『はみだし生物学』 小松左京 新潮文庫 | 表層人間の半可通読書とゲームリプレイブログ(略称半読書リプレイw)

『はみだし生物学』 小松左京 新潮文庫

はみだし生物学 (新潮文庫) はみだし生物学 (新潮文庫)
小松 左京

新潮社 1982-08
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本書のベストセリフ


「善哉、蝸牛子よ、――泳ぎ、走り、はねるもののけたたましい成功にくらべ、


君の歩んだ道はぱっとしないものだったとはいえ、


それはアメーバ以来、否、さらに古く根源的な『地をはう生命』の


謙虚にして寡黙・質朴・平穏の伝統をうけつぐものだ。


Qui va piano va sano e lontano. を文字どおり『地で』行くものの姿だ。


面をあげてたけだけしくきらきらしい黄道にいどむよりは、


君はつつましく顔を伏せて、いぶし銀の光にみちた白道を歩め。


さすれば、露の世は須ゆにして、露とすぎさり、


文明動物のまがまがしく大げさないがみあいも、


君にとっては所詮、その角上の争いにしかすぎぬのであろう。


――かたつむり枝にはい…


――世はなべてこともなし」



蝸牛フェチの小松氏らしい科学解説書だが、


全ての科学ネタを文学と融合させたら大傑作になったろうが、


ほとんどは生物の教科書読んでるような味気ない文ばかりである。


さわりは日常エッセイで読み易くしてあるが、


ほとんどは無味乾燥な教科書文なので、


サイエンスエンタメとしては退屈。


SF作家らしいセンスオブワンダーな仮説も皆無。


メインテクニックはアナロジーばかりである。


小松氏は文系だから仕方ないが、


動物を擬人化するという科学的間違いは、


科学解説書として致命的なミス。


スティーヴン・ウェッブ「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由」 が、


やはり科学解説書のオールタイム1だな。