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2005年09月30日(金)

観なきゃよかった

テーマ:ブログ
昔観た映画を、無性に観たくなる時がある。

フォーリングダウンを、レンタル屋で借りた。

裁判所から面会を禁止されている娘に、誕生日プレゼントを持って無理矢理会いに行く、暴走男の物語。

途中、拳銃やバーズーカ砲などをぶっ放しながら、一直線に娘の元に突き進むその姿は、頭のおかしくなった哀れな狂人に過ぎなかった。

それが、始めてこの映画
を観た時の感想だ。


しかし、今回は違った。

この映画は、ふたりの男を通して、夫婦、或は家族を描いたものだった。

暴走する主人公を追う刑事も妻帯していて、妻の尻にひかれっぱなしの優しい男である。

仕事を辞めて、静かに暮らそうとしていた退職日当日に、事件を追う羽目になった。

もちろん、早期リタイアも妻の為である。



良い映画である。



それでも、今の俺が観るべきではなかった。

二人の男に共感した。


だから、観るべきではなかったのだった。
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2005年09月28日(水)

フラストレーション

テーマ:ブログ

「当たり前のようにいわないでよ。本当にお金無いから」

そう言って千円札を数枚、乱暴に突き出してくる。


同じ町内で葬式があった。

ほとんど、付き合いらしいものはなかったが、親父の葬儀の時に香典をもらっていたのだった。


以前、同じように葬式があった時も、かなり酷い事を言われた。

これからは自分ではらって。それが出来ないなら、今まで払った分は、別れる時に請求するから。

腹が煮えたが黙って堪えた。

今回も同じである。

もしかすると、甲斐性の無い自分に対して腹が立ったのかもしれなかった。



別々の場所で食事を済ませた。

妻と娘はちゃぶ台で、俺はテーブルだった。


汚れた食器を洗い、風呂を洗いに行こうとしたとき、何かがたたき付けられるような音がした。

「ちょっと、これも洗ってよ」

炊飯用の釜だった。

「今すぐに洗っておかないと、明日のご飯炊けないから」

そう言って、妻は出掛けていった。

米を研ぎ、炊飯器のタイマーをオンにして、娘を風呂に入れた。



娘は、風呂に入っている間、ママ、ママと言って泣き続けた。

いくらなだめても、泣き止まなかった。

苛々が頂点に達したとき、俺は娘に信じられない言葉を浴びせていた。

「そんなにママがいいなら、お父ちゃんはいなくなるから」

言った後、馬鹿な事を言ってしまったと後悔した。

まだ二歳で、大人の話す事を全て理解できない娘が、ぴたりと泣き止んだのである。

俺は咄嗟に、浴槽に浮かんだおもちゃを掴み上げ、娘に向かって、おどけてみせた。

娘が思わず、といった感じて微笑む。

もう一度、同じ事を大袈裟に繰り返す。


今度は、声を上げて娘は笑った。

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2005年09月27日(火)

短編 「憎しみの果てに」 第9話

テーマ:短編 3
車の中で、父と母が激しく口論している。
それは、これまでに何度となく繰り返されてきた光景で、そのたびに嫌な気分になった。
原因ははっきりしていた。
父には、母以外に好きな人がいたからだ。
母が、あの女などと、喚き立てている。

わたしが一人、家で留守番をしているとき、一度だけ見知らぬ女から電話があった。

「お父さん、いるかしら」

そう尋ねてきた甘ったるい女の声で、父が浮気をしているのだと、はっきりとわかったのだった。
初めて聞いた女の声で、なぜそう感じたのだろうか。
自分でも、よくわからなかった。
直感としか、言いようがない。
胸が悪くなるような思いのまま、翌朝父に、知らない女性から電話があったと告げた。
わたしの言葉に、父は顔色を変え、取り繕うように会社の人だと言った。
その時、わたしの感が間違いではなかったと確信した。
それと同時に、父を嫌悪した。


母が不憫でならなかった。
夜中、母が居間で酔いつぶれていることが時々あった。
テープルの上には、飲みかけの調理酒が転がっていて、母の顔を覗き込むと、涙を流していた。
そんな母の姿を見るたびに、父に対しての嫌悪は膨れ上がり、やがて憎悪に変わった。

「けんか、やめて」

わたしは叫び声を上げていた。

「真由美は黙っていなさい。大事な話をしているんだ」

父が憎かった。
父さんなんか、いなくなればいい。
いつも心の中で、密かに思い続けていた。
どうしても、母以外の人を愛しているということが許せなかった。
怒りで体が震え、気が付くと低い、小さな唸り声を発していた。

突然の耳鳴り。
それと同時に、父が嫌な叫び声を上げ、ハンドルに覆いかぶさるようにして倒れた。
ゆらゆらと車体か右へ流れ、中央分離帯に接触する。
その反動で、徐々に車体は左に寄っていった。
速度も徐々に上がっている。
母が必死でハンドルを動かそうとするが、父の体が邪魔でびくりとも動かない。
母はそのまま振り返り、わたしの方へ体を伸ばしてシートベルトをかけようとするが、どうしても手が届かなかった。
母は自分のシートベルトを外して、さらにシートも倒し、やっとわたしのシートベルトに手をかけることが出来た。
わたしの方へ視線を向けた母は、困惑とも恐怖ともつかない表情を浮かべながら、一度わたしの名を短く呼んだ。
鼻から口にかけて、何か生温いようなものが流れていた。
手の平で口をぬぐって、それを目の前に翳した瞬間、衝撃が来た。
血で汚れた小さな掌が、今のわたしの掌と重なった。




気が付くと、田口も武田もいなかった。
横山は倒れたままだ。
また目の前の景色が歪んだ。
涙だった。
両親を亡くした事故は、わたしが招いた。
憎しみが父を死に追いやり、そして母も失った。
父は、わたしが呪い殺したようなものではないか。
横山や田口も同じだ。
あの二人も、ひょっとすると死んでしまったのかもしれない。


人を憎んではいけない。
絶対に。


叔母はすべてを知っていて、わたしにいつもそう言い聞かせていたのだろう。
わたしが憎んだ者は、必ず死ぬ。


夢でみた加奈子と同じように、わたしはフェンスを乗り越えて、階下を見下ろした。
どうでもいいような、そんな気分だった。
両親を、殺した。
そんなわたしは、生きていては、いけないのだ。
このまま身を乗り出せば、簡単に死ねる。
後ろで物音がした。
人影。
黒い塊のようなものが、駆け寄ってくる。
加奈子、なの。
よく見ると、それは警官だった。





横山は心筋梗塞で死んだ。
田口は脳内出血で病院に運ばれたという。
脳のかなり深い部分に出血があり、手術も困難らしい。
たとえ手術に成功しても、体に重大な障害が残る可能性もあるという。
同じ場所で、高校生が、その若さで患うはずもなかろう病で、二人倒れた。
そして、フェンスを乗り越え、ビルの淵で血を流しながら立っている、もう一人の女子校生である。
警察も首を傾げていたらしい。
警察に匿名で通報があった。
その通報では、屋上で、高校生二人が暴行を受けているとのことだった。
実際には、暴行の痕跡などなかった。
ナイフから、横山の指紋が出ているので、暴行を加えた方が倒れたということだった。
通報したのは、多分武田だろうと思った。

取調室を出ると、叔母が立っていた。

「叔母さん、わたし、、」

叔母は、眼にいっぱい涙をためて何度も頷いた。

「何も心配しなくてもいいのよ」

叔母の言葉を聞いて、わたしは嗚咽した。
わたしの両肩に手を置き、まっすぐにわたしを見つめて叔母が言った。


「わたしだけは、真由美のこと、ちゃんとわかっているから」
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