『チョウたちの時間』 山田正紀 角川文庫
想像出来ないものを想像する天才山田正紀。
今回のモチーフは時間というか超時空間で、
テーマは人間知能の限界、知識欲である。
捨てろタイプな分類すれば時間ものSFであり、
山田正紀版「果しなき流れの果に」 と言えない事もないが、
タイムスケール150億年の物語を300P以下にまとめてしまった傑作。
知性がテーマなら、いくらでも薀蓄を出して、
1000P越えも簡単だろうが、
知識を自慢する秀才ではなくて、
天才の山田正紀は、
こんな壮大なテーマも軽くまとめてしまうのだ!
ベルグソンネタが出てくるので、
凡人なら、主知哲学関係に話題を膨らませたくなるところだが、
無意味な言葉遊びにはならずに、
命を捨てることになっても、
知識を追い求める魅力的な主人公の描写に徹する傑作。
人間の知性の限界を暗示しているが、
それでも、知識を追い求める人間を賛美した傑作。
本書に感動しない奴はケダモノです。
性欲で生きて氏んでいけ!
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