• 03 Apr
    • すばらしい女性を見つけた!

      春です。まだ冷たい風が吹き、冷え込みもしますが、春が来ました。 野に山に美しい花開く季節。 なんてがらにないことを書きましたが、俺は草花の名前はほとんどわかりません。 『シートン動物記』『ファーブル昆虫記』は読んだけれども、「~植物記」というのには出会わなかったなあ。 好きな花は? ときかれたら 「ラフレシア」 と答えています。 ラフレシア【(ラテン)Rafflesia】 ヤッコソウ科(ラフレシア科)の植物。ブドウ科植物シッサスに寄生し、葉はなく、花は世界最大で直径約1メートル。花びらは5枚あり、多肉で黄赤色。開花すると悪臭を放つ。雌雄異花。東南アジアのジャングルにまれにみられ、1818年に英国のT=S=ラッフルズが発見。 [ 大辞泉 提供:JapanKnowledge ] 「悪臭」というのは腐肉のような臭いで、花の色もなんとなくそんなイメージですね。その臭いで花粉媒介者であるハエをおびきよせるのだそうです。 なかなかインパクトのある花です。 こんなふざけた答えをするのは、「花の名前をあまり知らない」というコンプレックスゆえ。ですから花に詳しい人には尊敬してしまいます。花屋にいくといつも店員さんにいろいろな名前を教えてもらってもいます。 椎名 誠 蚊學ノ書 話はすこし変わるけれど、ぼくは草や花の名前を沢山知っている女性と野道などを歩くとドキドキする。 「あっ、うれしい。あそこにヒメオドリコソウがありますわ。ムラサキケマンとハルノノゲシもある。本当に春なのねえ……」 などと言いつつ野道を歩いていく女性というのはいかにもひたむきな日本の女、というかんじがして魅力的である。 (椎名誠『蚊學ノ書』29ページ) まったく同感であります。花に詳しい男性と野山を歩くとただただ感心しますが、女性と歩くとドキドキしてしまうのであります。 その伝でぼくはせめて蚊にくわしい男になりたいと思っているのだ。 「あっ、いまここのところを刺しているのはセスジヤブカですよ。あっ、その隣にきたのがネッタイシマカでこれはデング熱の仲介をするというので恐れられています。いやあしかし本当に夏が来たんですねえ……」などというのもなかなか個性的で男らしいではないか。 (同書29、30ページ) これまた大いに同感です。蚊でなくとも、野山にある何かに詳しくなりたい。名前を知れば、そのものたちとの距離が縮まり、自分の世界が広がるではないですか。普段は見向きもしない雑草でも、たとえばオオバコとかギョウギシバなど、名前を知ると見る目が違ってくる。 俺は蚊には詳しくなく、アリやハチなら次々と名前を挙げることができるのですが…… 「あっ、今あなたが踏みつけそうになったのがクロオオアリですよ。その横のやや小さいのがクロヤマアリ。あなたがさっきもたれかかった木にはトビイロケアリがいましたよ。小さいから首筋から入ったのにお気づきにならなかったでしょう。春が来たんですねえ……」 ではロマンがないではないか。個性的ではあるが、男らしくはない。 ロマンや男らしさ、女らしさはともかく、春になるとたくさんの虫が出てきます。 小さな子供さんは虫や花が好きです。甥っ子が小さいころ、散歩に連れてゆくたびにタンポポやダンゴムシを 「お母さんにおみやげ!」 とポケットに詰め込もうとするので苦労しました。 「ポケットに詰め込んだら、潰れてしまうがな。手に持っときなさい。それはダンゴムシとちゃう、ワラジムシ。くるっと丸まらへんやろ? 虫は逃がしてやろうな。こんどちゃんとケースを持って来よう」 しかし母親とは偉大なものですね。甥っ子が持ってくるそれらの「おみやげ」を 「ありがとう~」 と笑顔で受け取る妹。ダンゴムシだろうがミミズだろうが平気で受け取ります。昔はキャーキャー言ってたのにな。 月刊 かがくのとも 2007年 04月号 [雑誌] ここに出てくるお母さんはすごい! 小さなみなちゃんが庭で見つけた虫の名前を次々と教えてくれるんです。 ダンゴムシにワラジムシ、ゲジ、ヤスデ、ハサミムシ、アゲハの幼虫……。 ジクモを恐がるみよちゃんに 「へいきよ、 おかあさんが ちいさかったころは こうして てのうえに クモを のせて あそんだのよ」 (12ページ) とおっしゃる。すごい! すばらしい! 椎名さんではないが、こんな女性と野山を歩いたらドキドキしてしまいます。 いや本を読んだ時点ですでにドキドキでした。いいなあ。こんな女性と暮らしたいなあ。俺はアリとハチだけなんだけれどね。 著者は澤口たまみさん。応用昆虫学専攻。付録のブックレットにお写真がありましたが、きれいな方です。 俺も子供のころはよく虫をとってきて、誉められたり叱られたりしたものでした。 今でも忘れられないのは、コカマキリの卵を取ってきたはいいが、しまいっぱなしにして、そのうち忘れてしまって。春になって壁一面に孵化したばかりの小さな小さなカマキリたちがびっしりと並んでいたこと。掃除機で吸い取る母に泣きながら抗議したものです。もちろん抗議は無視され、小さな命を奪う結果になった管理能力のなさを怒られました。そうです、虫を持ち込んだことを怒られたのではなく、放りっぱなしにした無責任を怒られたのです。 もちろん虫が好きな人もいれば嫌いな人もいるでしょう。不潔な虫もいれば危険な虫もいますから、子供の無邪気さにいつもニコニコしてはいられないでしょう。しかしただ毛嫌いしているのでは、本当は何が不潔で何が危険かはわからないもの。 そして子供は大人の反応に敏感なものです。願わくは世のお母さん方よ、虫を好きにならずとも、拒絶はしないで。美しい花も小さな虫も、俺たちと同じように春を待ちわび、出てきたのだから。

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