2月13日配信の会員制メールマガジン『
事件の放物線
』で書き下ろしたコラムの一部を公開します。
Vol.0039 日本から「売買春の街」が壊滅しようとしているのはなぜか 前半
普天間基地問題でゆれる沖縄県宜野湾(ぎのわん)市。ここにある真栄原(ま
えはら)社交街(通称:新町)で栄えていた風俗街は、警察や市民運動等が展
開した「浄化運動」によって消滅しましたが、藤井はそのルポを『g2』(講談
社)というノンフィクション雑誌に書きました。この背景にあるものや、現代
のセックスワーカーの置かれた状況について、藤井が構成 ・司会をつとめる
ニコニコ生放送「ニコ生ノンフィクション論」で、2011年6月22日、「風俗街
が消えた!?」という題のもと、ライターの松沢呉一氏、セックスワーカー
(風俗嬢)支援団体所属の要友紀子氏を招いて議論しました。この鼎談は同放
送をテキスト化して参加者が加筆等をおこなったものです。
・ニコ生ノンフィクション論
http://live.nicovideo.jp/watch/lv53427801
・ニコニコニュース
http://news.nicovideo.jp/watch/nw79734
【目次】─────────────────────────────────
■沖縄・宜野湾が狙われたのは全国的な流れ
■税務署と一体になった取り締まり
■全国の「ちょんの間」がなくなっていく
■働いている女性もパクられるようになった
■真栄原はかつて米軍からの性暴力の「防波堤」だった
■ホストクラブを起点した「人身売買」ルートも
■売春しているかわいそうな人たちを救わねばならないという発想
─────────────────────────────────────
─────────────────────────────────────
■沖縄・宜野湾が狙われたのは全国的な流れ■
藤井:
2011.4.15号(VOL.7)の『g2』にぼくが取材して書いた「沖縄アンダーグラウ
ンド」という短編ルポが載っています。これは沖縄県宜野湾市という市に、真
栄原新町という売買春をする街がありました。「ありました」と過去形で言い
ます。昨年(2010年)末まではあったんですが、今年に入って完全に消滅しま
した。消滅したと言っても街が無くなった訳ではなくて、そこで営業していた
いわゆる「ちょんの間」と呼ばれる売買春店があるんですけど、それが一軒も
営業出来なくなる状態に追い込まれました。この背景にあるものを私は取材し
たのです。実に色んな人たちが壊滅作戦に関わっているんですが、2~3年前か
ら特に強くなりました。どんどん店が減っていって、はたらく人も減っていっ
た、という経過があります。その中身については、追々話をしていきたいと思
います。まずは、松沢呉一さんです。よろしくお願いします。松沢さんをご存
知の方は多いと思いますが。
松沢:
元風俗ライターです。歌舞伎町壊滅と共に、風俗ライターという肩書きを葬っ
たので。6~7年前に歌舞伎町は壊滅して、今はほとんど死んだ街になっている。
心の故郷と共に、ということです。今もエロ関係の仕事をやっているけど、風
俗系はほとんど取材してない。最近の状況はよくわらないです。
藤井:
たぶん、いま日本で一番風俗の歴史とか、現状に詳しい方なんじゃないかと。
松沢:
現状に関しては、ここ6~7年を除けば、一番詳しいかもしれないですね。
藤井:
松沢さんの風俗の歴史のコレクションはすごい。雑誌とか本とか、「一人国家
図書館」状態ですからね。
松沢:
ただし、エロのみ。
藤井:
さて、要友紀子さんです。
要:
私は99年から「セックスワーカー」、つまり風俗嬢の健康と安全の為に活動す
る「SWASH」というグループで活動しています。
「風俗嬢意識調査」( http://amzn.to/wtqpaw )を2000年に行いました。
松沢:
これを読むとセックスワーカーに対して一般的に思われているのと違う現象が
起きていることが数字で分りますね。
藤井:
そうですね。風俗嬢をセックスワーカーと言って意識調査をして、仕事におか
れている実態や現象をきちんと取ったのはこれが初めてです。同じような活動
をしている人は日本でほとんどいない。最近、韓国でセックスワーカーの女性
たちが、座り込みのデモをやっている様子が報道されました。海外、アジアの
セックスワーカーが、今どういうことを主張しているのか、という現状にも要
さんは詳しいので、そういうところも追々訊いていきたいと思います。今日お
二人には、ぼくが書いた「沖縄アンダーグラウンド」を読んで頂いています。
ちなみにこれは講談社の「g2」のホームページで、全文無料で見られます。
松沢:
どこの街でもそうだと思うんだけど、掘り下げればその地域の特性が出てくる
のと同時に、全国共通で抱えている問題が見られる。このルポでもまさにそう
なんだけど、僕が藤井さんに訊きたかったのは、東京の歌舞伎町、池袋、渋谷
辺りの風俗店がどんどん摘発されて、そこから横浜の黄金町、埼玉の西川口と
いうように、全国的に風俗産業が潰される過程があります。一つに警察庁の方
針があると思うんだけど、沖縄はどうなのかな。
藤井:
宜野湾の「真栄新町」壊滅作戦を牽引したのは沖縄県警の生活安全部です。そ
れから、真栄原新町を管轄にしている宜野湾署。そこに「市民運動」が合流し
ていった。沖縄市には吉原新町という巨大な売買春街があるんですけれど、そ
こも壊滅の危機に瀕しています。真栄原や吉原壊滅作戦のモデルにしたのは神
奈川県の黄金町壊滅作戦なんです。県警や宜野湾署が視察に行っています。黄
金町をどうやって潰していったかというノウハウを聞きに。黄金町が潰された
のは中田市政の時ですよね。どうやって「浄化」したのかを調査して参考にし
たんです。その結果、住民運動と警察と行政が三位一体となった。が、とにか
く警察が頑張らないと街は潰せないぞ、ということを学んで作戦通りにした、
ということです。
要:
黄金町ということは神奈川県警ですよね。神奈川県警は全国的に見てもすごく
厳しいところなんです。常に摘発とかしていて。
松沢:
特に中田市長の時の浄化作戦は、東京とリンクする形でやっていて、黄金町も
いわゆる「ちょんの間」で、98パーセントか99パーセントは、「売る側」が外
国人だったと思います。日本人もいましたが、二桁はいなかったと思う。
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ノンフィクションライター藤井誠二が「事件」を見に行き、渦中の人間の声をひろい、社会に対して問われているものは何かをさがしていきます。発生間もない
事件から、発生から十年単位の時間が経過してしまった事件まで、幅広く、できるだけ丹念に、藤井の視点と手法で事実をひろいあげながら。
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