール。

同世代を生きた日本の女優松井須磨子と比べると、どうしても須磨子の方が女優としても女性としても見劣りがしてしまうのは否めない。

サラも須磨子同様、大女優にふさわしく強烈な個性を持った女性だった。

女優にふさわしくというよりも、サラのあまりの強さ激しさゆえに、平凡な女の生き方は難しかったというべきなのか。

高級娼婦の私生児として生まれた複雑な生い立ち。

数多くの有名人たちとの交流と自由奔放な恋愛経験。

仕事に賭ける男勝りの情熱と野望。


サラは、自分の美貌や才能に溺れず、常に努力の人だった。

ありあまる情熱は恋と芸術だけに向けられたわけではなく、多くの人びとを助けたり救ったりもした。
何事にも全身全霊でぶつかり、どんな不幸さえも糧として、「なにがなんでも」という言葉が彼女のモットーだったという。
まさに絹を纏った不屈の精神ともいえる。

そして、サラは自分のベッド代わりに本物のゴージャスな棺の中で毎晩眠ったという。
晩年のサラ・ベルナールを描いた絵があるが、大女優サラ・ベルナールにふさわしい素晴らしい作品である。


その華やかな姿態は、ミュシャ(関連記事 )を代表として多くの画家によって描かれ、数多くの写真も残されているが、その華麗な美しさは今でも私たちを魅了してやまない。






高橋 洋一
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島田 紀夫
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