ストーリーで学ぶ本質を突く人生の教訓

人生や仕事で使える教訓をストーリーテリング(物語)を使ってお届け。成功や失敗のストーリーからあなたの人生にぴったりな教訓を手に入れよう。難解なビジネス書ではわかりにくいものもわかりやすく楽しめるストーリーで学ぼう。


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それは屈辱的な敗北だった。専務取締役の北川 平次(きたがわ へいじ)は吐き捨てるように言った。俺は主に社内の統率管理を行っている。悪い言葉で言えば、俺が皆を従わせている。俺が一声かければみんなが振り向く。悪い言葉で言えばだが。

俺は若い頃から人に率直な意見をぶつけてきた。たとえそれが上司であろうと。俺は媚びへつらうタイプの人間ではないから我慢というものを知らなかった。仕事とは力でねじ伏せ、他からとってくるものだとばかり思っていたのだよ。それに伴い、結果もつき昇進も果たしてきたからな。それが当たり前だと思っていた。

だから、同僚の高橋 大輔(たかはし だいすけ)とは根本的に馬が合わない。やつも媚びへつらうタイプの人間でないことは重々知っているのだが、誰構わずヘラヘラとしているのが気に入らない。役職者だろうと末端の人間だろうと、外部から出入りしている掃除のおばちゃんにまでヘラヘラとしてやがる。

せっかくとっちめた獲物に対してもすぐにフォローなんてするから効果はいつも半減だ。そんなもんだからやつは下っ端からもからかわれたりする。全くもって俺には理解ができない。なぜそんなことまでされてまでもヘラヘラせねばならないのだ。それに昇進にまで響いてきている。俺は専務にまで昇進したが、やつは部長どまりだ。ねじ伏せてしまえばいいだけだっていうのに。そんなわけで俺はやつとは相性が合わない。

一ついい点を挙げるとすれば、周りからよく声をかけられている点か。それもあんな様子じゃ本当のところ良いのか悪いのかあまりわからないがな。とにかくああいうタイプは好きじゃないんだ。


だがな、突然あいつはいなくなっちまった。それは俺が過去最大級の受注を取ってきた時のことだ。受注し、計画は立てたものの子会社の倒産危機に見舞われ俺は長期出張を余儀なくされ、まともに目を向けられていなかった。

プロジェクトは予定通り始動したと聞いたが、俺はまだ子会社から手が離せなかった。出張からようやく帰るとすでにやつの姿はなかった。その時に聞いた話によると、始動直後やつは何も言わずさらりと退職したらしい。始動後の忙しいときに一言も言わず辞めるなんて、やつの神経は本当にわからない。しかし、まあ俺には関係のないことだ。俺としてはヘラヘラしている人間がいなくなって、気をもむ必要がなくなったことに感謝したいくらいだった。

これで話が終われば用はない。

ここまでやつのことを話したのは、やつがいなくなった後に問題が生じ始めたからだ。はじめのうちは何が何だかわからなかった。ただ社内にトラブルが増えていただけかと思っていた。だが、次第に亀裂は大きくなり始めていた。離職者も急増した。ここまで大きくトラブルが頻発したことは未だかつてない。

やつがいなくなってから急に起き始めた。とすれば、やつが辞める前に何かをしていたことには違いない。そう思い、俺は社内を調査して回った。


まずはやつの部署の連中に何かやつが辞める前に変なことを言っていなかったか聞いて回った。だが「高橋部長はいつもと変わらぬ様子で皆に接していましたが、何かありましたか?」と言われるだけで何も収穫を得ることができなかった。

次に中堅の社員を見つけて同様の質問をしてみた。
しかし、結果は同じ部署の連中と同じ回答だった。

今度は下っ端の社員にも質問をしてみた。
俺は少し聞き方を変えた。俺に何か隠している事実があるんじゃないかな?やつから口止めされていることがあれば、言えとな。だが、結果は何も変わらなかった。

掃除のおばちゃん連中にも聞いて回ったがやつが変わったことをしたという話は一つも聞くことができなかった。

まさかこれほどまで社内に高橋の影響がはびこっていたとは。
何も情報が得られないまま、時だけがすぎ状況が悪化している現状に魔が差し、俺はある時、思わず人目もはばからず声を荒げてしまった。

「そんなことはない!何か高橋に口止めされていることがあるだろう!!さっさと話せ!」

すると、それを耳にしたある社員がこう言ってきた。

「専務、失礼ながら今のお言葉聞き捨てならないのですが、撤回していただけますでしょうか!」

「こら、長沢原くんやめなさい!」
そこにいた上司の注意も聞かず、長沢原という男は楯突いてきた。
俺は長沢原という名前を聞き、ピンときた。確か高橋の部下でとても仕事のできる正義感溢れる社員だということを高橋は言っていた。俺はあえて刺激した。

「撤回も何も今の話が本当ではないか。高橋がいなくなって社は一気にトラブルに苛まれた。あいつがこうなるように仕向けているのは一目瞭然ではないか」

「それは違います!」

「どいつも同じようなことを言っていたよ。よくぞまあここまで調教できたものだ」

「ですので、そのお考えが違います!私たちは高橋部長から何かを言われたわけではありません!口止めを受けていたわけでもありません!」

「嘘をつくな!」

「嘘ではありません!」

「ふん、根拠がない話だ。このまま話をしていても意味がないな。お前の高橋への忠誠心だけは覚えておいてやろう」

「専務!あなたはわかっていない!高橋部長がどれだけ社内に尽力してきたかを!」

「もういい。下がりたまえ」

「しかし!」
俺はギロリと長沢原の上司を睨みつけた。
その上司は取りおさえるように長沢原を連れて行った。

「全く!どいつもこいつも隠そうとしやがる」

それから約一ヶ月が過ぎたある時だった。俺はようやく一人だけ高橋が変なことをやっていたという証人を手にした。

やはり高橋が社員のはんぶんに手回しをして、社内に混乱を陥れようとしたのだという。なんでも今回突然首を切られることになった腹いせなのだそうだ。この混乱を基に俺や常務を巻き込んで道連れにするのが目的だったとか。

この田中という社員はどこからかその情報を嗅ぎつけてきたらしく、見せしめとしてもあいつらみんなを首にした方がいいですよと言う。

「それで、具体的にやつはどんなことを皆に実行させたのだ。お前の元にもその通達は来ていただろう?」

「ただトラブルを起こせばいいとそれだけを言われました」

「それだけか?」

「…ええ」
田中は目をそらす。

「専務!」
突然後ろから声をかけて来たのは長沢原だ。

「なんだ、またお前か。今度は何の用だ。今ちょうど高橋の裏をとったところだ」

「それはでっちあげです」

「なに?!でたらめなことを言うな!」
俺が話すより先に田中が攻め立てた。そして続けてこう言った。
「あっ!せ、専務!こ、こいつです!こいつが首謀者です!」
「ふん、そういうことか。お前が主犯だったか。覚悟はできているのだろうな?」

「覚悟もなにも私はそこにいるやつと会ったことも話したこともありません」
「ふっ、白々しい。じゃあ、なぜこいつがお前のことを主犯だと言うのだ」
「それは他人を蹴落として上に上がるためでしょう。最近社内で変な動きをしているやつがいるということを聞き、調べていました。そしたら、田中という人物が根も葉もないことを言い回っているとわかったのです。

そして、その田中は周りの評判を落として自分の評判を獲得する下衆なやつだと言うこともわかりました。誰一人そいつの話なんて信じてはいませんよ」

「な、何を適当なことを!お前こそそうやって、嘘を言って俺の評判をお、落とそうとしているんじゃないか?!」


俺は腕を組み、顎に手を当て数秒考えてから言った。

「そうなのか?田中。こうなってはどちらが正しいのかわからないな。お前はなぜこいつが主犯だと知っているんだ?なぜこの会ったこともない…原田が主犯だと」

「そ、それは私もこの原田という男の調査をしたからです」

「そうか、それは徹底的な調査だったんだな?」

「も、もちろんそうです!」

「そうか。よくわかった。もういいお前は下がれ。あとは私がみっちりと話をする」

「か、かしこまりました」
田中が去ったのを確認して俺は話し始めた。

「どうやら、お前の話が本当のようだな」

「どうして信じてくれる気になったのです?」

「これでもやつとは同期だからな。やつの性格からしたら逆恨みなんてするやつではないだろうということはわかっていた。だから、今の田中というやつの話を聞いた時、何かがおかしいと思い始めていたのだよ。しかし、結局やつが何をしていたのかはわからずじまいになってしまったな」

「専務、今度は私の話を聞いてくださいますでしょうか?」

「ん?ああ、好きに話したまえ」

「専務は高橋部長が辞める前にトラブルを置いていった。そうおっしゃいました。私がそれは違うと言ったことをお覚えでしょうか?」

「ああ、確か君はそうやって突っかかってきたな」

「高橋部長は社にトラブルなんて置いていったのではありません。むしろ、部長がいなくなったせいでトラブルが起きてしまったのです」

「ほう、それはどういうことかな?」

「部長は、いつもどんな時も誰に対しても笑顔を忘れないお人でした。それは下っ端の私や外部のパートの人にさえ。それにいつも私たちのことを褒めてくれるのです。とても些細なことにまで。

「仕事がキレイだ。君がやったあとはいつも気持ちがいい。笑顔がいいね。今日も髪型決まってるね」
女性社員には「髪切ったの?似合っているよ。笑顔がとても可愛い、これからも頼むよ」と。

仕事上のことだけでなく、相手が喜ぶことを言って気にかけてくれていたのです。部長は既婚者でしたし、下心がないことが私たちにもわかっていました。部長は私たちのことを人として褒めてくれました。だから、人間関係のトラブルが起きなかったのです。嫌だな〜と思うことがあっても、部長に話すと励まされ、もう少し頑張ってみようという気になりますから。あの人がいるだけで、明るい気持ちになる、希望の光のような存在でした」

「だから、今回の話を聞いた時、居ても立っても居られなくなってしまいました」
「そうだったのか、やつが何かを残していったのかとばかり思っていたが、反対だったのだな。ヘラヘラしているばかりかと思っていたが、やつが支えていたとは…」

「しかし、やつはなぜ突然、社を去っていったのだ?」

「それは…」

「なんだ、もったいぶらないでさっさと言いたまえ」

「それは専務が取ってきた大型プロジェクトの運営直後に致命的なトラブルが発覚してしまったからです」

「あの時、専務は無謀にも近いスケジュールを組んでおりました。出張になった専務の代わりは高橋部長がリーダーを代行し、部長を始めメンバー全員、深夜遅くまで取り組み続けていました。それでも無謀に近いことは誰の目にもはっきりとしていたのです。しかし、高橋部長は一切諦めることなく我々を鼓舞し続けました。そして、期日間際になってようやく完成しました。それは奇跡と言っても良いほどでした。ですが、我々は道半ばで力尽きていたのです。誰もそのバグに気がつかないまま、リリースしてしまいました。そして、その直後トラブルは起きました」

「なんとか火消しすることは出来ましたが、相手先に多大な迷惑を被ることとなってしまい、その責任を負って高橋部長が辞職することになったのです。もちろん、誰のことを責めることなく。それよりも、君たちは最高の仕事をしたと褒めてさえいただきました。この問題の責任は全て私にある、と。

そんなことはないのに…。我々がしっかりとしていれば、高橋部長は…うぅ。うくっ」

「そうだったか。これは私にも責任があるな。すまなかった。この件は私がなんとかしよう」


それからしばらくして俺はよく現場に赴き、社員と顔を合わせることが多くなった。もちろん、その目的は相手の意見を聞くこと。そして…

「き、今日も誰にも真似できんほどの出来だな!お前ほどの逸材は他にはおらんぞ」
「は、はは…ありがとうございます」


「全く、あいつは人を褒めることが人一倍下手だな。そう思わんかね、長沢原主任」
「本当ですね。あっ、こんなこと言ったら怒られてしまいますよ、部長。あっ、今は常務でしたか。高橋常務」

なんという屈辱的な敗北だ。今まで下のものたちを力で従わせていた。だが、社内をよくしていたのは高橋のやり方だ。今ではこの褒めるというやり方を認めざるおえない。



人間関係をよくするために些細なことでもいいから、まずは褒めよう。それは仕事上のことでなくても構わない。

髪を切ってよくなったね。
笑顔がいいですね。
など人が言われて喜ぶことを積極的に相手に伝えてみよう。

もちろん、仕事上のことでも構わない。

仕事が丁寧ですね。
本当に助かります。
一人で全てやってしまうなんてすごいですね。
このとき具体的な根拠も添えてあげるとなお良い。たいていの人は「いえいえそんなことはないですよ」と謙遜の言葉を添えるからだ。そう言われたときには「いや、本当にすごいことなのです。一人でできてしまうってことは仕事を任されている証拠ですし」と言った具合に簡単でもいいから根拠を添えてあげてみよう。ただし、嘘くさくならないこと。本当の事実のみ伝えれば良い。


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