「違う名前」(前編)

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 前置きとして知っておいて欲しいのですが、確かに私は体育が苦手でした。
苦手で嫌いでしたが、小学校二年の時の水泳以外は、
決してさぼろうとか思ったことはありません。
きちんと真面目に授業を受けました。
しかし、はっきり言って体育の教師だけは、ただの一人も好きにはなれませんでした。

 私が入学した高校では、二年から大学の志望校別にクラス分けがされていました。
A組からE組が私立文系、もしくは理系志望、私のいたF組が国立理系志望、
G組からI組が国立文系志望組と言うふうに。

 当然、途中で志望が変わる人もいるし、
さらに成績順でクラス変更もあったらしいのですが、
F組だけは誰も志望を変えたりもしなかったので、
二年から卒業までクラスメイトも担任も変わりませんでした。

 そこで、体育の授業なのですが、一番男子の多いうちのF組と、
一番男子の少ないその前のE組が合同で行われていました。

 E組と言うのは、実は成績順で一番低い人と、
大学を志望しない人で編成されていましたから、言わずもがな、
やはりガラの悪い男子が多かったのです。

 ちなみに中学の時からの私の親友がE組になった時には、
私は「頼むからがんばって前のクラスに入って」と言ったものです。
朱に交われば赤くなる、の言葉のようにE組の荒れようはひどくなって行くばかりでしたから。

 違反の変形制服はもちろんのこと、
ついには他のクラスの生徒に「目があった」と言う理由で喧嘩をふっかけ(しかも授業中に)、
流血事件も起こしました。

 しかし、二、三年にかけてE、F組の体育を担当した体育教師Kは、
そんなE組の男子がことのほかお気に入りだったようです。

「どうせお前らはこんな体育より、数学や化学とかをしたいんだろ?」
「俺も昔はE組の連中みたいだったからな、お前らみたいなのは嫌いだ」
「お前らなんかよりE組の方がよっぽどまともだ」などと、
ことあるごとにF組の私達に言いました。

 更にはE組の男子はきちんと顔と名前を覚えて、苗字で話し掛けるにも関わらず、
F組の男子にはすべて「お前」で済ませていました。
もちろん、体操服の胸には苗字の書かれたゼッケンがあるにも関わらず。

 それでもF組の男子の中でも体育の得意な子もいれば、
運動部でがんばっている子もいたわけで、クラス替えが無かった分、
三年になった頃にはF組は結構結束して、
そういうKの嫌がらせじみた言動にフォローしあっていました。

 しかし、Kはそれがまた気に入らなかったのか、彼は行為を悪質にして行きました。

 それはラグビーの授業が始まってすぐの頃です。

 グラウンドで体育座りをしたE組とF組の男子の前に立ち、
ラグビーのルールや用語を説明していたKは、「じゃあ実際にやってみるぞ」と言いました。

 そして、私と、同じクラスで私と同じくらいの身長だったS君を指差して、
「どーせお前ら、体育なんかしたくないんだろ。旗の代わりに目印に立ってろ」
と前もってマークしてあった地点を示しました。

 S君は素直に「楽ができる」と思ったのか、喜び勇んで行ってしまったのですが、
私は正直「はあ?」と思い、すぐには足が動きませんでした。

 だって、それは教師が「授業に参加するな」と言ってるわけですから。

 しかし、そんな私の様子を見て、Kは面白くなったのか、「はよ行けよ、コラ」などと言い、
まるで犬を追い払うかのような態度を私に取りました。
更には持っていたラグビーのボールを、私に投げつけようとしました。

 そこで仕方なく私はKの言う通り、ラインのひかれたポイントに立ちました。
そしてS君と私を旗代わりにして、ラグビーの授業は再開され、
それは10分か15分ほど続きました。

 そしてKはにやにやしながら、
私とS君に「授業に参加したいか?」などと話し掛けてきました。
私は無言で授業に戻りました。

 しかし、Kの嫌がらせはそんなことでは終りませんでした。

後編はこちら。

。。。。。

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