今日は雑感★ペットロスと運命の犬の話③ | ようこそ!居酒屋『雑食館』へ☆

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居酒屋「雑食館」へ、ようこそ。
「雑感」と「食感」、皆様に美味しい(?)ネタを提供したいと思っています。
どうぞ末永く御贔屓のほどを。不定休(笑)


ワンちゃんネコちゃん大集合!
かわいいペットがみんなを待ってるよ!!








と、


明るい口調の女性アナウンサーの声で、テレビ画面の向こう側からそう呼びかけられるも、


「アタシはその『みんな』には含まれてないよな……
って、思ったんだけどねwww」


Aさんのこの言葉に一同大爆笑しました^^;







思ったんだけど……







「行って…… みようかな……」



小さいながらも、なぜか次の瞬間に口を突いてでた言葉は、そのような自分でも意外なものだった……

という。





なにが彼女をそうさせたのかは分からないが、果たして彼女は、そのイベント当日を迎えたのだった。



「行く」と言ってしまった手前、家族の運転でイベント会場の駐車場へやって来たまではよかったが、いざホールの中へと進もうとすると、足が竦んでしまって、やはり体は固まってしまう。

扉が開くたびに聞こえてくる、犬たちの鳴き声……



正直、聞くに堪えなかった。。。






「やっぱやめるわ…… 車で待ってる……」


とまで言ったが、彼女は、
「なに言ってんの! ここまで来たんだから!!」
と、半ばそういう彼女の妹の強引さと気迫に背中を押される格好で、会場内にどうにか足を踏み入れる。






会場となったイベントホール内には、所狭しとゲージに入れられたさまざまな犬や猫たち。
なかにはウサギやハムスターやインコやオウムなども並んでいた。


久々に嗅ぐ噎せ返るような獣のニオイにやや目の前がクラッとして、最初こそ、ハンカチを鼻と口に当てがうより他なかった彼女だったが、しかしそこはやはり犬好きの本能が微かにも残っていたからだろうか、そうこうしながらもそこかしこを歩き回るうちに次第に体も場の空気に慣れてゆき、気が付くと、その雰囲気を素直に受け入れられるようになっていた。

しかし、以前のように純粋には、まだ楽しめはしなかったが。。。






すると、ある一角に差し掛かった時だった。


「けっこう大きな子もいるのねぇ……」


と、傍らを往く彼女の母親が言った。

成犬とまではいかなくても、子犬と言うには育ちすぎた感のあるものも少なくはなかったのだ。

猫もまた然り。


「小さい内はすぐに売れるけど、こういうのって不運にも売れ残ると、値を下げてもなかなか飼い主が見つからないものなのよね~」


彼女の妹が言った。

そういう「育ちすぎた犬」たちは、アクリル板や透明ビニール幕で囲われた「見るだけで触れない」ゲージではなく、「ふれあいコーナー」と銘打ち仮設の柵越しに相手をすることの出来るサークル内に居ることが多く、彼女たち一家はそのエリアに立っていたのである。

彼女はそこの柵に手をかけて、そのサークルの中をぐるりと見渡した。



と、その時だった。

何匹か中にいた犬の中で遠くから、べつに呼んだわけでもないのに、彼女の方に向かって真っすぐに駆けてきた一匹の黒い犬の姿があった。


アメリカン・コッカ―・スパニエルのメスで、生まれて一年にもなろうかという犬だった。




「そういうトコの犬ってねぇ、小さい頃から人にいつも構われてて慣れてるから、すっごい愛想が良いの」


とボクに話す彼女。


やけに自分にだけじゃれてくる犬。
そうまでされると、当然犬好きとしては、「カワイイ~♡」とは思った。
しかも値段を見ると、ものすごく安値であった。


彼女は、続ける。


「あの時、自分、ホントにお金がなかったんだけど……」


財布の中にあったナケナシのお金でも買えてしまうほどの投げ売り状態だった、そのアメリカン・コッカ―・スパニエル。。。


一時は一気に引き寄せられた。

気に入った。

しかし、気には入ったものの、だからと言って、まだ買って家へと連れ帰る気にはなれないでいた。

彼女は一旦、その場をあとにする。





その後、適当に会場内を一回りして、駐車場へと戻った。


「どっかでお昼でも食べてからウチに帰ろう」ということになり、後部シートのドアが閉まる。


「シェルティー(※シェットランド・シープ・ドッグ)、居なかったね……」


運転手である妹が、寂しげにそう呟いてエンジンをかけた。


(飼っていたのと同じ犬種の子が)居なくてよかった……

と思った。



本当に居なくて、よかったと……









……思ったけど、、、、



その次の瞬間だった。








「ちょ、ちょっと待って!!」






そう言うやいなや、蹴破るようにドアを開け放って、元来た道を駆けていった彼女。。。





しばらくして件のアメリカン・コッカ―・スパニエルを抱きかかえて彼女が車に戻ってきたのは、言うまでもなかった。。。









つづく。。。