菅首相 発送電分離の検討を明言 いよいよ原発問題の核心へ | 政治とメタルと網膜剥離

菅首相 発送電分離の検討を明言 いよいよ原発問題の核心へ

原発と発送電分離の問題が結びつけて語られる機会が増えてきた。本日の菅直人首相の記者会見では、福島原発事故の原因究明後、発送電分離を検討することについて述べられている。原発については毎日の記事が一番深く切り込んでいることが多いため、今回も引用させていただく。

福島第1原発:菅首相、発・送電分離の検討を示唆(毎日新聞)

(以下引用)

電力会社が地域独占している発電部門と送配電部門の分離論に関し「通信事業では地域独占でない形の事業が生まれている。自然エネルギーを大きな割合で(発送電網に)受け入れる時、どういう態勢が新たに必要になるか、今後議論すべきだと考えている」と述べた東京電力福島第1原発事故の徹底的な原因究明を終えた後、分離について検討すべきだとの認識を示したものだ。

(中略)

菅直人首相が18日の会見で、電力事業の地域独占見直しや発電部門と送配電部門の分離(発送電分離)を検討する考えを示唆したことで、日本の電力事業のあり方が抜本的に変わる可能性が出てきた。当面は、福島第1原発事故で経営悪化が予想される東京電力のあり方について議論されるとみられるが、議論は東電以外にも波及するのは確実。地域独占で利益が事実上保証されてきた電力業界が、本格的な競争に直面することになりそうだ。

(中略)

政府内では、東電を送電部門と発電部門に分離し、いずれかを売却して賠償の財源に充てる案が浮上している模様だ。

発送電分離は、01年ごろの電力自由化論議の中で議論されたが、電力大手の猛反発で立ち消えとなった経緯がある。欧州では、複数の発電会社が送電会社に電気を売却する形態が普及。発電会社は競争状態にさらされるため、電気料金の値下げにつながると期待する声がある。

 日本では、電力10社が地域ごとの独占状態を維持し、電気料金も必要なコストに一定の利益を上乗せする「総括原価方式」で決められている。

 東電での発送電分離を手始めに電力各社で分離が進めば、電気料金の下落圧力が強まるため、電力会社の反発は必至だ。

 東電や金融機関などは「地域独占は原発事故と関係ないのに、唐突な議論だ。発送電の一貫体制が崩れれば、電力の安定供給にも支障が生じかねない」と反対する姿勢を強めている。また、東電を分離した場合、独占状態に比べて収益力が低下し、賠償責任を引き継いだ会社が負担に耐えられなくなる懸念もある。東電が発行する社債や株式の価値低下も予想されるため、東電は最大8000億円規模の資産売却や年間2000億円程度のコスト削減などの合理化を実施し、現在の経営形態を維持したい考えだ。

 また、東電の賠償負担を支援する「原発賠償機構(仮称)」への負担金拠出に応じる方針を固めている他の電力会社も、「現行の経営形態が維持できないなら話は別。首相は何を考えているのか」(西日本の電力会社幹部)と困惑。「発送電を分離した英仏などでは、電気料金が上昇傾向にある」(電力業界関係者)などを根拠に抵抗する構えだ。

 菅政権は長年高コスト体質の元凶とされてきた地域独占に切り込むことで政権浮揚につなげたい考えと見られるが、電力業界も「死活問題」ととらえて一歩も引かない構えだ。地域独占が崩れた場合、建設や使用済み核燃料の最終処分に巨額の費用がかかる原発を、新規参入する発電会社が引き受けられるのかという課題もある。国のエネルギー政策と直結する議論のため、曲折が予想される。

(引用終わり)


以前のブログ でも書いたが、日本は原発による発電比率が高く、かつ電気料金が高い。このことは事故前から国や電力会社の業界団体である電気事業連合会が公表している数値からも明らかである。英仏の電気料金が自由化で上がった、という主張もよく見る話だが、上がったあとの料金で比べても、まだ日本は高い。


原発については、これも以前のブログで書いたが福島第一も含め分割し国有化するしかない。その上で英知を結集し、費用を惜しまず封じ込めに最善を尽くすべきである。東電を手始めに、浜岡など他原発についても発送電分離とセットで国有化を進めるべきである。


発送電一体で競争がなく、設備投資額を電気料金に反映できる総括原価方式では、電力会社の設備投資が野放図になりやすい。結果民間企業としては巨額な原発投資がこれまで行なわれ続けた。しかも電源三法交付金として国が地元に投入してきた額も大きく、例えば福井県では昭和49年から平成21年までの累計で3246億円が交付された。 この額は物価上昇を踏まえ現在価値に置き換えると更に巨額になる。


日経などは論調が急速に発送電分離に傾きつつあるが、これは経済性を理詰めで追求すれば当然の帰結である。東芝、日立など重電メーカーやその下請け、及び一部ゼネコンなど以外は、原発の恩恵を蒙ることなく、高い電気料金に甘んじてきた。発電による利益はごく一部の者たちが山分けしてきたのである。


その利益は結局、安全性を犠牲にしてしか成り立たないものだった。原発は電気料金が安い、という理屈も、国の負担分や再処理費用が含まれていなかったことや、天然ガス埋蔵量の増大 ・価格の暴落などで崩れつつある。


東電への対応については、東証の社長が政府対応を批判したが、ある意味もっともである。 原発賠償機構などは作らず、東電に対して、淡々と補償費用を積みあげて破たん処理し、法的に認められた形で株主・債権者に費用を負担させればよい。補償費用を国が負担するのは、この処理後とすべきである。

その処理の中で発送電分離による電力自由化、原発国有化と自然エネルギー推進施策を行なえばよい。原発新設は止まるが、その代わり63年分の埋蔵量がありまだ増えつつあるLNGによる発電など経済性に優れた発電所建設や、自然エネルギーの研究・活用が加速する。特に自然エネルギーについては必死に取り組めば、輸入に頼らないエネルギー確保のみならず、新たな輸出産業の創出につながる可能性もある。

菅首相は同じ会見で自然エネルギー活用推進も明言しており、方向性自体は悪くは無い。ただ賠償機構設置など現在の政府案は、既存電力会社など守旧派の影響も色濃いものとなっているので大幅な修正が必要である。実行あるのみである。倒閣など政局について寝言を言っているヒマはない。