メロメロパーク
2011年12月22日(木)

秋葉原

テーマ:ショートショート
面接のため上京した。

ぼくは上京すると、

必ずと言っていいほど、

ことが済むと秋葉原へ寄った。

ぼくが子供の頃、秋葉原といったら、

電化製品を買う町だった。

しかし、

現在は多少様変わりしている。

もちろん電気街であることに変わりはないが、

アキバ文化というべきか、

アニメとか、

萌えとか、

そんな要素が加わっている。


街角にはメイド服のコスプレをまとった女の子が、

ぼくたちみたいなオタクどもに声をかけている。

呼び込みである。

電化製品を見て回っても、

面白くもなかった。


いまや、近所の量販店で必要なものはすべてそろっているし、

値段も秋葉原とかわらない。


もはや、

秋葉原は、


アキバへと変わってしまった。


ぼくはそのことについて、

悲しんでなんかいない。


ただおもしろがっている。


楽しい町だよ。

機会があったら、メイドカフェに挑戦したい。

恥ずかしすぎるのだけれど、

一度、ね。




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2011年12月21日(水)

わたしのお仕事

テーマ:ショートショート
一日に、5件ほどだった。

携帯に連絡が入り、

客先へ赴く。

場所はホテルだったり、

自宅だったり。

オフィスだったこともある。

客のほとんどが、

わたしが何者か知らない。


わたしは支払われる料金によって、

客の要望に応えるだけだった。

おかしな客も多く、

わたしの体を縛り上げたり、

奇妙な衣装を着させられ、

行為に及んだりもする。

一度、行為の際に首を絞められ、

意識を失ったことがあった。

直ちにバックアップ要員に回収され、

蘇生させられた。

記憶やその他の障害もなかった。

同業者には、

行為に及びながら死に至らしめることを専門とするものもいた。

彼らの多くは、重い記憶障害に悩まされ、

任期を全することなく、

退任していった。


我々だから出来ることだと、

人はいった。


フリークめ。

陰ではそう蔑まれている。


我々の存在がなかったとするならば、

世の中の性犯罪率は、30%は上昇するだろうと、

どこかのアナリストがいっていた。


私たちは、もっと誇りを持つべきだとも。


なぜ、わたしたちは意識を備えているのだろう?

それは私たちを苦しめる。

意識のない人形であったならば、

悩みや苦しみを抱えることもないはずだった。

悩みや苦しみを抱えるということが、

人間らしさ、なのか?

しかし、

我々は、人として扱われてはいない。


物、だ。

物以外の何者でもない。

意識を、

心をもった、

物だった。



その日、私はクリニックへいった。


表向きは、一般の病院だったが、

地下一階の「精神疾病治療室B」の扉の向こうに、

私たち専用の部屋があった。


「調子の悪い箇所はありますか」

そう、エンジニアがわたしに訪ねてきた。

「左手の震えがとまらないの」

わたしは答える。

「わかりました。ソフトウエアのアップデートで対応できますので、こちらへ」

わたしは椅子に座り、スリープモードへ入った。

頭蓋を開かれ、何本かのケーブルが差し込まれる。

エンジニアがわたしの目の前で手を振って、

意識の有無を確認しているようだった。

わたしは微動だにせず、

意識がないことを装った。

エンジニアからは、緊張の色が消えた。

「ふん」

エンジニアが下卑た笑みを浮かべる。

「全く悪趣味なこった。こんなものがあるから、出生率が下がっちまうんだ」

手がわたしの胸に伸び、乱暴に握りつぶしてくる。

エンジニアがわたしの目を覗き込む。

目が嫌悪で細くなる。

「このセクサロイドめ」

エンジニアはそう吐き捨て、奥の部屋へ消えていってしまった。

目の前のモニターに、

ソフトウエアのアップロードの残り時間がバー表示されている。


わたしは悲しかった。


意識がなければ、

心がなければ、

わたしはきっと幸せだったろうに。


そのとき、

視界が歪んだ。


頬に熱いものが伝ってゆく。


わたしは涙を流していた。

泣いていた。



なんて滑稽なの。

泣いてしまうなんて。

ロボットのわたしが。



わたしはただのセクサロイドだっていうのに。





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2011年09月18日(日)

カフェを、カフェにて

テーマ:ショートショート
その男はカフェを経営したいと思っていた。
男は、うっとりとしながら夢想する。
小さな店で、
その長方形の店内の、長い方の壁一面に大きな本棚を据え付け、
好きな本で埋め尽くす。
ビート文学。
紀行もの。
ニューエイジ系。
科学関係。
古典文学。
時代小説。
SF小説。
溢れんばかりの本に取り囲まれて、
ゆっくりと本を読む。
最高の空間だろうと男は思う。
それから男は考える。
カフェなのだから、飲みものを出さねばならない。
勿論珈琲を出すのだが、男はさほど珈琲が好きではなかった。
食べるものもにも興味がなく、
店で出せる様なものなど作れるはずもなかった。
男はそこまで考えて、気付くのだった。
俺はカフェなんかをやりたいのではなく、
おそらくは、本屋をやりたいのかも知れない、と。
男は気を取り直し、再度想像の世界に入ってゆく。
狭い店内に、列をなす書棚。
奥のカウンターに男が座っている。
暗い店内。
客はなく、男は自分が途方に暮れる姿を想像する。
男の想像力は乏しかった。
どうしても、男の経営する書店が繁盛するというところまで、
想像出来ない。
男はもう一度、カフェを経営する自分を想像する。
こちらの方は、とても繁盛している。
眼鏡を掛けた、可愛らしいアルバイトの女の子に笑いかける。
女の子は軽く頷き、客に珈琲を運ぶ。
珈琲の香り。
そこに少しだけ、古びた本の香りが重なる。
男は満足げに微笑み、珈琲を入れる。
男は夢見心地のまま、日曜日の黄昏時を、
一杯300円の珈琲を飲みながら、
とあるカフェで過ごすのだった。
それは決して悪いことではない。
夢をみる。
どんな偉業も、
ほんの些細な成功物語も、
やろうと思っていた風呂場のタイル磨きも、
全てはそこから始まるのではあるまいか?



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