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金色の化け物を従えた少年の前に、悠然と女は立った。
「私は君を槍の伝承者とは認めない。」
その女、関守日輪が言った――
昨日、塾生の山本くんと一緒に、シアターOM主催の舞台『うしおととら』を観劇して来た。
山本くんが前回公演で無料招待券(ペア)を手に入れていたため、そのおこぼれに与った形で。
僕にとって、今回で二度目となる『うしおととら』の舞台。
「うしとらプロジェクト」と名付けられた本舞台は、漫画『うしおととら』を第1巻から時系列通りに完全に舞台化する、という何とも無謀と言うか、思い切りがいいと言うか、とにかく僕のような原作ファンにとっては無視できない舞台なのである。
思い返せば、一番最初の公演(「うしお とらと出会うの縁・石喰い」と「絵に棲む鬼」の二本立て)を観てから、もう今年で四年もの月日が経ったのに、進行具合は未だに原作コミックの9巻目くらい。
結末は随分先のことのように思えるが、今回の公演からやっとこさ、原作でも人気の《獣の槍伝承候補者編》に突入した。
物語は、ここから加速度的な盛り上りを見せ、後の展開には欠かすことの出来ない名物キャラクターが数多く生まれ、主人公の成長、最後の敵『白面の者』との因縁、潮が操る魔槍“獣の槍”の謎……等々が描かれる。
この原作の人気を決定着けた章、それを土台にしているのだから面白くないはずがない。
物語の本筋は当然のこととして、時にコミカルでもあり、時にシュールでもあり、時にシリアスでもあり、藤田先生から舞台版の全てを託された稲森代表(とら役)の独自の解釈、舞台ならではの演出が冴えまくっている。
特に、殺陣のシーンの光と音の演出が抜群で、思わず「おお!」と拳を握ってしまう場面もしばしば。
そして、今回のもう一人の主役、“獣の槍伝承候補者”の一番手『関守日輪』が凄く良かった。
演じるのは、客演の『御意』さん。
見た目は原作のビジュアルそのまんまで、日輪の男勝りな部分、女性らしい凛とした部分を巧みに演じ分けていた。
映画やドラマに於いて、漫画のキャラクターを役者さんが演じているのを見ると、どこか薄ら寒いというか、冷めた感覚を抱いてしまう節がある。
それは、作品の出来不出来に関係なく、誰もが抱く感覚だろうと僕は思う。
が、映像とは異なり、演劇となると少々話は違ってくる。
自分の目の前で、生の役者さんがキャラクターに血の通わせ、言葉を発し、互いに熱をぶつけ合い、躍動的に舞台上を駆け回る姿……実に美しい。
今回の公演を観て、改めて舞台の素晴らしさを実感するとともに、演じる人間と観る人間の両方を魅了して止まない、『うしおととら』という漫画の偉大さに感服した。
それにしても、何か悔しい。
メチャクチャ面白い舞台なのに、キャパ80人程度の劇場だけで公演するなんて。
出来ることなら、もっと大きな劇場で公演して欲しい。
そうすれば、演技もダイナミックに出来る。
スクリーンなどを使えば、視覚効果を利用して演出の幅も広がる。
ワイヤーで役者さんを吊れば、アクロバティックな殺陣も可能だ。
この願い、いつか実現しますように。
さて、次回公演は早くも来週、今回の日輪に続き、“獣の槍伝承候補者”の一人『秋葉流』の登場だ!
「ああ…なんだ…風が…やんだじゃねえか…」
この名言が飛び出すのは、一体何年後のことだろうか?