もう、いいか | 日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。

もう、いいか

妻に、物を投げつけられた。

そのまま家を出てゆく。

しばらくして、携帯がなった。


生活のリズムが、合わない。

話をしていても、つまらない。

だから、イライラするのだ。


こんなにイライラしたのは結婚してからだ。


言いたい放題だった。

眉間にしわを寄せ、いつもイライラしている。

そんな自分にしたのは、すべて俺が原因だと、妻は言っているのだった。




どんなときも、妻より先に起床しなければならない。

妻の望んだ答えを読み、正確に、気の利いたことを言わなければならない。

もちろん、黙っていてはいけない。

そして、話す内容が、馬鹿馬鹿しくてはならない。

くだらない遊びをせずに、常に努力することを怠ってはいけない。


俺というものを、つめの先ほども認めない。

そう言われている様な気がした。


休みの日ぐらい、ゆっくり寝ていたい。

そう思うときも、確かにあった。

時間のあるときは、ゲームもしてみたい。

そして、たった一度でも、朝ゆっくりしてしまうと、徹底的に糾弾されるのだった。




妻といるときは、一瞬たりとも気が抜けない。

ふと思いついたことなどをしゃべったりすれば、馬鹿にされるだけだった。

「何でこんなこと言っているの。話がちぐはぐなんだよ」

妻はそう言い、ほんとうに厭きれるわと、最後に付け加えた。

自然と口をついて出る言葉は少なくなる。

とにかく、しゃべれば馬鹿にされるからだ。


もう、いいか。

最後には、そう思う。

改善しようと行動すれば、それを見た妻がイライラする。


つまりは、行動しても、しなくても同じなのだった。





10分後。



今朝起こったことをもう一度思い起こし、考えを思いめぐらせた。






どうせ馬鹿にされるのなら、本当の俺をすべてさらけ出してやろうじゃないか。

そう思った。

馬鹿にされたくはなかった。

妻の望むようなものにならなくてはならないと、いつも思い続けてきた。

それでも、俺は俺だった。

まったく違う人間に、変われるはずもなかった。

妻に理解されなくてもいい。

俺という馬鹿馬鹿しいものを、すべてぶちまけてやろう。

それで別れるというならば、それでいい。

俺という存在自体を認めないのなら、そんな奴と一緒にいても仕方がないのだから。