2009-10-10 08:23:13

私立学校は民間企業?

テーマ:教員・学校組織

以下に記した話題は,既に私学に従事している専任教員であれ,非正規教員であれ既知のことかもしれないので,

読み飛ばして頂いても構いません。
また,マトモな経営を行っている,一部の私学の経営者にとっても,
以下のことは「お前なんかに言われなくともわかっている」という内容ばかりです。


ただ,学校の事情を知らない人からの話を聞いたり,ネット上での書き込みなどを見たりすると,
「私学は民間企業だから,国・公立の学校とは異なり,何をやっても自由音譜という認識を持つ者が,未だに多いですね。
国・公立の学校で,長年学生生活を送ってきた者だけならばまだしも,
ずっと私学で過ごした上,私学の教員に従事している者にまで,上のような認識を抱いていた者が居たことには,驚きました。
TVドラマをはじめ,さまざまな情報媒体の影響で,私学は「何をやっても良い」という風潮を作り上げてしまったのかもしれません。


もっとも,これはTVなどだけではなく,実際に私学経営者の中に,依然としてこのような認識を持つ者が,
過去にも居たり,今も現実に居るから
ではないでしょうか。
実際に,「ここは単なる学校ではない。企業だむかっ」と断言した某私学の教頭を,私はこの耳で直に聞いたことがあります。
また,「私立だから何をやっても良いんだ」と豪語して法律違反行為を行おうとした,私学の経営者を,間接的に聞いたことがあります。
私学の経営・管理側に立つ者ですら,このような認識を持っている者が未だに居るのです。


では,上記したように,「私学は民間企業という認識については,YesかNoかはてなマーク
結論からいえば,この認識は明確に“No”です。私見ですが,その大きな理由を三点掲げます


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一点目は,教育基本法(2006年改正・施行)において,

私立学校の果たす役割と教員の役割がはっきりと明記されているからです。


まずは,私立学校に関する役割を明記した,教育基本法 第八条について抜粋します。



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教育基本法 第八条
  私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、
  国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、
  助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

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この条文からもわかる通り,私立学校は「公の性質及び学校教育において果たす重要な役割」があるのです。
そのために,「国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興
に努めているのです。


それゆえ,私学は,決して営利追求を第一義とする「民間企業」ではありませんし,そうあってはなりません
まして,国や都道府県からの助成を受けている以上,私学「公の性質」を果たさなければならないのです。
国民・県民の税金が少なからず使われているわけですから。



続いて,教育基本法 第九条では,国立・公立・私立を問わず,学校教育に欠かせない教員の使命と職責,
また身分の尊重と待遇の適性を図るべき旨を明記しています。


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教育基本法 第九条  
  法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究修養に励み、
  その職責の遂行に努めなければならない。
 2  前項の教員については、その使命職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され
    待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

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第九条 第1項は,教員が果たすべき役割について書かれていて,これについては,国・公・私立関係無く,
また専任(教諭)・非正規教員を問わず,最低限果たさなければならない当然の義務です。
問題は,第2項。果たして,教員の「身分尊重」や「待遇適正」は期せられているのでしょうか
特に,近年の多くの私学の教員採用では,正教員(教諭・専任教諭・専任教員)として採用されるケースが激減し,
それに代わって,常勤講師非常勤講師などの非正規教員の数を増やしています


常勤講師非常勤講師の場合は,基本的に1年またはそれ未満の契約で交わされます。
その身分のまま,1年ほどの試用期間のうちに正教員へ昇格すれば,まだ良心的な学校の部類です。
特に常勤講師で目立ちますが,基本的に1年間,更新を続けても3年間を過ぎれば,
契約切れ
となり,その学校を自動的に去らなければなりません。幾ら,生徒や保護者から惜しまれても・・・しょぼん
酷い場合には,年度途中の「雇い止め」もあります。親からの一つあったクレームだけで・・・むかっというケースもあります。
現在では,「特任教諭」「特別教諭」「任期付教諭」「嘱託教諭」など,色々な肩書きによる非正規教員私学には存在します。


しかも,これまで正教員として確保してきた学校も,少子化の影響による経営面の悪化なのか,
それとも,年齢構成上最も割合の高い,高齢正教員の給与が高騰化している影響なのか,
年々,正教員の割合を減らして,非正規教員の割合を増やしていく傾向にあります。

これらの非正規教員は,教育基本法第九条第2項「教員の『身分尊重』や『待遇適正』は期せられて」いるのでしょうか!?
それとも,非正規教員は,「教員」としてみなされていないのでしょうか!?
これらの教育基本法上の条文を,私学の経営者はどれだけ理解して,遵守しているのでしょうかはてなマーク


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二点目は,私立学校は,「学校法人」によって設置される組織であるということです。


これは,学校教育法第二条でも,「私立学校法第三条に規定する学校法人」と定義されていることからも明らかです。
 ※小泉政権時に,「構造改革特別区域」内に限り,株式会社特定非営利活動法人が設置する私学も
  認可されていますが,私立学校法では「私立学校」とは読み替えられていないために,今回は割愛します。


その私立学校法では,「学校法人」について,以下のように定義しています。



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私立学校法 第三条
  この法律において「学校法人」とは、私立学校の設置を目的として、この法律の定めるところにより
  設立される法人をいう。

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学校法人」には幼稚園・小学校・中学校・高校・大学大学院専修学校各種学校)まで幅広くありますが,
各組織の所轄庁などについては,今回は割愛します。


ここでは,「学校法人」と「民間企業」との違いについて,言及します。


言うまでもなく,民間企業(私企業)は生産をともなう営利活動を行うことを通して,
売り上げや利潤の追求を図っていくことを,何よりも優先していきます。
その活動の中から,経営陣は,従業員の給与や福利厚生を保障していきます。
さらに,上場されている株式会社の場合は,株主の利益を最優先に考える企業もあります。
業績が悪ければ,人員の削減や給与のカット,経営陣の交代なども独立採算制のもとで,柔軟に行われていきます。


民間企業は,基本的に営利活動団体なので,法人所得に対して30%の法人税が課せられます(2009年現在)。
また,その他,法人に関わる住民税・事業税・事業所税・不動産取得税・固定資産税・特別都市保有税にも課税されます。


一方,「学校法人」は,「学校教育を行うという公共性」を有することから,国税・地方税上様々な優遇措置が講じられています。
学校法人が納付すべき税については、収益事業を行う場合を除いては、法人税、事業税等において非課税とされ、
収益事業についても一般の法人に比べ軽減した税率が適用されていています。


具体的には・・・


 ①法人税は非課税
   ※ただし,収益事業を行っていた場合は法人所得の22%の税率がかけられます。
 ②その他,国税では所得税,登録免許税が非課税
  また,地方税でも住民税・事業税・不動産取得税・固定資産税・特別都市保有税は非課税
  事業所税も収益事業以外非課税都市計画税も目的外不動産を除き非課税です。


また、収益を学校法人の会計に繰り入れる場合に、収益の一部を損金扱いとすることが認められるなどの措置が講じられています。


加えて,学校法人に対して贈与・寄附等を行った者についても,個人・法人に関わらず非課税扱い、
あるいは一定割合(額)の寄附金控除や損金算入等を認めることにより、寄附者に税制上の優遇措置が講じられています。
これが一般の民間企業ならば、贈与・寄付分に対しても,課税されます。


このように,学校法人は,非課税になる税制上の優遇だけでなく,

金銭の贈与や寄付行為を受けた場合に寄付者が課税されず,寄付行為を行いやすくしています。


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三点目は,私立学校で忘れてはならない「私立学校助成金」。
これは,1976年に施行された「私立学校振興助成法」に基づいています。


この法律の骨子は,以下の3点にまとめられます。


 1.私立学校を設置する「学校法人」に対しては,又は地方公共団が、
   私立学校振興助成法施行令の定める基準に従って,助成することができる。
 2.国又は地方公共団体は,学校法人に対し,国会の議決又は地方議会の議決を経て,

   助成することもできる。
 3.ただし、助成を受ける学校法人は、「所轄庁」である文部科学大臣または都道府県知事
   経営状況の報告を行うなど、所定の監督に服さなければならない。



れでも,「私立(学校法人)は民間企業」だといえますかはてなマークはてなマークはてなマーク


もちろん,これらの税制面・贈与・寄付面の優遇措置私学助成に関しては,
学校教育における「公共性」「公益性」を果たすために施されている措置です。
国・公立学校のように,直接的に国や地方自治体によって,税金に基づいた学校予算が組まれているのとは異なり,
上記3点による優遇措置以外では,基本的に独立採算を行わなければならないので,民間企業に近い業務を行う時もあります。
それゆえ,公立学校のように,各自治体の教育委員会による運営ではなく,
各学校法人の理事会(民間企業では取締役会に相当)による意志決定が,重要になります。


ただ,その場合も,公教育を行う主体にふさわしい公共的な性格を高めていかなければならず,
様々な制度的仕組みが組まれています。詳細は省きますが,たとえば,学校運営の柱となる理事会は,
理事長及び設置する学校長も含め5人以上の理事2人以上の監事を置かなければならず,
かつ教職員や卒業生等の意見をとり入れるため理事の2倍を超える数の評議員で組織する評議員会を必す置かなければなりません。


問題は,これらの理事会正当な手続きをもって機能しているのかどうかはてなマーク
理事会の構成員の特定の人物(理事長・校長とは限らない)により,民主的手続きを行わず,
運営の意志決定や人事権をはじめ,学校法人内の特定人物が独占してしまう恐れもあります

いわゆる,「ブラック校」と言われる学校法人は,上のような話をしばしば聞きます。



文面がかなり長くなり,どこがポイントかもわからなくなっているかもしれませんあせる
まとめますが,私立学校は・・・


 ① 「民間企業ではない」ということ。
 ② それゆえ,国立・公立学校に準じて,「公共性・公益性を考慮」しながら

   学校運営を行わねばならないこと。
 ③ ②の目的を達成するために,民間企業には無い税制面の優遇と,助成が施されてれていること。
 ④ 学校法人への助成には,国民・都道府県民の税金が少なからず投入されていること。


の4点の組織的な特徴を有しています。これで,私立学校による「やりたい放題」が許されない理由が分かるかと思います。


ところが,上記の公共性や公益性を鑑みない,私立学校が増えているのも事実です。
少子化で子どもの数が減少していたり,在来の専任教員の給与の高騰化に悩む,厳しい台所事情もあるのかもしれませんが,
それでも,他の民間企業に比べれば,相当恵まれている組織だという事を自覚して貰いたいものです。
東京私教連に加盟している教員(専任のみ)の平均年収は,900万円を超えているのだそうです。

理事会の者たちは,幾ら貰っているのでしょうはてなマーク 大部分の学校法人の理事会では公開すらしないそうです

それに対して,非常勤講師のみの年収は多くても300万程度。200万に達しない方も居られることでしょう。

「授業だけやっていれば良い非常勤講師と一緒にするなむかっという意見もあるでしょうが,厳然たる教員間格差です。


私立学校は,営利機関ではなく,教育機関です。
課税されないのが当たり前」だと思っていたり,学校運営を通して,特定の人間のみが巨大な財をなすような私学は,
早晩,教員(専任・非常勤問わず)だけでなく,生徒保護者からも信頼を得られなくなるでしょう

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