2%物価上昇は相当厳しい壁だが、短期実行をあせると歯止めの利かない物価と長期金利の上昇が始まる
物価・長期金利の上昇は、現在の借金の金利負担だけで1.8%で毎年10兆円、1%上昇しただけで、20兆円と膨らみ、更に国家財政借金が膨らみ、最早手を打てなくなる可能性がある
この先に見える失敗は、このコラムニストが言う「日銀だけに責任を押し付ければ、投げつけたブーメランは、安倍首相自らに戻ってくる」ではなく、
こんな首相を選んで今も高い支持率で支えてしまっている我が日本国民に「厳しいブーメランが戻ってくる」と思う。
これは、一政治家の政治責任に終わらない自体だ。

ロイターのコラムを読んでの私の感想である。(壷)

そのコラムの私なりの要約は

①円安などによる原材料費の上昇があっても、需要の盛り上がりが期待できない中では、企業経営者は。製品値上げ戦略の発動を決断できない。少なくとも、この半年ほどで、困難である。
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②そこで、黒田日銀次期総裁は、大幅な大胆な量的緩和の強化という決断をする可能性がある。

③②の大幅大胆な量的緩和で日銀が急速に資産規模を膨らまし、円安が市場の想定を超えて進み、デフレ的な物価から、ガラリと変わって物価が上がり出す可能性がある。
④物価上昇が2%前後でとどまっていればいいが、3%を突破し、4%を目指し始めても急には止めることができない。量的緩和で膨らませた日銀の資産を市場へのショックなしにスムーズに減らすことが難しいからだ。


http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE91O05120130225





コラム:新総裁の重い課題、半年後に物価上昇ゼロなら緩和強化も
2013年 02月 25日 17:40 JST
田巻 一彦

[東京 25日 ロイター] 政府は黒田東彦・アジア開発銀行(ADB)総裁を次期日銀総裁に起用する方針を固めたが、物価目標2%という"重い"課題が、黒田氏の率いる日銀にのしかかると予想する。

リフレ派の主張のように、金融政策によって期待を操るだけで、日本経済をデフレ体質から脱却させることは困難であると考えるからだ。

新総裁の就任から半年が経過し、物価情勢に大きな変化が生じていない場合、政府・日銀が何をなすべきか、大きなテーマに浮上しているだろう。その時に安倍晋三首相は新総裁の責任を追及するだけでは済まず、自らの責任についても説明する義務を負うと指摘したい。そこで緩和が不足していると判断し、大幅な追加緩和策に打って出ると、あるタイムラグを伴って円安と物価高の行き過ぎに直面し、長期金利の上昇も発生し日本経済が混乱に陥る危険性がある。新総裁には先行きを見通した賢明な判断が求められる。

国債以外の金融資産買い入れにも黒田氏が意欲

黒田氏は元財務官としての豊富な経験を有し、国際金融業務に精通しているだけでなく、金融政策に関しても、日銀内で消極論が多かった時期からインフレターゲットへの積極的な支持を打ち出し、大胆な金融緩和で日本のデフレ体質からの脱却を図る考えを明確にしてきた。

では、「黒田総裁」になると、日銀の金融政策が見違えるほど変化し、物価目標の2%を早期に達成できることになるのか──。今後の展開は、そう単純ではないだろう。

黒田氏は昨年末からメディアのインタビューにしばしば登場したが、2月11日の主要報道機関とのインタビューでは、2%達成までに要する期間については「2年ぐらいが適切」との見方を示した。また、「日本国内に日銀が買うことができる金融資産は何百兆円もある」として金融緩和の手段は豊富にあるとの持論を展開した。昨年12月の国内メディアとのインタビューでは、買い入れ資産として長期国債以外にも、資産担保証券(ABS)、インデックス債、株式などを例示していた。

円安でも積極化しない企業の値上げ戦略
一方、足元の消費者物価指数(生鮮除く、コアCPI)は、2012年12月が前年比マイナス0.2%と2カ月連続で下落。総合も同マイナス0.1%だった。この状況から2年間でプラス2%まで物価を持ち上げるのは、容易なことではない。直近の3カ月間で15%超のドル高/円安になっているが、小売りの現場では輸入原材料の価格上昇を理由にした値上げは目立っていない。需要の盛り上がりが期待できない中で、値上げ戦略の発動を決断できない企業経営者が多いためだろう。

日銀は、需給ギャップが縮小していけば、次第に物価は上がっていくとの見方を取ってきたが、日銀が新総裁の下で、これまでよりも急ピッチで資産規模を膨らませても、それが国内需要の増加に結びついて、目立った物価上昇につながるのかどうかは、極めて不透明だ。

円安で減益の素材系企業も、株全面高は過去形になる可能性

リフレ派の人たちは、期待に働きかければ、経済の動きに変化が生じ、実際、円安と株高が実現したと主張している。確かにここまでは、想定通りに進んでいるが、そこから設備投資の拡大や個人消費の増加につながるのかどうか、断定的なことは何も言えない。企業や個人の行動に大きな変化が起きなければ、半年たっても物価は前年比ゼロ%近辺で推移している可能性が高いだろう。

また、現状では円安が幅広い企業の株価上昇につながっているものの、売上原価に占める輸入コストの割合が多い素材系の企業は、売り上げ予想が一定なら、当初予想よりも減益になるだろう。今は市場の注目度が低いものの、そうした企業が続出すれば、市場の株価を見る目が変わってくるに違いない。さらに輸出競争力の落ちた企業は、円安のメリットを受けることができず、「円安イコール株式全面高」という構図は、遠からず過去の遺物になると予想する。

半年後も物価上昇ゼロ%なら、大幅な緩和強化も

安倍晋三首相や日銀の新総裁は、半年たって物価が上昇基調を示さない場合、どのような判断を下すのか、非常に興味深い。安倍首相が任命した日銀総裁が、成果を出せなかった時には、総裁だけでなく首相も、説明責任を明確に果たす義務があるだろう。

その結果、緩和が足りないという結論に達するなら、大幅な量的緩和の強化という決断をする可能性もあるのではないか。ここから先は、大規模な社会実験の様相も強まると予想する。日銀が急速に資産規模を膨らますことで、時期は断定できないものの、円安が市場の想定を超えて進み出すとともに、国内ではそれまでにデフレ的な物価から、ガラリと変わって物価が上がり出す可能性がある。
円安・物価上昇が止まらないリスク

物価上昇のテンポが前年比プラス2%前後でとどまっていればいいが、勢いが付いた物価上昇力が3%を突破し、4%を目指し始めても急には止めることができない。量的緩和で膨らませた日銀の資産を市場へのショックなしにスムーズに減らすことが難しいからだ。

こうした事態に直面したり、接近していることが明確になれば、市場は日銀が引き締めに転換すると予期し、長期金利が急速に上昇するリスクも高まることになる。もし、このシナリオが現実になるようなら、日本経済は相当の混乱状態に陥っていると予想する。

こうして見てくると、物価上昇率2%は、なかなか達成が難しい目標と言えるが、達成のために金融緩和をどんどんと強化させると、一定の水準で安定せず、行き過ぎる危険性があることに気付くだろう。狭い尾根道を転落せずに目的地まで到達するには、政府の成長戦略の実行が欠かせない。日銀だけに責任を押し付ければ、投げつけたブーメランは、安倍首相自らに戻ってくると指摘したい。