スピッツというバンドがありまして、僕はまあ案外好きなんです。
「案外」という言葉に他意はありません。
思い入れはそんなにないんですけど、何枚かアルバムを買ったことはありますし、ぽろっと流れて来る新曲なんかはいつもいいと思う感じで。
で、このたびカップリング曲とかカヴァー曲を集めた「おるたな」というアルバムが出たんですが。
もう、ぶったまげました。
おるたな/スピッツ
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何に驚いたかというと、「初恋の嵐」というバンドの「初恋に捧ぐ」という曲をカヴァーしていたからです。
「初恋の嵐」というバンドのことを説明しなければなりません。
このバンドがデビューしたのは10年前。
僕は発売当時にジャケ買いしました。
何にも知らないバンドでしたが、なんかよくわからないですけど、写真に惹かれたのかなんなのか、あと「おもろい名前だな」と思った記憶があります。
ーああそうです。
今でこそ「初恋の嵐」の「初恋に捧ぐ」というアルバムタイトルは普通に思ってますが、CD屋で見かけた時はイビツな感じがしました。そして買って帰りました。
初恋に捧ぐ/初恋の嵐
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最初は「地味だな」くらいに思ってたのが、その内に愛聴盤になりました。
そしてしばらくしてアルバムのライナーを見て驚きました。
ソングライターであり唄い手である西山達郎はデビュー前に亡くなっていたのです。
メジャーデビューアルバム制作途中での急性心不全による逝去(享年25歳)。
それを残りのメンバーがまとめて西山達郎の死から5ヶ月後にこのアルバムは発売されて、その時に僕は買ったんでしょう。
そしてそのアルバムは、西山達郎が生きていても死んでいても関係なく素晴らしいアルバムでした。
本当に素晴らしいアルバムでした。
パッと聴く爽やかな声とは裏腹な、ギラギラした歌の世界。
ーいや、逆だな。
喪失、断絶、ばかりを唄ってるのになぜか爽やかで、生命力があるというのか。
パワーとかそういうんじゃなくて、瑞々しい。
(なんだろう?結局イビツだったってことか)
僕は死んでしまった人を「死んでしまった」という理由だけで崇めるのなんてあまり意味がないと思うんですけど、初恋の嵐、西山達郎の曲と存在感は際立っていました。
アルバム「初恋に捧ぐ」には入ってないけど。
本人達が出てる映像は多分これだけ。
西山達郎生前のシングル。
「Untitled」
デビューシングルが7分過ぎのナンバー。
「真夏の夜の事」
(ストリングスは金原ストリングス)
僕は店をやってる時に季節ごとにコンピ盤を作ってお客さんに配布してたんですけど、一昨年の春に配布した「春巻」の一曲目が「初恋に捧ぐ」でした。
(あ、二曲目はスピッツでした)
僕がこのアルバムを買ってから10年。
西山達郎が亡くなってから10年。
たまに「生前の未発表音源が出てないか」なんてアマゾンをチェックしたりするんですけど、一切そんなことはなく、初恋の嵐は誰にも知られず忘れ去られるのかと思ってました。
そして今回も何気なく初恋の嵐をチェックしたら、なぜかスピッツが出て来たのです。
今回スピッツは「おるたな」を出すにあたって「初恋に捧ぐ」を新録した模様です。
まあホントにそのタイトルを見た時はぶったまげましたし、嬉しかったです。
「西山達郎」という名前、「初恋の嵐」という名前、「初恋に捧ぐ」という曲がスピッツを通して刻まれたんですから。
演奏も完コピです。
聴いてて、今この時代にこの曲が新たな息吹でもって鳴らされてることに、身体がゾクゾクしました。
で、改めてこのスピッツの「おるたな」というアルバムはとてもいいアルバムでした。
まず「初恋に捧ぐ」は言わずもがな、ユーミンの大好きなナンバー「14番目の月」の意外なアレンジもかっこ良かった。
はっぴいえんどの「12月の雨の日」のカヴァーも素晴らしい。
奥田民生の「さすらい」、などのカヴァーもありつつ。
CMで流れてる原田真二のカヴァー「タイムトラベル」も素晴らしい。
あの、僕が好きだったスピッツって「スパイダー」とかそのへんだったんですけど、久々に聴いても変わってないですね。
こんなこと言うとファンの人には怒られるかもしれませんが、ハタからみて、変わらないまま瑞々しいってのは、改めて凄いと思いました。
で、また怒られそうですけど、このアルバムはカヴァーが半分、オリジナルが半分で。
僕は単純に聴きやすかったです。
今日、3月2日が西山達郎の10年目の命日です。
彼は10年目に、また新たに刻まれたんだと。
そしてまた人の心に刻まれるんだと。
カモンアゲイン。