小田玄紀です

 

 一昨日から今日にかけてビットコインを中心とする仮想通貨業界において大きな衝撃が走りました。とある事情からビットコイン、イーサリアム等仮想通貨の価格が大幅に下落しました。


 8月2日には1ビットコイン68,000~69,000円でしたが、これが8月3日には51,000円台まで一気に下落したのです。この下落を引き起こした要因は香港にある取引所であるBitfinexという仮想通貨取引所から12万ビットコイン(70億円相当)がハッキングの被害に合い流出したことから一気にビットコインに対する売りがなされました。


 多くの人がマウントゴックスの再来かと思ったようです。昨日から今日にかけていくつかマスコミの方からも連絡を頂き、また、マスコミの方も正しく今回の件を理解できていないため、現時点で把握している情報に基づくことにはなりますが今回の問題について考察をしていきます。


 マウントゴックスの時も今回のBitfinexの時もそうですが、これらの問題はビットコインまたはブロックチェーンの技術については何ら影響を与えていません。実際にビットコインの価格も51000円台をつけた後には盛り返しており今は58000円~59000円まで価格が戻っています。


 6月にはイーサリアムの技術をベースとするDAOが50億円の流出という被害が生じました。この際にはイーサリアムの価格は大暴落し、また、問題が取引所に起因する流出ではなくDAOのプログラムに起因する問題であったことから仮想通貨の履歴を強制的に復元するハードフォークという手法が用いられました。


 しかし、マウントゴックスもBitfinexもビットコインまたはブロックチェーンのプログラム上の問題ではなく、取引所の故意または過失による流出であり、1取引所の問題です。


 イメージとしては「信用金庫にお金を預けていたが、その信用金庫が銀行強盗に入られてお金が盗られた」ということに近い話です。1つの信用金庫の盗難事件が日本円の信用毀損に繋がらないのと同様に1取引所の事件がビットコインの根本的信用失墜には繋がらなかったというのが今回の問題のとらえ方です。


 多少技術的な話になりますが、一般的に仮想通貨の取引所は仮想通貨を2つのウォレットに分けて管理をしています。1つがホットウォレットでありもう1つがコールドウォレットです。


 ホットウォレットはインターネットに接続しており、ハッキングに合う可能性はありますが仮想通貨の送受信を即座に行うためには一部をホットウォレットに置いておく必要はあります。コールドウォレットはインターネットに接続しない環境(USBや紙など)で仮想通貨を管理しておりハッキングに合う可能性は低いですが仮想通貨の送受信は多少時間がかかります。


 取引所によって分かれますが、通常は預かり仮想通貨の数%のみをホットウォレット上に残し、残りはコールドウォレットで管理をします。


 マウントゴックスの時はこの種の管理もしていなかった可能性があることが問題であり、Bitfinexの場合はコールドウォレットで管理していたものの内部犯行などによりコールドウォレットが流出した可能性があるという問題です(実は2か月程前にもBitfinexのサーバーがダウンするということが起きており、今回の件の前兆だったのかもしれません)。


 問題を正しく認識することで打つべき手は変わってきます。


 たとえば、今回の件を踏まえて仮想通貨取引をする人は取引所を選ぶ基準として「安全性」を考慮すべきということが分かってきます。「レバレッジの高さ」や「口座開設の容易さ」といったところだけで選んでしまうと、そもそもの前提である資産を増やす・資産を預けるということが崩れてしまう可能性があります。


 取引所の方もセキュリティレベルを正しく説明することや財産管理の方法を開示する(細かく説明しすぎると逆に狙われてしまうので要注意)など今後説明責任は増えてくると思います。


 他方で今回の件で留意しなくてはいけない点があります。それは今後日本でも仮想通貨交換業者が登録制になるなど法整備が進みますが、この際に規制を強化しすぎないということです。


 たとえば、ホットウォレットに対してハッキングされる可能性を0にするために高度なセキュリティが求められる場合、大半の仮想通貨取引事業者はこれに耐えることができません(国内事業者ではビットポイントを含めた3~5社以外は耐えられないことが想定されます)。


 新しい取組には様々なリスクが付きまといます。今後も仮想通貨には現時点では想定もしていないような課題やトラブルが生じる可能性はあります。その際に規制強化により取引基準を厳格化するのではなく、顧客に対してリスクがあることを適切に伝えて、その上で仮想通貨取引をしてもらうということが何よりも重要です。


 仮想通貨の価格は今年の3月時点では1ビットコイン40,000円程度でした。今回のBitfinexにおいても51,000円を付けたらその後反動して59,000円台まで買われたということはある意味ビットコインの最低価格が一定額以上は認められたという学びも今回は生まれました。


 まずは問題を正しく認識し、その問題を理解した上でどう行動するか。これが最も重要なことだと思います。


 2016年8月4日

     小田玄紀

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