• 23 Jan
    • 本能寺ホテル

      「お館様は、冷徹非道で鬼のようなお方なのだ」 ―森蘭丸(演・濱田岳)     上映時間   119分 製作国    2016年 日本   <内容> 人生をふわふわと流されるまま生きている女性主人公が、本能寺の変前日の本能寺にタイムスリップする映画。   <感想> 本能寺の変、タイムスリップ、で連想したのが眉村卓『とらえられたスクールバス』。アニメ映画化に際し『時空の旅人』という題に変更されたのですが、自分は元のタイトルの方が素朴で好きです。   印象に残ったのは主人公(綾瀬はるか)と、ホテル支配人(風間杜夫)とのやり取り。相手が聞いてくれている、わかっていると思い込んで話す綾瀬さんと、実はちっとも聞いていない、何を言っているのかわからないのに受ける風間さん。一方通行なのに成立している不思議なやり取りがユーモラスでした。   信長(堤真一)の描き方は僕にはしっくりこず、作品全体としての面白さを減じてしまったと感じました。けれども映画(ドラマ、小説、芝居も)は歴史ドキュメンタリーじゃないんだから、いいのだ、と反省。そもそも歴史解釈や人物像も、あくまで学説なので、これから先どうなるかわかりませんし。 濱田岳さんの森蘭丸を見た綾瀬さんの「イメージが違う」というセリフも、パターン化された歴史人物像を皮肉っているのかもしれません。 その濱田蘭丸は、鬼上司に側仕え、胃痛に悩む、現代のサラリーマン的な人物。同じようなシュチュエーションのCMに出ているだけに、クスリとさせられます(オヤジギャクじゃないですよ)。 *冒頭に掲げたセリフは記憶に頼ってるので、細部は異なっているかもしれません。 そんな蘭丸ですが、ラストはかっこよかったですよ。もちろん信長も。   本能寺の変の前日、当日に絞った「タイムスリップ」も、時と場所を制約して、主人公二人(綾瀬さんと堤さん)の人物を描き込む上で有効だと思いました。 反面、平成の現代の場面では京都のあちこちを描いています。   最後のシーンでは京都の過去と現代の画像が流れてゆくのですが、これは綾瀬さんも出演していたテレビドラマ『JIN-仁』のオープニングを彷彿させます。      

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  • 03 Jan
    • ヒトラーの忘れ物

      「読書記録を綴る」と書いた早々、映画の感想を書く。 いい加減である。 それが私だ。     原題 Under sandet / LAND OF MINE 上映時間    101分 製作国    2015年 デンマーク/ドイツ 初公開年月    2016年12月   内容 1945年5月ドイツ占領下から解放されたデンマーク。しかし、西海岸には連合軍の上陸を防ぐための大量の地雷が残されていた。200万個以上もの地雷撤去を命じられたのは、異国に置き去りにされたドイツ兵たち。その大半は15歳から18歳の少年兵だった。 デンマーク人の殆どが知らされていなかった歴史の暗部を描く。   感想 悄然と引き上げてゆくドイツ兵たち。ジープですれ違ったデンマーク兵がいきなりその一人を殴りつける。 「その旗から手を離せ! それはお前たちのじゃない!」 何度も何度も執拗に殴るデンマーク兵。殴りつける腕は太く、胸板も厚い。その顔は怒りに満ち、怒りは狂気に満ちている。 冒頭のこのシーンに彼の人となり、怒りと悲しみがにじみ出ています。   この冒頭のシーンから、映画とわかってはいても、緊張の解けない場面の連続でした。   集められた少年兵たち。 「ナチスの罪を償え」と、地雷撤去を言い渡され、訓練を課せられます。 最初は模擬であったのが、実物を用いた訓練に。 そして大方の予想通り事故で命を落とす者が出てきます。 そんな短期間の訓練を終えた後に彼らが遣わされたのが、冒頭のシーンで登場した、愚直で粗暴な鬼軍曹ももとでした。 美しい砂浜を指差して、彼は言います。 「ここの地雷を全て撤去したら、ドイツに帰してやる」     「人間は変わることができることを描きたかった。」 監督のマーチン・サンフリートはそう語っています。 主人公である鬼軍曹の怒り、悲しみ、憎しみの背景は一切語られることはありません。観客である我々に想像が委ねられています。少年兵たちが食中毒になったのを「いい気味だ」とほくそ笑む農婦。彼女の憎悪についてもまた然り。 彼らの憎しみが赦しに変わることはできるのか。   対して少年たちは、彼らの「夢」を語ります。「祖国を復興させたい」「技師になりたい」「一緒に会社を作ろう」 彼らは本当にドイツに帰れるのでしょうか。   原題(デンマーク語の方)は「砂の下に」といった意味でしょうか。無味乾燥なタイトルゆえに、史実を描いたドキュメンタリータッチのこの映画に合っていると思います。 邦題も私は気に入っております。「忘れ物」は直接は地雷のことでしょう。拡大解釈すれば、取り残された兵たち、傷を受けた心、ドイツに対する憎悪。 古今東西、戦争を始める時、負けることを考えた指導者はいた/いるのでしょうか。自分の国の子供たちが、例えば「ドイツ人」というだけ理由で憎まれ、虐待されることを、その可能性を、はなから忘れてはいないでしょうか。   映画を見終わった後も、その圧倒的な内容にしばらく呆けていました。 危うく鞄を忘れるところでした。    

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