Goodbye holiday blog

東京で活動中、Goodbye holiday


テーマ:
昨日僕が乗るべきだった広島行きの新幹線は、朝七時九分に品川のホームを無事通過した。
部屋のソファで寛ぐ僕は児玉さんからの七時三十三分の着信でそれを知って、何度も「嘘をつくんじゃないよ、九時二十分発でしょう」と、むしろ自分が正義であるかのように繰り返した。
だけどそのお粗末な頭がようやく回転を始めた頃、それじゃあ十三時開始のライブに物理的に間に合わないことが分かった。
のぞみ号が新横浜を過ぎたであろう頃、僕はそれなりに片付いた自室で、チョコレートと濃いコーヒーで最高のモーニングをキメていたのだ。
額に入れて飾りたいほどの空模様ではなかったけれど、風は下ろし立てのリネンみたいに清々しく、なかなか見事だった。
先日出したばかりの扇風機は「弱」で優雅に首を振り、コーヒーの湯気を飛ばしていた。
日当たりの悪い窓の向こうでは昨晩使ったタオルが揺れ、早起きをした子供がテレビを流し始めた。
僕は適当に着替えを済ませながら、いつかこんな朝を懐かしく思う時が来るのかもしれない、と思った。
現に、浅い眠りから目を覚まして、睡眠時の無とは訳の違う現実の無を実感するその短い変遷に苦しんだ過去を、僕は既に「一つの記録」として思い起こす。
四六時中、自身の愚かさと周囲からの蔑視で自棄になっていたころ、心の衰弱に鞭を入れるため、起床後に無理矢理朝食を取っていたことがある。
心身一体、つまり薄っぺらい安物の食パンでも胃に詰めてしまえば目前が少しでも晴れるんじゃないかと考えたけれど、僕は軟弱者だった。
単純な吐き気と食事そのものへの軽蔑に似た気持ち、それを感じる自身への同情で涙が止まらなかった。
年甲斐もなく部屋に響くすすり泣きの冬の朝。
季節は一つの環のように思えるけれど、人は違う。
正解不正解ではなく、後悔をするかしないかの分かれ道をか細い平均台のように歩いていくものだ。
そこから落ちないよう必死になっている我々をスナップショットのように切り取るのが季節だ。
彼等が巡ることで僕は生きることの直線性を感じて、時折強く感傷的になる。

僕は器用に平均台に立っていた。
児玉さんからの電話を切った後でもとても落ち着いていて、後悔もなかった。
急げばきっと間に合うし、高い出費もつくけれど、こうしたことは人生につきものだと思った。
後やらなければならないことは、スナップショットだ。忘れてはならないことがある。
僕は薄雲に隠れるぼやけた朝日に向かってマグカップ片手に小さく叫んだ。
「夏は直前。待ってろ広島」




(五分ほど遅刻)
(猛省しています)
AD

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。