犬婿入り | ギッコンガッタン 

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日々、気の趣くままに綴る雑記帳

 

 

 92年に芥川賞を受賞した「犬婿入り」と「ペルソナ」の二中編が収められている本です。内の納屋で見つけた本で何となく読んでみました。最初に入っていたペルソナは、弟ともにドイツ・ハンブルグに文学研究のため滞在している道子の話です。多民族的なハンブルグの世相とその中で外国人から見た日本人の正体が知れない感覚を押し付けられて悩む道子の様子が描かれます。なんともシュールな感じの構成で外国が舞台である故か、自己のアイデンティティーを考えさせられてしまう面白い作品です。ハンブルグに10年くらい住んでいた筆者の経験からきている作品でしょうか。

 

 表題作の犬婿入りは、どこかの民話がベースになっていてこれを現代の日本に置き換えた作品です。主人公は、とある団地のあたりで自分の家でそのまあ塾を開いている30代の北村みつこです。団地内の親には、キタムラ塾と言う名前が独特の大雑把なキャラクターのせいかキタナラ塾と言われながらも親しまれてはいます。ある日、彼女のもとに20代の男性が強引に押しかけてそのまま同居してしまいます。ある時、その男性が塾に行っている生徒の知り合いの夫とわかるのですが、結末やいかにです。これもなんともシュールな感じでそして驚かせるラストが印象的ですね。