「あとは緩和」といわれたら

- 診察室からの独り言,その他いろいろ −


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さて,
当院で行っている低用量抗がん剤治療.

“どのくらい効きますか?”

と聞かれることがある.

それはそうだ.

自分が受けるであろう治療に
どれくらいの“確からしさ”があるのかは
知りたいところだし,重要事項だ.

結論から言うと50%.

2人に1人と答えている.

あと,当院の“効く”は疾患制御を意味する.

疾患制御の状態とは
腫瘍の消失+腫瘍の縮小+腫瘍との引き分けを合わせたもの.

その内訳は,
腫瘍消失は非常にまれ,縮小は8~10人に1人,
残りが腫瘍との引き分け・おつき合い.

そして,治療効果発現率は原発臓器によりバラつきアリ,

肺がん,乳がん,婦人科がん あたりは成績は良い.

胃がん,膵臓がん,胆嚢がん,肉腫系は
症例自体がさほど多くはないが,治療への反応は悪くない.

大腸・直腸がん,その他のがんはまあまあ.
肝臓がんは症例が少なく評価不能といったところ…

押し並べて治療効果発現率を50%〜としている.

たぶん,
最近は手技も安定してきたため,
治療効果発現率は50%より高いと感じてはいるが,

あえて,これ以上治療成績を“良く”提示はしない.

なぜなら,
仮に90%“効く”という治療が存在したとして,
実際の治療で効かない10%に入ってしまった患者さんにとって
90%という本来魅力的な数字は何の意味も持たない.

“個人”の治療においては“効くか効かないか”の“白か黒”しかない.

だから,治療成績を50%としている.

実際の治療成績が仮に60%だとしても,
50%を60%に書きかえる理由は無いと考えている.

さらに,言及するなら,
「あとは緩和」といわれた患者さんに分け隔てなく

行える治療で,疾患制御が50%の確率で得られる治療が他に

存在するか?となると,他には存在しない.

50%という数字そのものは医療者からみたら
驚きの数字といえる.

その驚きの数字に
たかだが10%~の上乗せを加えて

60%の表記したりすることに,
疾患制御率が100%にでもならない限り,

さほど意味は無いと考える.

あと,疾患制御の持続期間は?
どのくらいの間効いているの?

という,予後に直接関係してくるこの数値も
おおよその“数字”は持ち合わせている.

但し,患者さんからの強い希望がない限り提示はしない.

なぜなら,“数字”は見る者によって評価が変わる.

先の疾患制御率50%という数字も,ヒトによっては
“2人に1人しか効かないのか…” と思うだろう.

低用量抗がん剤治療の疾患制御期間の中央値(≒平均)も
医療サイドから見たら少し驚きを持って評価される数字だろう.

当院には,何年もがんとおつき合いしている

患者さんも少なくない.

その反面,
病状コントロールがつかない患者さん.
病状コントロール期間が短い患者さんもおられるのも事実.

いろいろな病状・状態の患者さんのデータの集積から得られた“数字”は
患者さんサイドから見た場合,
医療サイドとはまた違う感覚でその数字を見ることになる.

患者さん個々が,
良いと感じるのか,妥当ととらえるのか,がっかりするのか…
そこはわからない.

だから,
こちらから積極的に疾患制御期間を提示しない.

“希望する患者さん”にのみお教えすることになる.