税制改革大綱が決定されると、本格的な予算編成作業に入る。
自民党の中で税制改正についての審議が進んでいるのと併行して財務省と各省との間の事務折衝が進んでいる。
予算編成は国会の大事な仕事なので、財務省と各省との協議が進んでいても、正式には自民党の部会等の了承を経なければならない。
それでは、いつどこで予算案が実質的に決まるのだろうか、と思っていたら、去る12月12日、内閣官房長官が閣議で次のような発言をしていることが分かった。
「平成21年度予算及び平成20年度第二次補正予算編成日程について」
平成20年12月12日(金)
内閣官房長官閣議発言要旨
「1.この機会に、目前に迫りました平成21年度予算及び平成20年度第二次補正予算編成日程について申し上げたいと思います。
2,平成21年度予算及び平成20年度第二次補正予算につきましては、
12月19日(金) 経済見通し等についての閣議
12月20日(土) 21年度予算財務省原案及び20年度第二次補正予算概要閣議
12月24日(水) 21年度予算概算閣議
との予定で、今後作業を進めて参りたいと考えております。」
マスコミでは既に報道されていたことであるが、こういう日程で予算の編成を行うのは初めてのことである。
どこが違うのか。
いわゆる大臣による復活折衝がない。
大臣による復活折衝をなくした、というのは、これまでの大臣復活折衝が単なる儀式になっていることに対する反省からであるが、このことは結構大事な意味を持っている。
予算案は内閣が責任を持って作成するものである、という大原則を徹底した、ということである。
省あって国なし。局あって省なし。
こんな風に言われてきた。
これまでの縦割りの国の行政の在り方を内閣主導に変える、という意志がこうした予算編成の手続きの変更の中に示されている、と私は考えている。
些細なことではある。
しかし、これまでのように、各省がばらばらに予算の要求をして、財務省がこれを査定し、査定の結果、各省の要求が通った、とか、勝った、負けた、という意識を払拭していくための試みが、大臣による復活折衝の廃止、ということかも知れない。
私は、そう思っている。
昨日法務大臣室で財務省との折衝のための大臣送り出しが行われた。
従前は復活折衝のためだが、今年は重点要望事項を財務大臣に直接説明するための予算原案が示される前の折衝である。
なんだ、同じじゃないか。
そう思われるかも知れないが、実は違う。
予算原案に対する復活折衝は、この後行われる。
ただし、その復活折衝は各省大臣ではなく、党の政調会長を通じて行う。
うーん。良く分からないな。
と、いうところだろう。
省益あって国益なし。
そう言われないための工夫が、そこにある。
各省ばらばらに復活折衝するのではなく、党の政調会長が各部会、各役所ごとの復活要求項目を整理調整し、一括して内閣に復活要求する。
そしてこれに応えるのは、内閣総理大臣だ、ということである。
予算編成における総理のリーダーシップを確立するための試みではないか。
霞ヶ関の言いなりにはならないぞ、という政治の意志がそこに現れている、と私が思うのは穿ち過ぎか。
麻生内閣も目立たないが、こうして着実に霞ヶ関改革を進めている。
私は、そう評価したい。
ちなみに、今年の予算編成の全体日程は、次のとおりである。
<予算編成日程案>
12月18日(木) 事前大臣協議
大臣折衝
12月19日(金) 経済見通し閣議
12月20日(土) 原案閣議、公債発行額閣議決定
財務省原案内示
12月21日(日) 与党政調会長復活申し入れ(各部会開催)
12月22日(月) 復活内示(対各省大臣)
折衝終了宣言(官房長官)
12月23日(火) 計数整理 (天皇誕生日)
12月24日(水) 概算閣議
こういう日程であれば、残された臨時国会の会期で実質的な委員会審議を行うことなど、実際上不可能だろう。
来年の1月5日に通常国会を召集し、早速第二次補正予算案の審議に入る、というのが、現在の状況の下では如何にスピーディーな手続きであるか、ということがお分かりになるのではないか。