お客様からのオーダー。
今回は彫金作業。
二匹の蛇が絡み合ったスネークリング。
蛇のウロコが途中までしか入っていないため、裏側まできちんと入ったリングにしたいとの事。
とても細かい作業で、彫るための毛彫りタガネがどれもサイズが大きすぎたため、まずは毛彫りタガネの購入。
そして今まではリングホルダー(リングを万力に固定するための器具)が無く、全てヤニ台(松ヤニを四角い穴を開けた材木に入れてバーナーで温めて柔らかくし、リングを半分埋め込んで常温になり固まったら作業する)で作業していたが、今回は彫りながら徐々に回転させて作業する必要があったため、リングホルダーと、万力も購入。
まずは、リングが正円ではなくつぶれていたので、芯金に通して正しい円に修正。
リングホルダーに固定し、それを万力に取り付ける。
新品の毛彫りタガネで彫刻開始。
タガネをこのように持ってタガネのアタマを金槌で軽く叩きながら彫り進む。
黒い部分とその両脇に見える金属の部品がリングホルダー。
万力で挟んで締め付けると黒い樹脂の部分が膨らみリングが固定される仕組み。
万力を緩めると、リングは回転させる事ができるので彫り進めながら回転させる。
虫眼鏡が欲しいくらいだが、あまり好きではない。
一応アタマからかぶって使うタイプの拡大鏡があるのだが、ほとんど使った事はない。
まずは縦に2本の線を入れる。
既に中心には太い線が1本通っているが、これは2匹の蛇の区切り。
縦の線が彫れたら、万力を90度回転させてリングを横向きにセット。
タガネを寝かせる角度で太さが決まるので、角度に細心の注意が必要。
ちょっとでも立て過ぎるとタガネの先端がシルバーにもぐってしまい、線にならないどころかどんどん太い跡を残してしまう。
この状態ではまだバリがたくさん出ている。
彫る事でその両脇には彫られたシルバーのくずがササクレ状に盛り上がってしまうのだ。
これをサンドペーパーで丁寧にならしていく。
もちろん粗い目からだんだん細かい目に切り替えていき、最終的に2000番で整える。
この時点で、もうシルバーはビカビカに輝き出す。
せっかく鏡面の状態になったリングを、今度はいぶし処理。
中性洗剤で洗っていぶし液を除去する。
真っ黒なリングになる。
青棒という研磨剤を塗ったバフで研磨。
元々入っていたウロコとの境界がわからなくなるようにするには、元々のウロコと同じテクスチャ(模様)の仕上がりにする必要があるが、まずまずだ。
ため息とともに全身の力が抜ける瞬間。
いぶし処理は、磨けばいくらでも落とせるが、また黒くするには再度液に浸ける必要が出てしまう。
磨くのはお客さんでもできるが、いぶしは液が無いとできない。l
だからあまり黒い部分を落とさないように磨いて納品する事にしている。
気に入ってもらえるだろうか。
作業工賃 \4,000也