最大の欺瞞は「地球に優しい」「環境に優しい」というコピーだろう

お詫び


今回は特定人物のマイナス評価をしております。このような姿勢、話題がお嫌いな方は「続きを読む」をクリックしないでください。

最近言い訳ばかりだなあ……

武田 邦彦
環境問題はなぜウソがまかり通るのか



なんとも刺激的なタイトルであります。環境保全というのは今や人類の最大課題の一つといってもよいでしょう。個人から市町村、国家、はては国際スケールにいたるまでさまざまな取り組みがなされています。そういった流れに警鐘を鳴らすタイトル。思わず手に取ってしまいました。


実を言えば私はこのような姿勢には常に好意を抱いております。世の大勢にかかわらず自分の正しいと思うところを主張するというのは勇気と忍耐がいるところであります。例えば凶悪犯罪が起こるたびに罰則の強化が叫ばれますが、それに動ずることなくずっと死刑反対を訴えている方、逆にマスコミなどのバッシングにあっても被害者遺族の気持ちを訴え続ける方。立場は異なれ、一事の風潮に流されることなく辛抱強く活動を続けてゆくさまには尊敬の念を抱かずにはおれません。

かつて日本が真珠湾を攻撃し、アメリカ世論が一気に開戦やむなしに傾いたときにもあくまで戦争反対を訴えていた人々がおりました。彼らの主張の是非はともかく、反対意見が主張できることは民主主義の根本原則であり、反対意見に耳を傾けることもまた民主主義社会の大切な原則なのではないでしょうか。


しかしこの本を読むのには苦労をしました。私が環境保護を推進しているから、読みたくなかったのではありません(私は観光保護推進派でも反対派でもありません。個人的にごみが増えるのがいやで、それなりに工夫しているだけです)。読解力が不足しているのかもしれませんが、ともかく読みづらいのです。

アマゾン等のレビューで高い評価を受けていますが、私にはそうは思えません。

*アマゾンのレビューでも低い評価がいくつかありました。最初に表示される、最新5件だけを見て判断していました。申し訳ありません。ですから皆様も本書のレビューをチェックされるには、すべてに目を通すのがよろしいかと思います。


著者の武田さんがこの本で主張されたいことはタイトルどおり。


しかし、こうした地球にやさしいはずの環境運動が錦の御旗と化し、科学的な議論を斥け、合理的な判断を妨げているとしたらどうだろうか。環境活動という大義名分の下に、人々を欺き、むしろ環境を悪化させているとしたら――。

(本書3ページ Introductionより)


そしてこの問題定義通り、国家や企業は「環境活動という大義名分の下に、人々を欺き、むしろ環境を悪化せせている」ことを、ペットボトルのリサイクル、ダイオキシン報道、地球温暖化問題など個々の例を挙げ、説明されております。マスコミの報道が偏っており(あるいは不正)、特定企業・団体に利益を誘導するシステムになっており、既得権を守るために政府は法を作り、国民を欺いているというのです。

まことにショッキングなことです。私たちが善意から行っている行動のほとんどが騙されている、踊らされているというのですから。


さて読者である私たちの多くは素人であります。専門家である武田さんがおっしゃる事にうなずかざるを得ません。武田さんも素人である読者のためにわかりやすく図表や例を挙げて、説明を試みていらっしゃいます。

私が読みづらさを感じたのは実にここなのです。それほど多くはないのですが、図表のいくつかに出所が記されておりません。たしかに私たちは素人ですが、重要なデータは検証したいと思う方も出てくるでしょう。だのにいくつかでそれができないのです。もっともひどい例はごみの分別をやめた地方公共団体の紹介で、「長崎県の海沿いにある伝統のある市」としか書いていない。なぜはっきり書いていないのでしょうか。理解に苦しみます。またグラフの読み取りが明らかにおかしな記述がいくつかあります。そして例やたとえになるとわかりづらく、これはおかしいな、と思わざるを得ないのがかなりあります。


どうやらかなり思い込みの激しい人物らしいぞ


というのが私の武田さんにたいする正直な感想です。

例を挙げましょう。

JR東海が流した

「東京と大阪間を飛行機で行くのに対して、新幹線を使えば二酸化炭素の発生量が10分の1になる」

というテロップの欺瞞を暴くのに、こう説明されています。

確かに単純な燃料消費なら10分の1になるだろうとした上で、しかし新幹線はレール、橋、トンネルなどの設備設置および維持、安全点検のために人件費等費用がかかるとして、欺瞞であると結論付けているのです。

ここで武田さんはJR東海の欺瞞を暴くという正義感に燃えすぎで、航空機にも同じように設備設置と維持、安全点検の費用がかかることを忘れてしまっています。これはあまりに片手落ちというものです。


これは武田さん、および彼の著作を読んだ方々の主張する「指定ごみ袋、マイバッグの方がレジ袋より環境に負担がかかる」にも言えます。これも上記のように本書には文章の記述だけですまされています。しかし、素人の私が考えても、レジ袋がすべてごみ袋として再利用されるわけではないのですから、一枚当たりの資源消費、製造コストなどの安易な比較では結論の出るものではないでしょう。



本書ではいくつか大切なことも書かれております。例えばペットボトルのリサイクルの現状、ダイオキシン騒動における報道の無責任などは私たちも十分注意すべきでしょう。


それでも武田さんの思い込みの激しさゆえに、踏み込みが足りないものもまたかなりあります。

地球温暖化にたいしては

「北極・南極の氷がとけ、海面が上昇する」

という報道および世間の思い込みに過剰に反応しすぎています。確かに北極の氷がとけて水面が上昇することはない。私はそのような報道がされたこと、そう信じている人が多いことは知らなかったのですが、例として引いている朝日新聞の紙面こそ小さくて見えないものの、年月日を明記しており、また武田さん自身の教え子さんの例も書かれておりますから、そうなのでしょう。しかしそれをいつまでも引っ張りすぎなのです。さきほどの新幹線の例と同じで、そのことばかりを問題視する。せっかく

「南極周囲の海面は年々低下している」

という事実を国際機関のデータを示しながら、科学的にわかりやすく説明しているのに、それを発展させることなくデータ提示で終わっている。あまりにも中途半端。このように読者自身が危機感を感じる重要問題は中途で放り出し、わかりきっている世間の誤解をくどくど繰り返されたのも、読むのをしんどくさせたのです。


結論を言えば、本書は見るべき主張はあるものの、全体としてトンデモ本といわざるを得ません。

そして残念なことに、本書はある人々の錦の御旗と化しています。おそらくこれは武田さんの本意ではないでしょう。

本書は各種ある仮説の一つに過ぎないのです。

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