2011-08-30 07:50:08

禊と再会、そして未来へ…ALL TOGETHER!!

テーマ:Pro-wrestling

ごく私的な話から。

これまで何度か話題にのぼっているが、

東日本大震災(3月11日)直前に開催された新日本プロレスの2・20仙台大会のこと。


終始、観客の熱気に包まれる中、興行を締めくくったのは棚橋弘至。

小島とのリターンマッチとなるIWGP王座の初防衛戦だった。


リングサイドを幾重にも取り囲むファン。

感極まって涙を流した棚橋。

敗れた小島からも、翌日こんなメールが届いた。


「負けちゃったけど、あの素晴らしいお客さんたちの大歓声のなかで

試合ができて、自分は幸せ者だと思いました」


小島だけではなく、他の選手にとってもそれが偽りのない心境だったろう。

当日、私はテレビ朝日(スカパー!PPV生中継)の解説についていた。


首都圏の興行では、私の顔など見慣れた存在と映るのだろうが(笑)、

地方マッチとなると、ファンの方たちからよく声を掛けられる。

わざわざ私の著書を持参してきてサインを求める人、

ごく軽い感覚で、握手や記念撮影を求めてくる人……。


もちろん、悪い気はしないし、できる限り丁寧に応対する。

こういった人たちによって、私も業界も支えてもらっている。

2005年にフリーランスとなって以来、私も大人になったのか、

素直にそういう気持ちで対応できるようになった。


ただ、ひとつだけ、どうしても苦手というか、気が引けてしまうのが、

色紙を出されて、サインを求められたとき。

私なんぞ、色紙にサインするほどの”人物”ではない。

こればかりは、どうしても気持ちが引いてしまう。


反対に「申しわけない」と、こちらが恐縮してしまうのだ。


その仙台大会の休憩中のことだった。

地方マッチのPPV生中継があるときは、原則として全試合の解説につくことが多い。

だから、10分弱の休憩時間は貴重なオフタイムとなる。


ヘッドセットをはずし、控室へ戻ろうとしたところで呼び止められた。

30歳前後とおぼしき男性だった。

傍らに奥様と可愛い娘さんがいた。

娘さんは4歳ぐらいだろうか?


「ウチの妻が金沢さんの大ファンでして、サインをいただけませんか?」


じつに丁重な物腰だった。

苦手とする色紙だったが、親子それぞれ3人の名前を入れて、

3枚の色紙にサインをした。


そのあと、記念写真も撮った。


「貴重な休憩時間に、余計な時間をとらせてしまい、すいませんでした」


そう御主人は言った。

少し驚いたのと、その気配りに感激した。

私の仕事のサイクルを知っているようだから、本当にプロレスの大ファンなのだろう。

それに、完璧な気配りの言葉。

それが、しっかりと胸に焼きついた。


あの仙台大会は、もしかしたら今年1年を振り返ったときに、

年間最優秀興行に選出されるかもしれない。

それほど、新日本プロレス復興、復活のシンボルとして位置づけしたいと思える興行だった。


ところが、それから3週間弱で東日本を悲劇が襲った。

新日本復活の地が、震災によって打ちのめされた。

4・3後楽園ホール大会。

永田裕志を相手に王座防衛を果たした棚橋が、被災地を思いまた泣いた。


なんとなく、その気持ちは分かる。

ただ、少なくとも仙台、福島在住の私の知人、友人はみんな無事だったせいか、

本当の意味で、今回の震災の悲劇をまだ実感として、自分は感じていなかったのかもしれない。


随分と月日が流れ、8月14日の両国国技館。

『G1クライマックスⅩⅩⅠ』優勝決定戦。

中邑真輔の初優勝で感動の幕切れ。


放送席の『スカパー!PPV生放送』も終了。

「おつかれさでした!」の声とともに、

ヘッドセットをはずした。


「すいません、金沢さん!」


後方から声を掛けられた。

あの仙台でお会いした御主人だった。

もちろん、親子3人連れ。


「覚えていらっしゃいますか? あのときは、ありがとうございました。

今日は3人で東京まで観にきました。これ、お荷物にならなければお土産なので」


仙台銘菓をいただいた。

名前も思い出した。

本郷さん御夫妻。

ずっと気になっていたことなので、聞いてみた。


「震災のときは、大丈夫だったんでしょうか?」


「はい、家族3人無事でした。ただ、家が壊れてしまったので、引っ越したんです」


続けて、本郷夫人が明るい表情でこう言った。


「運よく仙台にマンションが見つかりました。耐震構造なんですよ」


救われるような笑顔。

よかったと思う気持ちと、お見舞いをすべき立場なのにお土産をもらって申しわけない気持ち。

同時に、初めての感情が頭をもたげてきた。

なぜ、今までこんなことに気付かなかったのか?


あの日、あの仙台サンプラザホールに詰めかけた満員の観客。

本郷さん親子は運よく無事だった。

しかし、あの観衆のなかには、もしかしたら命を落とした人や肉親を失った人、

家を失った人……そういう人たちが何人もいるのかもしれない。


そう思ったとき、棚橋の涙の意味が完全に理解できた。

あの震災から5か月、東京までプロレス観戦に来るほどまでに立ち直った本郷夫妻。

再会できてよかった。

初めて震災を体験した人と話ができてよかった。

それが、ごく私的な話。


それから、約2週間。

8・27日本武道館大会。

メジャー3団体が一堂に会した東日本大震災復興支援チャリティープロレス、

『ALL TOGETHER』の当日を迎えた。


テレビ朝日・放送スタッフ陣は、午後2時集合。

武道館の正門をくぐった途端に驚かされた。

グッズ売り場に並ぶファンの行列が半端でない。

正門まで並び切れずにとぐろを巻いて並んでいる。


会場に入って、控室、インタビュールームなどをチェックしてから、

テレビ朝日の控室へ。

いきなり篠原弘光プロデューサーが気の利いたジョーク(笑)。


「ああ、金沢さん、よく来てくれました。

みんな金沢さんは両国に行っちゃうんじゃないかって心配してましたよ」


IGFの両国大会で突如、組まれたジェロム・レ・バンナvs藤田和之。

おまけに、ケンドー・カシンまで参戦決定。


同じようなことを、何人かの関係者に言われた。

まあ気にはなるが、藤田は藤田で頑張るだろう。


テレ朝『ワールドプロレスリング』放送陣は『スカパー!PPV生中継』も兼ねている。

解説担当も山崎一夫さん以外は、レギュラー陣が入れ替わり立ち替わり。

ゲスト解説には、タイガーマスク、後藤洋央紀、獣神サンダー・ライガーが順番に入った。


私の担当は、第3試合、第5試合、第8試合、メインの第10試合の4戦。

そのため、けっこうバックステージを行き来できて、取材もできる。

緊張の面持ちでオープニングイベントの入場を待つ3大王者に

ずうずうしくも声を掛け、こんな感じで強引に並んでもらった。


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今度は2階席へ移動して、会場の全景を撮ってみた

もの凄い入りだ。

2階席の最後方を立見の観客がグルッと取り巻いており、

見上げると3階席のうしろも立見のファンであふれている。

観客数=1万7000人。

過去25年間、日本武道館の興行を見てきたなかで、最高の入りかもしれない。

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さらに、実際に放送席を探しに行ってみて、また驚いた。

リングサイドには本部席しかない。

よくよく見ると、アリーナの最高方にステージが設置されていた。

向かって右側が日本テレビ、左にテレビ朝日。


隣り合わせのガチンコ対決である。

まず、日テレの旧知の関係者に挨拶に出向いた。

久しぶりに顔を合わせる平川健太郎アナウンサーとも会話。


じつは、平川アナとは一度だけ放送席で一緒になったことがある。

しかも、プロレスではない。

K-1ジャパンの放送席だった。


2001年の8・19さいたまスーパーアリーナ。

猪木軍vsK-1軍・3対3全面対抗戦。

藤田和之のタックルとミルコ・クロコップの膝蹴りがバッティングして、

大流血した藤田のドクターストップ負け。


あのプロレス界、格闘技界の歴史を変えた瞬間を

当日、『24時間テレビ』内の1時間ゴールデンタイム枠で放送したのは日本テレビ。

そのとき平川アナがメイン実況を行ない、私が解説を務めている。

「あれから10年ですよ」と言うと、平川アナも「そんなに経ちますかあ」と感慨深げだった。


日テレ側の解説には丸藤正道がついて、ゲスト解説にはなんと鈴木みのる。

いずれにしろ、当日深夜の『ワープロ』放送終了後の約1時間後に、日テレの特番放送がある。

もう、ガッチガチのガチンコ対決となる。

こればかりは、TOGETHERとはいかないのだ。


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ちなみに、左がテレ朝で、私がいないのは当然撮影しているから(笑)。

右が日テレで、カメラを向けると、それに気付いた鈴木みのるが

しっかりとガンを飛ばしてきた! 


館内をグルッと回ってみると、懐かしい顔にも出会う。

ひさしぶりに北斗晶に会った。

握手を交わす。


会場には随分とご無沙汰だというが、中嶋勝彦、宮原健斗、

そして佐々木健介を観る北斗の目線は変わらない。

家族を見守る優しさと、試合を見定める厳しさの両方がうかがえるのだ。

 

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この日、試合前の募金活動に参加した小島も会場の後方から熱心に見入っていた。

やはり居ても立ってもいられなかったのだろう。

すでに、軽い運動を始めているという。

誰よりも悔しい思いで、この武道館大会を見守っていたのは小島なのかもしれない。


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第3試合終了後、バックステージで勝利者インタビューの取材をして、

館内に戻ろうとしたところで、じっと精神統一しているライガーを見つけた。

その背中を撮ろうと思った瞬間、ライガーが振り返った。


なんとハーフ&ハーフのマスク。

右半分は、デビュー時の”獣神ライガー”時代のマスクだった。

ここですぐさまビシッとポーズをとってくれるのが、ライガーらしさ。


ライガーがハーフ&ハーフマスクで臨んだ理由は明らかだった。

タッグを組むのは同日デビューの佐野巧真と、

新日本時代、いちばんライガーを慕っていた船木誠勝。

いわば、新日本野毛道場トリオ。


しかも、対戦相手に鈴木みのるがいる。

2002年11月、パンクラス横浜大会で両者はパンクラスルールで相まみえた。

結果は、チョークスリーパーで鈴木の勝利。


しかし、この一戦でプロレスに目覚めた鈴木は、

心の中で漠然と抱いていた引退の二文字を撤回し、

翌03年6月、新日本マットへ、プロレスのリングへと帰ってきた。


リバプールの風になったYKから獣神ライガー、さらに獣神サンダー・ライガーへ。

いくら鈴木が「同窓会マッチにはしない!」と言ったところで、

この4選手は25年に及ぶ、腐れ縁と運命の糸でつながっている。


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それにしても、ビッシリと人で埋め尽くされた武道館の観客のノリは凄まじいばかり。

オープニングマッチのジュニア8人タッグ戦

(飯伏&石森&BUSHI&大和vsタイガ―&カズ&近藤&リッキー)

から、すでに出来上がっていた。


同じく第4試合のジュニア10人タッグ戦

(デヴィット&田口&鼓太郎&中嶋&KAIvs金本&稔&金丸&KENTA&平柳)

もノンストップの攻防で目が追いつかないほど。


日本のジュニア戦線は掛け値なしに世界№1だろう。

ここ最近のメジャー3団体の興行を比較した場合、

新日本が飛びぬけているのは明らかなのだが、

ことジュニアの層の厚さにかけては、3団体とも甲乙つけがたい


そこで改めて分かることは、いかにシチュエーションが大切かということ。

いま新日本が抜きん出ているのは、興行の流れがしっかりと出来上がっているから。

第1試合から、観客が乗れるムードを作りだすための演出、

マッチメイクを心がけているからだ。

 

シチェーションさえ出来上がっていれば、

日本のジュニア戦士たちは、団体を問わず素晴らしいものを披露してくれることがわかった。


私が解説を担当した第3試合(齋藤彰俊&真壁刀義vs太陽ケア&後藤洋央紀)も

思い入れのある試合だった。

周知のとおり、反選手会同盟→平成維震軍の斬り込み隊長として、

約7年、新日本マットで活躍していた彰俊。


彰俊が新日本を退団したのが99年1月で、

真壁がデビューしたのは97年2月だから、約2年被っている。

当時を思い出して、真壁はこう言っていた。


「デビュー早々で、それこそボロクソにやらたのを覚えてますよ。

ただ、シングルで一回だけ勝ったんですよ、あの人に。

当時のオレにとっては自信になったし、

オレと同じでガンガン行くタイプなのでパートナーとしては申し分ないですね」


彰俊が新日本マットで奮闘していた時代、

立場的には当時のヤングライオン、永田、大谷、石澤(カシン)らに近いものがあった。

だから、私も個人的に彼とは親しい仲だった。


リングを離れれば、実直で礼儀正しく、人当たりも抜群にいい。

そんな彰俊のことを当時の現場監督、長州力は可愛がっていた。


99年1月、場所は代々木競技場・第二体育館。

彰俊が神妙な顔で私のところに駆け寄ってきた。


「じつは、この1月で退団することになりました。自分の中で行き詰まりを感じてしまって。

だけど引退ということじゃなくて、少しプロレスから離れてみようかと。

別の仕事にチャレンジしてみたくなったんです。

金沢さんには本当にお世話になりっ放しで感謝してます。

もし、またリングに上がるようなときがくれば、真っ先に連絡させてもらいますから」


彰俊は、そのときの約束を守ってくれた。

ノアへのフリー参戦が決まったときに、電話連絡をくれたのだ。

彼はそういう男だった。


ノアのレギュラーになってからは、顔を合わせる機会はほとんどなくなったが、

年賀状のやりとりだけは続いている。

2年前の、あの試合。

三沢光晴さんが亡くなったときに、本当に彰俊のことが心配だった。


何度か電話を掛けかけたが、結局やめておいた。

私の言葉でどうにかなるものではない。

だが、彰俊は優しいだけではなく、心も強い男だった。

見事に立ち直ってきた。


真壁と彰俊のチームワークはドンピシャリ。

完全にハマっていた。

後藤&ケアに対して、チームワークの勝利といっていい。

勝利者インタビューを終えた彰俊と笑顔で再会の握手。


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それと、もうひとつ。

真壁が自らのキングコング二―で沈めたケアに対して、

メッセージらしきものを送っている。

  

「ケアよ、これだけの舞台でやられて悔しいか? てめらよ、ケアしてやれよ。

これが本当のアフターケアだよ(笑)」


ジョーク混じりながら、なにかメッセージ性を感じる。


第8試合も注目だった。

佐々木健介&秋山準の超実力派コンビに対するは、

高山善廣&大森隆男の復活ノ―フィアー。

『ALL TOGETHER』だからこそ、あり得ない顔合わせが現実のものとなった。


これも試合を控えたバックステージでの話。

第5試合終了後、ライガー組のコメントを取材したあと、

コスチューム姿の大森とバッタリ。

緊張の面持ちだった。


「あ、今日はもう隆男さん一筋で解説しますからね!」


「もう金沢さん、いきなり試合前からボクのテンション落とさないでくださいよ」


私は緊張を解すつもりで話し掛けたのだが、大森には苦笑いで切り返された。

そこへやってきたのが、敵チームの秋山と健介。

反対側の入場口へ向かうところだった。

大森が奥の方へと移動する。

私の声は大きいので、よく通る。


完全に2人には聞こえていたようで、秋山は私の顔を見てニタリと笑った。

そのあと、「おー、久しぶり!」という健介と握手を交わした。

去っていく2人に、「今日はもう秋山、健介組一筋で解説するから!」と追い打ち。


健介が笑いながら控室へ消えた。

と、次の瞬間、壁の向こう側、エレベーターのあるへこみから大男がチラッと姿を覗かせる。

今度は、高山だった。

アチャア~!

すべての会話が帝王にまる聞こえだったわけだ。


「もう今日は帝王一筋で……って、もういいか!

両国がちょっと気になるところですねえ」


「うん、気になるよねえ」


固い表情ながら、頷く高山。

かつて、プロレスとPRIDEのリングを股に掛け藤田と激戦を展開した帝王。

それ以降、高山と藤田は心を許し合える友人となった。


この武道館大会に参加しながら、両国の様子を気に掛けている選手は、

それこそ高山と永田ぐらいのものだろう。


この第8試合には、もっとも因縁とドラマが渦巻いていた。

もう二度と交わることがないと思われていた2人による9年ぶりのノ―ファイアー再結成。

同じくリングで対峙することは不可能と思われていた秋山vs大森の9年ぶりの対決。


さらに、宿命に彩られてきた健介vs高山の歴史。

04年8月8日の大阪大会。

新日本『G1クライマックス』の公式戦。

度肝を抜くような肉体のぶつかり合いを制したのは高山。

だが、試合後、高山は脳梗塞で倒れた。


その2年後、06年の7・16武道館大会で高山の復帰戦が行なわれた。

場所は、ノアのリングに変わった。

高山&健介vs三沢&秋山。

秋山は容赦なく高山を沈めた。


ところが、べつのところにドラマが隠されていた。

じつは、健介が重度の左眼窩底骨折で入院していたのだ。


「無理をすれば失明するかもしれない」


医師の忠告を聞き流した健介は、外出許可をとって試合に臨んだ。

目の状態は誰にも話していなかった。

高山も知らない、相手の三沢、秋山もそれを知らない。

覚悟を決め、高山のパートナーとしてリングに立って闘い抜いた。


試合後、それを知った高山は呆れかえると同時に感動した。


「本当に、素晴らしい大馬鹿野郎ですよ!」


これをキッカケに、この2人の間にも絆が生まれた。


いずれにしろ、試されているのは大森だった。

よくも悪くも、主役は大森。

秋山はあえてノアのロゴ入りタオルを持参して大森に突き付けた。


02年の6・12後楽園ホール。

秋山準vs大森隆男が、大森にとっての米国遠征壮行試合であり、

結果的に、その試合を最後にノアのリングをまたぐことを許されなくなった大森。


9年間の思いが渦巻く。

9年ぶりのノ―ファイアー連携に沸きかえる館内。

一方で、健介vs高山が7年前を彷彿させる打撃戦を繰り広げれば、

秋山と大森も意地を張り合う。


最後は、大健闘の大森を健介がノ―ザンライトボムで沈めた。

コーナーでダウンする大森に握手を求めるように近づいた秋山。

しかし、起こしておいて場外へ投げ捨てた。

そのときの秋山の顔には笑みが浮かんでいた。


これが物言わぬメッセージか?

満足感に満ちた笑みだったように思う。
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高山はノ―コメント。

大森は気持ちの丈をぶつける。


「必然性があれば、ノ―フィアーはまた実現する。ファン、マスコミの人たちの力が必要。

誰がなんと言おうと、プロレス界でオレには秋山が一番燃えられる相手だ」


大森隆男の咆哮、ラブコールは、高山、秋山を動かすのか?

少なくとも私は、ノ―フィアーも、秋山vs大森も、もう一度見てみたい。

試合そのものの激しさでは、この一戦こそベストマッチだったように思う。


いよいよ、セミファイナル。

小橋建太の入場に館内は爆発する。

ある意味、真打ちであり、日本武道館の顔である。

三沢光晴が亡くなったいま、日本武道館=小橋といっても過言ではない。


しかし、正直いって痛々しい。

これが復帰3戦目。

右太ももには何重にもテーピングが施されている。


普通の歩行でも、右脚が辛そうな感じ。

果たして、どこまでできるのか?    


そういえば、東京スポーツ紙では、

「武藤と小橋のダブル・ムーンサルトが爆発するか?」という煽り記事も目にした。

できるわけがない、と思っていた。

07年12月の復帰戦以来、一度も飛んでいないのだ。


パートナーは武藤敬司。

先述した東スポの記事を読んで思い出したのは、20年も昔の話だった。

小橋がジョニー・エースとタッグを組んでいた頃だから、91年の春から夏にかけて。


私が『週刊ゴング』の新日本担当になる直前で、遊軍記者だった時代。

新日本の会場で、武藤と話していて、キャリア2年余ながら売り出し中の小橋の話題となった。


「小橋っていう選手はいいよね!

だけど、彼はムーンサルトをかなり使っているでしょ。

あれは確実に膝を壊すから、乱発しないほうがいい。

オレみたいに膝が壊れる前に、考えたほうがいいよって伝えてやってよ」


私は、武藤からのメッセージをそのまま小橋に伝えた。


「武藤さんがそう言ってくれたんですか?

心配してアドバイスまでいただいて、ありがとうございます!とお伝えください。

でも、もうとっくにボクの膝も壊れていますんで(苦笑)」


おそらく、こんな昔の話は武藤も小橋も覚えていないだろう。

ただ、他団体の選手のことを武藤が気遣うことなど珍しい話だから、

私はよく覚えているのだ。


小橋に続いて、武藤の入場。

この試合で、私は解説についていなかったから入場シーンはよく見えなかった。

だが、当日深夜のテレビ放送を観て、少しばかり驚いた。


武藤の表情が険しい。

いつもとはまったく違う。

そこにスーパースターを自負する天才の余裕の表情はなかった。


5カ月ぶりのリング、試合に不安があるのか?

いや、武藤に限ってそれはないだろう。

それは覚悟の表情に見えた。


小橋のコンディションは厳しい。

ならば、自分が動く。

自分が動いて、小橋につなぐ。


同時に、武藤敬司なりの禊(みそぎ)のリング登場にも思えた。

スーパー・ヘイトこと平井伸和選手の事故が起こって以来、

負のスパイラルに陥ってしまった感もある全日本。


事故への対応が遅れた結果、その責任をとって社長職を辞任した武藤。

同時に、東スポに対する”取材拒否”宣言もあった。

さらに、和田京平レフェリーの退団騒動が拍車をかけた。


バッシングとはいかないまでも、武藤に対する風当たりは強くなった。

いちレスラーとして、名誉挽回するためには試合で見せるしかない。

禊のリング。

その証が覚悟の表情。

私は勝手にそう解釈した。


その結果、セミのタッグマッチは予想を遥かに超えヒートした。

もちろん、対戦相手が最高にハマったこともある。

矢野通と飯塚高史。

手負いのレジェンドに対して、容赦なくラフ攻撃で攻めていく2人。

これぞ、プロの仕事だろう。


終盤、武藤がムーンサルトで舞った。

これで終わっても十分な内容だった。

ところが、その後にハイライト、サプライズが待っていた。


小橋も宙を舞ったのだ。

もう武道館はお祭り騒ぎ。

両国周辺の隅田川花火大会がクライマックスを迎えるころ、

日本武道館でも豪快な花火の2連発が打ち上げられた格好だ。


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まさに、千両役者。

武道館が”コバシコール”一色に染まる。

見事なフォローを見せた武藤もさすがだった。


終わってみれば、3大王者が顔を揃えたメインイベントも食った。

それが率直な印象。

ファンの大多数もそう感じたのではないか?


もちろん、メインにはセミでは表現できない闘いがあった。

諏訪魔vs杉浦、潮崎vs中邑、棚橋vs中邑の激突は今の激しさを表現していた。

そこで、KENSOの存在をどう見るかが、難しいところ。


全日本ファンなら、KENSOワールドを理解して楽しめる。

だが、KENSOのキャラを知らない観客は戸惑うばかり。

実際に、テレ朝の放送席でゲスト解説を務めていたライガーが急に言葉少なになった。

本人曰く、「爆発寸前」だったらしい。


ただし、KENSOがメインに加わった時点ですでにイレギュラーなのだから、

この結末もやむなしだろう。
                                                                                                                                

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最後に、自然発生的に沸き起こった「プロレス、最高!」の大コール。

闘いがあって、お祭りがあって、ネクストを予感させるドラマがいくつか生まれた。


そして本当のネクスト(2012年2月19日、仙台サンプラザホール/第2回『ALL TOGETHER』)

の開催も発表された


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2011年2月20日、仙台のプロレスファンから

プロレス復興への熱気と勇気をもらったプロレス界。


今度は1年越しの恩返しをするために、

勇気と希望を携えてこちらから出向いていく番である。








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23 ■無題

仙台大会待ち遠しいです。プロレス最高!!

22 ■29061

小橋選手の復活を強く望む声に正直あまり・・・と思ったこともありましたが、彼のムーンサルトをみて感動してしまいました。

また、さりげなく高山さんがコメントされてるので叶うなら大会後のコメントなんか聞いてみたいです

21 ■無題

ノーフィアー×テンコジが見たい

20 ■無題

棚橋というレスラーの凄さの一つは
リングの上で自分のためでなく
ファンのために泣けたことなんでしょうね。

本来はプロが泣いちゃいけないのかもしれないけど
その意味を納得させる行動をとりつづけてきたので
違和感を感じさせない。

同じピープルズレスラーでもある真壁は生き様に
自分の姿を投影させたくなる存在で、
棚橋はその身を全てを預けてしまいたくなる存在。

彼が愛してますと叫びはじめてから
ブレづにその立ち位置に居続けたことが
言い過ぎかもしれませんが
この興行を復興プロレスとして成立させたと思っています。

長文失礼しました

19 ■無題

高山選手のコメント素晴らしいですね。

18 ■無題

武道館行っていました。
本当に行って良かったと心から思いました。

見所満載でしたね。
武藤・小橋組、復活ノーフィアー、昭和新日トリオ再結成…

メインの諏訪魔選手が良かったです。
初となる中邑選手、杉浦選手とのコンタクトは見ごたえありました。
今後が見てみたい、そう思いました。

本当に素晴らしい大会でした!

金沢さんのブログ、ゴング読者であった者としては巻頭記事を読んでいるような気持ちになりました。
きっとゴングがあって金沢さんが編集長ならこういう巻頭だったんだろうなぁと。

17 ■更新お疲れさまです。

読みごたえありすぎました(笑)


いろんな名場面が生まれたALL TOGETHERですが武藤&小橋のWムーンサルトは圧巻でした!解説のライガーさんが興奮しまくってましたよね(笑)



僕も秋山と大森の再会に期待してますが、
諏訪魔vs杉浦のシングルも見たいです!

16 ■無題

初めてコメントさせて頂きます。

金澤さんの長文、最高ですよ!金澤さんのブログを読んでるとゴングの巻頭を思い出しますよ!

15 ■無題

武藤選手と相対しても引けをとらない飯塚選手のデカさに驚きましたね。
ムタ対飯塚見たい!って思ってしまいました。

14 ■無題

武藤の小橋への、ムーンサルトの話し覚えてます。
あれ、金沢さんだったんですね!

バックステージの裏話しはブログならではで、それは嬉しいんですけど、そうじゃない、仕事モードの金沢さんの文書が読みたくなりました。

13 ■オイシイトコ全部頂きます。イヤー!

武藤敬司の凄さを思い知らされたオールトゥゲザーでした!
バットインテンションズやテンコジ、邪道外道などタッグのスペシャリストと自他共に認めるタッグチームは過去現在いますが、タッグマッチをスペシャルな空間に出来るプレーヤーは今のプロレス界で武藤さんが一番だなと思いました!!
2006年の1.4で蝶野さんと組んでテンコジとやった時もオイシイトコ全部頂いていきましたよね!
ムーンサルトを喰らわした後にすぐさま小橋を指差した時は本当にシビレました!
オレオレの武藤さんがタッグ屋を自認するのが今回本当にわかりました!

武藤敬司のブログにコメントすりゃいいじゃん的内容ですいません!

ちなみに自分はPPV観戦したんですが、金沢さんが解説された第三試合で金沢さんの解説する声を聞いて初めていつもの実況席が帰ってきたと感じました!
実況席も言葉少なになるくらいの会場の熱気があったんでしょうね!
オールトゥゲザー解説、取材、今回のブログ全てにおいて金沢さんお疲れ様でした!

帝王の頑張りにも感動したぞ!
ノーフィアーッ!!

12 ■やっぱプロレスって最高!

GK様!


お疲れ様です!


ALL TOGETHER最高でしたね。


それぞれの試合に意味があり素晴らしかった


僕はつい32年前の「東京スポーツ新聞社創立20周年記念 プロレス夢のオールスター戦」をダブル部分あります。

当時はTV局の関係上放映されなかったですね。


ジャンボ鶴田、藤波辰巳、ミル・マスカラスのトリプルドロップキック!!

んで今回は

船木、ライガー、佐野がトリプルドロップキック
諏訪魔、棚橋、潮崎がトリプルドロップキック

が炸裂しました。


武藤、小橋VS矢野、飯塚戦

まるで馬場、猪木VSシン、ブッチャーの様な感じですわ。



プリンス・デヴィット、 田口 隆祐
鈴木鼓太郎 、中嶋勝彦、KAI
VS
金本 浩二、稔、 金丸義信
KENTA、平柳玄藩

これはカードを見た瞬間オチは平柳って感じで
もう最初から最後まで平柳でした。

ノアのジュニア選手のレベルの高さには何時もびっくりで面白いですわ。


来年仙台決まりましたね。


僕も何度かこのブログで2.20新日本仙台大会で棚橋が防衛し最後、花道下がる時に女の子を抱っこしました。

その女の子は今どうしているだろう?


と棚橋の試合を観ると何時も思い出します。

来年の仙台大会、再び会場に来てくれたら良いなって思っています。


そうだ!

来年の仙台大会はファン投票にすれば良いんだ!

GKさん!

どう思うでしょうか?


これは僕からの提案です!


僕的には小橋VS中西絡みをまた観てみたい・・・

中邑・タイガーマスク・中嶋勝彦 VS鈴木みのる・KENTA・飯伏幸太絡みとか・・・


いや~きりがないですね。

如何でしょうか????

11 ■無題

仙台で開催する際はみちのく勢も参戦していただきたい(おそらくするでしょう!)ですね。それにしても金沢氏の文章の素晴らしさにただただ感動しましたよ(^^)

10 ■必死さ

素晴らしい内容で、ブログの域を超えていますね(笑)

今回、武藤と小橋の覚悟が半端じゃないなと思いました。
被災地に向けてという意気込みよりも、自分対プロレスといった感じで二人の必死さが印象的でした。
しかしそれがかえって被災地を勇気づけりのかも。
若手やメインの6人は余裕がありましたが武藤、小橋には全くそれはなかったでしょう。
三銃士&四天王世代で一番引退が早いだろうと言われていた二人。
しかしこの二人が残り今もプロレスの夢となっている。
結局武藤と小橋が一番プロレスが大好きだったのかなと思いました。

メイン後の風景を見たら棚橋は現在日本で一番のプロレスラーなのだと再確認しました。

9 ■こんにちは。

いつも楽しく拝読させていただいてます。
今回は「長い!」とは感じずに読めました(苦笑)。
金沢さんならではの視点でのALL TOGETHER、心に響きました。

第2弾も成功しますように、僕たちファンも強く願ってます!

8 ■無題

今回は特に読みごたえありました(笑)

日本武道館に行きましたが、本当に素晴らしい大会でした!!

始まりの丸藤の登場から最後のFUNKISTのライブまで最高の盛り上がりで大満足でした!!

初めての武道館でしたが、あそこまで入るなんてびっくりしました!

空席がなかったですね。


来年には2弾が仙台で開催されるんで楽しみです。

7 ■もうこれはねぇ。

雑誌にしてください。(笑)
PCで読むと疲れます・・・・。

無料で読むとなると悪いように思います。
できれば後追いでIGFも書いてね。雑感でけっこうですから。

6 ■ありがとうございます

金沢さんの著書で本格的にプロレスにのめり込んだ私にとって、このブログの存在は本当に嬉しいです。

でも、金沢さんの素晴らしい記事の余韻を奪ってしまう高山さんのコメントも最高ですね。

5 ■おつかれさまです

まるで、週刊ゴングの巻頭記事を読んでるかのような、読みごたえです。

ありがとうございます。

ブログの域を越えてます。

最高です。

VIVA GK!

4 ■長い!

確かに長い。

でも、読みごたえがあるので満足できます。


(高山選手のコメント、お見事)


様々な人間ドラマが舞台裏にあったのですね。

3 ■長い!

物凄く長い!(笑)
しかしこれほどの渾身の長文をブログで読める幸せも感じております。
私は両国大会はニコニコ動画で武道館大会はG+で見ましたが、両方とも楽しめました。
ただどちらがトータルで楽しめたかと言えば両国大会でしたね。私はタッグマッチよりシングルマッチの方が好きなので。

2 ■長文お疲れサンです

自分のトコロだけ、頑張って読みました。

1 ■さすがプロ!

金沢さんの文章は量質ともに最高です!
ベストバウトはやっぱりセミですよね! もちろんメインも最高でしたが。

プロレス最高!

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