◎Little Lies
☆Fleetwood Mac
▼リトル・ライズ
★フリートウッド・マック
released in 1987
本日は1曲の話。
フリートウッド・マック Little Lies
☆
Little Lies
Fleetwood Mac
(1987)
フリートウッド・マックが1987年に華麗に復活したアルバムTANGO IN THE NIGHTのリイシュー盤が出ました。
そのアルバムは、好きかどうかでいえば僕がいちばん好きなフリートウッド・マックのアルバムですが、リイシュー盤で久し振りに聴いてから10日、もう少しかな、アルバムの曲をとっかえひっかえ思い出して口ずさんでいます。
中でもいちばん好きで最もよく思い出すのがこの曲。
マイナー調の物憂げな切ない曲。
まだ二十歳だった僕も、最初に聴いてこれは失恋、浮気を歌った曲だと分かりました。
彼氏が他の人と一緒にいるのを見てしまった女性。
明示されていないけれど、不倫ではなくお互いフリーな関係。
だけどやっぱり、うん、そうですね。
歌詞はこうです。
***
もしページを元に戻しせたなら
1日か2日でもやり直せたら
わたしは目を閉じるでしょう
だけどわたしには道が見つからない
だから1日だけあなたを信じてみることにした
どうかわたしに嘘を言って
嘘を、甘い嘘を言って、
嘘をついてください
だめ、あなたはごまかすことができない
あなたにはごまかせない
わたしは何も考えていないけれど
あなたにはそれがなぜだか分かってほしい
あなたも目を閉じてみて
もう心が痛むのはこりごり
わたしたちはもう別れたほうがいいわ
そうしましょう
だから嘘を、嘘をついて
嘘を、甘い嘘を言って、
嘘をついてください
だめ、あなたはごまかすことができない
あなたにはごまかせない
***
クリスティン・マクヴィーの切ない歌声があまりにもぴったり。
実際、フリートウッド・マックはバンド内でいろいろあったらしい。
クリスティンはベースのジョン・マクヴィーとパートナーだった。
一方、スティーヴィー・ニックスとリンジー・バッキンガムも。
そこが複雑に絡んでいた。
そんな中でかの名盤RUMOURSが作られた。
この曲の歌詞がリアリティを持って響いてくるのも頷けます。
「小さな甘い嘘」
他の人といたのが嘘だ、その気持ちが嘘なんだ。
すべてが嘘であってほしい。
「小さな」嘘と言って欲しいというところに、彼女の気持ちを感じます。
しかもこの「嘘」、「わたしたちはもう別れたほうがいいわ」という部分だけ「嘘」の意味が変わっているように感じられる。
それまでとその後は、他の女性と会ったことを「嘘」と言って欲しい、でもそこだけは、会っていないと「嘘」を言えば別れられる、と。
◇
この曲は面白いというか不思議。
キイはF#m、F#m→E→D→Aをずっと繰り返すだけで、ヴァースもコーラスも同じコード進行。
コーラスの最後と間奏で装飾程度にAの後D→Eと変わるけれど、大筋の流れは変わらない。
こんな曲、素人が作ったら箸にも棒にも掛からないだろうし、ポール・マッカートニーならメドレーの1曲にしてしまうかも。
足りない=短いのをコーラスで補って一級のポップソングに仕立て上げ、しかもTop10ヒットに送り込む。
これはもう長年一緒にやってきた人にして成し得る芸だと思います。
単純だからこそ印象に残るという曲でもある。
すごくいい曲かというとそうでもないかもしれないけれど、同じコード進行であることによって印象が強くなる。
歌の最後もコーラスが入らずブツ切れになるのも、頭の中でループになりやすいのかも。
それはすべて歌メロが素晴らしいからできることでもあるのでしょう。
音楽的な面でいえばもうひとつ、ミック・フリートウッドのドラムス。
特に、イントロから歌に入るところと、2'33"と2'45"の部分、3番(1番のリピート)のヴァースで、鼓舞するようにリズムから外れて叩く音がいい。
今回あらためてこの曲が大好きになりました。
◇
ところで。
この曲にはちょっとした、まあどうでもいい思い出が。
大学1年秋、友だちになったばかりのS君と(ひとつ年上だけど)、授業が休講で早く終わった日、京王線聖蹟桜ヶ丘駅で途中下車し、多摩川沿いを案内されて1時間ほど歩きました。
最初は右岸側を歩いたので川崎市ということになるのかなホルスタインがいる牧場があったのです。
こんなところに牧場があるなんて、驚きました。
その牧場の風景が、この曲Little Liesのビデオクリップの牧場のように、僕には見えたのです。
当時このアルバムに凝っていて、ビデオクリップが出たばかりの頃で(この曲は3枚目のシングルカットでした)、強く印象に残っていたのです。
僕はS君に「フリートウッド・マックのLittle Liesのビデオクリップみたいだね」と馬鹿正直に言ったのですが、S君はこの曲を知らず。
後日うちでCDを聴かせたところ、「なんかつまんねぇ歌だな」と。
S君はそういう物言いをする人でした。
その時は結局多摩川を左岸つまり東京都側に渡り、分倍河原駅からまた電車に乗って帰ったと記憶しています。
当時は定期券を持っていて、京王線で帰るために。
今回もこの記事のためにビデオクリップを観て、その時のことを思い出しました。
それにしてもS君は今どうしているのだろう・・・
◇
最近よく思うことが。
昔から好きな曲はやっぱり好きなんだ。
そういうことなのでしょう。
そして時には、その曲が僕にとってどういう意味があるのかを考えます。