僕みたいなタイプは、どこの球場に行っても、気が気じゃない。特定のチーム、いわゆる番記者ではないので、野球を幅広く見ようとしているため、どうしても、すべての球場の試合が気になってしょうがない。

 

 あとで、スポナビライブなどで確認するんだけど、取材にいっていても、イニングのインターバルではちらちらと他球場の情報を探してしまう。

 

さて、

パ・リーグでは日本ハムとともに、ロッテが苦しんでいる。

 

ここ数年のロッテは、CS常連となっていたものの、その戦いぶりが気にはなっていた。レギュラーなのか、半レギュラーなのか、控えなのか、境目のない選手が多かったからだ。

 

 実際、レギュラーというと、ケガで離脱中の角中勝也、キャプテンの鈴木大地くらい(田村龍弘も正捕手かと思っていたが、どうやらそうではないらしい)。

 

 外野には、荻野貴司、伊志嶺翔大、岡田幸文、清田育宏、加藤翔平、細谷圭、とそれぞれ特長を持った選手がいるのだけれど、誰もレギュラーを獲得することができてない。

 

 ドラフト1位の選手というのが、「将来のレギュラー」とするのであれば、荻野と伊志嶺がその役目を担っているべきだが、彼らはレギュラーではない。

 

 最近では、内野手もその流れを踏襲しそう。

 鈴木大地はレギュラーを獲得したが、中村奨吾、大嶺翔太、三木亮、細谷圭、高濱卓也(平沢大河はあえて外した)がとっかえひっかえ、ぐるぐると回っている。一塁手も、いまのところ、井上晴哉がレギュラーに近いが、細谷や高濱がいる。

 

 なかなか安定しない。

 なぜ、なのか。

 

 23日の試合で、その「なぜ」を紐解くカギがあった。

 結果的には勝因につながった、ふたつのできごとだ。

 一つはスタメン捕手が吉田裕太だったこと、もうひとつは、2点目は代打・香月一也だ。

 

 23日の試合において、吉田の起用は当たった。

 苦しんでいた唐川侑己を上手くリードしたし、しっかりとヒットも記録した。それで勝ったのだから、彼の貢献は大きい。

 

 1-0の7回裏には、先頭の細谷が三塁打で出塁。1死後、鈴木が四球で歩き、1、3塁として6番・井上を迎えた。ここで伊東監督は、代打に香月を送った

 

 推察するに、伊東監督が大砲と期待のある井上を替えてまで、代打に若い香月を選んだのは、併殺崩しだ。この局面で、最悪、内野ゴロに終わっても、併殺を崩せば1点が入る。足の遅い、井上では併殺打の危険があると考え、左打者である香月の方が正解だ。万一、ヒットが出ようものなら、、自信をつかむというのもあっただろう。

 

 実際、それは成功する。香月はショートゴロに終わり、併殺にはならずに1点が入った。

 

 見事な采配だった。

 「勝利」というものだけを考えたら、この試合をトータルして、伊東監督が見事に導いた勝利といえるだろう。タイムリー0本で、2点を奪って勝ったのだから…

 

 しかし、そこでちょっと視点を変えてもらいたい。

 1-0のあの場面で、井上が貴重なタイムリーを打っていたら、何が生まれていたか。

 

 もちろん、実際の采配が間違いだったと言っているのではない。香月にしても、あの打席が自信につながる可能性がある。

 

 いまのロッテにレギュラーが少ないところに、こうした勝つ「巧さ」が邪魔していることもあるのではないかということである。

 

 そして、その巧さがなぜ必要かというと、クライマックスシリーズというものがあるからである。

 

 優勝ではないけれど、チームとしての一定の評価を下す「クライマックスシリーズ進出」。これが育成の足かせになる。

 

 去年が顕著だったが、チーム作りが上手く行かないシーズンはある。負の連鎖で何も上手く行かないから下位に低迷する。

 

 通常、そういったチームはシーズンに1つしかないのだが、去年は、楽天、西武、オリックスとも何もかもが上手く行っていなかった。

 

  一方で、1位の日本ハムと2位のソフトバンクはデッドヒートを繰り広げていた。3位以下を完全に寄せ付けずに。。

 

 つまり、去年のクライマックスシリーズ進出の3位になるには、1、2位には追いつけなくて、下に追い抜かれないようなペナントを展開すればよかったというわけである。目先の勝てる試合を落とさない。その戦いを繰り返せばいいのだ。

 

 しかし、それが「クライマックスシリーズ進出」という箔がつく一方、「勝ちにこだわる」ということが、その場その場に即した選手起用になり、育成の足かせになるということだ。

 

 一本立ちしたレギュラーを作れなくしてしまう。

 

 23日の試合を振り返った時、ふと、そんな危険を感じた。

 伊東監督の「勝ちに導く巧い采配」に潜んでいるものだ。

 

 シーズンは始まったばかりだから、23日の試合がどういう作用をもたらすかはまだ分からない。

 

 だから、これまで書いていたことと、23日の采配が同じ繰り返しであるとは結論付けることはできない。

 

 さっきも書いたように、あの場面で代打に出た香月にとっては自信になり、彼がブレークするきっかけになった可能性もある。吉田にしても、再び、田村から正捕手の座を奪う機会に恵まれたかもしれない。

 

 現時点では何とも言いようがない。

 

 だから、23日の勝利もなんとも言いようがないともいえるわけだ。

 

 連敗が止まったことに対しては喜ばしいことである。しかし、本当に良かったかどうかは、今後の展開次第。まだまだ予断を許せぬ状況である。