• 23 Dec
    • 神武天皇とサンタクロース その1

      みなさん、おひさしぶり! いつのまにか季節は冬。というより今年もあとわずか。 昨日から名古屋は大雪。といっても北国とは違い、10センチ積もれば「大雪」で、交通機関がヘロヘロになっちゃうんだけど。 どこもかしこも白一色。雪ってやっぱり美しい。見てるとワクワクするんだけど、母さんは浮かない顔だ。 「今日が休日だったのが幸いだけどね」 平日だったら通勤にどれくらい時間がかかるかと思うとぞっとしちゃう、とぶつぶつ言っている。 大人は悲しいなあ。せっかくのホワイトクリスマス(まだちょっと先だけど)なのにね。 「クリスマスといえば」 プレゼントのことなんだけどね、とボクが交渉を始めようと思った矢先、 「そうそう。伯父さんを夕食に招待しないとね」 毎年クリスマスと正月には伯父さんを招待するのがならわしだ。母さんの兄にあたる人なんだけど、いい年をしていまだに独身。年中寝転がって本ばかり読んでいる。ハチやアリなどの社会性昆虫飼育が趣味という変わり者で、これは嫁のきてがないと、親戚中からさじを投げられている。 そんな変わり者だけれど、母さんとはたった二人の兄妹。ボクにとっても大切な伯父さんだ。 「じゃあ、伯父さんのところへ行ってきてちょうだい」 「うへえ」 なんともあきれたことだけれど、伯父さんは電話を持っていない。 「顔が見えねえ相手とぐちゃぐちゃしゃべる必要があるかい」 というのが理由なんだそうだけれど、こちらとしてはたまったもんじゃない。連絡をとるにはいちいち出向かなきゃいけないのだ。 雪はやんだとはいえ、雪道を歩いていくなんて。普段の倍以上は時間がかかりそうだ。。。 あれ? ボクも母さんと同じ考えになっているぞ。ボクも半分大人になりかけなんだろうか。 「ついでだから伯父さんに勉強を見てもらいなさい」 「へーい」 というわけでえっちらおっちら雪道をかきわけ、伯父さんの家にたどり着いたわけ。 伯父さんは家にいるときは鍵をかけることはない。めったに外出しない人だから、ほとんど年中鍵がかかっていない。 「こんちは~」 勝手知ったる他人の家、ずかずかと上がり、母さん手製のキンピラゴボウ(伯父さんの好物なのだ)を冷蔵庫に入れ 「おう。お茶をいれてくんな」 伯父さんのリクエストにこたえて熱い紅茶を2つ。 「ありがとよ」 うまそうに紅茶をすする伯父さんにクリスマスのことを伝えた。 「おお! もうそんな時期だっけか」 「今日はイヴイヴだけどね」 「学校はどうした、え」 「今日から休みだよ」 「そうかい。ずいぶん早くから休みになるんだな」 「今日は祝日だからね。で次が土日、休みでしょ。だから昨日終業式だった」 「ああ、そういや天皇誕生日だったな。今日は」 「天皇誕生日があって、クリスマス・イヴがあって、クリスマス。世間は三連休だよ。ボクらは冬休み」 「考えてみらあ、天皇誕生日とクリスマスがくっついているのは面白えな」 「くっついてないよ。間が一日あるけどね。でも、なんで面白いのさ」 「日本の天皇ってのはな、世界で一番古い家系なんだそうだ」 「そうなの」 「ああ。おい、今年は何年だえ」 「平成17年」 「いや、西暦でサ」 「2005年だよ」 「うん。この西暦ってのは」 「知ってるよ。イエス・キリストが生まれた年を1年としたんでしょ」 「ああそうだよ。もっともイエスが生まれたのはそれより少し前、紀元前6年か4年ってのがあとからわかったんだけどな。『西暦』というくらいだから西洋、キリスト教世界の年の数え方だ。まあ現代はアメリカやヨーロッパが強いから世界中で使ってるけどな。でも各地域、各宗教でさまざまな暦、年の数え方があるんだヨ」 「ふうん」 「西暦が使われたのは西洋でもそれほど古いことではないんだが、話を天皇に戻せば、日本は昔から西暦を使ってたわけじゃあない」 「そりゃそうだ。元号を使ってたんでしょ? 明治とか大正とか」 「そうだね。ところが明治時代に日本も西洋諸国と付き合うようになってから、元号と並行して独自の暦を使い始めた」 伯父さんは本の山の上にちょこんと乗っかったプラモデルを手にした。プラモデルを作ったり、アニメソングを歌ったりと子どもじみたところがあるんだ、この人は。 「こいつを知ってるかえ」 「ゼロ戦でしょ」 「うん。零戦の21型だ」 「れいせん?」 「零式艦上戦闘機、略して零戦。でこっちは一式戦闘機、隼」 「ええと」 「この零式とか一式ってのが日本独自の暦に基づいているんだな。零式は紀元2600年、一式は紀元2601年に制式採用されたんでそう呼ばれたんだ」 「紀元2600年って。。。」 「明治政府が定めた神武天皇即位紀元、皇紀(こうき)のことだ」 「こうき?」 「初代天皇、神武天皇が即位した年を1年とした年の数え方だよ」 「ええ~」 「今年は2665年だ」 「そんなのウソでしょ? そんな昔に天皇がいたなんて」 「ああ、ウソだよ」

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  • 20 Dec
    • シェイクスピア 『ウィンザーの陽気な女房たち』 (シェイクスピアの「現代劇」)

      フォルスタッフこそはシェイクスピアの創造した最高傑作である オーソン・ウェルズ *ところでこのクリスマススキンのサンタさん、フォルスタッフみたいな体型ですね! どうもペースがゆっくりになっちゃいました。 皆様、長い間お休みしまして誠に申し訳ありませんでした。 妻もなく子もなく、財産もなく、親に何も報いることのできない私ですが、こうやって書き続けることが私の存在証明であるのだと、感じます。 趣味で書いてものゆえ、それほどたいそうなことは言えませぬが。 私と同じように人並みの家庭を持つことなく、不良老人として生涯を終えたフォルスタッフ。いい年こいても食欲色欲の塊で、口ばかり達者なこの男。ハル王子(ヘンリー5世)の悪友、いやさ、名君になるための引き立て役だったはずのこの男は、当時から絶大なる人気を誇っておりました。当時のロンドン市民ばかりでなく、女王エリザベスや近現代の知識人もまた彼に惹きこまれたのです。 名優オーソン・ウェルズもその一人で、彼自身が監督、脚本、主演をこなした『真夜中の鐘』ではフォルスタッフを嬉々として演じています。ウェルズはオリヴィエを意識していたのでしょうか。オリヴィエと同じくシェイクスピア3作を監督、主演しております。『マクベス』、『オセロー』、そしてこの『真夜中の鐘』。前2作がそれぞれ1作ごとの映画化であるのに対し、『真夜中の鐘』はフォルスタッフの出てくるシェイクスピア3作品をたくみに融合させたものです。 その3つとは『ヘンリー四世』第一部、第二部、そして『ウィンザーの陽気な女房たち』。 『ウィンザーの陽気な女房たち』はこれまたフォルスタッフの魅力にとりつかれた女王エリザベスの 「今度はフォルスタッフの恋物語が見たい」 との言葉に、シェイクスピアがわずか10日ほどで書き上げたという作品。もっともこのお話、どこまで本当のことかはっきりしていないそうです。 ともあれ、女王までがフォルスタッフのファンであったことは事実のようで、シェイクスピアが心底人々を喜ばせるためにこの作品を書いたであろうことは作品を読んでみれば分かります。 フォルスタッフとその子分をはじめおなじみの面々が15世紀のロンドンではなく、16世紀末、すなわちシェイクスピア時代のウィンザーを舞台に活躍いたします。 「恋物語を。彼の恋する姿が見たい」 との女王の注文でしたけれども、この老騎士が恋にうつつを抜かしている姿はやはり様にならないのか、シェイクスピア描いたのは、色事氏を気取って人妻(それも適齢期の娘がいる中年のご婦人)二人、「ウィンザーの陽気な女房たち」を手玉に取ろうとするフォルスタッフ。もちろん彼のたくらみは相手にバレバレ。逆に彼女たちにこっぴどくからかわれてしまいます。 そうこなくっちゃね。フォルスタッフだもの。 思えばハルとの付き合いの中でもしょっちゅう王子にからかわれてましたっけ。 フォルスタッフを逆にやり込める女房たちも、その旦那たちも、出てくる人物は田舎判事や郷士、宿屋の主人にフランス人の医者、ウェールズ人の神父といった具合にみんな「庶民」。 他の劇のように王侯貴族や将軍といった輝かしい人々は出てきません。そこが逆にこの劇の魅力なのでしょう。 私はこの劇を読んで何度も笑ってしまいました。まるで吉本やドリフのようなドタバタ、駄洒落が出てくるのですから。 フランス人やウェールズ人のなまりを徹底的に笑い飛ばしてます。小田島さんの訳ではズーズー弁などを駆使して笑わせてくれます。まるでドリフのカトちゃんみたいですね。 何度も申していますが、シェイクスピアは実に下品で卑猥でしょーもないこと言いのオッサンです。 もちろん『ハムレット』や『リア王』などには高尚なテーマがあるんですけれども、それら作品でも駄洒落や下ネタを忘れてはいません。 シェイクスピアなんて難しいな、なんて思ってる方がいらっしゃったら是非この作品を読んでみてください。 ウィリアム・シェイクスピア, 小田島 雄志 ウィンザーの陽気な女房たち シェイクスピア全集 〔18〕 白水Uブックス ウィリアム シェイクスピア, William Shakespeare, 松岡 和子 ウィンザーの陽気な女房たち―シェイクスピア全集〈9〉

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  • 15 Dec
    • 元禄十五年十二月十四日

      センセも走る、頃は師走。 皆様にご無沙汰している間に十二月もはや半ばとなりました。 師走と言えば「忠臣蔵」、「第九」、そしてクリスマスに紅白。まあ昔はそうでしたね。今はどうなんでしょうかね。クリスマスは相変わらずですけれど、忠臣蔵はかつてほど人気がなくなっているんじゃあないかなあ。 忠臣蔵はいうまでもなく、赤穂事件――元禄14年(1701年)3月14日の江戸城松大廊下で起こった刃傷事件と、翌元禄15年12月14日の赤穂浪士吉良邸討ち入り事件を題材にした物語。 今日はもう15日になっておりますが(汗)。討ち入りは14日から15日にかけて行われたのでぎりぎりセーフかな。。。 事件の4年後に近松門左衛門が人形浄瑠璃で『碁盤太平記』を著し人気を呼んだそうです。現代(江戸時代)のできごとを太平記の時代に置き換え、浅野長矩(ながのり、内匠頭)を塩谷高貞に、吉良義央(よしなか、上野介)を高師直にし、師直が塩谷の妻に横恋慕するのが刃傷の原因とするなど、後の『仮名手本忠臣蔵』のはしりとなりました。で、1748年、事件の47年後に歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』ができ、これで「忠臣蔵」という名前が定着するわけです。 それ以来数多の芝居や小説に取り上げられ、冒頭述べましたように年末は忠臣蔵と、広く定着するわけですね。本当にたくさんの作家さんが小説の題材にしております。芥川龍之介も書いたそうで。恥ずかしながら未読ですけれども。 私が「忠臣蔵」を最初に読んだのは小学校5年生のとき。源義経をきっかけに歴史に興味をもち、通史や伝記などを読んだ、その中にありました。 子供のころの私には歴史というのは物語の一種でしたから、何と言っても源平時代や戦国、そして幕末などの動乱の時代が好きでしたね~。逆に江戸時代の中ごろはつまらなかった。だって平和だったんだもの(笑)。動乱好きな子どもだったんですかね。子どもだからヒーローにあこがれる、そしてヒーローが必要とされるのは、出現するのは、世の中が乱れたとき。だから興味がそこに集中しちゃったんでしょうね。 その「退屈な」江戸時代の半ばに赤穂事件(「忠臣蔵」)なんてどえらい事件が起こっている。いやあ、血が滾りましたです。わくわくしました。 最初に読んだのは子供向けに古典作品をリライトしたもの。これは「忠臣蔵」でしたから、登場人物の名前こそ史実に戻していますけれども、筋運びは歌舞伎と同じ。なんで後に小説を読んで内匠頭切腹のときに大石さんが駆けつけてこなかったんでびっくりしちゃった。 次に読んだのが講談社文庫で、『忠臣蔵銘銘伝』。これは講談の語り口調そのままを本にしたもので、残念ながら今は絶版となっているんですが、語り口調だから分かりやすいし面白い。有名なエピソードはほとんどこれで覚えてしまいました。 次は海音寺潮五郎さんの『赤穂義士』。これは小説ではなく評論で、中学生の私にはちょっと難しかったけれども、後ろのほうには赤穂藩士の名簿が載っていて面白かったです。それぞれの役職名と俸禄が載っていました。私はこの本で歴史「物語」のみでなく、「データ」を楽しむことを知りました。 海音寺 潮五郎 赤穂義士 とまあ、小学校、中学校のころは素直に赤穂「義士」のお話を信じ、追っていったのですが、私の悪い癖で、だんだんと物足らなくなってくる。飽きてきちゃったんですね。鼻についてくる。まあ、思春期でしたから。 ましてや吉良さんの領地、吉良は私の住んでいる愛知県にある。その吉良町では吉良さんは名君として慕われている。そんな事実を知り、赤穂より吉良の方に興味が移ってゆきました。また周辺知識が増えるにつれ、「義士」というのも胡散臭くなってくる。ましてや浅野さんが「名君」だなんてとうていありえないなあ、と思っちゃうんですね。「義士」云々はともかく、浅野さんは名君ではない。バカ殿です。感情を抑えきれず事件を起こし、家臣を路頭に迷わせていますから。キレちゃったんでしょうね。現代の少年犯罪となんら変わりない。加えて吉良さんに傷を負わせただけ。脇差なら切りつけずに刺せばいいのに。自己本位に事件を起こし、自己本位の目的すら遂げていない。少なくとも並より下でしょう。 そんな思いを抱いているうちに、傑作小説に出会いました。 小林 信彦 裏表忠臣蔵 赤穂事件をなるべく公平に描いております。 漫画ではやはり杉浦日向子さん。 杉浦 日向子 ゑひもせす この本の中に吉良側から見た襲撃事件(いわゆる討ち入り)が描かれています。 武林唯七が茶坊主を斬っちゃった事件も、講談ではコミカルに語られるんですけれども、こちらでは野蛮な浪士たちの所業として描かれております。そして吉良家家臣の行動。そりゃ中には逃げちゃった人もいます。いやそっちの方が普通でしょう。私だって現場に居合わせたら多分逃げちゃうでしょうね。でも中には主君を守って奮戦した人もいたのです。「忠臣」は何も赤穂の専売特許ではない。そして上野介養子、義周(よしちか;上野介の孫)の悲劇。浅野さんよりよほど潔く、そしてかわいそうな殿様です。 逆説の作家、井沢元彦さんも忠臣蔵を扱っています。 井沢 元彦 忠臣蔵 元禄十五年の反逆 いわゆる「歴史ミステリ」ものです。素人が歴史の謎を追ってゆくわけですから、素人である私たちにもその過程が充分分かりやすい。 ただ残念なことに井沢さんの歴史ミステリもの、現代の登場人物とそれを取り巻くミステリをからめた二重構造になっている場合が多いのですが、現代劇の方はあまり面白くない。偉そうなこと言いますが、あえて小説仕立てにしなくったっていいじゃん、と思うできです。 『猿丸幻視行』は面白かったのになあ。 かようにいろいろな角度から楽しめる「忠臣蔵」。 もちろん歴史ではなく独立した作品として見れば、やはり傑作なんでしょうね。史実と虚構を上手く絡めた傑作です。かつて日本人の心といわれ、未だに多くの作家さんが小説や芝居、映画にするのも傑作だからこそ。 ですが傑作ゆえに歴史を歪めてしまう場合もある。 シェイクスピアのリチャード三世と忠臣蔵の吉良上野介。彼らの悲劇がその典型なんでしょうね。

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