「たった一度の運動会」(後編)

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前編はこちら。

 その日、私の住む街のある小学校では運動会が開かれていました。
私はまだ小学校に入学する前でしたし、
その小学校も後に私が入学する所の隣の小学校でしたので、
それは「市民運動会」だったのだと思います。

 朝、母親にしては珍しく、どこかのお店でお弁当を買い、
私たち三人はそのビニールシートを敷いた場所に座っていました。

 三人とは、私と母親と、そしてMさん。
そこにはまるで家族のような暖かさがありました。
実際、隣の人に「ご家族ですか?」と尋ねられて、
母親とMさんは何か困ったような感じの顔をしていたような気がします。

 私とMさんはせっかくだからということで、二人三脚のような競技に参加して、
お昼には三人でお弁当を食べました。
当時からその後も、「お店でお弁当を買う」という考えのなかった母親と、
そのどこかのお店で買ったお弁当を食べた記憶は何か違和感を伴ったものでした。

 やがて運動会は終り、Mさんはどこかへと帰りました。
そう言えば、私は母親の会社以外でMさんに会ったのはこの運動会のみで、
それ以降どこかで会ったことがあるのか、記憶は曖昧のままです。

 ちなみにそれ以降、私の学校生活においては、父親も母親も、運動会や体育祭、
文化祭、ブラスの演奏会等、何一つ応援に来てくれたことはありません。
小学校の入学式に父親が来た以外、入学式卒業式も同様です。
来てくれないことは、いつのまにか私の中では「当たり前のこと」になっていました。

 そしていつだったか、Mさんが内臓のガンで亡くなったことを、
母親から何気なく聞いたのでした。

(終わり)

。。。。。

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