#05 健全な出演依頼。

そもそもM嬢という子はニューハーフとしてお店で働きながらも、
いわゆる女装クラブと呼ばれるお店にもお客として顔を出したりする、
ちょっと変わった行動をする子でした。
(基本的にはタブーです。)

そんな彼女がある日私に差し出したのは、そういうお店で配られていたらしい一枚のチラシ

それは某TV局がある番組の企画として、
ニューハーフ(または女装者)が両親にカミングアウトする様子を撮影したいので、
どなたか協力してくれる方はいませんかというものでした。

当然、まだ両親に内緒にしているニューハーフさんが良いとのことで。

とは言え、その番組を見たことある私には、番組に応募された内容が先ではなく、
大体の企画が先に決まっていて、その条件に会う人を探しているという点で、
なんだか違和感を感じてしまいました。

えんじぇるさんのおうちはどうですか?
M嬢はそう言いましたが、
私は先に両親にカミングアウトしてニューハーフになっていたので、
残念ながらその条件には合わないかなと断りました。

結局、その後放送された番組では、
そのニューハーフの方が先に応募してきたことになっていたと思います。
もちろん、私にはよくわかりませんが、まあ、
そのくらいのことはきっと「やらせ」とは言わないのでしょう。

同時に、わずかなお金でそういう番組に出たりする方の気持ちも私にはわかりませんが、
働いているお店の宣伝を兼ねて、という側面もやはりあるようでした。


お店の宣伝を兼ねての出演ということでは、
その後、私に対して「映画に出ませんか?」という話もありました。

実は私のお店と同じビルの中にあった別のお店のマスターが、
ある映画の制作会社の人とたまたま知り合いだったらしいのです。
そこで、私には何を見込まれたのかさっぱりわかりませんが、
そんな話を持ちかけてきたのでした。

基本的にお酒に弱い私でしたが、
やはり飲んでいる最中は気持ちが大きくなることもあったので、
その話に思わず私は「良いよ~」と軽く言ってしまいました。

以前にも、その映画の撮影にうちのお店が使われたことがあったそうなので、
その場にいたママも、
えんじぇるが出たいなら、宣伝にもなるから良いわよ」と言ったのでした。

もちろん、酔いの覚めた後では多少後悔した私でしたが、
お話自体がマスターのお酒の上でのジョークだろうとも思えたので、
数日後には私はそんな話も忘れてしまっていました。

ところが、それからしばらくして、まだ営業前のお店に二人の男性が現れました。
一人の方は三脚つきのカメラを担いでいました。
彼らはその映画シリーズの制作会社のスタッフで、
ロケハンと私の写真を撮りに来たと言うのです。

私は困りました。
相変わらず見た目にはまるで自信もないし、
そんな大それたことになるとは思ってもいなかったのです。

そこで私はさりげなくやはりお断りしたいという気持ちを彼らに伝えて、
私も出たい」と言い出した同僚のSさん(年上の後輩)を推薦することにしました。

すると、結局彼らはお店の写真とSさんの写真を何枚か撮影して、
一応、名刺を残して帰って行きました。
私は何事も無く帰って頂けたことにほっとしたものです。

ちなみにその映画とは現在でもしっかりと続いてる人気シリーズですが、
どうやら未だにSさんは出演してはいないようです。


TVの番組にしろ、映画にしろ、結局私はどれにも出演したりすることもなく、
私はニューハーフを卒業することになりましたが、今思えば、
概ねそれらはまだ健全出演依頼だと思えるものでした。

しかし、世の中にはあまり健全ではない出演依頼もあるのでした。

(第6話に続きます。)

。。。。。

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