あるお手伝いで一日中立ち仕事(いつもと全く違います・・・)をしていたため、かなりの疲労です。運動不足を痛感しています。

電子投票法の件で、SOBAさんをはじめとして 多くの問題提起があります。


わたし自身は、日本の地方選挙で電子投票が取り入れられる前に、投票機の開発に少し携わった方とお話をしたことがあります(まったく別件の仕事でです)。


こうしたシステム開発には重要な秘匿性があるので、もちろん詳しいことはお話の中でもうかがうことができませんでしたがお聞きできませんでしたが(←ご指摘いただいたように日本語がヘンでした。ここに限らずあちこちが・・・^^;)、開発者としても、「投票データが失われたり流出しないためのセキュリティ」や、誤操作防止・理解しやすさのことは懸念されていらっしゃっても、為政者自身が選挙で不正をなすことに対しては、あくまで性善説にたっていたように思います(その件を小耳に挟んだわたしも含めてたぶんその場にいた全員の印象はそうだったと思います)。


ただ、それはまだ「聖域なき構造改革」時代前のことでした。


~~~

電子投票に限らず、こうした制度の導入の賛否が議論されるとき、しばしば挙げられるのが、


「技術そのものは、決して不正を意図しておらず、それを許すような設計を現場が受け入れるはずがない。さらなる公正さは運用でしっかりカバーすればよく、技術の進化をいたずらに怖れるべきではない」という正論


です。


ここでの「正論」とは、特に冷笑的な意味ではありません。


ただし、技術そのものに救いがたい大問題が内在していなかったとしても、著しい社会的・政治的な不公正がある環境で用いられるにはあまりに危険なテクノロジー、というものは存在すると思っています。

(活断層の上では、原発に限らず、高層住宅や、比較的安定した運用がなされている燃料精製や化成品のプラントを建設することも危険であるように。)


もっと有り体に言えば、長きにわたり、市民が政治に期待すべき・することができるあまりに多くの観点で、信頼を裏切る行為を続けてきた為政者のもとで、なぜその為政者側のフリーハンドを許す予知のある制度を取り入れなくてはならないのか?ということと言い換えてみてもいいと思います。


選挙の電子化は(かつての「戸籍の電算化」がそうであったように)長年の懸案事項でもあり、審議や野党なりの問題点の検討の実績もあるでしょうし、審議の面でも譲歩するには技術論に終始すれば取り組みやすいテーマであるのかもしれませんが、今、どんな手段を使っても1票を伸ばしたい自公の焦りのもとで、この法案を前に進めることの危険さは、現状想定されている電子投票システムの拡大解釈が可能とする、この段階で把握されている機能実装の範囲を超えたところにあるようにも考えれます。


野党には、今なされてしまうかもしれない制度への要件の変更や、長期的なとめどない改変の可能性を考慮したうえで、ぜひ見直していただきかなくては、と考えます。


折りしも、このところの最大野党民主党からは、郵政民営化見直し法案 がようやく提出され、土壌汚染対策法に設けられた穴を塞ぐ改正案が提出されたり(鈴木議員大河原議員 )しているところです。


なのになぜ電子投票法なのでしょう?
タハラ氏などが盛んに喧伝でうす、野党の国会空転主犯論に屈していませんか?


~~~


次の大きな話題です(本来ならエントリーを2つに分けるところです)。


柏崎刈羽原発は震災でダメージを受けたからより強くなるという、理科に興味のある小中学生が聞いても、ちょっと違うだろうと思うような妄想が、設備健全性を評価する検討委員会の正式方針となっている、という記事を原子力資料情報室のメールで知りました。


以前から漏れ聴こえていたのですが、こんなことでは、危険性をはらんだままでのGOサインへの道が強引に切り拓かれるだけでなく、世界の科学者からの笑いものになってしまいますね。


Web上の原子力情報宅配便“CNIC EXPRESSの07/12/7版(http://blog.mag2.com/m/log/0000066670/109232790.html )でも読むことができます。

太字・色文字強調、一箇所の明記した追記は管理人によります:

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■[1]地震による機器の損傷(ゆがみ)の問題[井野博満]
~『原子力資料情報室通信』402号より
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『原子力資料情報室通信』402号(2007/12/1)より

地震による機器の損傷(ゆがみ)の問題


井野博満
(東京大学名誉教授、柏崎刈羽・科学者の会)


 柏崎刈羽原発は設計基準を大きく超える地震動に見舞われ、敷地
は波打ち、陥没し、ダクトはひん曲がり、タービン建屋そばの変圧
器での火災も起った
。しかし、「原発の“核反応を止める”“炉心
を冷却する”“放射能を漏らさない”という機能はほぼ確保できた、
これは設計に余裕があったからだ」と言う。本当だろうか。危機一
髪だったのではないのか。

設計というのは、設計者が予測できないことが起こりうるので余裕
をみて設計する

 定員を超える人が乗ったからといってエレベーターがすぐ落ちる
わけでないし、重量オーバーのトラックがつぶれるわけでもない。
しかし、そういう危険があるから乗せてよい重さを決めてある。地
震の場合も同じである。耐震基準を超える地震動を受けたからといっ
て建物が壊れるとは限らない。もしかすると姉歯建築士が建てた耐
震強度が基準の3分の1しかないマンションも地震で壊れないかも
しれない。しかし、壊れる危険があるから、そういう建物は建てて
はいけない。原発も同じだろう。いや、その災害の大きさを考えた
ら、もっと厳しく考えなければいけない。
今回、危機一髪で助かっ
たからと言って、この原発は安全なのだということにはならない。
耐震基準がまちがっていたのだ。
 設計基準以上の地震動で揺さぶられたけれども、「安全余裕がとっ
てあったから重要機器は損傷を受けていないかもしれない、調査し
て損傷が見つからなければ再稼働しよう」というのが本音
のようで
ある。しかし、調査が始まったばかりの現段階で、すでに機器の損
傷を示唆する事実があちこちで見つかっている。7号機で制御棒が
引き抜けなくなった、6号機でタービンの羽根に傷がついていた、
5号機では燃料集合体が引き抜けない、再循環配管や主蒸気管を吊
るすハンガーのゼロ点がずれた(配管の変形を示唆)などである。
原子炉建屋やタービン建屋が不等沈下し、地表の惨状に比べればわ
ずかではあるが傾いているのも不気味だ。


機器は地震によってどのように損傷するか

 機器は地震によってどのように損傷するか。地震動によって機器
に力が加わり、機器を構成する金属材料が歪む(ゆがむ)ことによっ
てである。
 金属材料は、ある力(降伏応力)までは弾性変形し、力を除くと
元に戻るが、それを超えた力を受けると塑性変形し元に戻らなくな
る( http://cnic.jp/files/402p9_ino.gif 図1参照)。材料がこ
のような塑性変形を起こすことは設計上通常は認められておらず、
そのような変形(ひずみ)を受けた機器や材料はもはや使用すべき
でない


ワーキンググループでの驚くべき議論

 ところが、被災した柏崎刈羽原発の設備健全性を評価する委員会
(ワーキンググループ)では驚くべき議論がなされている。少し長
くなるが議事録からそのまま引用しよう(1)(" "は筆者による)。


○小林(英)委員
さっきから皆さんから、耐震基準だとか設計基準に照らした検討、
それも必要だと思うんですけれども、私はむしろ、今まで想定して
いない非常に大きな地震を経験して、それでいて何が起きています
かというその評価が一番重要だと思うんですね。具体的に言ったら、
"今のいろいろな設計だとか解析で、裕度というのが非常に大きく入っ
ているわけですね。それを一切除外する。"それから、材料強度だっ
たら、規格最小値というのは、そういう使い方しか現実にはしてい
ないわけですね。そうではなくて、実力としてどんな強度をそもそ
も持っているのか。そういうことで、今の非常に大きな地震を受け
て、一体構造としてどんな挙動をしているのかと。IAEAの指摘がま
さにそうだと思うのですね。どのように耐えたか、それが基本的に
は一番重要だと思うんです。それがわかってくると、多分それは、
後の話として耐震基準とか設計基準の見直しということに役に立つ。

(管理人: ただ、それはただ一度の震災による事例から行う故障モード解析などに近いもので、要するに明らかに問題の発生してきわどくすり抜けた部分にだけ限って確認して、耐震・設計基準に明らかな落ち度があれば、一部を変えるというアクションに限られます。今後の対応策をすべて網羅できるものではありません)
"そういう意味で、できるだけ従来の規制だとか規格にとらわれない
技術、最新の科学技術で実力値を使って評価を是非実行していただ
きたい。それが希望です。その意味は、多分降伏点を超えて塑性変
形するとかで、損傷、損傷という言葉が出ているんですけれども、
それは多分違うと思うんです。非常に大きな塑性変形を受けたとし
たら、かえって強くなるという問題で、損傷という心配はむしろな
いと思うんです
(管理人注: 驚きました!!)
。それは従来の耐震基準とか設計基準の中ではそう
いう考え方はないわけです。"ないけれども、我々、日本にいると、
こういう想定外の地震を受ける。大橋先生はあり得ないと言いまし
たけれども、私はこういうのを2回、3回経験するのではないかと
思っているわけです。では、2回、3回経験するということに対し
て、我々が本当に2回目は大丈夫ですよということを言い切れるか
どうかという問題。そういう新しい視点を入れていくべきだと思う
んですね。それで、現在の機器に何が起きていますかという現在の
我々の持っている科学技術でベストの答えを是非期待したい。逆に
言うと、我々はそういう観点からは幾らでもお手伝いできますとい
うことだろうと思うんですね。"要するに、耐震基準とか設計基準と
いう話は、その後の話にしていただきたい。現状の耐震基準とか設
計基準でいいとか悪いとかという話は、ほとんど今の問題に対して
役に立たないと思うんです。アウトという答え以外出てこない"ので
あって、それを是非お願いしたいと思います


○関村主査
ありがとうございました。非常に重要な御指摘でございますので、
今後、予断をもたず進めていくという中で是非取り込んでいきたい
と考えています


 この発言の問題点は2つある。

機器の「実力値」?
 1つは耐震基準とか設計基準とかは後の話にして、機器の「実力
値」で評価をやろう、そういう新しい視点を入れてベストの答を期
待したいと言っていることである。平たく言えば、耐震基準や設計
基準ではアウトという答え以外出てこないけれども、実際はセーフ
なんじゃないのか、そういう新しい考えで評価せよ、と読める。こ
れは安全性を無視した非常に危険な考え方ではないか。


地震で材料は強くなる!

 もう1つは、「損傷、損傷という言葉が出ているんですけれども、
非常に大きな塑性変形を受けたとしたら、(金属材料は)かえって
強くなるという問題で、損傷という心配はむしろないと思うんです。」
と発言していることである。これは本気だろうか?
 図1に示すように、塑性変形をすると材料が変形に耐えられる応
力はAからBへ大きくなり、材料は強くなったように見える。しかし、
さらに塑性変形を続ければ材料は×印の破断点へ向かうのであって、
B点はその途中まで進んだことを意味する。このように塑性変形を受
けた材料は破断までの余力が減ってしまう。破断までの余力が減る
ということは、材料が外部の力(地震動など)を吸収できなくなる
ことを意味する。この吸収エネルギーは耐震設計においても重要な
ファクターであり、吸収エネルギーが減ればそれだけ弱く、脆くなっ
てしまうのである

 塑性変形によって金属材料は強くなるのではなく、硬化するので
ある
。硬化というのは脆くなることへのステップである。動脈硬化
を起こしたとき誰も血管が強くなったとは言わない。こういう金属
材料は塑性変形で強くなる、損傷という心配はないというような認
識で健全性を評価されてはたまらない。


「たわごと」が方針になった

 このワーキンググループでの会合を傍聴していて、単に一委員の
「たわごと」に過ぎないかとも思ったが、驚いたことに原子力安全・
保安院はこれを真に受けて今後の評価に取り入れるというまとめを
行っている。
「第1回運営管理・設備健全性評価WG資料に対する意
見等を踏まえた対応について(その1)」(2007.10.2)で次のよう
に質問を要約し、保安院として答えている。


【問】経験した地震に対して、機器が実力としてどのような挙動を
したか、どのような応答をしたかについて確認する必要がある。ど
うして耐えたのか、塑性化すると強度は増す。規格にとらわれない
実力値で評価するといった新しい視点をいれた評価を期待する。そ
の結果が耐震基準、設計基準に役に立つ。(小林委員)


【答】外観上特に損傷が認められない機器について、地震による応
答が認可された工事計画上の耐震設計における許容応力を超える場
合には、御指摘のとおり、機器の実力としての評価を行う必要があ
ると考えている。


 一体どういう評価をやろうとするのか。何が解るというのだろう
か。機器に塑性変形(ひずみ)があってはならない、塑性変形した
機器や材料はもはや使うべきでない。これは鉄則であろう。それを
踏みはずすというのだろうか。


原子力安全・保安院の「点検・評価計画」

 さて、原子力安全・保安院は、11月9日付けで「点検・評価計画」
を発表し、それを東京電力に指示した(2)。それによれば、点検・
評価の対象は電気事業法に基づく工事計画書に記載された全ての設
備を含むとしている。また、点検・評価の方法は、目視点検や非破
壊検査などの実物の検査と計算による発生応力の解析の両面から行
うとしている。
 単純化したモデルを立ててコンピュータによって発生応力を計算
した解析結果がどの程度本当なのかはいつも議論になるところであ
る。コンピュータによる解析だけで大丈夫だということはできない
ので、現実とのつき合わせが必要になる。それが目視点検であり非
破壊検査である。
 しかし、目視点検や非破壊検査で解ることは限られている。機器
にひび割れが生じていれば、超音波検査(UT)や浸透検査(PT)な
どの非破壊検査で見つけ出すことが可能である。しかし、そこに至
る途中の塑性変形(ひずみ)をこれらの方法で見つけることはでき
ない。原理的にはX線回折検査でひずみを検出できるはずだが現状で
は使われていない。塑性変形を見つける方法がないから、小林英男
氏は「強くなるから問題ない」などと議論をミスリードするのか。


設備・機器の経年劣化と過酷な地震動のダブルパンチ

 原子力発電所は、原子炉を中心に圧力容器とその炉内構造物があ
り、圧力容器には多数のノズルや配管等々が取り付けられている。
原子炉建屋からは主蒸気管がタービン建屋へ連なっており、タービ
ン建屋にはまたタービンや発電機を始めとするさまざまな重要機器
があり、多くの配管が張り巡らされている。しかも、柏崎刈羽原発
の運転開始は1号機が1985年で20年以上、最も新しい7号機(1997
年)でも10年を経過しており、設備・機器の経年劣化も起っている
と考えられる。予期せぬ苛酷な地震動に見舞われたこれらの機器類
が健全に設計当初の状態を保っているのかどうか、経年劣化と地震
の影響の両方を考えねばならぬことはIAEA(国際原子力機関)の調
査団も指摘している
。そういうダブルパンチを受けた機器の健全性
評価をきちんとやるには膨大な時間と手間がかかるであろう。それ
に伴う被曝労働も懸念される


代表選定の危険

 前述の保安院が東電に指示した点検・評価のやり方の終わりには
「代表設備を選定する等により点検事項や解析対象を絞り込むこと
は妨げない」とある。「その場合は代表設備の選定の考え方を明確
にすること」という注釈がついているが、コストを優先して手間・
暇を惜しんできた東電がどこまできちんと必要十分な点検をやるか
どうか、その調査結果に対して保安院や「調査・対策委員会」が事
業者の立場に偏らない公正な判断を下せるのかどうか、きびしい監
視が必要である。


参考文献
(1)総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会「中越沖地震
における原子力施設に関する調査・対策委員会」(班目春樹東大教
授)の「運営管理・設備健全性評価ワーキンググループ」(主査・
関村直人東大教授)第1回会合(2007年9月4日)議事録
(2)経済産業省原子力安全・保安院「新潟県中越沖地震を受けた柏
崎刈羽原子力発電所の設備の健全性に係る点検・評価計画について」
(2007年11月9日)


(本稿は、2007年11月17日に長岡市で開かれた「柏崎刈羽・科学者
の会」講演会の講演予稿をもとに執筆したものである。)


★柏崎刈羽・科学者の会★
http://kkheisa.blog117.fc2.com/

上の引用元となった議事録はこちらです。(PDFです)


http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g71002a09j.pdf


「塑性変形を受けると強くなる」わけではなく、硬化し、降伏点に近づくという基本を専門家が知らないはずがありません。

単なる方便(上ではたわごと、とされていますがわたしもまさにそう思っています)として、こんな愚かな主張をし、そこに「先生、ご説ごもっとも」、とちょうちんを持ちながらお墨付きとしてそれを利用する、そんな行政の露骨な話の進め方には不信感しか持ちえません。


市民の中には工学や科学に若干は詳しい(その領域やその周辺を生業としている)者がいることなどは、まるで彼らの眼中にはないようです。


教育再生会議や改悪教育基本法による学習指導要領案、 教育振興計画では、子どもは叩かれれば強くなる、といった趣旨を思わせる発言・表現が多々あったことを思い起こします。


鉄は叩けば強くなる、ということわざはありますが、人間も、原発も、鉄ではありませんし、鉄とて単純に叩けば強くなるものではありません。


~~~

UNPLUG KASHIWAZAKI-KARIWA

引き続き、柏崎刈羽原発停止への署名↑をお願いいたします。

被災された方々の不安と風説被害に心よりお見舞い申し上げます。

同時に風説被害解消を挙げつつ安全宣言をいたずらに急ぐ政府・企業方針に懸念を覚えます。


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