8. 灰色文献

 

灰色文献とは

通常の出版物の流通経路を通らず、配布が限定されていたりして入手困難な資料、のことである。

 

灰色文献の種類

(1)テクニカルレポート

(2)翻訳文献…図書や雑誌論文の翻訳物

(3)学位論文…修士論文、博士論文

(4)会議録

(5)プレプリント…予稿集。前刷りとも呼ばれている。会議やシンポジウムなどの発表に先立って、原稿段階の資料が配付されることや正式な印刷物が刊行されるまでの一時的資料である。

(6)大学紀要

(7)企業文献…企業が自社のイメージを高めるために刊行される資料のことである。

(8)政府刊行物…国および地方自治体の公文書、調査報告書、審議会資料をはじめ、政府や助成金による研究調査・報告書などを総称して政府刊行物とよぶ。

9. 蔵書の特性と役割

 

「蔵書」の定義

図書を収集し所蔵すること、また所蔵している図書のこと。図書館で所蔵している図書館資料全般のことを指すことが多い。

 

「コレクション」の定義

コレクションという語が用いられている場合には、全蔵書のうちのある共通の性質を持ったひとまとまりの資料の集積を指して言う。

 

蔵書の目的と意義

ランガナタンの図書館学の第3法則「いずれの図書にもすべて、その読者を」と述べている。そのためには、利用者が図書館資料を直接手にとって閲覧することが出来る開架制こそが適切であるとする考えに繋がる。

 

蔵書は、単なる死蔵されるものではなく、利用者によって利用されなければ蔵書の意味はない。

 

10. 蔵書形成の方針

 

蔵書構成

公立図書館の蔵書は、住民の資料要求に応えるために集める。資料を集めること自体を図書館の目的としてはならない。珍しい資料を所蔵しているとか、特殊な資料が多いといったことは、それだけでは公立図書館にとってなんら自慢できることではない。それらを活溌に利用する市民がいたこそはじめて自慢出来るのである。

 

一定の目標をもって蔵書を計画的に作り上げていく作業を「蔵書構成」とよぶ。

蔵書を計画的につくりあげるために、図書館は「蔵書構成方針」を作成する。蔵書構成方針には、どのような資料をどのように除去するのかについての方針も含まれる。「蔵書構成方針」は「収集方針」とも呼ばれる。

 

収集・選択・除籍

必要な資料を集めてきて蔵書に加える一連の作業を「収集」という。収集は住民の資料要求に応えることを目標とし、収集方針に従って行う。行政の意向や政治の動向、政党・団体などの圧力、図書館職員の個人的嗜好によって収集されてはならない。

 

収集のなかでも、蔵書に加えるかどうかを個別の資料について決定する作業を「選択」という。選択をおこなうときに使う実務的で細かい基準を「選択基準」という。

 

不要になった図書館資料を開架から取り除く作業を「除架」という。「除架」のなかでも他の図書館に移管した資料や廃棄した資料は、その図書館の蔵書ではなくなるので「除籍」とよぶ。除籍は除籍基準を設定して、それに基づいて行っている。

 

除籍の基準

日本の公立図書館では、除籍に関しては極めて消極的である。一旦除籍した資料は、再び購入しないかぎり、二度と利用出来ないからである。今までの一般的な除籍基準としては、「紛失した資料」、「汚損・破損のひどい資料」、「内容が改訂された旧版」、「利用の少なくなった複本」、「回収不能になった資料」などであった。

 

除籍の手順としては、一定の年月日(切断日)を設定し、その日以降一度も借りられていない本をすべて除籍する、というものが一般的である。

 

蔵書更新

利用頻度の低くなった資料を開架から閉架書庫に除架したり、閉架書庫から廃棄処分にしたりして、蔵書を常に新しいものに更新していくことを「蔵書更新」とよぶ。蔵書更新は、利用者が新しい情報を図書館に求めて来館してくるので、その要求に可能な限り応えるという意味で非常に重要な仕事となる。

 

蔵書評価

収集方針に照らして、どういうところが優れているのか、どういうところが劣っているのかなど、現在の蔵書の状態を把握・評価する作業を「蔵書評価」という。

 

分担収集

 図書館協力の一つ。複数の図書館が、資料購入費の効率的使用と多角的な蔵書構成を図るため、分担する主題や資料の種類をあらかじめ定めておき、それに基づいて収集すること。

 

分担保存

図書館協力の一つ。複数の図書館が、資料購入費の効率的使用と多角的な蔵書構成を図るため、分担する主題や資料の種類をあらかじめ定めておき、それに基づいて保存すること。

利用頻度の低い図書館資料ばかりを集めた保存図書館もある。これは個々の図書館が設置する場合と、複数の図書館で共同設立する場合とがある。

 

蔵書点検

資料の管理として重要な仕事である。1年に1回、原簿に記載されている資料がはたして図書館に所蔵されているかどうか、また資料の利用価値を再評価することである。コンピューター化されている所では、バーコードを読み取っていく、という方法が採られている。この蔵書点検で、紛失資料や、破損の著しい資料、内容が古くなった資料が抜き出され、除籍にされる。

 

11. 収集方針

 

収集方針の成文化と住民への公開

収集方針とは、塩見昇は「図書館サービスの方法を資料の面で表現したもので、どのような蔵書(資料群)を構成するのかの基本的な考え方を集約したものであり、日常の資料選択・収集業務に対する指針となるとともに、住民の図書館資料への期待の拠りどころとなるものである」と定義する。

 

図書館の蔵書は、個々の職員の恣意によって構成されてはならない。また、館長や担当職員が交代したからといって蔵書の内容が大きく変わってはならない。

 

収集方針を成文化しておき、蔵書構成についての基本的な考え方を職員全員の共有のものにしておかなければならない。しかし、現実的には収集方針を明文化している図書館の数は少ない。

 

住民には当然のこととして、図書館からどのようなサービスを受けられるのかを知り、それに対して意見を述べる権利がある。図書館側も図書館運営に対する住民の参加と協力を歓迎する。このために収集方針は住民に公開されていなければならない。

 

収集方針を明文化する際の6点(塩見昇)

(1)その図書館の奉仕対象とサービス活動が基本的にめざすところ

 

(2)図書館資料と知的自由との関連

(3)収集・選択の機構と決定にあたる責任の所在

 

(4)収集する資料の範囲

 

(5)利用者からの要求(リクエスト)と蔵書に対する批判への対処の方法

 

(6)蔵書からの除去、廃棄についての基本的な考え方

 

12. 選書の意義と予約制度

 

選択

個々の資料について、それを収集するかどうかを判断する作業を資料選択という。

その際、図書館員は、その本の扱っているテーマや著者名を確認し、一部を読むことによって、それがどういう本で、利用者にどのくらい求められている本なのかを把握する。

 

選択者

選択に関わる職員のことを選択者という。前川恒雄は選択者に必要な条件として次の3点をあげている。

(1)本を知っていること。

(2)利用者の気持ちを知っていること。

(3)図書館の使命を自覚していること。

 

図書館員は、本を知り利用者を知った上で、両者の出会いを保障しなければならない。

 

図書館で利用者とじかに接していない人や図書館の使命を学んでいない人は、選択者となりうる条件下にはないことがわかる。このような観点からすれば、特定分野についての選択はその分野の専門家に委ねるという考え方や、収集する本の一部を住民が選択してもよいとする考え方は、誤りである。

 

選択会議

資料を選択するときは複数の職員による会議を開くことが多い。この会議のことを選択会議・選書会議・選定会議などという。

 

予約制度

利用者から図書館資料の予約(リクエスト)を受け付ける制度。

 

複本

同一の資料を複数冊購入すること。近年、ベストセラーを30数冊

これに関しては、書誌学者・作家林望の所謂「公共図書館無料化資本屋論」という批判が存在する。

 

13. 見計らい制度

 

見計らいとは

直接選択……実物の資料を手に取りながら行う選択方法

間接選択……出版物リスト・パンフレット・書評など、各種ツールをもとに行う

 

直接選択はさらに、書店や取次が図書館に定期的に資料をもちこみ、その中から必要なものを図書館が選ぶ方法(見計らい)と、書店や取次へ図書館員が出かけていって選択する場合の二つがある。

 

見計らいの概要

見計らいを実施する図書館は、書店あるいは取次会社と一定の協定や契約を結んで、あらかじめ定めた枠に従って定期的に資料を持ち込んでもらう。

書店や取次会社が持ち込む資料は、新刊書が殆どであり、持ち込む頻度は一週間に一度という場合が多い。

選択から排架までの作業を一週間以内に必ず終了させるようにしている図書館が多い。

 

見計らいの長所

①実物を手にとって見られること

②本を総合的に判断出来ること

③新刊書の実物を確保出来ること

 

見計らいの短所

①資料を持ち込む側に選択の主体が移る可能性がある。取次会社や書店による一種の予備選択の可能性がある。

②実物の中から選びがちなので、図書館に持ち込まれなかった類書との公正な比較がしにくい。

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