第26話+第27話

第26話~歌詞~

俺達はそのあと先生の指導の下、2時間ぶっとおしで基本の徹底を教え込まれた。ストロークの事から演奏の技法まで。そんなこんなでいつの間にか19時を回っていた。

美樹『いっけない!もうこんな時間。ついつい集中しすぎちゃったわね。今日はこのぐらいにして帰りましょう。』

そういうとさっさと音楽室の鍵を閉めて職員室に走っていった。すると雄太はフラフラになりながら、

雄太『やべぇ。マエケン・・・俺もうくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」』

健三『何言ってるかわかんねぇよ笑 まぁ、雄太は特別しごかれてたからな。お疲れ様。』

唯『やっぱただ歌うだけじゃ駄目なんだねぇ。やっぱカラオケみたいには行かないもんなんだなぁ。』

そういうと唯が気づいた様に続けた。

唯『そうだ!明日学校休みだから3人でカラオケいかない?』

雄太『いいねいいね!俺元気出てきた!』

健三『んじゃそうするか。じゃあ明日12時に校門前集合な。』

雄太&唯『りょーかい♪』

雄太は帰り道が違うので校門で別れた後、俺は唯と一緒に帰ることになった。

唯『いやぁ。ほんと今日は疲れたねぇ。』

健三『さすがにいきなり2時間ぶっ続けはきつかったな~。てかさ、唯って歌詞とか作るの得意なの?』

唯は手をぶんぶん振りながら、

唯『得意って言うわけじゃないんだけど、たまーーに詩を書いたりするぐらいね。』

健三『ほぉー。詩ねぇ。俺まだ見たこと無いんだけど。つか知らなかったんだけど笑』

唯『だって教えてなかったもん♪』

唯はそういうと、いたずらっぽい笑顔を俺に向けた。

唯『結構恥ずかしい事書いたりするから今まで内緒にしてたんだよね。』

健三『へぇ。ちょっと見せてみてよ。』

唯『ん~。いいよ。ちょっとまってて。』

唯はそういうとカバンの中をごそごそ漁りだした。その中から表紙がキャラクターで埋めつくされている手帳を一冊取り出した。

健三『なんで女の子ってそんなでかい手帳持ち歩くんだ?肩こってしょうがないだろ。』

唯『いまどきの手帳は日記とかも書けるし、それにプリクラとかもらったときすぐ貼れるじゃん♪こんぐらい知ってないとおじさんって言われちゃうぞ~。』

健三『ぷりくらねぇ・・・。』

唯『もしかしてけんちゃん撮ったことないとか?』

俺は悪びれもせず、唯に言い放った。

健三『あぁ。まずゲーセン自体あんまいかねーし。雄太とかはたまに撮るとかいってたけど。』

唯はふーんと鼻をならしながら、

唯『じゃあ今度一緒にプリクラ撮りにいこっか♪』

健三『別にいいけど。てかとりあえず詩見せてみ。』

唯は照れ笑いを浮かべながら、

唯『あ、ごめんごめん。忘れてた。えーとね、はいこれ。他のページはあんま見ちゃ駄目だよ?』

そういうと手帳を開いて俺に手渡してくれた。そこには沢山の言葉が並べてあった。短い詩もあれば長いのもあった。どれもこれも唯自身で考えて作ったんだろうか。俺はその中の一つに目を奪われた。
第27章~決心~

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なんだろう、この胸の痛み
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あなたを思うと強く、そして切なく鼓動する。
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あなたと会話するだけで私は嬉しかった
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メールをしているだけで幸せを感じていた
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ふと携帯をみると、メール受信中
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私は緊張しながらフォルダをあける
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それはあなたのメールじゃなかった、けど
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私はその時確信した
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あなたが好きって。
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でも、今はあなたが遠い。
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ずっと先に行ってしまって
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置き去りにされてしまった。
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もう考えたくないのに、忘れたいのに
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ふとした瞬間思い出して
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思いが溢れてくる。
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なんだろう、この胸の痛み・・・
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でも、私は行くんだ。
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どんなに辛くても、悲しくても
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今までの流した涙を過去に捨て、
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今は笑っていよう。
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辛いからこそ笑うんだって。
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きっと辛が幸になるから。
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信じるよ。自分の素直な気持ちを
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健三『へぇ。こういう詩も書くんだ。』

唯はこの詩を見ながら、

唯『この詩は昨日書いた奴かな。閃いた時にパパっと書いちゃうからさ。でもなんか凄い足りない気がして。』

健三『いやいや、すげぇよ。そんなパパって書いた風には見えないし。』

唯『それでね、今日先生の曲聴いたときこれだ!って思ったの。』

健三『・・・?』

俺は首を頭の上に?を出しながらかしげた。


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第24章~意味


健三『先生のあのオリジナル曲をみんなでやらない?』

俺はそうおもむろに言った。

二人は首をかしげてこっちを見ていた。

健三『あぁ、そっかそっか。唯と雄太はあの曲聞いて無かったんだよな。先生、ちょっと弾いてもらえないっすか?』

美樹『ええ。良いわよ…。』

そういうと俺に貸していたアコースティックギターを取り出し椅子に腰をかける。

するとミッキーの目がさっきまでとは違う光を放っていた。まるで別人だと感じてしまうほどに。

しかし曲が始まるとそんな違和感はすぐに無くなっていた。無くなったというよりも気にしなくなったというほうが近い。だってあまりに美しい音だから。

ミッキーは数十分間弾き演奏を終えた。ミッキーはふう、と溜め息を漏らすと元の目の輝きに戻っていた。

健三『な!良い曲だろ?歌詞はこれからつけたらいけるだろうし』』

雄太『うんうん!やっぱミッキーすげぇよ!普通にプロじゃん♪』

雄太は軽く興奮気味にそういっていたが、唯だけ様子がおかしかった。目が潤んでいる。

唯『凄い巧くてかっこよかったです。けど、とても…せつない気持ちになりました。』

美樹『っ…!』

美樹は驚き、手に持っていたピックを落とした。

雄太&健三『?』

俺たちはまったくもってさっぱりだった。

美樹はそんな俺たちを置いてゆっくり喋り初める。

美樹『うん。これは唯さんの言う通り失恋した時に作った曲なの。凄い大好きな彼がいてね。ずっと前から片想いだった。けどその恋は実る事は無かったわ。漫画みたいに上手くはいかないものね。』

ミッキーは笑いながら話してくれたがそれとは裏腹にすごい悲しげに見えた。

健三(だから初めてこの曲を聞いてミッキーと話してる時、遠い目をしていたのか…)

そう思っていた矢先唯が思いがけない事をいいだした。

唯『私にこの曲の歌詞書かせて下さい!』



第25章~ひとつ


そういうと唯は頭を下げた。

唯『この曲が先生にとって大事な曲だってことは十分くらい伝わって来ました。歌詞が無いのに想いは沢山詰まってて凄い感動したんです。もしよかったらで構いません。書かせてもらえませんか。』

唯はそういうとじっとミッキーの目を見つめた。ミッキーは照れ笑いしながら、

美樹『もちろん良いわよ。それに今まで歌詞をつけなかった理由は昔の私を曲の中にしまいこみたく無かったの。いつまでも辛い過去にしがみついてても駄目だものね。それに今みたいに安達さんが書きたいって思ってくれなかっただろうし。私からのお願いは一つ。気持ち込めて歌ってね♪』

唯『ハイ!』

その声は野球部の練習の声より力強く、ブラスバンドの音色よりしなやかな返事だった。

その唯の姿にすこしドキってしたのはここだけの秘密だ。

本格的にこの曲を課題曲に決めそれぞれやるべき事をミッキーから言われる。

美樹『まず安達さん、あなたはこの曲に命を吹き込む作業をしてもらいます。』

唯『命を…吹き込む。』

美樹『そう。歌詞っていうのはそのぐらい重要な意味を宿るの。出きるわね?』

唯は力強く頷いた。

美樹『次に五十嵐君、貴方は音に深みを持たせてもらいます。ベースはあまり前には出ないけど曲に深みがある演奏になるかはベースにかかっています。期待してるよ♪』

雄太『うっしゃ!しっかり深みのある演奏をしてみせますぜ!』

雄太もガッツポーズをして気合い満々である。

美樹『そして前田君、貴方がこの曲を動かしてもらいます。前田君次第で勇敢に力強く突き進む事も出来ます。けど逆に曲が止まってしまう事も。けど失敗を恐れず突き進んでね♪』

健三『わかりました。』

美樹『あと前田君にはバックコーラスも担当してもらいます。』

健三『わかり…え?バックコーラス?』

美樹『五十嵐君から聞いたよ?歌上手いんだってね♪歌の方でも安達さんを支えてあげてね。』

あの野郎いらねぇ事いいやがって…練習量半端ねぇなこりゃ。

美樹『あとみんなにこれだけは言っておきます。どんな上手い演奏でも心が無いとただの音の振動に過ぎません。まず自分達から楽しみましょう!辛いこともあると思うけど、これから一緒に頑張って行こうね!』

健三&雄太&唯『ハイッ!』

改めてこの音楽室内が今この瞬間一つとなった。



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第22章~初活動


俺が寝てる間に今日1日の授業がすべて終わった。ある意味それはそれでもったいない気もするが、まぁたまにはこんな日があっても良いだろうと思った矢先、唯が耳をひっぱってきた。

唯『まったくあんたは~。一体何時間寝れば気が済むのよ。今日学校に何しに来たの?』

そう言うと唯は俺の顔を冷ややかに見下していた。昨日とのキャラのギャップに俺は笑いそうになる。

唯『何笑ってんのよ。キモイぞ。それより、今日部室いく?』

俺は軽くキモイという言葉に凹みつつ、部室に行く事を唯に伝えた。

唯『おっけー♪私今日掃除当番だから雄太と先に行ってて。』

そうだ。俺は大事な事をすっかり忘れていた。俺が昨日唯んちに行ったのは看病するためじゃなくて、その事を言うつもりだったんだ。俺は唯の顔色を伺いながら、

健三『つか、お前雄太の事どう思ってるの?』

唯は一瞬動きが止まり、すぐに笑顔になった。

唯『ん~。どうって言われても。その調子だと雄太から聞いたのかな?別に雄太の事は嫌いじゃないんだけど、そこまで雄太の事知ってるわけじゃないし、今は付き合うって感じでもないし~ってね。』

健三『なんだ。意外に普通なんだな。俺はてっきり落ち込んでると思ってたよ。』

唯は笑いながら、

唯『何処の世界に告白されて落ち込む人がいるのよ。少なからず告白されたら嬉しいものよ♪』

ああ、俺はこの会話をテープレコーダーにして雄太に聞かせてやりたいと切に思った。

HRが終わり部活がある生徒は部室に行き、入ってないものは家に帰っていく。俺は今まで後者だったんだなぁと今更シミジミおもった。

そんな俺に雄太は朝のテンションで俺にタックルしてきた。

雄太『おいーーす!んじゃ部室いって一暴れしにいこうぜ!!』

コイツは音楽室の機材をぶっ壊すつもりだろうか。そして昨日までローテンションとは到底思えないこのハイテンションぶり。なんかむかつくからさっきの話は別にいわなくていいや。

雄太『そんなふてった顔すんなって♪なんたって今日は3人揃っての初部活だぜ。テンションあがらないほうが嘘だってばよ!』

語尾の言葉使いで俺は今コイツがはまってる漫画が分かってしまった。単純な奴。

健三『つうか、お前ベース無いのにどうやって弾くんだよ。』

雄太は首をかしげながら、ぱっと表情があかるくなり、

雄太『っま、なんとかなるべ♪』

こいつの楽天主義はもう特技だな。たまにこいつがうらやましくなる時がある。

俺は二人で音楽室に向かった。

俺は向かいながら雄太に聞いてみる。この手の話は雄太が一番詳しい。

健三『なぁ、柊未来ってしってるか?』

雄太の目が光に満ち溢れた。そうすると胸ポケットからいつも常備しているという通称【雄太辞典】をめくる。まぁ見た目は普通の生徒手帳だが、コイツは昔から生徒手帳にあらゆる情報を書き込んでいた。この情報収集能力は俺も一目おいている。

勢い良くページをめくっていき、途中でめくるのをストップさせた。

雄太『柊未来。3月12日生まれ。A型。得意科目数学、苦手科目体育。うちのクラスの保健委員。具合が悪い人を見るとついついおせっかいを焼いて逆に悪化させる事もあるらしいぞ。うちのクラスの女子メンバー内では5段階評価の4にはいるな。』

もはやここまで来ると脱帽である。

健三『お前は好きな女の子がいるのに他の女の子まで調べてるのか。』

雄太は真面目な顔になり、

雄太『なんつうか、昔からこんなことばっかやってたからついついな。まぁ趣味みたいなもんだ♪』

こいつに言わせればストーキング行為も趣味の一部に入るんじゃないのかと言おうとしたが、洒落になってないのでやめておいた。

そんなこんなで音楽室に着き、扉を開けたその先にミッキーが仁王立ちしていた。

美樹『うし!!後は安達さんだけだね♪じゃあ先に渡すもん渡しとくね。』

そういうと、またギターケースを持ってきていた。中に入っていたのはベースである。

美樹『それ借り物だから丁寧に使ってね♪やっぱ無いとイメージわかないだろうしね。これからビシビシ鍛えていくわよー。とりあえず目標は文化祭!!頑張ろうね♪』

もはや、こっちの意見は聞こうとしてない。今更何言っても無駄だと改めて確信した。



第23章~楽曲


そんな話をしてる最中に唯が掃除から戻ってきた。

唯『ふー!お待たせ~♪掃除当番も楽じゃないわね~。こんなか弱い女の子に掃除させるなんてまったく男子はなにしてんだか。』

唯は俺と雄太の方をちらちら見ている。俺はニヤニヤしながら、

健三『か弱い。ねぇ~。』

唯はさらにニヤニヤを倍に返してきて

唯『じゃあ美人もつけとくわね♪』

こいつはいくつになってもかわんねぇなぁ・・・。

健三『しっかし、まぁ恥ずかしがらずに良くいえるよ。ある意味才能だな。まったく。』

唯『それほどでも~♪』

健三『褒めてねーって。』

すかさず出したカウンターパンチを華麗にスルーして、唯は満足した様子で先生のところに言ってしまった。俺、有効打1POINT。

そんな唯を見て一人だけ遠い目をしてる男を発見。

雄太『いつも気がついたら唯のペースに巻き込まれちゃってるんだよな。そこが唯の魅力の一つだぜ。』

健三『そんなもんか?てかお前唯の事過大評価しすぎだって。しかし恋は人を盲目にさせるとはよく言ったもんだな。』

雄太『とりあえず俺がまだ狙ってる事唯には内緒にしてくれよ?今度は自分でタイミング図っていくからさ!』

健三『ハイハイ。』

なにはともあれ、ひとまずこうして初期メンバー3人が集まった。しかし俺らは音楽を演奏するのに至ってはまるで素人、っていうか、どがつくほどの初心者。こんな俺たちをミッキーはどんな風に教えんだろ。

美樹『そうね。みんなも集まったことだし練習始めようか!』

健三&唯&雄太『え?』

俺達は先生の突拍子もない発言におどろきを隠せなかった。

健三『練習ってなんの練習ですか。』

美樹『もちろん演奏の練習に決まってるでしょ♪最初だからまず簡単なものから。それに習うよりまず慣れろって言うでしょ。まずこの中のスコアから弾いてみたいの三人で探してみて。』

そういうとカバンの中からドサッとスコアを机の上に置いた。

雄太『うわぁ。少なく見積もっても30はあるなこれ。』

健三『先生こんなのもって学校来たんですか?まじすげぇ。』

美樹『せっかくなら色んな選択肢がないと駄目でしょ?』

唯『わー♪すごいすごい♪先生運び屋みたい!』

運び屋ってお前・・・。それ全然褒めてないって・・・。

俺は心の中で突っ込みを入れつつ、色々スコアの中をめくっていった。色んな数字やら英語やらがかなり沢山書き込まれている。

健三『この3とか5とか書いてるのなんですか?』

美樹『それはtab譜っていって、それを見ながら演奏をするの。他にもパワーコードで弾いたりアルペジオで弾いたりする演奏法があるけど、今はただ音を鳴らす練習でいいわよ♪』

健三『やべぇ。今先生の言ってることが全然理解できなかった。まずアルペジオってなんだよ。雄太分かった?』

雄太『新しい星座か何かじゃね。』

それだけはぜってーちがう。

そんな感じで先生が説明しながら俺たちは練習課題曲を探していった。

健三『なかなかピンと来るのがねぇなぁ。あ!そうだ!』

俺は手に持っていたスコアを置いて先生にこう言った。


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第20章~再熱


今日もいい天気。絶好の登校日和である。なのに俺は頭がボーっとする。しかし、俺は母親に昨日のことをグチグチいわれたくがないために、いつもより30分前に家を出た。俺の作戦勝ち。

俺はギターケースと空のカバンをもって学校に向かった。朝から教科書を持って学校に行く奴の気が知れない。

俺は教室に入りロッカーの上にアコースティックギターを置いて、まだ誰もいない教室の中でMDを聞きながら机をつっぷして寝ていた。この時間が最近の俺の唯一の憩いの時間となっている。

俺が音楽を聞きながら気持ちよく寝そうになっている時にイヤホンが耳からとれた。俺は上を向くと唯が立っていた。

唯『おーはよ♪今日やけに早いね。こんな早く来て寝てるなら家で寝てたほうがよかったんじゃない?』

そう笑いながら俺を見ていた。昨日まであんな寝込んでた奴とは思えないぐらい元気になってやがる。

健三『風邪はもういいのか?』

唯は元気たっぷりな表情で

唯『すっかり治った♪しかし私が熱出すなんて不覚だわ~。でも何で私が風邪で寝込んでるって知ってるの?』

俺は笑いながら、

健三『昨日俺がお前んちまで行ってお粥つくってやったんだぞ。まぁ治ったのはお粥のおかげだな。覚えてないのかよ。』

唯は不思議そうな顔をして

唯『あれけんちゃんが作ったお粥だったの?舞が作ったのだとおもってた。』

あれ?じゃあこいつ俺が昨日家にいったこと覚えてないのか?

健三『俺、昨日お前んちでお粥作って部屋まで持っていったんだぞ?俺と会ったの覚えてないの?俺と普通に会話してたぞ?』

唯は、え~!と言いながら不思議がっていた。そうすると、あっ。っと漏らす。

唯『夢でけんちゃんがうちに来て看病してくれている様な夢みたんだけど、夢じゃなかったんだ。』

こいつ。あんだけ一人にしないでとかスーパーマンだ、とか甘えた事言っといて覚えてないとか・・・。ある意味リアル病んデレだな。

唯『なんか私変なこといってた?』

俺はにやつきながら、

健三『なーんも。』

唯『あー!その顔はけんちゃんが嘘ついてる時の顔だ!もーーー!何言ったか言いなさいよ!!』

唯はほっぺを膨らませながら叩いてくる。そんな事をしていると他のクラスメイトが入ってくる。唯は女の子の名前を呼びながら走っていった。1日会ってないだけなのに感動の再開を演じている。女は女優だ。

あと、女のあの甲高い声は未だになれない。むしろ一生なれないだろう。俺はやはり女は侮れないと思った。

雄太『朝から女の甲高い声聞くとか頭いたくなるわ。な。マエケン。』

雄太も失恋からすっかり気を取り直している様子だった。

健三『その甲高い声の発信者はお前の初恋相手だぞ。』

雄太は動きをピクっと止めた。

雄太『あ?あああwwwwそそそそうなんだwww別に全然気にしてねーよwwww』

あからさまな動揺が確認できた。お前はほんと分かりやすいな。

そんな時、唯がこっちに気づいて手を振っている。雄太はそれを自分だと思っていた。まぁ後ろの女子に手を振っていたことだったことは俺はそっと胸にしまっておいた。だが、雄太は何を勘違いしたのか、

雄太『やっぱ俺諦められねぇ。』

数秒の沈黙が俺と雄太の周りを支配する。

雄太『今度はマジで頑張るわ。マエケン、これからもよろしく頼むわ♪』

こいつのポジティブを少しは分けてもらいたい。



第21章~保健室


いつの間にか授業も半分終わって、気づいたら昼休みになっていた。午前の授業は1日中寝ていたのだろう。しかしいくら今日はいつもより早起きしたといえ、ここまで体が睡眠を欲しているのは珍しい。それほど疲れがたまってたのだろうか。

前の席の女の子が俺に声かける。

『前田君大丈夫?顔色すごい悪いけど。保健室行く?』

彼女は保健委員だったのであまりに具合悪そうな俺を気遣ってくれた。俺は午後の授業がサボれると思い、保健室に行く事にした。

『私も付いて行くよ。じゃあ一緒にいこ。歩ける?』

そんな歩けるかどうかまで聞いてくるとか、どんだけ俺の顔は死んでるのだろうか。とりあえずさっきから頭もボーっとしてるし、体もだるいしさっさと保健室で寝てよう。2人で教室を出て保健室に向かった。

健三『ああ。ありがとう。ええっと・・・柊さん・・・だったよね?』

恥ずかしい話だが未だにこの高校に入って、唯以外の女の子と話した事がなかった。まぁ名前も覚えるきもなかったし。

彼女は呆れながら笑いつつ、

未来『前田君・・・ちゃんと覚えといてよ~。柊未来だよ。ちゃんと覚えた?』

俺も苦笑いをしつつ、謝っておいた。そんな遅れた自己紹介をしていたら保健室についた。柊が保健室の扉をあける。

ガラガラガラ・・・

柊『あれ?先生いないみたい。まぁとりあえず体温計で熱計ってみよっか。』

そういうと体温計を俺に渡してくれた。俺は脇に体温計を指ししばらく待った。

ぴぴぴ・・・ぴぴぴ・・・

37,9度だった。まぁ俺の平熱は36.7度ぐらいで結構高い方だったからあまり驚きはしなかったが、柊が慌てて、

柊『やっぱり熱あるじゃん!もう寝てな?私から先生に連絡しとくから。』

そういうと俺をベッドに誘導して寝かせた。柊は手際よく氷枕を準備して俺の頭の下に入れてくれた。

柊『あとはゆっくり寝てなね♪体調が戻ったら教室もどってきなね。それじゃ私授業いってくるから~』

そういうと柊は居なくなった。まぁめんどくさい授業を公欠できた事だけでも良しとするか。

保健室のベッドは独特な保健室の匂いがいっぱい染み付いていて、シーツも冷たくてとても気持ちがよかった。俺が寝るのにさほど時間は要らなかった。

俺が気持ち良く寝ていたら頬を突いて来る奴がいる。俺は目を開けるのもめんどくさかったので、払いのける。払いのけた感触で女だという事は分かった。てことはあながち、唯が冷やかしにきたんだろうな。

しかし、しつこく突いてくる。俺は突いてくる手首をもって

健三『唯いい加減にし・・・・・・え?』

そこに立っていたのは30代前半ぐらいに見える白衣を着た女の先生だった。

白衣の先生『彼女じゃなくてごめんなさいね笑 でも授業サボって寝てたら彼女に怒られちゃうぞ♪』

そういいながらニヤニヤしていた。一生の不覚。

健三『彼女なんかじゃないっす。それと、熱っぽくて保健委員につられて寝てました。』

白衣の先生はふーん。と言いつつ、手のひらを額に当ててきた。その手が程よく冷たくて心地よかった。

白衣の先生『ん~。少し熱があるかもね。バファリン飲んで横になってる?まぁ今もう5限が始まる時間だから先に帰っても良いけど。』

放課後はミッキーに色々聞きたいことがあったので俺は寝る選択をした。

白衣の先生『じゃあ私仕事してるからなんかあったら呼んでね。』

そういうとカーテンを閉めて向こうに行った。

しかし、今日はいくら寝ても体力が回復しない日だな。ほんとに風邪引いたのかな。そう思いながら横になった。

チャイムの音で目が覚めた。5限が終わったのを告げるチャイムだろう。

俺はカーテンを開け白衣の先生にお礼を言い保健室を後にした。

教室に戻ったときにはちょうど6限の授業が始まってる時だった。

俺が扉を開けると一斉にクラスの顔がこっちを向いた。この瞬間俺はたまらなく嫌である。

社会科の先生が大丈夫か?という問いに俺はハイと答えて自分の席に着いた。

前の席の柊が気を使って教科書のページを教えてくれる。

俺はその柊に礼を言って教科書のページを開く。

まぁ俺にとっちゃ保健室にいたとしても教室にいても寝てるだけなのだ。俺は教科書を開いたまま就寝した。




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第22章&第23章はこちらからどうぞ



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第18章~約束


舞はお粥を唯の寝室に持っていこうとしたが、

土鍋が重くてふらついている。

俺は舞では危ないと思い、俺が唯のとこまで持って行く事になった。

俺の記憶が正しければ唯の部屋は2階に上がって奥の部屋なはず。

俺は土鍋と足下に気をつけながら2階にあがり唯の部屋に向かった。

俺は唯の部屋をノックする。だが返事はない。

俺は恐る恐る部屋に入っていく。ベッドの上に唯が寝ていた。

俺は唯を起こさない様に机の上に土鍋を置いた。

そうすると寝返りをうった唯が俺の存在に気付いた様子で、

唯『けん…ちゃん…?』

俺は申し訳なさそうに

健三『わりぃ。起こしちゃったか?とりあえずここにお粥置いとくから食べれそうならしっかり食べるんだぞ』

唯『けんちゃん・・・。色々ありがと。なんかこうしてると昔を思い出すね。』

そういうと唯は懐かしむ様に話し出した。

唯『小学生の頃、私がインフルエンザで風邪引いて寝込んでる時、けんちゃん学校抜け出して看病しに来てくれたよね。』

唯はそういうと窓の外の木を指差しながら喋りだした。

唯『でも私んちの玄関鍵閉まってて、けんちゃんそこの木をよじ登って窓から入ってきたっけ。あの時、ビックリと同時に凄い笑っちゃったよ。』

俺は思い出し笑いをしながら

健三『あぁ。あんときは先生とお袋にすげぇ怒られたよ。親父はそれ聞いて笑ってたけどな。』

唯も小さく笑っていた。

唯『良いお父さんだね。』

俺は返す言葉がなかった。きっと唯のお父さんがまだ生きていたら、もっと甘えていただろう。もっとわがまま出来ただろう。そう思うと俺は切なくなった。

唯『今もこうやって看病しに来てくれて嬉しいよ。私達あの頃となんも変わらないよね。』

俺は唯の頭に乗っているタオルを水で絞って頭に乗せながら、

健三『あぁ。唯になんかあったらいつでも飛んでくるから。』

唯は新しいタオルに気持ちいと唸り、笑いながらながら、

唯『けんちゃんは私のスーパーマンだね。何かあればすぐ駆けつけてくれる。』

唯は俺の目をじっとみつめ、泣きそうな声で、

唯『けんちゃんは私を一人にしないでね…。』

そういうと唯はゆっくり目を閉じた。

俺は眠りゆく唯を見ながら、最後に言った唯の言葉の意味を考えていた。

健三(一人・・・?確かに親父さんは事故で死んじゃったけど、唯には妹もお袋さんもいるだろうし。どうしたんだろ。)

俺はいくら考えても納得がいく結論に至らなかった。

俺はもう一度タオルを水で濡らし、新しいやつと交換して唯の部屋を後にした。

さて、俺はまだ一仕事残ってるんだよね。舞の晩御飯。

舞はテレビを見ながら笑っていた。今大ブレイク中ののピン芸人がビキニ姿で叫んでいる。

俺には何が面白いのかわからん、俺も年をとったのだろうか・・・。

そんなことを考えていると舞は俺の存在に気づいた。

舞『あ、おかえり♪お姉ちゃん起きてた?苦しそうにしてなかった?』

健三『あぁ。今はぐっすり寝てるよ。後でお粥レンジで温め直してあげなきゃな。』

舞は満面の笑みで大きくうなずいた。

こんな姉思いの良い妹なのになんで唯は一人だなんていったんだろう。俺は疑問がますます膨らむ一方だった。

健三『よし。とりあえずうちらも飯にするか。舞何食べたい?』

舞は、ん~と考え込んで結局【なんでも良いよ】と言う結論に至った。

健三『そうだ、どうせなら舞に卵の割り方教えた事だしオムライスでも作るか?』

舞は小躍りしながら、

舞『おっむらいす♪おっむらいす♪』

俺のオムライスごときでこんなに喜んでくれるなら俺は何個でも作ってあげれると心の中で思った。



第19章~真実


俺はひとしきりオムライスを作り、舞にごちそうしてやった。

舞の目はハートになっていた。これでこそ作った甲斐があるってもんだ。

舞『いっただっきまーす♪』

俺も一緒にいただきますと良いオムライスを食した。しかし、勝手にひとんちの冷蔵庫を開けて御飯を作るというのは、かなり緊張する。

冷蔵庫の中身はその家庭の中身を垣間見ることが出来るとどっかの本で読んだことがあるが、

安達家の冷蔵庫の中は飲料水と栄養ドリンクと食材が少々。この前唯が作ったと思われるカレーのタッパーぐらいしか見当たらない。でかい冷蔵庫なのだが、これといって物が入ってなかった。

俺は唯にいつも何食べてるのか聞きたくなるほど。まぁ家庭には家庭の事情があるのだと、自己解決させた。

俺は舞と飯を食いながら色々気になってることを聞いてみた。

健三『もう8時過ぎだけど、お袋さんほんと遅いな。』

舞はふぅとため息をついて

舞『もう慣れちゃったよ。最近一人で御飯食べることが多くて、凄い寂しかったんだよね。たまーにお母さん早く帰ってくるときあるけど、ビール飲んですぐ寝ちゃうし。』

母子家庭というのはこうまでも大変なのだろうか。俺は母子家庭じゃないからその苦労は判らない。けど実際今俺の親父がいなくなったら生活どころの騒ぎじゃなくなっちゃうだろう。

舞『ほんとはね。お姉ちゃん将来お医者になりたいっていってたの。』

俺ははじめて聞いて少々驚いた。

健三『医者かぁ・・・。』

舞『最初お姉ちゃんはそれになる為に頑張って勉強してた。自分がお医者さんだったら事故を起こしたお父さんを手術して元気にしてあげれる。私みたいな思いをしなくて済む人が増えるって。』

舞『でも現実は厳しかった。お医者さんになるためにはたくさんのお金が必要だってわかったみたいなの。舞のうちみたいな母子家庭でそんな大金は払えないってお姉ちゃん考えたみたい。だからランクを2つ落として今の高校に入ったんだって。』

俺は唯の2ランク下の高校にやっとの思いで入ったのに・・・。と少し思った。まぁ出来が違うのはしょうがない。しかし、これで唯がうちの高校に来た事に納得がいった。唯も辛い選択をしたのだろうと。

俺はなんの夢もなく今のところ順調に生活しているが、唯は自分の夢をこの若さで断念せざるを得ない苦汁の選択をしていたのだ。神様はなんと無慈悲なのだろう。

健三『舞はなにか将来の夢はあるのか?』

舞は満面な笑顔で、

舞『ケーキ屋さん♪毎日ケーキに囲まれて生活したいんだもん♪』

中3でこの発想はどうかと思うが、まぁ舞らしいっちゃ舞らしい。

舞『舞が作った第1号ケーキは絶対けんにぃに食べてもらうんだからね♪』

俺は楽しみにしてるよと舞に言った。

そうこうしているもう10時になってしまう。俺はさすがにそろそろ帰らないと鬼軍曹が家で凶暴化してると怖いので帰り支度をした。

もともと、うちのお袋と唯のお袋は仲が悪い。なんで仲が悪いのかは詳しく聞いていないが、俺が唯の家に行くだけでもかなり嫌な顔をする。

俺は舞に、またな。と良い頭を撫でて帰った。

舞はけんにぃまたね~と大きく手を振って見送ってくれた。

俺は家に帰るなりお袋にグチグチ言われ続けた。まぁ慣れたもんだったので俺ははいはい、と言いながら自分の部屋に入っていった。

なんであそこまで毛嫌いするのだろう。

こんど親父に聞いてみるか。少しはわかるかもしれない。

俺はミッキー先生から借りたギターを取り出し、コードの練習を始めた。

アコースティックギターの弦は硬くてしっかり押さえないと音がでない。

簡単に押さえただけじゃあの綺麗な音はでないのである。俺は手始めにCコードを練習したが、先生が奏でた音とは似ても似つかない音がでる。ほんとにこれ同じギターか?と疑いたくなるほどだった。

明日先生に詳しく聞こうと思い今日はギターの練習を中止して眠りについた。


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