ポケットモンスター。
この世界に生きる、不思議な生き物。
人と助け合いながら生きているそのポケモンと、話が出来るトレーナーが居た。
これは、その三人のトレーナーと、周りを取り巻く人々、ポケモンの物語・・・。
sorrow and appeal
- 嘆き、訴える -
イッシュ地方のサンヨウシティ。
そのある喫茶店のような場所で、窓の外を眺める少女が居た。
彼女の名は、紅葉(モミジ)。赤紫色の長い髪が印象的な、橙の瞳をした少女。
ポケモンと会話が出来る一人。
外を見ていた目を、今度は腕にしていたポケッチに移す。
少し眉間に皺を寄せ、再び窓の外を見る。
そんな紅葉の横に座っていたエーフィが、紅葉の膝に前足を置いた。
「んー?待ち合わせの時間なのにまだ来ないからさぁ・・・」
困ったように言う紅葉はエーフィを撫でた。
エーフィは目を細めると、一声鳴く。
「忘れてるんじゃないですか?」
奥から歩いてくる少年が言った。
手にはトレーを持って、そこにはティーポッドとケーキが乗せてある。
「えー、それはないでしょ・・・」
「でも、水江さんならあり得るかもしれませんよ?」
「・・・・・・わかるかもしんない」
ほらね?そう言ってクスクス笑っているのは、このサンヨウシティのジムリーダーの一人、デント。
つまり、喫茶店のような場所、とは、サンヨウジムのこと。
デントは優雅にティーカップに紅茶を注ぐと、紅葉の前にショートケーキを置いた。
次はエーフィの前にもちょっと違ったショートケーキを置く。
「フィル、君の好みの味に仕上げたつもりなんだけど」
「ホント?良かったねフィル。食べてみよ?」
フィルとは紅葉のエーフィの名前。
ケーキを食べたフィルは嬉しそうに鳴く。
「美味しいってよ、デント」
「はは、それは良かった」
「あ、このケーキも美味しい!久しぶりに来て良かったな~」
「僕も、久しぶりに会えたからね。嬉しいよ」
ほんわかな雰囲気に包まれている時、外へと続く扉が開いた。
思わず扉の方を見ると、青い短髪を所々跳ねさせた、背が高めな少女が入ってきた。
後ろにはキノガッサがついてきている。
紅葉が水江(ミズエ)!と呼んで手を振ると、少女、水江は気がついて席へと近づいてくる。
彼女もポケモンと会話が出来る一人。
「おっひさ~~、元気してた?」
「うん!懐かしいなぁ~、もう一年以上会ってないんじゃない?」
「色々仕事があるもんでねぇ、あんな仕事就くんじゃなかった、あっはは」
「冗談にならないから止めときなよ;」
『む?まだ漣(サザナミ)来てないんか?』
『うん、水江ちゃんが先に来たのが驚きよ』
キノガッサのポイザーが失礼やな!と声を上げる。
ポイザーとフィルの話を聞いていた紅葉は確かに、と同感した。
そして再度ポケッチを見る。待ち合わせから15分が経とうとしている。
取り敢えず待つことにした二人。
デントは奥へ下がり、同じジムリーダーの一人、コーンを呼んでくる。
コーンは水江の姿を見ると少し嬉しそうな表情をするが、すぐにいつもの表情に戻る。
「水江」
「あ、とん○りコーン」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「冗談だってば」
いきなり酷な台詞に、軽く眉を寄せるコーンだが、水江に久しぶりだね、と言い、笑う。
水江もそれにはちゃんと答えて、同じく笑った。
それを見てデントと紅葉は顔を見合わせて微笑む。
その空気に耐えられなかったのか、ポイザーがシュタッ!と手を上げる。
『おい とん○りコーン!!わいモンブランとチョコケーキ食べたいわ!』
『・・・いきなり豪華ね』
「?なんと言ったんだい、水江」
「サイコソーダが飲みたいって『なんでやねん!!!』
・・・冗談。モンブランとチョコケーキ、あとジャスミンティーよろしく」
「かしこまりました」
コーンが去っていく途中、奥からこれまたジムリーダーの一人、ポッドが顔を出す。
そしてまだ来てないのかよ・・・と小さく呟いた。
そんな時、タイミングよく再び扉が開いた。
入って来たのは黄緑色の髪を左上に簪で刺し、左に払っている独特な雰囲気の少女。
赤と黒の着物に、マントが独特さを余計に引き出している。
彼女もポケモンと会話が出来る。
肩にはゴルバットが乗っていた。
「漣!!」
「あ、ポッド!」
いかにも嬉しそうといった声を上げ、ポッドは奥の厨房から飛び出し、漣へと向かう。
近くまで来た時に、漣はポッドに飛びついた。
「久しぶりーー!会いたかった~!」
「オレもめちゃくちゃ楽しみにしてたんだぜ!!」
「・・・なんていうか、よく恥ずかしくないね」
「・・・うん」
「あはは・・・」
「まるで恋人同士ですね・・・」
漣を取られたゴルバットの黒羽(クロバネ)がポッドを攻撃したところで、甘い空気は終わった。
「久しぶり、漣」
「ウチより遅いなんて珍しいじゃん」
漣は苦笑いしながら席に腰を下ろす。
「途中で取材とか言ってさぁ・・・絡まれて中々抜けられなかったんだよね」
「あーそっか、イッシュに来るなんて珍しいから」
「そうそう、見つかっちゃった訳よ。なあ、黒羽?」
撫でられた黒羽は嬉しそうに漣に頬を摺り寄せる。
ポッドに注文でミルクティーとチーズケーキ、黒羽にとトマトジュースを頼んだ。
張り切って厨房に姿を消すポッドは完全に浮き足立っている。
三人集まったところで、デントも厨房へと戻っていった。
「なーんか・・・すっかり有名になっちゃったよね、二人共」
「何言ってんの、紅葉だって有名じゃんか」
「てか三人共なんだかんだ世間に知られてるよね」
紅葉はポケモンブリーダーで、ブリーダー世界大会で優勝した、世界最高のポケモンブリーダー。
水江はカントーのヤマブキシティを拠点とした、ポケモン保護協会会長。
漣はホウエンリーグポケモンチャンピオン。
このサンヨウジムに来ているのはデント達三人と仲が良いことと、お忍びで会う為。
普段は女の子たちで賑わうこのジムも、今は貸切状態。
今日たまたま三人がイッシュ地方に仕事で来ていて、休暇が重なった為にこうして一年ぶりに集まったのだ。
『仕事が忙しい言うてもな、水江よくすっぽかして抜け出すんやで?』
「えー・・・そうなの?」
「だって仕事ばっかなんてウチには向いてないすぃ~?つーか仕事詰めなんてやってらんないしー」
『まあ抜け出すんは事務的仕事ばっかりや!ポケモンの命に関わる仕事はちゃんとやっとるで!』
「んー・・・まあ、良いような悪いような・・・」
コーンとポッドが頼まれたものを運んでくる。
黒羽はすぐさまトマトジュースに飛びついて飲み始めた。
その様子を楽しそうに見ていた漣を、紅葉が呼ぶ。
「ん?」
「久々にバトルして下さい!師匠!!」
「あーウチも」
もちろん、本当の師匠ではないが、漣は笑って返した。
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今回長いね!!疲れた・・・
ポケモン連載、お知らせどうり一から書き直させてもらいます!
短編も沢山書きたいな^^
読んでくれた方有難うございまーす!
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