電気の話①

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 小田玄紀です


 先日、発表をさせて頂いた通り、この度電力会社の経営をすることになりました。

 1年半前までは電力については全くの素人でした。現在も素人+α程度ですが、少しでは電力業界の構造についても理解できた点があるので、この点をなるべく分かりやすく発信していければと思います。


 まず、電気料金ですが大きく以下のように原価が構成されます。


 ①電源調達料金・・・電力会社が電気を調達するコストです。電源にもよりますが8~17円/kWhです

 ②託送料金   ・・・電力会社が電気を送るコストです。高圧では5円/kWh程度、低圧では8.8円/kWh程  度です

 ③再エネ賦課金・・・再生エネルギー普及のために需要家が支払う税金のようなものです。現在は1.58円/kWhです

 ④販売管理コスト・・・販促や販売管理費などのコストです

 

 大きくは上記が費用となります。今回自由化されたのは販売に関する自由化であり、送電などは従来の電力会社が担います。このため需要家(顧客のこと)はどの新電力を選んでも電気の安定供給を受けることができるのですが、逆にいうと上記のような原価構造の中で②託送料金と③再エネ賦課金については固定であり、これを変えることはできません。


 つまり、今回の電力自由化で差別化を図る場合には①電源調達料金と④販売管理コストを調整するしかありません。


 業種や規模によっても変わりますが、大体高圧需要家の平均電力単価は23~25円/kWhであり、低圧需要家の平均電力単価は27~29円/kWh程度です。この中で高圧の場合は5円+1.58円=6.6円程度、低圧の場合は8.8円+1.58円=10.4円程度の費用が必ずかかります。


 顧客に対する削減額も提示する必要があり、また、新電力として利益も計上する必要があることから①電源調達料金と④販売管理コストについては高圧で14円/kWh程度、低圧で14.5円/kWh程度に抑える必要があります。


 すなわち、新電力としてはいかに安定的に安価な電源を確保するか。また、いかに販売管理費を抑制することができるかが重要であり、逆にこれができないと赤字経営になるか顧客に対する還元があまりできないかということになってしまいます。


 また、安定的に安価な電源を調達するということが非常に大変です。よく原発の電源調達原価は8~10円/kWhと言われますがこのクラスの電源は稀有であり、一般的には石炭火力が8~10円/kWh程度、LNG火力が15~17円/kWh程度、太陽光などが25円/kWhなどと言われます。

 

 つまり一般的な安定電源で目標原価である14円/kWhを割り込む電源はあまりなく、原発については今後再稼働の動きはありますが国民世論の強い反対はあり、また石炭火力についてもCO2排出の観点から大型発電所については抑制の動きになっています。


 太陽光などについては明らかに割高ですが、この分が再生エネルギー賦課金として全需要家から徴収され、太陽光などクリーンエネルギーを活用する電力会社には再生エネルギー交付金として補填がされる関係で11~14円/kWh程度での実質原価となります。逆に言うともともと割高な電源を全国民から徴収して費用補填をしている関係で、現在の日本ではグリーンエネルギーを活用していることを全面に出して販売することが禁止されており、このため再生エネルギーを全面に出しての販促も出来ない状況です。


 こうした中で多くの電力会社が電源として重宝しているのが企業などの余剰電力です。製造業などの多くは自社の工場に自家発電を有しています。これは熱焼却などで消費される水蒸気を有効活用して発電にあてているのですが、自社で使う以上に発電されることが多くあります。この余った電力を電力会社や新電力に対して販売をしています。企業からするともともとが余剰の電源であるため、電力会社が買い取ってくれるだけで大きな資産になります。


 規模や契約期間にもよりますが、この価格が大手電力会社であれば6~8円/kWh程度であり新電力であれば9~12円/kWh程度になります。こうした電源をいかに安定的に確保できるかというのが新電力の1つの重要な要素になってきます。


 また、これとは別に電気を売買する卸市場が存在します。工場などもより高い価格で販売される方が収益に貢献しますし、また、各電力会社も多く買いすぎた電力については市場で売却することで資産にすることができます。まだ市場を介した取引は数%程度ですが、今後この市場が活性化していくことで日本全体で電力の需要と供給を最適化していくことが可能となります。


 卸電力市場の価格は全体的に下降傾向にあり、いかに卸電力市場から適切に電力調達をするかということも1つの大きな経営戦略になります(ただし市場調達は先行して資金が必要になるため、潤沢なキャッシュフローが必要になります)。


 大分長くなってしまいましたが、まずは第1回目ということで電力会社のコスト構造について共有をさせていただきました。言いたいこととしては、電力事業というものは極めて薄利なビジネスです。いかに安く電源を調達し、いかにコストを抑えるかがKeyになってきます。そのような意味では現在積極的な広告宣伝をしている企業が本当に安く電気を供給できるのか・・・ということは注意した方がいいと思います。


 本コラムは不定期に更新をしていきます。


 2016年1月13日 小田玄紀





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