ジェイムズ・アラン ガードナー, James Alan Gardner, 関口 幸男
ファイナルジェンダー―神々の翼に乗って〈上〉

タイトル(邦題)は「ファイナルジェンダー」なんてなっていますが、
実際はジェンダー(性役割)ではなくて、肉体的な性別のことなのですが(^^;。
それに対する罪悪感のせいか、
表紙にある邦題と原題の字の大きさは同じだったりします(笑)。

正確な分量はともかくとして、前半部分は異世界ファンタジー、
後半はSFによる種明かしってところでしょうか?

多くの異世界モノによくあるように、その異世界に対する描写、観念、慣習、
時代背景の説明等がかなり細かくて、親切にも何度もくり返してくれるので、
前半は物語を読み込むことに苦痛を感じますが、逆にその分、
後半に入ると急に、とてもスピーデイーに感じます(^^;。

なにせ、上下巻にも関わらず、物語に描かれているのはわずか二日間のことですから。
分冊にするほどのページ数でもない気がしないでもない、です(笑)。


現在の文明が滅んだ後の未来の地球。
海と森で外界から半ば遮断されたトバー入江には、不思議な風習がありました。
そこで生まれた全ての子供は一歳を越えた夏以降、
毎年一年ごとに肉体の性別が変わるのです。
そして、二十歳の夏を迎えた時、最終的な自己の性別を選択するのでした。
ただ、選択肢の中には「中性」(正確には両性)があるにも関わらず、
その選択はトバー入江からの追放、もしくは村人からの殺害を意味していました。

今年、最終性選択をするのは今は「男性」のフリンと、今は「女性」のキャピーの二人。
当然、同級生で幼なじみの二人はお互いの性別が逆転しようとも、お互いを愛していました。
明日の選択に向けて、今夜はそれぞれ一人で誰にも会わず、
どちらの性別を選択するのか、じっくり考えなくてはいけません。

でも、規則なんて気にしないってタイプのキャピーに対して、
フリンはかたくななまでにトバー入江の風習、伝統を信じて貫こうとします。
まさに盲信です。

そこに突然、見慣れぬ人間が現れます。
ひげを蓄え、同時に豊かな胸を持つ中性のステックと鎧をまとった男、ラシド。

「中性」は排除(殺害)するものと刷り込まれているフリンとキャピーは、
当然二人をそうしようとしますが失敗し、
さらに村の中での自分の立場を危惧したフリンは急いで村に戻ります。
キャピーがあることないことを言うのも心配だし、
村のために伝統のために自分は働いたことを主張したいのです。

しかし、急いで帰ろうとしたフリンでしたが、
途中で「辛辣な巫女」であるリータに出会います。
彼女はちょうど儀式の途中で、フリンにその手伝いを頼みます。
(↑男女二人が必要)

そこにまた追い払ったと思っていたステックとラシドが現れます。
リータと顔見知りだったステック(助手)は、
科学者であるラシドに最終性選択の「儀式」を見学させてくれと頼みます。
科学者自体が伝説の存在になっていて、
科学者=統治者=救世主だったことからその願いは実現されることに。

しかし、それはトバー入江の性選択の風習を崩壊させるきっかけになってしまうのでした。


とりあえずきちんとトバー入江の風習をおさえておかないと、
物語が頭に入ってこないかも。

1.トバー入江で誕生する子供たちは、一歳を越えた夏から毎年、
「烏の巣」と言う神殿で、意識のないうちに性別が完璧に転換される。
(↑ということになっています。ネタバレですが(^^;)

2.子供たちは20歳を越えた夏に、
「男性」「女性」「中性(両性)」の中から最終的な性別を自分で選択する。
(但し、「中性」は村からの追放を意味する)

3.その性別は最終性選択の日の前夜、
湖にしかけた網にかかる鴨の性別で神様からの助言を受ける。
(フリンとキャピーが掴まえたのは、なぜか性器を切り取られた鴨)

4.男女両方での子育ての経験を持たせるため、
子供たちは20歳になるまでに必ず一度は妊娠・出産を経験する。
(なぜかその子供は村人の誰かに似ている)


加えて、村内の権力構造も複雑。

1.村のトップとして村長もいる(主に経営?)が、
過去の救世主(?)だった総大司教の権力を受け継ぐ「総大司教代理」(基本は宗教)がいる。

2.総大司教代理は宗教的な全体のとりまとめ役でもあると同時に、「男性」のトップでもある。

3.総大司教代理に拮抗する立場(同時に「女性」のトップ)として「辛辣な巫女」がいる。

4.前二者(もしくは三者)の意見が対立する場合、主に日常生活をとりしきる、
「父なる灰」と「母なる塵」の二人の意見が尊重される。彼らは「夫婦」のトップ。

他の地域から隔絶しているものの、往来はそこそこあったりするし、
しかし、性別転換をくり返すのはトバー入江で生まれた子供たちだけ。
(もちろん、実際はトリックがあります。)


最終性選択を前にして、フリンはキャピーとの関係、これからの生活、
自分のこれから選択する性別に悩みますが、
笑えるのは「わけのわからない思考」は全て、
自分の中に同居する女性の魂のせいにしてしまうところ(^^;。

そりゃそうですよね、フリンは「神様による性別転換」を信じているのですから。
自分は今年は男性だが、去年は女性だったと信じ込んでいます。
いや、実は全くの勘違いなのですが(^^;。

さらにキャピーはフリン程には神様を信じて無いわりには、
「辛辣なる巫女」の職を継ぐために「女性」を選ぼうとし、
自分のためにフリンは「男性」を選択すると思い込み、それが当たり前だと自分勝手。
しかし、それに反発するようにフリンは、
自分が「女性」を選択して「辛辣なる巫女」になることを考えます。

ただでさえフリンには、キャピーよりも自分の方が神を信じているって自信があるのですから。
キャピーはむしろ、女性のトップとしての権力が欲しいだけじゃないのかと。

ところがここにきて、フリンを自分の後継ぎにするために「総大司教代理」は、
フリンに「男性」を選択するように脅迫してきます。
もし「女性」を選んだら、一生めちゃくちゃにしてやると(オイ)。

仕方なく「男性」を選ぼうか、やはり「女性」を選ぼうか、
いっそ「中性」を選んで村を追放されてしまおうか。
フリンは選択に悩みます。
自分が男性のトップとなれば女性のトップとなるキャピーとの関係も持続できる、
でも本当にそれでいいのか?
自分は男性として生きることができるのか?
中性を選んだ場合、自分が母親として産んだ子供の将来は?

そこに絡んできたフリン自身の出生の秘密。
「中性」を選んだ二人の人物との出会い。
これまで平和だった村で起こった殺人事件。

明かされて行く性別転換の秘密に、
戸惑いながらも最後の最後、完全に秘密が明かされても、
頑ななまでに神様を盲信し続けるフリン。

その盲信はフリン自身のアイデンティティを崩壊させ、
物語は破滅的な結末を迎えます。
その後、最後の数ページは絵に描いたようなどんでん返しで、
何だか急に思いついたようなくだりだなあと思いましたが(^^;。


言うまでも無く、GIDはGender Identity Disorderの略なのですが、
性別とアイデンティティとの関係、ジェンダーとアイデンティティの関係、
愛情と性別の関係などについて考えさせられましたね。

しかし、記憶と感情ってどのくらいリンクしているものでしょうか?
なんてちょっとだけ種明かししてみたりして(笑)。


未来の地球とはいえ、科学文明が崩壊した後なので、
職業は性別によってきっちり区分されている世界での性選択の風習。
そんな中で20歳で一生の性別を選択できるとしたら、
それぞれどんな選択をするもんでしょうか?

しかし、20歳でって言うのは無理があるかも(^^;。
それまでに妊娠・出産・子育ても経験してるんだったら、
既に生まれた子供のこともかんがえちゃうだろうし。。。
数年後とかに選択を後悔する人もいるでしょうね(^^;。

えんじぇるだったら、やっぱり「女性」を選んじゃうかなあ(遠い目)。


ジェイムズ・アラン ガードナー, James Alan Gardner, 関口 幸男
ファイナルジェンダー―神々の翼に乗って〈下〉

↑「烏の巣」にいる神官(?)は頭が鳥。
子供たちは「烏の支配者」(飛行機)に乗り烏の巣に、
20歳の人間は「鷗の支配者」に乗って行きます。

。。。。。

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