2009-11-30 17:49:59

一話 六本木ヒルズ、大展望台にて 『サラ貧』

テーマ:サラ貧
サラリーマンだから貧乏ですが、なにか?


本書が次のような人々を創出しても、一切の責任を負いかねます。


・本書を読んで、サラリーマンを辞めたくなった人(もしくは辞めてしまった人)
・本書を読んで、サラリーマンになるのが嫌になった学生
・本書を読んだ従業員が大量に退職してしまったと嘆く社長
・本書を読んで、社会主義国家に移住したくなった人(もしくは移住してしまった人)



本書は、高名な経済学者の理論を基にしたフィクションです。



一話 六本木ヒルズ、大展望台にて



 弾力に富んだ温かな感触を唇に感じ、僕は焦燥感に駆られながらも瞳を閉じることにした。

 どうした、エリナ?

 こんなところで、お前らしくもない。

 みんな見てるじゃないか。

 そう。

「こんなところ」。

 そのとき、僕とエリナは、「成功者のシンボル」といわれる六本木ヒルズの大展望台、「東京シティービュー」にいた。

 それにしても、中空を舞うような六本木ヒルズの展望台で、衆人環視の中、なぜ、僕はエリナとキスをしているのだ。

 って、それは僕にもわからない。

 突然、唇を重ねてきたエリナに聞いてほしい。



 そもそも、エリナが六本木ヒルズの大展望台に来たがったのも謎だ。

 一ヵ月前、僕の誕生日に二人で来たばかりだ。

 もっとも、そのときは、こんな巨大なビルにオフィスを構えられる社長がいる理由も、一方で、都内には住めないために片道一時間半もかけて通っているサラリーマンがいる理由も、僕にはわからなかった。



 しかし、今ならそのカラクリ、いや、僕たちが暮らすこの社会の仕組みが手に取るようにわかる。

 わからないのは、むしろ、エリナのこの大胆な行動だ。

 眼下に広がるきらびやかな夜景に、乙女心がロマンで満たされてしまったためだろうか……。

 でも、一ヵ月前も僕たちはこの絶景を見ていたではないか……。



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