フランス政府はこの葡萄をモーザックBと表記していますが正式名称に MAUZAC を伴う葡萄は新種を除き次の通りであります。

MAUZAC BLANC 7522
MAUZAC NOIR DU LOT ET GARONNE 7523
MAUZAC ROSE 7524

真ん中のモーザック・ノワール・デュ・ロット・エ・ガロンヌは普通シノニムのモーザック・ノワールもしくはモーザック・ルージュと呼ばれ、モーザック白、モーザック黒もしくは赤そしてモーザック・ロゼと分けられます。モーザック+何某という葡萄が3つもあるのですから、混同しないためにも MAUZAC BLANC と正式名称を採用するのが望ましいと思います。

尤もフランス農学研究所では元々モーザックは白葡萄として古くから知られる葡萄故単にモーザックとしており、フランスの葡萄に詳しいサイトでもこの葡萄を「le Mauzac」として敢えて「BLANC」を付加していません。

モーザック・ブランの VIVC2 パスポートデータはこちら 、またモーザック・ロゼはこちら 、両者をご覧頂ければモーザック・ロゼはモーザック・ブランの突然変異により生まれた葡萄ということがお分かり頂けると思います。尚、モーザック・ノワール・デュ・ロット・エ・ガロンヌはその名が示すように恐らくフランスのロット・エ・ガロンヌ県原産のはずで、モーザック・ブランとは無関係の葡萄です。

シノニムは38報告されており、特徴的なものを挙げると次の通りです。

BLANQUETTE DE LIMOUX
GAILLAC
MEAUZAC
PLANT DE GAILLAC

フランスの発泡性ワインの元祖とされるブランケット・ド・リムーそのままのシノニムや、この葡萄の原産地と思われるガイヤックの名前がシノニムに反映されています。

さてモーザックを使うワインについて Vin Vine のサイトDe Vines en Vins... のサイト を比較するとかなり違いがあります。

両者の見解の相違点について調べてみましょう。先ずは De Vignes en Vins... ではモノ・セパージュ即ちモーザック・ブランだけで造られるのがリムー・メトード・アンセストラルとしている点ですが、リムー・メトード・アンセストラルはアペラシヨンではなくデノミナシヨンでもなく単なる Produit 生産物であり、そのアペラシヨンは AOC Limoux であります
AOC Limoux の葡萄規定並びに栽培規定は次の通りです。

1°- Encépagement
Les vins sont issus des cépages suivants:

Vins rouges:
- cépage principal: merlot N;
- cépages complémentaires: cot N, grenache N, syrah N;
- cépages accessoires: cabernet franc N, cabernetsauvignon N;

Vins blancs tranquilles:
chardonnay B, chenin B, mauzac B;

Vins mousseux susceptibles de bénéficier de la mention « blanquette de Limoux »:
- cépage principal: mauzac B ;
- cépages accessoires : chardonnay B, chenin B;

Vins mousseux susceptibles de bénéficier de la mention « méthode ancestrale »:
mauzac B :

2°- Règles de proportion à l’exploitation
Vins rouges:
- la proportion du cépage merlot N est supérieure ou égale à 50 % de l’encépagement;
- La proportion des cépages grenache N, cot N, syrah N, ensemble ou séparément, est supérieure ou égale à 30% de l’encépagement ;

Vins mousseux susceptibles de bénéficier de la mention « blanquette de Limoux »:
La proportion du cépage mauzac B est supérieure ou égale à 90% de l’encépagement

赤ワインの規定は省略しますがアペラシヨン・リムーの白のスティルワインに使えるのはシャルドネ、シュナン・ブランそしてモーザック。
アペラシヨン・リムーの泡でブランケット・ド・リムーに使えるのはモーザック 90% 以上、補助葡萄としてシュナン・ブランとシャルドネ。
アペラシヨン・リムーの泡でメトード・アンセストラルを名乗るものには当該葡萄モーザック・ブランに限られるとの規定であります。従って内容的には正解です。

次に De Vignes のサイトではアルマニャックで当該葡萄が主要葡萄となっているとしていますが、これは拙ブログのこちら などで何度も紹介していますが間違いなく主たる葡萄の一つに Mauzac B と法令で定められています。 Vin Vigne はワイン以外の酒類についてはカテゴリー外としているのでしょうね。

補完葡萄としてのカテゴリーに Vin Vigne ではアペラシヨン・アントレーグ・ル・フェルを入れていますが検証してみましょう。

アペラシヨン・アントレーグ・ル・フェルの白ワインの葡萄規定並びにその栽培規定は次の通りです。

b) - Les vins blancs sont issus des cépages suivants :
- cépage principal : chenin B ;
- cépages accessoires : mauzac B et saint-côme B.

b) - Vins blancs :
La proportion du cépage principal est supérieure ou égale à 90% de l’encépagement.

何度か取り上げましたが補助葡萄の当該葡萄モーザックの隣にあるサン・コムサン・ピエール・ドレの間違いと思われます。このように法令そのものが間違っているのがフランスのワイン法であり、現場を見ないで役所の中で法令文言を作成するのが慣例化されているのは困ったものです。本題ですが明らかにセパージュ・アクセソワールとあるので補助葡萄が正しいので補完葡萄ではありません

続く