you don't know what love is

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僕の好きな小説家の一人に村上龍がいる。「限りなく透明に近いブルー」や「sixty nine」や「コインロッカー・ベイビーズ」などで代表される作家なのだが、特に好きなのがいわゆる”気取り物”とでも言おうか。

それはとにかく気取っているのだ。フランスのあのレストランがどうとか、ニューヨークのクラブがどうとか、あそこの料理とワインがどうとか、とにかく気取っているのだ。でもその気取りようが僕はとっても好きで、そういった小説をよく読む。

今読んでいるのが「You don't know what love is.-恋はいつも未知なもの」という小説だ。短い話で構成されていて、それぞれの話のタイトルが有名なジャズの曲となっているのだ。そしてその話の中にはジャズのその曲の歌詞が書かれている。気取った作品である。



今日の仕事からの帰り道。いつものように、iPod nanoからランダムで曲が流れて僕はそれを楽しみながら帰るのだが、家まであと数分となったとき、ある一曲が流れてきた。John Coltraneの"You don't know what love is"だったのだ。僕は小説のタイトルにもなったこの曲を持っていたとは知らず、驚き、それをじっくり聞きたいと思い、そのまま家には帰らずに少しだけ遠回りをして家に帰ったのだ。

ただそれだけの話である。
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the day

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あの日のあの朝、僕は前日までの疲労による深い眠りの中からあの甲高い電話のベルによって起こされた。

「また、電話かよ・・・。」

その電話の少し前、同じ電話が既に僕を一度起こしていた。



"Hello?"

"イ...is this...ユ...Yuko?"

"...No... I think you've got a wrong number, sir."



その時の電話の男は日本人の名前を出して急かした声で僕に尋ねてきた。名前はYukoでもMikaでもMichikoでもどうでもいい。ただ、明らかに日本人の英語だった。

しかし、その電話の異常さに気づく前に僕は再び眠りに入った。2度目のベルが鳴ったときも、夢か現実か区別できないまま、受話器を取った。



"Hello?"

「ちょっと、あんた、とにかくテレビつけなさい!」


日本からの母親の声だった。

言われるがままにテレビのリモコンを手に取りボタンを押す。するとそこには映画のワンシーンのようなものが映っていた。また新しい映画ができたのか?アクション映画っぽいな。

しかし、何かが違っていた。僕は変な違和感に襲われたのだ。

そういえば、人の顔は例えばコンピュータで目と目の間を少し離した写真に修正したとき、その顔をよく知る人は、違和感に襲われるという。ほんの僅かな違いでも違和感を感じるのだ。しかし、その違和感の原因、つまり目と目が離れたことには言われるまで気づかないという。

同じような違和感を感じながらも、自分の中では映画のワンシーンという結論に達しようとしていた。しかし、チャンネルを変えたとたん、その違和感が現実のものになった。

どのチャンネルを見ても、同じ映像しか写されていないのだ。




2001年9月11日



この日、それまでの世界は完全に変わってしまった。

自分でも気づかないうちに一瞬で死んでしまった人、死への恐怖とともに死んだ人、暗い瓦礫に埋もれてそのまま息絶えた人、助けに向かって巻き添えになって死んだ人・・・。

そしてその人たちの何十倍もの人が大切な人を失った悲しみに暮れた。

人は人を殺すこともできるし、生かすこともできる。


この日、港湾警察から救助のためにワールドトレードセンターに向かった警官たち。ビルの崩壊によって瓦礫の底で生き残った二人の生きる意志とその人たちを愛する人たちの願い。何千人もの人が亡くなり、何十万人もの人が被害を被った。その中の僅か二人の話である。しかしそれでもあの日の事を伝えるのには十分だったと思う。

いろいろ賛否両論があるようだが、僕はいい映画だったと思う。

映画"World Trade Center"を観ました。
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