特集:増えろ、NIC@_M@STER

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NIC@_M@STER、エレクトロニカ×アイマスというニッチもきわまる動画に付けられるタグです。
さすがにマニアックな需要とあってなかなか作品も増えないのですが、最近いくつか良作が出てきて、盛り上がりの気配を感じさせます(まあニコマス全体からすれば微々たるもんですが)
今回はその中から「これは!」というものをピックアップし、その独特の世界を味わっていただきたいと思います。


まずはできたての最新作から。Joseph Nothingの名曲です。ざらつく画面、ざらつく音の中で踊る春香からは、そこはかとない哀感と矜持がひしひしと感じられます。この曲を表現しきれるのはまさに春香だけ、と確信できる傑作ですね。
”春香はこの曲っぽい娘だなぁといつも感じていた”という投稿者コメントにしみじみと同意せざるをえません。しかし、まさに二次創作の根源といった言葉ですよね。この方は前作(sm5846228)もニカマスの良作で、かなりこちら方面での期待の逸材です。


こちらも新作。Aphex Twinの曲に乗せて、ひたすら律子のコミュ、というニカマスらしい奇っ怪な動画。単純ではありますが、それだけに中毒性の高い代物です。
最小限の動画素材を駆使して世界観を描き出す方法論は、ニコマスきってのミニマリスト41Pを彷彿とさせるモノがありますね。なんともとんがった作風です。


雰囲気をつかんでもらったところで、過去の良作をチョイスしていきましょう。


ニカマスと言えばまず外せないのがsquarePのこれ。Come to Daddyでアイマスという時点でただ事ではないのですが、それを見事に演じきる春香も圧倒的。現在1作しか残していないのが惜しまれる名作です。


ここいらでメジャー作を出しておかないとニカマスはマイナーばかりだと思われてしまうので(ておくれだー)
Project.VAで名を上げたhikeP、ソロでのベストはこれだと思います。beatmaniaIIDXのThe end of spiritualityとおはよう朝ご飯というとんでもないマッシュアップを成功させている手腕もさすがですが、映像の不安げな寂寥がただ事ではない。古参ファンなら誰でも知ってる例の衣装の意味がラストで明らかになるとき、私は今でも涙を抑えられません。あの頃を知っている人は一度は見ておくべき。


MSC3でブレイクしたおとやP、初期の実験作、という位置づけでしょうか。squarepusherのPVの再現な訳ですが、元PVがアレなだけあってMADもえらいカオスです。実写パートのやばさに負けない千早のインパクトが楽しいですね。


寡作ながら、インパクトある動画をいくつも残しているしちやんP。画面作りが抜群に巧いPです。ボカマスとしてチョイスするのが機材欲しいPで、しかもオヤスミサラウンドなあたり、卓抜なセンス。
もちろん動画もそれに見合った絶品。まどろむような曲のゆらめきを残しつつ、いかにもしちやんPらしい光と色彩の鮮烈さをも印象づける、絶妙の映像。おすすめです。


もちろんみかんスジPは外せませんが、windowlickerは20選にも乗せましたし、たまにはこちらを。Pらしい白飛びの著しい画面と、固定バグを用いた映像が織りなす独特のダンス世界を堪能できます。


めぼしいダンスMADを紹介してきました。音マスやボカマスも混じり、なかなかにバラエティに富んだ面子になったと思います。
とはいえ、こうして眺めてみるとニカマスのダンス作品は、共通する独特の空気を持っているように感じないでしょうか?

”ロックはダンスを踊らない”とは「激刊!アイドルマスター」の婿固め氏がヨルPについて語るのに用いた至言ですが、私は同じ類の隔絶をニカマスも孕んでいるように思えます。いわゆるエレクトロニカは、アイドルのダンスや歌唱のために用意されたものではありません。どちらかといえばフロアで群衆を踊らせるための楽曲で、ボーカルはあくまで声ネタ・素材という要素が強いでしょう。エレクトロニカは、アイドルのためのものではあり得ません。
そんな楽曲に、アイマスのアイドルたちが組み合わされる時、軋みが生じないはずはない。ずれと断絶を内包したまま、結合される音と映像。MADの持つ本質的な不和が、そこには強く現れてくるのです。
ニカマスの作り手は、必然的にそこに敏感になっているのでしょう。素材としてアイマス映像を解体していく度合いは、おそらく他のタイプのPよりも強くならざるをえない、と想像できます。そうして、ニカマスの映像そのものはより隔絶的な、手の触れがたいものとして成立しています。

重要なのは、その解体を経、素材として用いられながらなおも残る、彼女たちの存在感です。音と画面の双方から切り離され、それでもアイドルはそこにいる。
その強度は間違いなく動画を支えていて、だからこそ逆に強調される隔たりが、ひどく切ないのです。


またうっかり語ってしまいましたが、あまり気負わず楽しんでいただけたらと思います。エレクトロニカ好きの方々はもちろん、そうでない方も、ちょっと珍品に手を出すつもりで手を付けてみてはいかがでしょうか?


(余談:今回はダンスMADばかりになってしまいましたね。ニカマスタグのもう一つの中心である音いじり系も、一度はきちんと扱ってみたいものです。あちらはよりカオスですからね……)
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