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Sense67

 目を覚ましたのは、昨日と同じ時間帯だと思う。薄ぼんやりとした視界がログハウスの隙間から洩れる光を見た。

「……朝か。朝食作らないとな」

 今朝は、十人分と幼獣五匹分だ。昨日みたいにセルフで焼いて食べてください、なんて方法の食事では使用する食材が偏る。
 今は、小麦粉が使い切れないほど大量にあるのだ。それを有効活用しないと、他の食材だけではどうも心もとない。朝一番で、何が必要か頭で整理しながら、体を起こす。

「小麦粉はある。朝出現するMOBは、鶏だから、卵と鶏肉だよな。あとは……野菜はあるからサラダで、フルーツでも切れば良いか。デザートのゼリーもあるし……」

 立ち上がると、昨日と同じようにクロードが居ない、また徹夜でもしたのか、と思い扉に手を掛ける前に開く。

「……おはよう、クロード」
「ああ、おはよう。そしてお休み」

 それだけ言うと、クロードは、泥のように眠ると表現するのが正しいと思えるほど綺麗にベッドティンバーランド靴
ティンバーランド ブーツ
ティンバーランド
に倒れ込む。ぼふっという鈍い音を立てて、すぐに寝息を立て始める。

「見張り番が辛いなら変わればいいのに、まあ、安心して寝られるからありがたいか」

 そう言いながら俺が外に出ると、トウトビがすでに起きている。短剣を片手に架空の敵を相手にしている。
 右へ左へ、前に後ろに、と移動系センスを利用して、残像を残しながら虚空の一点を短剣で突く。

「朝から張りきってるな」
「おはようございます、ユンさん」
「他の人は?」
「みんな寝てますよ。私が起きてきたので、クロードさんと交代したんです」
「そうか。じゃあ、俺は朝の一狩りに行ってくるよ」

 防具は、昨日の白いワンピースのままで肩に弓を背負う。

「この時間帯ですか?」
「そう、朝食に必要な食材を取りに行ってくる。一時間くらいしたら戻るから」

 そう言って、ひらひらと手を振り、ベースキャンプを離れた。昨日と同じ場所に出現する鶏を弓で屠りつつ、森の中を散策する。
 ただ、防具の補正が大きかったのか、感覚の差を埋めるのに、何射か外してしまった。改めて防具の恩恵を身に染みるのだった。
 そして散策では、フルーツとしてリンゴやイチゴ、木の上を見上げれば、蜂の巣。また薬草類やハーブも採取しつつ戻ってくる。
 多分、今までの傾向から牛乳は存在し、牛乳をドロップする奴が居ると思うんだ。だけど、未だに見ていない。今日あたりに掲示板のMOB報告所を目を皿のようにして探してみるのもいいかもしれない。
 昨日が濃密過ぎたのだ。今日くらいゆっくり過ごしたいと思う。

 そうしてベースキャンプに帰ってくれば、既に起きている人もいた。
 テーブルの端に寄りかかり腕を組んで、朝の素振りを見守っているマギさんとその腕に抱きかかえられるリクール。そして、新しい剣を手にするルカート。
 ルカートの剣は、片手持ちにしては大きく、幅が広い。また両手で持つ分には、やや重量感が足りない感じのする片手剣――分類上、バスタードソードと呼ばれる種類だろう。
 装飾は、極力抑えながらもどこか品のある雰囲気は、ルカートの普段の様子と相まって違和感がない。
 新たな得物を手に軽々と繰り、時折両手で握りしめての振り抜きは、剣圧だけで周囲の草を散らすほどだ。

「おはようございます。出来たんですね、ルカートの剣」
「ユンくん、おはよう。うん、昨日の夜には出来たんだけど、疲れちゃってチェックを今してるんだ。ルカちゃん、それでどうかな?」
「はい、イメージ通りです。私は、速度よりも一撃を重視するタイプなので、今までの剣が少々軽過ぎたんですね」

 そう呟くルカートは、ふぅと脱力し、剣を仕舞う。

「それじゃあ、今から朝食の準備するけど……リクールとリゥイは料理手伝ってくれる?」
「わんっ!」
「……」


 俺の声を聞いて、マギさんの手の中からするりと抜け出すリクールと藁の敷かれた寝床からのっそりと起き上がるリゥイ。

「ユンく~ん、朝食のメニューは何?」
「そうですね。小麦粉と狩りたての卵、スィーツ・ファクトリーにベーキングパウダーがあるので、簡単にホットケーキなんかで良いんじゃないですか? 生地だけ作れば、後は焼くだけですし」

 そう言いながら、エプロンを着け、ストーブやコンロに火を点していく。
 取り出した小麦粉と卵、ベーキングパウダー、砂糖にリゥイの生み出した水を加えて、泡だて器でダマにならないように掻き混ぜる。その間、リクールには、昨日作ったゼリーを冷やすのに協力して貰った。
 だけど、一人で十人と五匹の朝食を用意するのは骨が折れる。
 複数のフライパンで同時に焼き進めると言っても、結構な数。焼くだけで朝から疲れそうだ。
 焼き上がる片手間に、素手で野菜を千切り、お皿に盛りつけたり、溶き卵をフライパンで炒ったり。忙しなく動いた。
 出来た食事は、生野菜のサラダ、スクランブルエッグとフルーツ、デザートも付けたホットケーキ。今朝見つけた蜂の巣から採れたはちみつも瓶詰めでテーブルの中央に乗せる。
 起きている人だけでも朝食を食べさせ、俺は、一人で焼き続けて、出来上がったものをインベントリの仕舞い、保温。新たに朝食の席に着く人が居れば、取り出す。
 全員が起き出し、準備を終えた時には、やっと俺が食べられる余裕があった。世のお母さん方、本当に朝一度に起きてほしい理由が分かります。インベントリの状態保存が使えなかったら、実に面倒くさい。いちいち、起きた人に合わせて焼かなきゃいけないからだ。

「朝から、疲れた。流石に十人と五匹は多い。今日でも料理の作り置きしとくかな?」

 そう言いながら、どさっ、と木製の椅子に腰を掛ける。
 マギさんがそんな俺に水の入ったコップを差し出してくれる。

「おつかれさま。大丈夫?」
「辛いですよ。インベントリで保存できるから今日明日、料理の作り置きでもして、残りの日数を探索中心に据えるのが良いかもしれません」

 今の率直な感想をうんうんと相槌を打つマギさん。互いに並んで、朝食を食べる。口に含んだ、ホットケーキは、生地自体のほんのりした甘味とはちみつの噎せ返るような強い甘さに少し元気が出た気がする。
 その後も、少しずつ食べながら、昨日保護した黒い子狐を観察する。
 警戒心を持ったまま出てきたが、空腹に勝てない様子で、小さく切り分けられたホットケーキを食べていく。距離感は、俺たちプレイヤーよりも同じ幼獣たちと寄り添う傾向に強い。特に体の大きいリゥイにべったりだが、リゥイ自身嫌がっている様子はない。

「食事をしながらでも良いからちょっとミーティングをするぞ」

 そう声を掛けるのは、クロードだ。倒れるように眠ったのに、二時間の仮眠とも言えるような短い睡眠を終えて、最後に起き出し、朝食の席についている。この男、よくそんな短い睡眠で健康に害がないな、ゲームだからそんなものか。と思ってしまうが、リアルでやるのならば心配が尽きない。

「うん? どうした、ユン。俺の顔になんか付いてるか?」
「いや、よくあんな短い睡眠で平気だな。と思ってな。まあ、話を逸らしてスマン。そのまま続けていいぞ」

 そう適当に誤魔化しながら、自分の作ったブルーフルーツゼリーを口に含む。スカッとするブルーハワイ味。フルーツの生の食感が少し落ち込んでいた朝のテンションを盛り上げてくれる。

「それじゃあ、今日の予定を話す。俺とマギは、少し個別で各ベースキャンプを回ろうと思う」
「それはなぜ?」
「インフラの整備とでも言えばいいか。昨日の夜、掲示板で大方の流れを見たんだが、生産職の支援が受けられずにいる人が多いようでな。今日は、知り合いの生産職にどういう役割で戦闘職を支援するか決めるんだ」
「生産職は、生産センスのレベルが上がって美味しい。戦闘職は、安心してサポートが受けられる。みんな幸せだよ」

 既に一部では、そういう請負みたいなことをやっている人が居るんだろう。と俺の顔に出たのだろうか。クロードが言葉を継いでくれる。

「まあ、最初は動くつもりはなかったが、釣り合いの取れていない交渉が話題になってな。ダンジョンで取れたアイテム全部と引き換えに修理。のような話は極端だがそれに近い話だ。そういう輩は相手にされてないが、流石に、見過ごせなくなっているからな。多少ネームバリューの強い俺たちが少し行ってくる」
「ふ~ん。お前の場合多少なのか? まあ、大変なんだな。俺に関係あるか?」
「ないね。ユンくん、掲示板でポーション作成を請け負うつもりないでしょ? 大体やり取りの流れとしては、掲示板に、生産職の分類と対応してくれるベースキャンプ地を掲載。それぞれが欲しい報酬を記載、プレイヤーは、自分の見合う条件で探して交渉する。みたいな感じだから。掲示板を使わない人には関係ないし、強要もしないよ」

 俺は、顎に手を当てて考える。時間を費やすだけのメリットはあるのだろうか? と。
 請け負えば、俺の名が多少知られて【アトリエール】の宣伝になるだろう。それに、俺個人の時間を利用せずに欲しい物を手に入れられる。
 だが……それは、双方の意見が擦り合わせることができた場合だ。
 他人と交渉するのが苦手なら、タクかミュウたちのパーティーにでも同行してこの浮遊大陸を見て回るのもいいだろう。おもに回復薬的な役割で。

「うーん。どうするかな? 材料持ち込みとかならやってもいいかな?」

 空を仰ぎ見て、考える。動かずに安全と益を得るか、リスク覚悟で冒険するか。悩んで、ふと視線をめぐらせる。横には、リゥイとその背中に乗る子狐の幼獣。
 そうだよな。リスク犯して、こいつらと離れるよりは安全を取った方が断然いいかな。

「じゃあ、俺もやってみるか。それに利益ないと思ったらすぐに止めればいいし」

 その言葉を聞いて、マギさんがなんとなく、安堵の表情を浮かべている。

「いや~、助かるよ。やっぱり調合センス持ちは居るけど、ユンくんほど力入れているプレイヤーって少ないから」
「それって遠まわしに、俺が普通じゃないって言ってませんか? ねぇ」

 そう言うと、あはははっ、と乾いた笑みを浮かべて視線を逸らすマギさん。まあ、別に良いんだけどさ。

「後は、スマンが、ユンの防具の修理はまだ終わっていない。今日中には終える予定だ。と、言うことで話は終わりだな」

 その言葉を聞いて、俺たちの話し合いは終わった。
 その後は、特筆すべきことはあまりない。
 ルカート達に製作したポーションを渡し、装備や気持ちを新たに東の遺跡攻略に向けて出発したり、マギさんから鉄鉱石や宝石の原石を分けて貰ってから簡単なお弁当を二人に渡して送り出した。
 そして、留守番の俺とリーリーは、それぞれの生産活動に励む。
 俺は、料理を、リーリーは木工を。
 料理では、小麦粉と水、塩を捏ねて生地にする。
 この捏ねる作業は、使う小麦粉の量と相まって、とても力を必要とした。
 解決策としては、常時エンチャントによる強化をすることで理想とする捏ね方をすることができた。そうしてできた生地は、麺棒で伸ばし切ることで、程よいコシと弾力を持ったうどんへと変貌するのだった。
 一玉ずつ、小分けにしてインベントリに保存されたうどんは、四人と五匹が二日を凌ぐのに十分な量である。
 対するリーリーも自身の活動。とは言いながらも、明らかに大掛かりだ。
 丸太から木材を切りだし、屋根つき、壁なしの小屋を組み上げていく。

「なぁ、リーリー。なに作ってるんだ?」
「リゥイっち寝床だよ。シアっちや子狐たちのように体が小さくないからそれに対応する寝床が必要でしょ。ほら、もうじき完成」

 そう言って、自分の身長よりも大きな木材を軽々と持ち上げ、ログハウスの横に併設していく。

「あとは、藁を敷けば完成だよ。ほら、リゥイっち」

 少し離れたところで目を閉じていたリゥイが視線をそちらに向けて、馬小屋を確かめる。
 じっくりと観察しながら近づき、敷かれた藁の上に座り、寝心地を確かめている。馬小屋は、日陰になり、ちょうど涼しそうな場所だ。リゥイの側を離れたくない子狐もトコトコとリゥイの側に掛けていく。 一緒に俺たちと留守にしていたリクールやクツシタ、ネシアスも新たな場所に興味があるのか、幼獣五匹が一か所に固まって、気持ち良さそうに目を細めて、その場で眠り始めた。

「俺たちも少し休憩するか?」
「そうだね。あっ、おやつ残ってる?」
「ゼリーで良いか? 飲み物は……ハーブティーだけど良いな」

 そう言いながら、幼獣たちを眺めながら、午前のティータイムと洒落込む。

「午後は、どうするか……昨日みたいにトラブルに巻き込まれたくないし、今日は大人しく生産活動に明け暮れるかな?」
「ユンっちは本当に多彩な生産センスを持ってるから暇にならないよね。調薬、料理、細工と」
「まあ、自分でも手を広げ過ぎた気がするが楽しいぞ。午後は、そうだな。イチゴが少し数があるから砂糖と水でジャムにでもするかな。今朝のホットケーキは、はちみつ以外にも別の味が欲しかったし」
「ユンっち、意外と食いしん坊さん?」
「失礼な。食い盛りの幼獣たちが居るからなるべくレパートリーを増やしているだけだ」

 くすくすと笑うリーリー。その後は、二人で掲示板を眺めらがら、言葉を交わす。次はどの辺を探索するか、とか、人の失敗談を読み上げて笑ったりとか。
 だが、一言言うなら、食べ物関係の話が酷い。タイトルに【オレのパーティーが飯マズな件について・その2】という所は、互いに不幸自慢をしている。
 レベル1でスキル【調理】で折角の食材が炭素化した、運よくその一部が成功しても、NPC以下。自力で調理するのに、火がなくて、火の魔法を放ったら食材が……仕方がないので生で食べるとこれまたうまい。と腹抱えて笑うと言うよりも苦笑、失笑が零れる。
 掲示板の利用は、住み分けがなされ、整然としているので見やすいが、流石に昨日よりも情報の量や更新が多く、確定情報だけを纏めたスレッドも立っていた。
 その中には、昨日の事件の話もあった。

「『昨日、セーフティーエリアで火災。原因は……黒の幼獣とその使役者。リタイア数不明。被害多数』か」
「嫌な事件だったね。ユンっちやその友達は大丈夫?」
「平気だろ。ただ……な」

 それに続く話は、解決者が白の幼獣とその使役者で美少女。とか、美少女だけのパーティー、だとかなんか無駄に注目されているようで、変な気分だ。
 それを見たリーリーと特に何も言わずに、苦笑を浮かべるだけ。

「まぁ、気にしてもしょうがないし、昼飯でも作るか。マギさんとクロードが戻ってこないなら、インベントリに保存しておけばいいしな」
「今日のお昼は何?」
「さっき作ったうどん。出汁は、鶏肉と野菜のスープを塩コショウで味付けかな? その辺は、作りながらおいおい」
「それってラーメンっぽいね」
「おっ、卵麺か。作れるかな? まあ、アイティアとしては、いただきだな」

 俺は、そう笑い返し、調理を始める。午後、あんなトラブルを呼び寄せているとは、露ほども思わずに。
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