アイセックについて

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 小田玄紀です


 ルーマニアで起きた女子大学生殺害事件に関して、斡旋をしたNPO法人アイセックについて様々な批判の声が上がっているようです。


 ・今回の問題について、適切な情報開示をしていない

 ・無責任な学生団体に留学事業などはさせるべきではない

 ・政府や社会人が適切に監視をして活動をやらせるべきだ


 確かに一人の方の死という何をもっても変えられない事態を招いてしまったことは、御遺族の方はもちろんアイセックのメンバーとしても悔やんでも悔やみきれず、また、改善すべき課題が多々あったことは認めるべきだということは当然です。


 ただし、もともと学生団体をネットワークし、その活動の目標達成を共に歩んできた自分としては今回の件について、責任論と課題解決論は別にして考える必要があると強く思っています。


 2000年に自分がNGO-terminalという団体を立ち上げた時、アイセックは学生団体の中でも主要な地位を占めていました。スポーツ系サークルを除いた文化系サークルの中では3分の1がアイセッカー(アイセックのメンバーの意)であり、アイセックに所属をすると共に他の団体に在籍をしているという方も多くいました。


 当時、全国700位の学生団体をネットワークし、その活動に不足する点をサポートする企業とマッチングをしたり、団体の運営における悩みや課題解決に24時間365日没頭していました。


 その経験から言わせてもらうと、アイセッカーのような学生団体が求めているものは「事業収益」や「お金」というものではなく、「個人の成長」です。


 今回、深夜に3時間も女性が一人で電車に乗るような企画を組んだことや空港に迎えが来ないようなことはおかしいという批判も出ています。結果として、それが被害女性の死に直接的な影響をしてしまっているのであれば、この点は”課題”であり、「”個人の成長”と”一人の女性の死という結果”は比較するさえ間違っている」という意見もあることは重々承知していますが、それでもこうした学生団体の活動により成長した個人は多くいて、その人たちが現在社会の様々な場面で活躍していることもまた事実です。


 NGO-terminalをしていた当時も多くの学生団体がありました。


 サッカーのW杯があった際に、紛争地域であるアフガニスタンにもサッカーの感動を届けたいという思いから、アフガニスタンにサッカーボールを届ける企画をしたアフガンプロジェクト。


 障害は個性であり、障害者は普通の人と変わらないということを全国の人に知ってもらおうと思い、筋ジストロフィーの障害を持つ友人とタンデム自転車で日本一周をしたACT。


 空港爆破があり非常事態宣言が発動されていた1週間後にスリランカにゾウのウンチペーパーの工場取得に行ったミチ・コーポレーション。


 それらの活動を企画した学生団体の代表者たちは多くの大人から、「そんなリスクがあることは絶対にやめた方がいい」という”アドバイス”をされていました。しかし、10人に1人はその活動をする学生に対して興味を持ち、100人に1人は支援の手を差し伸べてくれました。結果として、これらの活動は何万人もの人たちに勇気と希望を与え、多くの人に幸せと成長をもたらしました。


 何度も言いますが、とはいえ1人の方が無くなったことはとても大きな問題です。


 ただし、だからといって学生団体の活動に制限が加えられたり、大人の監視が働くようになることは、また別の問題、そして、それは若者の成長や希望といった目には中々見えにくいものを阻害することになります。


 学生団体は企業や社会人からの寄付・助成金によって成り立ちます。だから、つい大人の意見、しかも支援をしてくれる大人の意見に偏ってしまう傾向があります。


 当時も自分のことを支援してくれていた社会人から言われたことがあります。それは「ミニ大人にはなるな」ということです。せっかく、学生のように自由に、立場とかを気にせずに発言・行動ができるのであれば、それを活かすべきであり、世間体や社会動向を気にせずにやりたいことややるべきことをやれという意味だと受け取りました。


 今回の問題を受けて、アイセッカーの人たちは現役・OB共に今後の団体運営について悩んでいることだと思います。


 「こうした問題が起きたのだから、もう活動は自粛するべきだ」

 「代表者や幹部は責任を取れ」

 「今まで通りの支援や助成はもうできない」


 ただ、これは冒頭にも述べたとおり、責任論であり課題解決策とは異なります。海外インターンシップ事業をアイセックが撤退・自粛することはただのその場しのぎであり、むしろ最大の責任逃れだとさえ思います。

 

 今、アイセックがすべきことは今後活動を行う際に「リスクを説明すること」です。


 海外での活動に限らず、何事にも必ずリスクは伴います。そのリスクを正しく伝え、その上でも参加するのかを確認する。参加者当人により強いリスク意識を持ち、プログラムに参加してもらう。これが最大の再発防止策になります。


 非日常の活動には、日常以上に死亡・事故のリスクは増します。


 紛争当時、アフガニスタンやスリランカは非常に危険な状態でした。それでも、参加者がリスクを認識し、それを踏まえた上で活動を行うことで最悪の事態が生じることは防ぐことができました。


 今回の件は非常に残念な事態になりましたが、ぜひ責任論がこれからの日本の学生・若者の活動に制限・自粛をかけるものにはなって欲しくないと願います。


 2012年8月22日 小田玄紀

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