7月1日、集団的自衛権の限定行使容認が政府閣議決定されました。
首相官邸周辺では街頭デモなどもあったようですが、梅之助はこの「限定行使容認」には賛成です。というか、反対する人達の考えが正直分かりません。「無制限の行使容認」となれば話は別ですが、しっかりと「しばり」として、

①日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある
②国民を守るために他に適当な手段がない
③必要最小限度の実力の行使

と限定条件が付けられています。
これに反対する理由というのは、一体どういうものなのでしょうか?

それがよいかどうかの是非は別として、日本の安全保障の基軸は米国との日米安保条約である事はまともな神経の持ち主の日本人ならば誰もが認めるところです。ところがこの条約は以前から「片肺条約」と言われ、米国に日本の防衛を一方的に課し、日本の周辺事態であっても日本は米国を守る義務がないとされて来ました。
丁度、本日の読売新聞にこのような文章が書かれています。

 


以下、引用です。

「集団的自衛権は行使できない」という憲法解釈のために、政府が緊迫した空気に包まれたことがあった。1993年に始まった北朝鮮による核危機だ。
核開発を宣言した北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明。軍事的圧力をかける米国と一触即発の状態に陥った。
94年2月、クリントン米大統領は訪米した細川首相との首脳会談で、こう切り出した。「海上封鎖を実施したい。日本も協力してくれるか」
米国は、海上封鎖に対抗して北朝鮮が敷設するであろう機雷の除去に加え、攻撃を行なう米空軍機の援護、損傷した米艦船の日本へのえい航などの協力を、次々に日本側に迫った。
だが、石原信雄官房副長官から検討を求められた内閣法制局の回答は、すべて「ノー」。集団的自衛権の行使になりかねないとの理由からだ。
憤った斎藤邦彦外務事務次官は「これも出来ない、あれも出来ないでは日米同盟が壊れてしまう。憲法解釈を変えてください」と内閣法制局に詰め寄ったが、拒否されたという。


あの当時はそれなりに梅之助も覚えていますが、政府内でそんな事があったのですね。余談ですが、朝鮮戦争では日本も実はそれなりの行動をしているんですけど、その後自分自身をどんどん縛ってしまった訳です。
さて、このような振る舞いの日本に対して、その防衛義務を一方的に課せられる米国政府及び米国民は一体どう思うでしょうかね?日米安保というのは日本側の信義の欠けた条約と映っても仕方がないかもしれません。

「約束」というのは互いの信頼関係があって初めて成立するものだと梅之助は思っています。国民性の違う国同士が結ぶ国際条約ならば尚更の事です。
日本にはかつてこの事で苦い経験がありました。

 


日ソ不可侵条約に署名する松岡洋右外相 (写真はWikipediaより)


1941年に締結された日ソ不可侵条約。
結局この条約は有効期間1年を残してルーズベルトの要請に転んだスターリンが1945年に一方的に破り、戦力が枯渇していた日本軍は背後の満州を突かれて大敗走をする事になります。
条約を破ったのはソ連ですが、日本も対米開戦直前まで陸軍がソ連を仮想敵国にしており、軍レベルの検討内容では条約締結後も対ソ戦の可能性を一部では探っていた訳ですから、元々この条約に双方とも信義もへったくれもなかったのです。

日米安保条約はそこまで極端な類のものではありません。
しかし、オバマ大統領になって「アジア重視」と言いながら急速に軍事プレゼンスを低下させる米国の姿に、これまでの「何もできない日本」の姿が影響しなかったとは言い切れません。おまけに日本は民主党政権時代にさんざん米国を裏切り失望させているのです。「何もできない・何もしてくれない日本」の無人島の小島の為に、米国が自国兵の命をかけるとは最早思えません。
その事を痛いほど日本の政府首脳は知っているので、来日した際オバマ大統領の「日米安保の尖閣適用の言及」にこだわり、そしてある種の見返りとして集団的自衛権行使容認へと踏み込んだのです。
それは政府首脳だからこそ知る不安定な日米安保への「信義の再構築」であり、米軍が抑止力として機能してくれる事への日本側の「最低限の誠意」でもあるのです。

国を守るという事は、こういう地道なやり取りを何度も積み重ね、かつ更新させた上で現状が維持されるという事を我々はもっと知らなければなりません。組織の代表として責任ある仕事を任された経験がある社会人なら理解できる事だと思いますがね。街頭デモやっている人達は・・・・どうなんだろう?


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