私が読んだ本たち

読書が好きな私が今まで読んだ本たちについて、独断と偏見に基づいて書いています。
本ブログがキッカケでここに載った本たちのいずれかにご興味を持っていただければ幸いに思います。
※悪質な読者登録が多いので、申し訳ありませんが登録はすべて拒否に設定しております


テーマ:
地上12mの松の枝に首つり死体。遺されていたのは「ηなのに夢のよう」という不可解なメッセージ。
同様の自殺が相次ぐ中、西之園萌絵はかつて犀川研で同窓であり友人である反町愛の恋人、金子から10年前の両親を亡くした飛行機事故の真相の一端を知らされる…

今回は金子はとんでもない"土産"を萌絵のもとに運んでくる。萌絵の両親と金子の姉が死んだ飛行機事故が事故ではなく故意であったかもしれないということ、それに真賀田四季が絡んでいるかもしれないということ。
姉を亡くした金子は一人で密かに調べていたのだった。
そして、その夜事件が起こる。金子の恋人、反町愛の元に届いた警告ともとれる不可解なメール、おまけに家のベランダで男が首つり自殺をしていた。
これは金子に対する警告なのかもしれないと思った。これ以上ほじくり返すなという。萌絵もラブちゃんが大切ならこれ以上ほじくり返すのは止めてくれと言っていた。

師である西之園先生が亡くなった飛行機事故が故意であったという可能性を知っていた犀川は、もし、西之園先生を"殺した"犯人が目の前にいて、自分がピストルを持っていたら「僕は復讐するだろう。西之園先生の命は僕にとってそれだけの価値があった」と言っている。
犀川にとって肉親の絆というものはあまり重きを持たないようだ。
犀川の他者に対する価値観というものは、世間一般から見ればかなり逸脱しているようだ。

殺人(凶悪犯罪)には動機などない。
動機と呼ばれるものは、社会が、納得して不安を抑えるために考えられた虚構に過ぎない。

同様に自殺にも動機はない。

生まれることに動機がないのと同様に、死ぬことにも動機などない。

生きることに意味がないのと同様、死ぬことにも意味などない。

最終章近く、卓越した能力を持つ科学者に森はこう語らせる。

「そんなに、深刻になる問題ではない、と私は思うの」

犀川の母、瀬在丸紅子曰く

「死ぬことってそれほど特別なことかしら?そうじゃないわ。本当に、身近なことなんですよ。(略)生命は刻一刻どんどん入れ替わっている。人間よりも、もっともっと短い時間しか生きられないものがたくさんあります。今鳴いている虫は、もう明日は死んでいるのよ。それが虚しい?でも、普通のことでしょう?とても平和で、穏やかな事なんです」

「まだ、若いのだから、死が遠いと感じるのも、無理はありません。私くらいになったらね、もういつ死んだっておかしくないんだから」瀬在丸は笑う。

「ですから、自殺についても、そんなに不思議なことではないと私は理解しています。なかには、生きることに執着する人もいますけれど、それとまったく同じレベルで、反対の道を選ぶ人もいる。つまり、どうせ一度死ぬのならば、自分で今と決めて死にたい、と考えるのね。そう、たとえばね、立っている場所がもうすぐ崩れ落ちるというとき、崩れるぎりぎりまで待つ人と、自分からジャンプして落ちていく人がいるんじゃない?それだけの違いでしょう?どちらも生きたのです。一回生きて、一回死んだのです。同じじゃありませんか?」

生きることに大して意味がない、自ら死を選ぶことに大した理由もないとすれば、自殺者の周囲もなぜ自殺したのだろう?自分にもっと何かできることがあったのではないかと悔やむ必要もないのだろう。自殺はやはり個人の権利、少なくとも自由の範囲に属することになるだろうか。
少なくとも私にはしっくりくる。

瀬在丸紅子、犀川創平、そして、真賀田四季、この人たちは天才だと言えるのだろう。天才にとっては、自分と自分を取り巻くものしか存在せず、社会への定着という概念が存在しないからだ。そう理解すれば、彼らに漂う浮遊感も理解できる。

他人に対する干渉は、愛することと殺すことが究極の干渉かもしれない。真賀田四季は自殺より他者の手によって殺されることを望んでいた。それが究極の干渉のうちの一つだからかもしれない。

自分が他者に必要とされているのを実感できてこそ、生きていこうと思うのではないだろうか?それが社会に定着するということなのかもしれない。

この物語の中で萌絵は今まで傍にいてくれた存在との永遠の別れを迎える。両親が亡くなって以来、人前で涙を見せることができなかった萌絵は涙を流せるようになった。そして、今まで傍にいてくれたその小さき者に「ありがとう」と。

萌絵はようやく10年の夢、あるいは悪夢から覚めたのだろうか?
「私はこの10年、ずっと夢を見ていたのでしょうか?」と犀川に問うた。
犀川は「それも満更はずれではない」と。

萌絵はもう自分に無関係な死を追う必要もないのだろう。

そして、萌絵に旅立ちのときが訪れる。
ドクターを取った彼女に東京の大学での助教の話が舞い込むのだ。

東京に行けば、犀川と物理的な距離が出来るのだが、それが二人にどう影響するか?

ηなのに夢のよう DREAMILY IN SPITE OF η (講談社文庫)/森 博嗣
¥596
Amazon.co.jp

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
密室状態の研究所で4人の身元不明の銃殺死体が発見された。
それぞれのポケットには「λに歯がない」と記されたカード。死体は死後に歯が抜かれていた。謎だらけの事件に迫る過程で西之園萌絵は欠け落ちていた過去の大切な記憶を取り戻す。

久々に喜多先生登場。教授に昇進するらしい。

犀川は以前に他大学から教授として迎えたいという打診があったのだが、助教授にこだわってその話を断った。
教授になると面倒事が増えるのだろうか?

助教授の今でさえ委員会だ何だとすごく面倒がってテンションだだ下がり、萌絵からは「お辞めになれば?」と言われている。
「四季・秋」で萌絵から「先生の生活費はすべて出しますから、お好きなことだけなさってくれればいい」と言われていた。何か本当に大学辞めてしまって、どっかの山荘にでも引っ込んでしまっても驚かないと思う。

今回はどうやら真賀田四季博士とは無関係なようだ。犯行の動機も非常にわかりやすい。なぜ歯を抜く必要があったかも…

死というものは不思議なものだ。誰にでも訪れるごく身近で日常的な現象なのに、何故か常に生から一番遠いところに追いやられている。

人間は命というものを、まるで自分の所有物であるかのように認識している。自分が獲得して、自分で育て上げたものだと錯覚している。自分の作品だとでも思っているようだ。それだから、それを取り上げられることに、最大の恐れと恨みを抱いているのだろう。
でも、そもそも、すべては自然に発生したもの。自分ではコントロールが難しいもの。手に入れたり交換したりできないもの。自分の中にあるようで、実は自然と同じものなのだ。

そもそも命は自分のものだというのが勘違いなのだろう。
強いて言えば、かりそめの借り物なのかもしれない。
親だとて、自分の遺伝子を受け継いでいる、自分が命を半分与えた、だから自分の所有物だというのは勘違いも甚だしい。
親の虐待は子は親の所有物という勘違いな思い上がりに主な原因があるのだろう。
自然に発生し、たまたまその人間の子どもという属性を持って生まれてきたに過ぎない。生まれてくることを望まなかった命には親を選ぶ権利もない。

萌絵は両親が死んで以来、昔から何度となくある夢を見てきた。以前はその夢に恐怖を感じていたが、犀川と朝を迎えた部屋で落ち着いて犀川に話す。
犀川と萌絵が朝を迎えた場所は、犀川の部屋でもなく萌絵のマンションでもないようだ。

萌絵は犀川の膝に乗り、犀川は組んでいた足を解いた。萌絵は犀川の唇にキスをした。
λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)/森 博嗣
¥572
Amazon.co.jp
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
それぞれ別々の用件で東京に行っていた山吹早月と加部谷恵美は東京発中部国際空港行きの高速バスで帰ることになった。間に合わないと思ったが、悪天候の影響でバスが遅れていたので間に合った。
が、バスが出発してしばらくすると、乗客の一人が前に立って、妙に丁寧な口調で自分がこのバスをバスジャックした旨、バスに爆弾が仕掛けてあることを告げる。抵抗しなければ、携帯電話等で外部に連絡するのは構わないと告げる。
加部谷は携帯のメールで西之園萌絵に自分が乗っているバスがバスジャックされていること、警察に連絡して欲しい旨を告げる。

今回は森博嗣と警察にまんまと騙されました。

それにしても、生きるか死ぬかというときに山吹が姉からの頼まれ物、つまり、その…腐向け(だと思われる)同人誌の始末を加部谷と話し合うところにちょっと吹いてしまいました。
もし、二人が死んでしまうようなことがあったら、あの本はほぼ確実に加部谷のものだと思われてしまう。加部谷には実に不名誉なことになる。

そして、このバスに乗り合わせたのは、山吹と加部谷の他は「εに誓って」という団体。彼らはそれぞれの理由で人生に絶望をしていて、自殺をしようとしていた。つまり、「εに誓って」という団体は自殺を目的とした宗教団体なのだ。
そして、ここにも真賀田四季の影が・・・

それは犀川にも影を落としている。
彼の自由な深淵にはあの女性がいる。勿論、現実の彼女ではない、犀川が無意識に作り出した幻影だと思う。

生と死の狭間が美しい。
その境界だけが、朝日や夕日のように特別に輝く。

永遠は一瞬の中にしかないのかもしれない。

そして、今までは山吹や加部谷は事件に巻き込まれたに過ぎなかったが、今回は事件の当事者、しかも、バスジャック犯の人質となっているのだ。今回は萌絵と事件の距離は近いのだ。山吹や加部谷の無事を願い、案じる萌絵。

死のうと考えることは、きっと自由なのだ。
それを考えることは、人間の尊厳の一部。
考えても良い。考えるべきなのだ。

が、考えてもなかなか自分が好きなときに死ねないのが人間なのかもしれない。
生まれる自由も死ぬ自由もないのだ。
人間が自由になるものなんか何一つない。

εに誓って SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)/森 博嗣
¥637
Amazon.co.jp
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
超能力者・神居静哉の別荘である山奥の奇妙な館『伽羅離館』。
この洋館にC大のトリオ、山吹、海月、加部谷と探偵・赤柳がやってきた。
他に
神居静哉へのインタビューのために新聞社の人間も来ていた。
が、晩餐の後に
神居静哉が密室で殺害され、彼が亡くなる寸前に聞いていたラジオドラマは「τになるまで待って」。さらに館は外から密閉されていて誰も出ることができず、館の中では電話もつながらない。

なぜかC大トリオが行くところ行くところで事件が発生。この三人のうち誰かに事件を呼び寄せる体質の持ち主でもいるのか?

出番は少ないが存在感のある犀川&西之園。
今回は…

・萌絵の自宅で一緒に遅めの夕食を食べた
・そのまま萌絵の自宅で一泊した
・萌絵「私も全然眠れてない」
・時間を気にしていてはできないことがある
・目覚めた後、萌絵からシャツを手渡されて黙ってそれを着た
・↑つまり、目覚める前は服を着ていなかった
・諏訪野の姿はなし(萌絵曰く「気にしないで下さい」)

犀川が萌絵のマンションに泊まるのは初めてのことではない。が、そのときには確かゲストルームに泊っていた。
今回は一つ部屋どころか、一つベッドで寝てたような…

今回は犯人をハッキリ明示していない。犯人とおぼしき人物は事件後行方不明だから真相はやぶの中。

犀川は騙し討ちのような形で朝っぱらから叩き起こされご機嫌斜めながらも犯行がどのように行われたかを指摘したのはさすが。
犀川が朝に弱いのは相変わらずのようで…

τになるまで待って PLEASE STAY UNTIL τ (講談社文庫)/森 博嗣
¥659
Amazon.co.jp
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
25歳の誕生日に転落死した男性の額には「θ(シータ)」という文字が書かれていた。その後も「θ(シータ)」と身体にマーキングされた自殺事件が続く。検視を担当しているN大病院の研修医である友人・反町愛から事件について聞いた西之園萌絵は山吹、海月、加部谷と探偵・赤柳と事件を追う。

久々に"ラブちゃん"登場。彼女の恋人である金子の出番はないが…

転落死した男性が頻繁にアクセスしていたのは、AI(人工知能)。ふと、「すべてがFになる」に出てきたロボット"ミチル"を連想した。
真賀田四季博士の影を感じる。

今回はラブちゃんによる西之園萌絵に関する語りがある。

いくら明るく振舞っていても、いつでもふっと消えてしまいそうな脆さで、西之園萌絵は出来ているのだ。

それをもっと充分に、いや、誰よりも知っているのは犀川創平であろう。

だから約束をすっぽかしたことを謝る電話で、萌絵がM工大の屋上にいると聞いて、飛び降り自殺をすると勘違いして慌ててすっ飛んで来たのだろう。
不謹慎だろうが何とも笑える。
犀川の狼狽を見るのは珍しい。


Θ(シータ)は遊んでくれたよ (講談社ノベルス)/講談社
¥972
Amazon.co.jp
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
夢見た舞台を遂に実現させた女性演出家。彼女を訪ねてきた幼馴染が東京のアパートで絞殺死体で発見され、アパートの部屋の主は行方不明…

今回の事件は、加賀恭一郎の個人的なことにも大いに関係がある。
容疑者が亡くなった加賀の母親と関係があったようなのだ。

加賀の母親は加賀が子どもの頃に出奔して、仙台のアパートで亡くなって、加賀が遺骨の引き取りに行ったのだ。
そして、その妻の死にざまに触れた加賀の父親は死んでいくときは自分も一人で死んでいこうと決心し、加賀にも死ぬときは傍にいてくれるなと言い、加賀はそれに従った。
それは、幸せにしてやれなかった妻へのせめてもの気持ちであったのだろうが、本当にそれでよかったのだろうかと加賀は今でも悩んでいる。

そして、加賀が日本橋署に異動を希望していた理由もわかった。

今回は加賀の母親がなぜ夫と子どもを捨てて出て行ってしまい、仙台のアパートで一人寂しく死んでいくことになったのか、その過程が明かされている。
それと同時進行的に事件のさまざまな伏線が徐々に収束していき、最後にパズルのピースのようにピタリとはまっていく。
すべてがピタリとはまったときは、事件の終わりなのだ。
そして、母のことを知る旅の終わりでもある。

加賀のいとこ、松宮刑事はある経緯で預かった事件の関係者から加賀宛の手紙を加賀の父の看護をしていた看護師、金森に託す。松宮は松宮なりに、加賀と金森の間に何かが始まりそうな予感がしていたのではないかと思う。

加賀は今後、警視庁に戻るらしいが、母親のことも片が付いて、一区切りを迎えたのではないかと思う。
が、まだ、大きな問題が読者の間では片が付いていない。

浅岡未緒のことだ。

この人とのことを明かしてくれないと、このシリーズは終了しないと思います。

祈りの幕が下りる時/東野 圭吾
¥1,836
Amazon.co.jp
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
おもちゃ箱のように過剰に装飾されたマンションの一室に芸大生の宙吊り死体が。
Yの字に吊られ、背中には作り物の羽根をつけて、ナイフが刺さっていた。
現場は密室状態、死体発見の一部始終は室内に仕掛けられたビデオに録画されていた。
C大学の院生、山吹早月は同じマンションに住む旧友を訪ねて事件に巻き込まれた因縁で、先輩にあたるD2大学院生西之園萌絵は学生たちと事件の謎を追求する。

新シリーズ、Gシリーズの第一弾。
時系列から言って、S&Mシリーズ、Vシリーズ、四季・秋の後。「四季・秋」では西之園萌絵は修士課程だったが、今シリーズではドクター2年になっている。

このシリーズではC大学の3人(加部谷恵美、山吹早月、海月及介)が中心で、S&Mシリーズで主人公だった犀川創平と西之園萌絵は一歩引いた立場となっている。

この加部谷恵美という学生は「幻惑の死と使途」で初登場している。
(当時はまだ中学生だったが)
彼女は初めて出会ったときから、西之園萌絵に憧れている。

あの頃は利発そうな女の子という印象だったが、今は普通の女の子という感じだ。

S&Mシリーズからの読者であれば、気になるのは犀川助教授と西之園萌絵の関係であろう。
犀川助教授は今回は電話のみの出演?だが、その出演というのが、加部谷が西之園萌絵の携帯に電話をかけたら、犀川が出て、「西之園君、今ちょっと出られないんだ」
後で西之園萌絵は「犀川先生のところに携帯を忘れていった」と言っているが、犀川ははっきりと「今、出られない」と答えている。
つまりあの時点で、彼女はまだ犀川の家にいたということだ。
何か怪しいぞ・・・犀川より萌絵が隠したがっているし・・・

加部谷恵美さん、察してあげなさいよ。野暮な子ねぇ・・・

そして、雨の中、加部谷たちを迎えに行った萌絵の乗っていた車は犀川の車。
(萌絵の所有する車はツーシーターばかり)
犀川先生、まだ、辛子色のルノーに乗っていたのね・・・

この事件は、被害者と加害者が協力し合わなければ成り立たなかった。

まあ第一弾としてはこんなもんかな?
φは壊れたね (講談社文庫)/森 博嗣
¥637
Amazon.co.jp
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
「諸君が、一度でも私の名を呼べば、どんな密室からも抜け出してみせよう」いかなる状況からも奇跡の脱出を果たす天才奇術師・有里匠幻(ありさとしょうげん)が衆人環視のショーの最中に殺された。しかも遺体は、霊柩車から消失。有里匠幻が殺害された現場に居合わせた犀川助教授と西之園萌絵の師弟が明かす驚愕の真実とは?

小説の冒頭で有里匠幻は一人の少女と出会い、その少女は西之園萌絵と出会う。
彼女は中学生で名前は加部谷恵美。後にGシリーズの主人公の一人となる人物だ。

今でも何か不思議なことに出会うと、僕は、自分の知らない法則だと思うことにしている。
ときには、世の中の誰も知らない法則かもしれない。

大人になるほどこんな素敵は少なくなる。努力して探し回らないと見つからない。
このまえ、君は科学がただの記号だって言ったけど、そのとおりなんだ。
記号を覚え、数式を組み立てることによって、僕らは大好きだった不思議を排除する。
そうしないと新しい不思議が見つからないからさ。
探し回って、たまに少し不思議な素敵を見つけては、また、そいつらを一つずつ消していくんだ。
もっともっとすごい不思議に出会えると信じてね・・・。
でも、記号なんて金魚すくいの紙の網みたいにさ、きっといつかは破れてしまうのだろう。たぶんそれを心のどこかで期待している。
金魚すくいをする子どもだって、最初から網が破れることを知っているんだよ。

こんな風に言える犀川先生はステキだと思います。

その犀川先生、遂に長年乗っていたシビックが修理不能なほど壊れ、新しい車を買わなければならなくなったのだが、何と萌絵に選んでもらう。
「あれ何かいいんじゃないですか?」と萌絵は軽い気持ちで言ったのだが、犀川は気に入ってしまい、その場で注文しようとしたので、さすがに萌絵が慌てて止め、犀川を引きずるようにディーラを出ていく・・・結局、その辛子色のルノーを買うんですよね・・・
色なんかも「僕は乗っているから色なんてどうでもいい」それはそうなんですけど・・・

今回の事件のキーは「名前」なんだと思います。
世の中のものにはすべでのものに名前がある。
その「名前」にすべてのものは縛られている。

この事件の犯人も「有里匠幻」という名に縛り続けられてきた一生だったのかもしれない。

そして、不条理な感情にすら名前がある。
「恋」という名が・・・

幻惑の死と使途 (講談社文庫)/森 博嗣
¥864
Amazon.co.jp
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
ある事件が原因で、15年間、孤島に建つハイテク研究所で完全に隔離された生活をしている天才工学博士、真賀田四季。
そんなある日、研究所をつかさどっているシステムが原因不明のエラーを起こし、15年間開けられることのなかった博士の部屋の扉が開き、ウェディングドレスを身にまとい、両手両足を切断された死体が荷物運搬ワゴンに乗って現れた。
たまたま研究所を訪れていたN大助教授、犀川創平と学生、西之園萌絵がこの奇怪な事件の謎に挑む。

森博嗣の「S(犀川)&M(萌絵)」シリーズはこれが最初だと言われているが、実際、先に作品として完成していたのは、「冷たい密室と博士たち」の方だったという。
それに・・・主人公の苗字から頭文字を取るのなら、「M」は西之園の「N」になるのではないか?
なぜ、女の方は萌絵のMから取ったのだろう?
ナゾはここから始まっている?

西之園萌絵はただの女子大学生ではなく、名門・西之園家のご令嬢で何と諏訪野という執事が彼女の世話をしている。叔父は県警本部長、伯母は愛知県知事夫人、地方にも一族がおり、それぞれ重職についている。
まだ19歳の大学生でありながら、師である犀川創平の給料の何倍もの税金を納めている。
彼女は16歳のときに両親を飛行機事故で亡くしており、そのとき居合わせたのが、当時、萌絵の父親の生徒であった犀川創平だ。
彼は西之園萌絵のことを9歳のときから知っていた。

西之園萌絵は名門・西之園家の政治力を使って、天才工学博士真賀田四季との面会に成功した。なぜか、真賀田四季博士は彼女に関心を持ち、そして、彼女の師である犀川助教授にも興味を持ったようだ。

「先生…、現実とは何でしょう?」
「現実とは何か、と考える瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だ」
「普段はそんなものは存在しない」
「でも、現実と夢とは明らかに違うでしょう?」
「他人の干渉を受ける、あるいは他人と共有している、という意味で、現実はやや自己から独立したものとして自覚されているね」
「でも、他人に干渉を受けない、あるいは、他人と共有しない現実も、一部分だが努力すれば構築することができるだろう?たとえば、未来には、必ず個人の現実はそういった方向へ向かうはずだ。何故なら、みんながそれを望んでいる。だから・・・、現実は限りなく夢に近づくだろう」
「そう、ほとんどの人は、何故だか知らないけど、他人の干渉を受けたがっている。でも、それは突き詰めれば、自分の満足のためなんだ。他人から誉められないと満足できない人って多いだろう?でもね・・・、そういった他人の干渉だって、作り出すことができる。つまり、自分にとっては都合の良い干渉とでも言うのかな・・・、都合の良い他人だけを仮想的に作り出してしまう。子供たちが夢中になっているゲームがそうじゃないか・・・、自分と戦って負けてくれる都合の良い他人が必要なんだ。でも、都合の良い、ということは単純だということで、単純なものほど、簡単にプログラムできるんだよ」
「そうやって、個人を満足させる他人をコンピュータが作り出して、その代わり、人はどんどん本当の他人とコミュニケーションを取らなくなる・・・、ということですか?」
「そうだね・・・、そう考えて間違いないだろう。情報化社会の次に来るのは、情報の独立、つまり分散社会だと思うよ」

それぞれ個々が満足できる現実をコンピュータが作り出して、それだけに囲まれていたら戦争すら起きなくなるかもしれない。争いや戦争は不自由や不満がもとで起こるのだろうから。

人間の精神さえもデジタル化できるのかもしれない。もし、そうならば、人間は肉体は朽ちても、精神だけは電脳空間の中で好きなだけ生き続けられるのかもしれない。
そうなると、死さえどうってことなくなるのではないか?
たかが、肉体だ。

「自分の人生を他人に干渉してもらいたい、それが、愛されたい、という言葉の意味ではありませんか?犀川先生・・・。自分の意志で生まれてくる命はありません。他人の干渉によって死ぬというのは、自分の意志でなく生まれたものの、本能的な欲求ではないでしょうか?」

人間は死が怖いのではなく、死に至る生、死までのプロセスが怖いのだと思う。
何故死を怖がる?死を体験することなどできないのに。
殺されるということは傍が思うほど悲劇的なことではないのかもしれない。
うまくすれば、さほど苦痛を感じることなく自分でも気づかないうちに、一線を他人の手で超えさせてくれるのだから。生きたいと思っている人にはお気の毒なことだが。

真賀田四季博士は私のような凡人には理解できないが、彼女はロボットでも化け物でもない。人間だ。が、「人間を超えた人間」なのだろう。

彼女は・・・面と向かって話すことができない彼とどんな会話をしたのだろう?

「ニキビのようなもの・・・。病気なのです。生きていることは、それ自体が、病気なのです。病気が治ったときに、生命も消えるのです。そう、たとえばね、先生。眠りたいって思うでしょう?眠ることの心地よさって不思議です。何故、私たちの意識は、意識を失うことを望むのでしょう?意識がなくなることが、正常だからではないですか?眠っているのを起こされるのって不快ではありませんか?覚醒は本能的に不快なものです。誕生だって同じこと・・・。生まれてくる赤ちゃんだって、だからみんな泣いているのですね。生まれたくなかったって・・・」

そう、少なくとも私は生まれたくなかった。
すべてがFになる (講談社文庫)/森 博嗣
¥792
Amazon.co.jp
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
妃真加島で起きた殺人事件。幽閉されていた研究所から逃げ出した天才、真賀田四季博士。
あれから7年・・・犀川創平は四季が残したメッセージを読み解き、西之園萌絵と共に四季との接触を試みる。
一方では犀川の異母妹、儀同世津子に椙田(保呂草)という人物が接近している。彼の目的は、各務亜樹良という女性の手がかりを掴むこと。

小説のタイトルが「四季 秋」となっているものの、真賀田四季自体の実体は現れないと言ってもよい。犀川創平&西之園萌絵と保呂草と各務亜樹良の二組のカップルを中心に話が進行していく。

7年前、殺人現場となった研究所に偶然居合わせた犀川創平と西之園萌絵(「すべてがFになる」)
西之園萌絵はD1(ドクター1年)となった。助手の国枝が同じ県内の私立C大学に助教授として着任し、国枝と近い研究テーマの西之園萌絵は国枝のアシスタント的な役割でC大学にいることが多くなり、犀川とすれ違いの日々が続いていた。そんな中、萌絵は犀川から指輪をプレゼントされる。
しかも、ただのファッションリングではなく、本人や伯母である佐々木睦子の反応からその指輪はダイヤだと思われる(明言されてはいないが)
これはツッコミ所満載のエピソードだと思う。
犀川はなぜ萌絵の指輪のサイズを知っていた?
ネックレスなどと違って、指輪を贈るには、まずサイズを知らなくては話にならない。
サイズ直しをした形跡がないことを考えると、ピタリのサイズを知っていたはずだ。
どうやって知った?
家族や親しい友人でも普通、指輪のサイズなんて知らないものだ。
まさか犀川が「西之園君、君の指輪のサイズは?」なんて聞いたとは思えない。
自分の指輪のサイズなんて本人でさえ失念していることが多い。
考えられる方法としては、寝ている間にでもこっそりサイズを測ったとか。
それには、一緒の部屋で寝ているというシチュエーションが必要なのだが・・・

さらに犀川は萌絵と二人だけでイタリアに行ったことを隠そうともしないどころか、国枝に自分から話している(目的は言わなかったようだが)

犀川は萌絵の父のお弟子さんという関係から萌絵を幼少から知っているが、萌絵は犀川のことを殆ど知らない。このエピソードまで犀川と儀同世津子が異母兄妹であることを知らなかったくらいだ。

犀川は色々な面で犀川の父親に似ているのかもしれない。

萌絵は犀川が真賀田四季に恋愛感情などないことはわかっている。が、彼が真賀田四季博士に研究者として憧れの感情を持つことは、ある意味恋愛感情より始末が悪いかもしれない。
いつか、犀川が四季と同じ世界に行ってしまうのではないかという不安を抱いている。
その不安、そして、自分が認めたくない本当の気持ちが夢の中で四季の姿をして萌絵自身に語り掛けている。

萌絵は犀川の仲立ちで犀川の母、瀬在丸紅子と対面を果たす。
犀川は母の居所も知っているのだが、なぜか会おうとしない。
犀川の母、瀬在丸紅子と儀同世津子の母、祖父江七夏(犀川の父の部下、彼との間に娘をもうけているが、結婚はしていない)は犀川の父を挟んで犬猿の仲なのだ(当然と言えば当然だが)
おまけに、離婚してからの方が紅子と犀川の父は仲良く付き合っているという。
が、犀川は母が違えどたった一人の妹である儀同世津子と兄と妹として交流している。
犀川が母と疎遠というのは、恐らく、母にしてみれば恋敵の娘である世津子との交流を反対されたことも一因ではないか?
母にしてみれば当然の心理だろうけど、犀川にしてみればそれこそ関係ない話であろう。

萌絵は紅子と話している中で「知らない方が愛せるのかもしれません」と語っていた。

萌絵は、犀川が三人もの人を殺した殺人犯である真賀田四季博士を敢えて見逃したことに許せない気持ちとか、時々、犀川のことが理解できないこともあるのだろう。
が、人の心に何があるかなんて100%わからないし、100%わからない方がいいのかもしれない。

犀川と萌絵は表社会に生き、保呂草と亜樹良は裏社会に生きる。そんな結末が暗示されているような気がする。

四季 秋 (講談社文庫)/森 博嗣
¥637
Amazon.co.jp
いいね!した人  |  コメント(1)  |  リブログ(0)

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。