「あとは緩和」といわれたら

- 診察室からの独り言,その他いろいろ −


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当院で肺がんの多発肺転移(病期IV)の治療を開始してから
5年が経った85歳の患者さんがおられる.

以下,患者さんの息子さんから聞いた話.

5年前,
某総合病院の若い呼吸器科の医師が担当だった.

高齢のため,何もしない(=抗がん剤治療をしない)で
自然に任せるという治療方針になった.

担当医師は,何か治療をと画策していたようだが,
カンファレンスで“何もしない”方針となった,
と本人に告げた.

医師も組織の歯車の1つとして機能しなくてはならない以上,
呼吸器科全体としての決定は致し方がない.

『何もしてあげられなくてすみません』と当時,
その医師に申し訳なさそうに言われましたと.

その後,『縁』あり,
当院にて低用量抗がん剤治療を始めることになる.

当院での治療開始から,
なんやかんやで5年が経過した.

そして,
がんと上手くお付き合いしながら85歳の誕生日を迎えた.

そうした中,先日,別件で救急外来を受診したところ,
たまたま,当時の主治医が,

本人を見つけて駆け寄ってきた.

『驚いていましたよ』と,息子さん談.

まぁ,そうだろう.
普通なら,既に鬼籍に入っているはずの患者さんである.

低用量抗がん剤治療により
高齢でも上手くがんと付き合ってここまで来た.

こういった症例を
多くの医師が目にする機会が増えることで,

世の中,少しずつでも変化していかないだろうか…