【読売新聞の記事より】
生気のない顔つきで車いすに乗っていた認知症の女性が、
しっかりと歩けるようになり、明るい表情になりました。
何が女性を変えたのでしょうか。
「昼食の準備を手伝ってもらえますか」
横浜市青葉区のグループホーム「夢観(ゆうみん)」で暮らす女性(71)は、
介護スタッフに頼まれると、すぐに居間のソファから立ちました。
手際よく皿に食事を盛りつけていきます。
夫に先立たれ、横浜市内で独り暮らしをしていた2000年頃から
物忘れが目立ち始め、認知症と診断されました。
「家に泥棒が入った」としきりに訴えるなど被害妄想も出てきましたが、
身の回りのことはでき、独居を続けていました。
だが、06年6月、恥骨骨折で寝たきりに。
ヘルパーが泊まり込み、東京都内に住む長女も度々駆けつけたが、
骨折の影響で常に残尿感があるらしく、1日何十回もトイレに行きたがりました。
次第に元気がなくなり、顔からも表情が消えていきました。
在宅での世話をあきらめ、同年9月、夢観に車いすで入所しました。
夢観ではまず、「求められれば必ずトイレに連れて行く」と決めました。
ケアプランを作った高橋路之さんは「生理現象を抑えつけられるのは不快なもの。
拒否したら信頼関係が築けないと考えた」と話しています。
女性が行きたがるたび、スタッフがトイレまで車いすを押しました。
女性は手すりにつかまり便座へ移ります。
スタッフは女性が転ばないよう体を支えました。
1年後、女性は自力で歩けるようになりました。
本格的な歩行訓練もしましたが、
「何度もトイレに行った積み重ねも歩行機能の回復に役立ったと思う」
と高橋さん。
女性は元々、世話好きな性格。
そこでスタッフは、食事の準備や皿洗いなどの手伝いをあえて頼みました。
女性は「頼られている」と感じるのか、喜んで手伝いました。
物忘れなど認知症そのものは治らないが、
かつての被害妄想や無表情はすっかり消え、優しい顔つきになりました。
長女は「母は今、人生で最も穏やかな時を過ごせている」と喜んでいます。
夢観では、この女性に行ったように、
認知症の人の心に寄り添い、その気持ちを尊重するケアを心がけています。
医療や看護も適切に組み合わせて症状の改善を図る。
夢観の運営会社の社長で、認知症ケア専門士の宮田真由美さんは
「認知症の人の今の姿を否定せず、認めることが大切」
と言います。
認知症の人の心に寄り添うケアを重視する考え方は、様々な形で広がっています。
認知症介護研究・研修センターが開発した「センター方式」もその一つ。
計16枚のシートに認知症の人の生活習慣や日々の様子を記入し介護者が情報を共有、
その人の立場に立ったケアをする仕組みで、
年間約2000人が基礎的な講習を受講。
施設や在宅での実践も増え、症状が改善した例も報告されています。
認知症専門医の小阪憲司・横浜ほうゆう病院長は
「認知症は悪くなる一方だと思われがちだが、
本人の心に寄り添うケアと適切な薬物投与の組み合わせで
症状が改善することもある、と知ってほしい」
と話しています。
本当にすばらしいケアをしている施設だと思います。
認知症の人の意思を尊重し、心で接すると、
改善してくることもあるということが、よく分かります。
こういったすばらしい実例は、
認知症の人を介護なさっている多くのご家族の方々に知っていただきたいです。
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