戯曲本舗所属
劇作家・松森 圭 インタビュー 「こういう私と、こういう私」
(聞き手:清水幹王)


清水:作品を書く時にアイデアはどこからくるんですか?

松森:私の場合は、作品を書く前に、まずはキャッチコピーをつける。
こういう雰囲気の話をつくると決めて、そこから執筆に入る。
そして話の始まりと終わりを書いて、戯曲本舗のネタ会議でフィードバックやアドバイスをもらって、中身を肉付けしていくことが多い。ネタ会議では、自分で思いもしていなかった箇所を伏線ととられることもあるので面白い。自分でも、もやっと感じていた部分を、メンバーの皆が的確に言葉にして言ってくれる。

『おこめのおいしい炊き方』は、最初『おこめつぶの気持ち』というネタだった。主人公は保母さん。白い服を着た園児達が集まって体育座りをして、皆で左右に揺れている。びっくりした保母さんが「何しているの?」と聞くと、園児達は「おこめしてるの!」って言う。このシーンを導入として、それぞれの家族の葛藤を書こうと思っていたが、そこで筆が止まり、そこからぜんぜん違う話にシフトしていった。

私の場合は、作品を書く際に、必ずしも自分自身や周りの人間を反映させているわけではない。自給自足というか、自分の読みたいものをピンポイントで書いてくれる作家がいないから自分で書く。登場人物の全員が自分。こういう私と、こういう私がいる。

清水:「祭り」企画参加作品『無名(74)』では、具体的な状況の提示はしていない。でも空気感を感じさせる。

松森:説明台詞を入れれば一発だが、そう言葉にしすぎるのは、無粋だと思う。なるべく場面と会話のやりとりだけで、どういう状況なのか、この人物がどういう人物なのかを、読者に感じさせたい。ぼやけすぎるのも問題だが、そこの調節がうまい具合にできているといいな。

清水:戯曲を書くようになった経緯は?

松森:高校で演劇部だった。ある時、部活内でオリジナルの戯曲でやろうという話になり、私が執筆することになった。書いてみたら楽しくてね。自分で表現することはやっぱりいい。悶々としているものを吐き出せるし、それに承認欲求が激しい私にとってもね。演劇部の中で「いいね」と言ってもらえて、さらに、それを上演して発表しようというところまで持っていってくれるのは、私の中で革命的な出来事だった。嬉しくてね。

清水:戯曲=台本は、台になる本と書く。これが土台になって、俳優やスタッフも創作していくという…

松森:やめてくれ~! 私はなんてことをしてしまってるんだ~!
大学の演劇専修に入学したのも、戯曲を書きたかったから。でも周りの学生達の目がキラキラしていたんですよ。アルバイトもそっちのけで、何を投げ捨てても、やりたいことに真摯に打ち込む目。私も、もちろん演劇をやりたくて入ったわけだけど、やりたいことは演劇だけじゃなかった。趣味もそこそこあったし、自分の時間も大切だった。家で漫画を読むのが好き。それに人と付き合うにもお金がいるから、アルバイトをしていた。
すると、大学内の演劇活動に時間をあまり費やせなくなる。そんな中、キラキラして頑張っている人達の目を見ていたら、いたたまれなくなり、どんどん落ち込んできちゃって、だんだん通わなくなって、フェードアウトしました。大学をやめても戯曲は書けると思った。家でも書ける。

清水:戯曲本舗に入ったのは?

松森:私が大学1年生の時、私もここで輝くんだ!と思っていた時期に、戯曲本舗主宰のサカイリさんとひきださんが当時4年生で卒業研究をしていて「メンバーを募集します」と宣伝に来たんです。私は戯曲を書いて、誰かに渡したい。だから戯曲本舗は打って付けだと思い、すぐさま名乗り出て入れてもらったんです。今思えば、怖いもの知らずだったな。主宰のお二人は、上下関係や壁をつくらない先輩方だったから、この方達になら突撃できると思った。

私が大学をやめた頃だったかな…、一時、戯曲本舗からもフェードアウトしたことがあった。フェードアウトしても、こういうのが書きたいというアイデアは書き溜めていた。それから2年が経ち、戯曲本舗が5周年企画で、ひきださん作の『枕に帰す』を上演することになり、サカイリさんから「元気ですか?音沙汰なくて心配しています」というメールがきた。戯曲本舗のサイトを見たら、私の名前とプロフィールがまだ載っていた。私が消えてないと思った。嬉しかった。私の中の作品を書きたい気持ちもなくなっていなかった。

公演を観に行って、泣きそうになった。これまで戯曲本舗はドラマリーディングの活動しかしてこなかったけれど、ちゃんと外部の演出家がついて公演というかたちになっていて、すごく面白かった。作者のひきださんらしさもすごく出ているけれど、他の人の演出がつくことでぜんぜん違う作品になっていると思ったし、普通に演劇として良かった。戯曲本舗すごい!ここまできたんだと思って、そこにいない自分を悔やんだ。終演後は、メンバーとの感動の再会ですよ。会場のお客さんもびっくりなくらいにね。

私、そうとう面倒くさい女なんですよ。私、基本的に世界中の誰からも嫌われていると思っているんで(笑)。でも一方では、そんなわけねえ、誰からも好かれている!と思っている。めちゃめちゃ自意識過剰な自分もいる。でも、自意識過剰な面がないと、こんな活動もしていないと思う。自分は表現してますよって、人に見せるわけだから。

清水:キャッチコピーも「こじらせ系作家」となってますよね。

松森:あ~、ごめんなさ~い。だから戯曲見本市でのオリジナル・ドリンクも自分から提案しちゃうわけですよ。びくびくしながら。一方では、どう私、こんなの考えたよ、頑張ったよ、みたいな。やだぁ~、ちょー恥ずかしいですね。


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