友へ | ファンキー・中村の“おっかねえかも知んない”話

友へ

一処に人が集まり、一斉に歩き出す。

目指すは山の上に置かれた、ただ一本の旗だ。

其処までの道のりは厳しく、幾多の難所がぽっかりと口を開けている。

途中には幾重にも延びた脇道があり、どの道を選ぶも人任せだ。

長い道のりを行く内、足にマメをこしらえ、その場に座り込むもの、

終ぞやそこにて息絶えるものが出始める。

それでも旗はたなびいている。



歩き続けるうちに旗が見えなくなり、ふと来た道を振り返る。

随分来ただろうと思っていたが、歩き出した起点からは幾らも来ていない事に愕然とする。

足のマメをすり潰し、汗水垂らして頑張ってきた自分が情けない・・・

そう思った途端総てが煩わしく成り、それまでは聞こえなかった風の声が耳朶に届く。

『頑張るな。もういい。お前はもう充分歩いた。おまえが目指す旗はあの色ではないだろう?』

疲れた自分にとって、それはそれは心地いい声色で、何度も何度も繰り返す。

そしてある時(ああそうだな)と納得してしまう。



どの道を進もうが構わない。

途中で草臥れたなら休めばいい。

時には日を浴び、時には星を眺めながらのんびり歩けばいい。

旗に到達するのに、時間の制限など何処にも無いのだ。

ただ。

飽くまでも歩を進めるのは、自らの足でなければならない。

疲れたものに声をかけるも、肩を貸すも当然だ。

しかし、最終的には自らが旗に歩み寄らなければならないし、

それでなければ意味がない。



どんなに回り道をしてもいい。

どんなに時間を掛けてもいい。

元の道へと還る為の道筋は、何時でも目の前に拓かれている筈だ。



みんなと共に歩きだし、共に笑いあった日々をどうか忘れないでほしい。