一話 六本木ヒルズ、大展望台にて 『サラ貧』
テーマ:サラ貧本書が次のような人々を創出しても、一切の責任を負いかねます。
・本書を読んで、サラリーマンを辞めたくなった人(もしくは辞めてしまった人)
・本書を読んで、サラリーマンになるのが嫌になった学生
・本書を読んだ従業員が大量に退職してしまったと嘆く社長
・本書を読んで、社会主義国家に移住したくなった人(もしくは移住してしまった人)
本書は、高名な経済学者の理論を基にしたフィクションです。
一話 六本木ヒルズ、大展望台にて
弾力に富んだ温かな感触を唇に感じ、僕は焦燥感に駆られながらも瞳を閉じることにした。
どうした、エリナ?
こんなところで、お前らしくもない。
みんな見てるじゃないか。
そう。
「こんなところ」。
そのとき、僕とエリナは、「成功者のシンボル」といわれる六本木ヒルズの大展望台、「東京シティービュー」にいた。
それにしても、中空を舞うような六本木ヒルズの展望台で、衆人環視の中、なぜ、僕はエリナとキスをしているのだ。
って、それは僕にもわからない。
突然、唇を重ねてきたエリナに聞いてほしい。
そもそも、エリナが六本木ヒルズの大展望台に来たがったのも謎だ。
一ヵ月前、僕の誕生日に二人で来たばかりだ。
もっとも、そのときは、こんな巨大なビルにオフィスを構えられる社長がいる理由も、一方で、都内には住めないために片道一時間半もかけて通っているサラリーマンがいる理由も、僕にはわからなかった。
しかし、今ならそのカラクリ、いや、僕たちが暮らすこの社会の仕組みが手に取るようにわかる。
わからないのは、むしろ、エリナのこの大胆な行動だ。
眼下に広がるきらびやかな夜景に、乙女心がロマンで満たされてしまったためだろうか……。
でも、一ヵ月前も僕たちはこの絶景を見ていたではないか……。
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