• 31 May
    • 幕末編  高須四兄弟

      豊臣秀吉が天下を統一したときのエピソードです。 小田原北条氏を下し、天下を平定した秀吉は鶴岡八幡宮へ詣でました。そこには源頼朝の木像があったそうで、秀吉はこの木像にこう語りかけたそうです。 「ワシも貴公もともに天下人。己一人の才覚で天下をとった仲間であるな。 しかし御身には源家の嫡流という旗印があったが、この秀吉は文字通り裸一貫から天下をとったのじゃ。だからワシの方が上手かのう」 おそらく事実ではないと思いますが、実に面白いエピソードです。 秀吉の言うように頼朝は源家の嫡流。であるがゆえに天下をとれたと思われていますが、これも秀吉の言葉にあったように、平治の乱に敗れて伊豆に流され、源家の嫡流という看板以外は全く何もない状態から天下をとるまで昇り詰めたのです。つまりは秀吉と同じ成り上がり者。 もしも、もしもですが、頼朝が平治の乱に敗れず、そのまま父のもとで京で栄達していたら、恐らく天下人にはなれなかったでしょう。父義朝は坂東の経営を長子義平(彼は悪源太と呼ばれるほど勇猛な武将でした)に、中央での政治活動を頼朝に託す構想があったと思われます。であれば、義朝が弟の義賢(よしかた:木曽義仲の父で、悪源太義平に滅ぼされた)と争ったように、いずれは頼朝と義平の争いが起こったでしょう。 その時、坂東武士たちと太いパイプを持っていた兄義平にどこまで対抗できたでしょうか。 まさしく頼朝は一度全てを失うことで天下をとることができたのです。伊豆に流され、坂東武士たちの中で成長したのは誠に貴重な経験であったといえます。 このように歴史上の人物がどんな幼少期を送ったかは意外と重要なのかもしれません。特に挫折を味わっている場合には。 尾張徳川家14代を継いだ慶勝(よしかつ)も、その襲封までには紆余曲折がありました。藩内の士民の世論は彼を推していたものの、過去2回も後継争いに敗れ、挫折しています。上手くいけば16歳で12代藩主となるところが、26歳でやっと14代藩主となれました。頼朝の20年に比べれば短いですが、それは結果論であって、後継争いに敗れるたび、2度とチャンスは巡ってこないのではないか、という状況でした。 それでも慶勝は来る日を待って文武に励みました。 この雌伏の時期が後の慶勝の慎重な性格を作ったのでしょう。 慶勝は尾張徳川家の分家、高須松平家10代当主義建(よしたつ)の次男です。長男が早世してましたから、実質は彼が長男でした。 この義建という人がなかなかえらい人で、子供の教育に非常に熱心でした。当時大名の次男以下は部屋住みとして一生飼い殺しにされるか、他家の養子となるしか道はありません。そして他家の養子になるためには文武に優れていなければ声もかかりません。 義建は自身が3万石の小大名でありながら、男子6名全員(早世したものを除く)が大名になっています。いかに彼が教育熱心であったかがわかろうというものです。その様子には正室の兄である水戸斉昭(なりあき)も感心したそうで、わが子の慶喜(よしのぶ:後の十五代将軍)の教育方針の手本にしたそうです。   ↑クリックすると大きな画像でご覧になれます 彼の子供たちの中でも慶勝、茂徳(もちのり)、容保(かたもり)、定敬(さだあき)の4名は幕末の政局で活躍をしたので、「高須四兄弟」と称されています。 ですがその「活躍」とは兄弟相和して、には程遠いものでした。 徳川慶勝  尾張14代及び17代。藩内を勤皇に統一 徳川茂徳  はじめ高須家を継ぐ。後に兄慶勝の失脚を受け、尾張家15代。藩内の佐幕派とつながる。慶喜の将軍家継承の後を受け、一橋家を継ぐ。 松平容保  会津松平家を継ぐ。京都守護職として新撰組らを用い、尊攘派を取り締まる。戊辰戦争でも新政府軍と戦う。 松平定敬  桑名藩を継ぐ。京都所司代として兄容保とともに佐幕派として活躍。 兄弟が勤皇・佐幕に分かれてしまっています。とはいえ、個人的に仲が悪かったわけではなく、それぞれの家の立場、信条から分かれてしまったのです。

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  • 30 May
    • 城山三郎 『冬の派閥』

      尾張藩最後の殿様徳川慶勝と、北海道を開拓した旧尾張藩士の物語 「尾張徳川十七代」幕末編の主役が徳川慶勝(とくがわよしかつ)です。 おそらく名古屋の殿様の中で最も有名なのは七代藩主、徳川宗春(むねはる)。彼のユニークな治世は以前ご紹介しましたが、江戸時代の大名とは思えないほど個性的で優しい殿様でした。優しさゆえに政治家としては大成できず、ライバル吉宗に遠く及びませんでしたが、今でもその人柄はたくさんの人に慕われています。 その宗春に次ぐ知名度を持っているのがこの慶勝です。とはいえ、知名度では宗春とは天地の開きがあります。慶勝の方は幕末を取り扱った本に名前が出てくるか簡単な紹介がなされている程度でしょう。 知名度でこそ劣るものの、慶勝の生涯と業績は宗春よりもスケールの大きいものでした。 幕末の尾張家を率い、攘夷派として、後に勤皇派として、ひとり尾張藩のみならず周辺諸藩の動向に大きな影響を与えた人物です。幕末最終局面において、御三家筆頭の尾張が朝幕いずれにつくかは東海諸藩のみならず、全国の中立・日和見な藩に影響を与えました。 城山三郎さんは名古屋出身の作家として、また、義兄に尾張藩研究の第一人者、林薫一さんがおり、この慶勝を書くにはまさにうってつけの人物であります。 この本が出たとき私は高校生でしたが、著名な作家が尾張徳川家を題材に書いた小説の出現に狂喜しました。 幕末という難しい時代に、藩民の衆望を担って登場した慶勝。雌伏の時代が長かったこともあって、従兄弟の慶喜や弟である京都守護職松平容保(かたもり)、京都所司代松平定敬(さだあき)ら佐幕派とは異なる道を歩みながらも、きっぱりと彼らを切り捨てることができず、苦悩します。 そしてお膝元の名古屋で起こった「青松葉事件」。藩内の勤皇派と佐幕派の対立に苦慮しながらも慶勝は過酷な処分を下し、藩論を勤皇に統一。先述したように明治維新の歯車を大きく前へ動かしたのでした。 城山さんは慶勝の生涯だけでなく、旧尾張藩士たちの維新後の動向も書いておられます。 北海道渡島半島にある八雲町。維新後旧尾張藩士たちが開拓した町です。途中から藩の援助を一切当てにせず、自分たちの力で村づくりをしていった彼らの苦しみが胸を打ちます。 今でも北海道土産として有名な熊の木彫りも、慶勝の後、尾張家の当主となった義親(よしちか)が奨励し、八雲の人たちが始めたものだと言われています。 名古屋の郷土史としてだけでなく、変換機の時代を生きた普通の人たちの選択とその苦悩を知ることができる、なかなか面白い小説です。 『冬の派閥』は1998年秋、テレビ東京系で2時間ドラマ「尾張幕末風雲録~維新を動かした男・徳川慶勝」として放映されました。非常に残念ながら、私は見てません(涙)。三田村邦彦さんが慶勝を演じられたそうです。 著者: 城山 三郎 タイトル: 冬の派閥

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  • 29 May
    • 鳥飼否宇 『昆虫探偵 ―シロコパκ氏の華麗なる推理』

      虫好きも、ミステリ好きも唸らせる怪作! 虫好きでなくても楽しめます。 著者: 鳥飼 否宇 タイトル: 昆虫探偵 昨日あんなことを書いたせいかどうかは分かりませぬが、今日職場の屋外ブレーカ を覆っている箱の中にキアシナガバチが巣を作っているのを発見。まだ作られたばかりで、部屋は8つくらい。覗き込んでみるとタマゴが産み付けられていました。 巣にはしっかりと母バチ(女王バチ)が番をしています。巣を作り、卵を産み、これら最初の幼虫が成虫になるまでは子育てまで全て一人で頑張ります。 よほどそのままにしておきたかったのですが、家ならともかく、職場ではそんなわがままは通りません。撤去することになりました。一人で頑張ってきた母バチのことを思うと残念です。風上から殺虫剤をスプレーしますと、母バチはどこかへ行ってしまいました。まだできたばかりの巣ですので、もう帰ってくることはないでしょう。この最初の時期は割りと簡単に巣を見捨てるのです。 「どこか子育てによい場所でまた巣を作ってくれよ」 人間のくせに虫のいいことを考えながら母バチの飛んでいった先をしばらく見つめていました。 昆虫は本能で行動する動物です。おそらく彼女には我々人間のような感情などないでしょう。しかし、ひょっとして私と彼女の立場が突然入れ替わったら、私は私の仕打ちをどう思うでしょうか。 。。。やはりさっさとあきらめて、まだえさが豊富な時期にもっと子育てに適した場所を探すでしょうね。 人間が、ある日突然虫になってしまう、といえばかのカフカの『変身』が有名ですね。 『変身』はその不条理性がすごく印象的でした。虫になった主人公はその運命を「不運」ととらえています。 まあ、普通ならそうでしょうね。 虫(昆虫以外のクモやムカデもふくむ)は多くの場合気味悪いもの、地球上に住むエイリアンくらいの認識しかない場合が多いですから。 でも、もしかしたら虫になったことを喜ぶ人がいるかもしれません。 せちがらい人間様の世よりもよっぽど暮らしやすかろうとあこがれている人がいるかもしれません。 ある朝起きたら、葉古(はふる)小吉は昆虫に、それもヤマトゴキブリになってしまいました。 人間界でうだつの上がらない彼はむしろその運命を喜び、昆虫界で新たな人生虫生を、探偵助手としてすごすことになります。なぜなら彼は昆虫と同じくらい本格ミステリが大好きだったからです。 メインの登場人物虫は3頭。 私立探偵、クマバチのシロコパκ(カッパ)。 クマバチとは黒色の体にプーさんを思わせるふさふさした黄色の胸を持つ、ずんぐりしたハナバチです。このシロコパ先生もずんぐりむっくりのおじさん探偵です。 探偵助手、もと人間のペリプラ葉古。 ヤマトゴキブリについては。。。コメントは控えますね。 そしてクロオオアリのカンポノタス刑事。刑事とはいえ、アリですから女性であります。でも男顔負けの口の悪さ。 (ハタラキアリ、ハタラキバチは皆メスなのです) ややこしい名前ですが、シロコパ、とかペリプラ、カンポノタスというのはそれぞれの虫の学名(ラテン語)を縮めたもの。 かなり風変わりな設定ですね。 設定といい、サブタイトルといい、安部公房さんの世界を髣髴させます。 とはいえ、本作は本格ミステリ。そして彼らが扱う事件も実にユニーク。 タイトルをずらっと並べますと、 ・蝶々殺蛾事件(ちょうちょうさつじんじけん) ・哲学虫の密室(てつがくしゃのみっしつ) ・昼のセミ ・吸血の池 ・生けるアカハネの死 ・ジョロウグモの拘(こだわり) ・ハチの悲劇 日本の本格ミステリの傑作をもじったタイトルが並んでいて、思わずにやりとさせられます。 設定もタイトルも遊び心満載ですが、決して単なるおふざけではなく、しっかりした構成になっております。 虫たちが思考したり、しゃべったりというフィクションではありますが、彼らが扱う事件はいずれも昆虫世界の常識、道理にのっとったもの。人間界のそれとは完全に異なっております。 ペリプラ葉古君はもとが人間だっただけについ人間の道理で推理を展開。犯行動機を嫉妬や怨恨と考え、先生のシロコパさんに怒鳴られます。 「バカモン! アンタの発想はニンゲンを引きずったままじゃないか。昆虫(ワシら)には嫉妬なんていう感情はない!」(文庫版47ページ) 作者の鳥飼さんの知識は相当なものです。なにせ大学の生物学科でアメンボの研究をしていた人ですから、プロ。そんな鳥飼さんが豊富な知識を分かりやすく作品内に散りばめておられます。 ダ・ヴィンチ・コードに匹敵する薀蓄の量ですよ~! しかも、ミステリと昆虫と両方の知識が増えちゃう。一粒で二度美味しいです! 鳥飼さん自身による注釈も笑えます。自分の作品に自分で突っ込んでいます。、この人。 私はクマバチとゴキブリ、クロオオアリが頭を集めてなにやら相談している様を想像して何度もクスリとさせられました。

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  • 28 May
    • 世界の昆虫 DATA BOOK

      少年の日に戻ってわくわくしよう! 先日、夕日に見とれてエサにありつけなかったサルの話を書きました。で、自分でも考えたんです。 「最近はめったに空を見なくなったなあ」と。 たまに見上げても「雨が降りそうだ」とか「暑くなりそうだ」なんて余り楽しい気持ちで見ていません。 子供のころはもっと空を見ていたような気がします。 もちろん、今よりも視線が低く、周りを見上げなければならなかったこともあるでしょう。でもそれだけじゃあない、何かこう、もっと自然を身近に感じ、もっとわくわくしていたような気がします。 大人になって、サイズがでかくなって、子供のころの感覚がなくなっちゃったんでしょうね。 草や石ころの手触りも、虫をつかんだときの感覚も、子供のころとは違っているような気がします。体が大きくなった分、相対的に虫類が小さく感じられ、ばたつく足の、手に当たる感じも鈍くなったような。アリにしろ、テントウムシにしろ、芋虫や毛虫などにしろ、もっと大きく身近に感じられたのになあ。 こういった「大きさ」の感覚はやはり人それぞれ違うようで、よく知った見慣れたものは小さく、余り知らない不気味なものは大きく感じるようです。 我が塾にもさまざまな虫が入ってきます。蛍光灯の光に集まる羽虫やガ。夏から秋にかけ迷い込んでくるハチ。ごくたまにゴキちゃんも出没します。そういったとき必ず声をかけられる私。たいていの場合は手でつまんでポイするんですが(ハチの場合は風上から殺虫剤をかけて追い出します)、捕まえた私には小さく感じられるものでも、虫が嫌い、あるいは怖い人は「大きいガ(ハチ、ゴキ、など)だったよね」と言います。 人間の方がよほど大きく恐ろしいんですけどね。 記録によれば世界最大の昆虫はニューギニアにすむヘルクレスサンというガの仲間だそうで、羽を広げた状態で、その差し渡しが28cmもあったそうです。日本にもヨナクニサンという親戚がおり、その大きさに鳥と間違えて鉄砲で打った人がいたとか。 また、日本にはさまざまな美しい昆虫もいて、我々の目を楽しませてくれます。 タマムシやルリボシカミキリ、ハンミョウなどきらびやかな連中もおればカラスアゲハのようにしっとりと落ち着いた美しさをもつものも、各種のテントウムシのようなかわいらしいものもいます。 ですがやはりきらびやかさでは外国産の昆虫が上回っているようですね。特に熱帯産のチョウの派手なこと。モルフォチョウの仲間は本当にきらびやかです。足利義満の金閣や豊臣秀吉の黄金の茶室も、そして名古屋城の金のシャチホコも、彼女らの輝きにはかなわないでしょう。 現代は私が子供のころに比べ外国産の昆虫を見たり触れたりする機会が多くなりました。うらやましいことですが、その一方で外国産昆虫のむやみな輸入がわが国の昆虫たちの生態系を崩したり、純潔性が壊されたりする危険もあり、ちょっと心配。 なるべくなら映像などで楽しむにとどめて欲しいものです。 さて今回ご紹介するこの「世界の昆虫 DATA BOOK」は、隔週刊で、それを集めれば百科辞典ができる、というよくあるシリーズもの。そしておまけ付。毎回実物大の実にリアルな昆虫フィギアがついているんです。フィギアをかざるBOXも今後付録としてつくとのことで、フェイクではありますが見事な標本ができちゃう。創刊号第一弾のフィギアはニジイロクワガタ。その名のとおり、タマムシのような虹色にかがやく羽根をもったクワガタです。きれいですよ~。 創刊号は記念価格で490円。でも次回からは1390円。うう、この差はちょっとひどいですねえ。 創刊号だけでも楽しめるのでそれでガマンしますか。

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  • 26 May
    • 生き物の飼い方図鑑

      ナメクジからヘビ、コウモリからクマまで。コレ一冊でわかります! 今は昔。まだ私が初々しい青年だったころ。 こんな私にも青春の日々がありました。合コンに合ハイ(合同ハイキング)にと楽しい日々を送っておりました。みんな若く、将来の可能性を信じて疑わず、ちょっぴり向こう見ずで、輝いていました。う~ん、今から見ると本当にうらやましい美しかったです、みんな。 当時大阪の学生寮に住んでいたので、合ハイには豊中の服部緑地公園に行ったり、六甲山牧場に行ったりしました。これから書きますお話もその六甲山牧場でのこと。 牧場には牛やヤギ、ウサギなんかがいて、キレイな空気、のどかな雰囲気に心も体も癒されます。私はといえばお乳を欲しがる子ヤギを相手にしているうち、おっぱいと勘違いしたのか小指をチューチュー吸われ、挙句にかまれちゃって、指をさすりさすりしてました。そこへ牧場にいるんでしょうか、泥んこに汚れた犬が2匹、こちらへやってくるではありませんか。一緒に来ていた女の子たちも男連中もちょっとひいてしまうくらい汚れていました。牛だ、ウサギだ、ヤギだとはしゃいでも所詮は身勝手な現代っ子。動物にも外見のよいものを求めちゃうんですね。 ところがそんな中で一人だけ、自分の服の汚れるのもかまわずワンちゃんたちを引き寄せ、なでなでする女の子が。普段は余り目立たない彼女。トレーナーとはいえ結構いいものを着ていたのに、泥がつくのも平気な様子でした。 それは何と美しい姿でしたろう。 その行為と笑顔に私は完全に参ってしまいました。(でも既に婚約済みだったのでした。。。) かように生き物を愛でるというのは他人に好ましい印象を与えるものです。 やはり平気で動物を殺しちゃう人よりは可愛がる人の方がステキですよね。 かくいう私も生き物なら大抵は愛でることができます。あの評判の悪いゴキちゃんも、好きではありませんがその存在意義とライフスタイルには理解があるつもりです。 観察対象を含めるとさまざまな生き物を飼ってきましたが、やはり手引書は欲しいもの。 書店に行くとさまざまな飼育本が売っています。やはりイヌネコは定番。またハムスターや各種小鳥も人気が高いですね。亀や熱帯魚なども大抵の書店にはあります。また、カブトムシやクワガタムシなんかもこれからの季節、人気を呼びそうです。中には「毒虫の飼い方」なんてのまであります。 私が以前持っていたこの本はすごいです。 全編モノクロ、写真はなくイラストですが、なんとクマやシカの飼い方まで載っているんです。普通の書店で買ったんですよ。クマの頁にはどんなことが書いてあったかというと、 「コンクリで数メートルの空堀を作り、鉄製の手すりをもうけ」 。。。ここまでできる人は普通いませんよねえ。 一方でイヌネコ、ハムスター、マウスやラットなど普通のペットも載ってます。また各種ハチュウ類、魚類、昆虫はもちろん、扱いは小さかったですがナメクジの飼い方までありました。 一体どんな人がこの本を必要とするんでしょうね。 でも結構重宝しました。 近所の子が巣から落ちたハトのひなを持ってきたときも、同じゼミの子が迷子のアヒルを預かっていたときも、この本のお世話になりました。 そう、自分が飼っていなくても、いつ何時どんな動物があなたの元へ持ち込まれるかもしれません。 そんなときのために、何か一冊でもいいからこの手の本を持っておくのもいいかもしれませんね。

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  • 25 May
    • 豊臣秀吉とジャンヌダルク  その4

      神の声を聞き、祖国を救った少女、ジャンヌ・ダルク。強い信念を持ち、短い生涯を駆け抜けた乙女。ジャンヌ・ラ・ピュセル。そのジャンヌを魔女だという奴は一体誰なんだろう? 「ジャンヌが魔女だなんて。ありえないよ」 「そうかえ? 彼女は何で火あぶりにされたんだっけ」 「え?」 「ジャンヌは敵(イギリスではなく、フランス国内の反対派だが)につかまり、イギリスに売り渡され、そこで裁判にかけられた。そして異端の罪で火あぶりになったんだ」 「イタン?」 「キリスト教の、間違った教えのこと。そしてその教えを信じる人たち。その人たちは魔女と言われた」 「でも、それはイギリスがそう言ったんでしょ? 敵だからわざとひどく言ってるんだよ」 「そうだな。フランスにとっては救国の英雄もイギリスにとっては憎むべき敵だからな。しかも素人が奇跡に近いやり方で戦争をひっくり返した。フランスにとっては神の奇跡かもしれんが、イギリスにとっては悪魔のしわざと映っただろうな」 「う~ん」 「『ロミオとジュリエット』で有名なシェイクスピアの初期の作品にジャンヌ・ダルクも出て来るんだよ。魔女としてね」 「でもそれは昔のことでしょう? 今はどうなの」 「今は『魔女』とまで呼ぶ人はいないだろうよ。それでも英雄じゃあないだろうさ」 「そうかなあ」 「きちんと評価する人もいる一方で国ごとの対抗意識から評価が曇る人たちもいるんだ」 これは後から調べたことだけど、ジャンヌ・ダルクは二回裁判されている。一度目は彼女の生前。本当に神の声が聞こえたのか、が中心で、教会や神父を通さず、直接神の声を聞くなどおかしいとされた。ジャンヌも勇敢に裁判に立ち向かうけれど最後には屈してしまう。その姿は戦場での輝かしい彼女とは違って、非常に痛々しい。 二度目は彼女の死後、彼女の復権をかけての裁判。でも死んだ後に裁判があってもねえ。 「そういう食い違いがあれ、対抗意識があれ、イギリスとフランスの仲が悪いとは思わないだろう」 「そうだね。日本と韓国もそういう付き合いができないものかなあ」 「そうだなあ。歴史上の人物の評価が国ごとで違うのは当たり前だ、ということを両国の人々がしっかり認識しなきゃあいけないな。歴史の共有とはそういうもんだとおいらは思う。日本の豊臣秀吉とか伊藤博文が韓国で憎まれているのはわかる。だけど日本では英雄なんだ。同時に韓国の李舜臣(イ・スンシン)や安重根(アン・ジュングン)は日本にとっては英雄でもなんでもないんだ。 そこを無理にあわせようとするのはよくないな。日本も、韓国も」 李舜臣は秀吉軍を破り、安重根は伊藤博文を暗殺した人だ。 「でも秀吉はやっぱりよくないよ。朝鮮を侵略したんだもん」 「いいか悪いかは人それぞれの判断だから、おいら、何も言わないヨ。だが、ジャンヌの例を忘れたか? よその国で悪く言われてるからってそれが真実とは限らん」 「ジャンヌは侵略者から国を救ったんだ。秀吉とは逆の立場だよ。むしろ李舜臣じゃないかなあ」 李舜臣は朝鮮海軍の司令官で、日本の水軍を破り、補給路を断たれた日本をかなり苦しめた。韓国では国民的英雄だ。まさに救国のヒーローだ。 「う~ん。それじゃあ秀吉はナポレオンみたいなものだな」 「ええ~」 「ナポレオンもジャンヌ・ダルクと同じくフランスの英雄だ。この二人とルイ14世がフランス人なら誰でも知ってる三大英雄だな。 ナポレオンはフランスでは英雄かもしれないが他国を侵略した。最初の内はそれぞれの国の古い体制を破った、革命を広げたと歓迎されもしたが、やがて各国の国民を無視した戦争継続が反発を食らった」 「少なくとも最初は歓迎されてたんなら秀吉とは違うね」 「いいや。それが同じなんだな。秀吉軍があれだけ短期間に朝鮮に攻め入ることができたのは、当時の朝鮮が民衆から支持されてなかったからだというよ。だが、日本軍もやがて朝鮮人の反発を食らう。ナポレオンと似ているだろ」 「ジャンヌの話はなるほどと思ったけど、秀吉のことはまだ納得できないなあ」 「そうかい。それはそれでいい。おいらの話を鵜呑みにして自分で考えない方がよくないからな。 まあ、お国が変われば人物の評価もまるっと変わるわけだ」 「うん。それはわかる」 「その違いを違いとして認めることが大事だな。おいらはミツバチやアリが好きだが、他人にはなかなか分かってもらえない。特にお前の母さんにはな。それでもおいらの好きなことに口を挟むことはしない。 ジャンヌの評価も人によってまちまちだが、あまりにひどいのをのぞけば、それぞれの立場を認め合ってるよ。 それが歴史の共有だと思うがな」 「伯父さんとジャンヌ・ダルクを並べて説明されてもなあ」 「はっはっはっは。まあ、あとはおまえ自身でいろいろ調べてみるがいいや」 世の中にはさまざまな国があり、人がいる。 だからこっちの国の英雄があっちの国では悪人になっちゃうこともある。でもそれで国同士が仲たがいすることはないだろう。 日本の中だけでも本当に沢山の人がいる。 ボクの伯父さんを他人が見たら殆どの人が面食らうだろう。 でもボクは伯父さんのことが大好きだ。他人の評価なんか気にしない。

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  • 24 May
    • 豊臣秀吉とジャンヌダルク  その3

      「バカヤロウ! 人の事をバカバカいうやつは、自分の方がバカなのだ!」 えらい剣幕だ。でも、人をバカと言っているのは伯父さんもじゃないか。 「まあ、確かに戦争という選択をしたのは失敗だったかもしれん」 ボクのびっくりした様子を見て、伯父さんもやや口調を和らげた。 「だからといって、昔の人がバカだから戦争をした、なんて考えはものすごい思い上がりだぞ。 昔の人はバカだから天動説を信じていたのか? 昔の人はバカだから人種差別をしてたのか? 昔の人はバカだから戦争をしたのか? バカだ、野蛮だと切り捨て、『自分たちはそうじゃない』と思うのはよせ。 そいつは過去を軽んじ、過去から何も学ぼうとしない。バカから教えてもらうことはないからな。自分たちは利口だからそんな間違いはしないと思っているからな。 そんなことしてると、自分がバカにしていた愚かな過ちを繰り返すことになるんだ。それこそバカなことだぞ。 過去から学ぶ。歴史を学ぶってのは実はそんな意味もあるんだヨ」 「ゴメンナサイ」 「いやいや、こっちこそ急に大声出して悪かったなあ。 まじめな事をしゃべったもんだから喉がかわいたヨ。またコーヒーをいれてくれるかえ」 「ウン」 「日本と韓国は仲良くできないのかなあ」 「なんだい、お前は日本と韓国は仲が悪い、と思ってるのかえ」 「う~ん、よくわかんないや。いい、とも悪い、ともいえないような気がする」 「どうして」 「韓国語を学ぶ本やテレビがたくさんあるし、韓国ドラマも人気があるし。 でも日本の悪口を言う韓国人や、逆に韓国の悪口を言う日本人もいるし。 本当の意味で仲良しじゃないのかもしれない」 「お前はエライなあ。おいらがお前くらいの年にはそんなことは考えてなかった。遊んでばっかりいたがなあ」 「そうかな」 「まあ国と国が仲良くする、ってのは友達同士が仲良くするとは違うからなあ」 「そうなの?」 「友達同士なら好き、嫌いでくっついたり離れたりできるが、世界の国々は『好きだからつきあいます』『嫌いだからあっち行ってください』という訳にはいかない」 「そりゃそうだ」 「お前はさっき『悪口を言い合ってる』と言ったが、『悪口』の中には史実が含まれていることもある。 人間に100パーセントの善人がいないのと同じで、どこの国でも『悪いこと』をしたことがあるからなあ」 「ふうん」 「だから世界中で評判のよい国、なんてのはない。どこの国でもどこかの国には嫌われているもんだ。 それにお互いの悪口を言い合いながらもうまく付き合っている国も多い」 「本当?」 伯父さんはジャンヌ・ダルクのCDを拾い上げた。 「ジャンヌ・ダルクってのはもともとフランスの歴史的英雄でな」 「知ってるよ。神様の声を聞いてフランスを救うためにイギリスと戦ったんだよね。そして本当に勝っちゃった」 「お前はいろんなことをよく知ってるなあ」 伯父さんは目を細めて聞いていた。よく知ってるも何も、伯父さんが昔くれた本を読んでたから、なんだけど。羊飼いの少女でありながらフランスを救ったジャンヌ。長く美しい髪を切り、鎧をまとって神の祝福を叫びながら人々の先頭に立った乙女(ラ・ピュセル)。ジャンヌはマンガやゲームの世界でも人気がある。 「さっきのバカヤロウは取り消し?」 「ああ、エライな」 「で、ジャンヌ・ダルクなんだけど。フランスのために戦ったんだけどイギリスにつかまり、処刑されちゃったんだ。でもジャンヌの活躍がきっかけでフランスはイギリスに完全に勝利できた。だからフランスのヒーローなんだよね」 「ヒーローってのは男だ。女はヒロインって言うんだぞ」 「そう、それ。ヒロイン」 「まあ、細かいことを言うと長くなるが、大筋はそんなもんだ。ジャンヌ・ダルクは救国の英雄としてフランスで最も有名な人物の一人だな。1920年にはローマ法王から『聖女』として認められた」 「すごいね」 「ところがジャンヌ・ダルクは悪魔の手先、魔女だって言ってる人がいるんだ」 「ええ~?」 著者: ジョゼフィーン プール, Josephine Poole, Angela Barrett, 片岡 しのぶ, アンジェラ バレット タイトル: 絵本 ジャンヌ・ダルク伝

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  • 23 May
    • 豊臣秀吉とジャンヌダルク  その2

      落ち込んでいる伯父さんをなだめつつ、伯父さんの家へ。 というわけで今日はボクがコーヒーをいれた。伯父さんにはブラック、自分にはカフェオレ。 せっかく買ったんだからとジャンヌ・ダルクのCDを聞きながら、二人で黙ってコーヒーを飲む。ボクがいれた奴だからインスタントだけど。   「しかし、あれだな」 しばらくして気を取り直したのか、伯父さんが口を開いた。 「別のもので同じ名前ついてると、間違うわさ。ここんところ問題になっている島根県の竹島もそうだヨ」 おやおや。なんとまあ、都合のいい展開だろう。ボクが聞きたいと思っていたことを話し始めた。 「今日学校で習ったよ、竹島。韓国では独島っていうんでしょ」 「おや、そうかい」 「ウン。同じ竹島って名前だけど日本にはいくつかあるんだって。愛知県にもあるって習ったよ」 「ああ、そうだな。愛知県にもあったっけ。だが、おいらが言ったのはそういう意味じゃあないんだ。韓国が言っている竹島は名前が同じだけど、島根県の竹島じゃあないってことサ」 「ええ? それホント?」 「今日習ったって言ったな。地図、出してみろ」 「イエッサー」 「ほれ、ここ。ここに鬱陵島(うつりょうとう)というのがあるだろ」 「ウン」 「どこの国の領土だえ?」 「ええと、ここが国境線だから、韓国だね」 「そう。この鬱陵島のことを昔の日本では竹島と呼んでたんだ」 「ええ? ホント?」 「で、今の竹島を松島といった」 「なんで? なんでそんなややこしいこと」 「鬱陵島は朝鮮(韓国)のものだったんだが、長い間ほったらかし、誰も住んでいなかった」 「なんで」 「重い税を逃れるために島へ逃げ出す人が多かったんだな。それを当時(15世紀)の政府が禁止したから、それからずっと誰も住んでない状態が続いた。400年ほどね」 「そんなに!?」 「江戸時代、その無人島になった鬱陵島に日本人が漂着する」 「漂着?」 「嵐で船が流され、たどり着くこと。 その人は誰も島に住んでいないもんだから、新しい島を発見したと思ったんだな。そして『竹島』という名前をつけた」 「なるほど」 「それから後、毎年のように日本人が『竹島』に渡って漁をしたり、木を切ったりしたんだ。その時中継点になった島を『松島』と呼んだ。コレが今の竹島だ」 「なぜ名前が変わっちゃったの?」 「『竹島』が実は朝鮮の領土だって分かり、放棄。じゃあってんでそれまでの松島を代わりに竹島って呼ぶことにしたんだ。そして1905年に竹島(旧松島)は島根県に編入された」 「じゃあやっぱり日本の領土なんだね」 「そうさな。ここで終われば今のようにもめなかったんだろうな。だけど日本は戦争に負けてしまったろ?」 「ウン」 「その後、アメリカの占領下で、沖縄や小笠原諸島と同じように竹島も日本の行政権からはずされてしまった」 「ということはアメリカ領なんだ」 「いや、そこで韓国が出てくる。1953年、初代大統領、李承晩(イ・スンマン)が竹島周辺海域は韓国の者だって宣言しちゃったんだな」 「じゃあやっぱり韓国の領土ジャン」 「1965年、日韓基本条約が結ばれ、この問題は解決された」 「ということは日本の領土?」 「ところが韓国はずっと竹島を占拠し続けている」 「あ~~!! もう、ややこしいなあ。はっきりしてよ!」 「はっきりしたいから、日本は国際司法裁判所で決着をつけようと韓国に提案した。韓国は応じてないけどね」 「ややこしいけど韓国が悪いような気がする」 「国境問題ってのはややこしいもんサ。ややこしいから問題になってるんだ。だけど韓国も日本も両方に非はあるな。日本の多く人が竹島問題に無関心だったんだ。問題にしたくなかったんだ」 「なんで?」 「揉め事は日韓友好の邪魔だからサ」 「そう言われればそうだなあ」 「そうかえ?」 「日本は戦争で沢山の悪いことをしたんだ。ちょっとくらいはガマンしなきゃあ。 それにしても戦争をするなんて日本もバカだなあ」 「ほう」 伯父さんがぎろりとこちらを見た。 やばい。怒ってるようだ。 「昔の日本人はバカかえ?」 うう。ちょっと怖いぞ。でもボクはなんか間違ったこと言ったのか? 戦争で国内外に多くの悲劇を招いたのは事実じゃないか。 「だってそうじゃないか。戦争なんてやってはいけないことをしたんだろ」 「バカヤロウ!」

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  • 22 May
    • 奥井一満 『ミミズは切られて痛がるか―生き物の気持ちになった生物学』

      感覚も感情も思考も測定できない。測定不能だが、確かに存在する。 どこかで読んだ話なんですが、人間を構成する物質を 大人一人分だけ買うとしたら1万2000円くらいになるそうです。人間の原価、材料費ですね。これがわずか1万円強。小学生だってお年玉で買えちゃうかもしれないですね。 もちろん人間に値段をつけることなんてできやしません。じゃあ材料費1万2000円に何を加えたから値段がつけれないほど貴重なものになるんでしょう。答えは言わずとも知れてます。それを意味する言葉は人それぞれなんでしょうけれど。  一昔前、リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』がベストセラーになり、 「我々は遺伝子という名の利己的な存在を生き残らせるべく盲目的にプログラムされたロボットなのだ 」 という考え方が随分話題になりました。 もちろん、これをもってドーキンスの考えが唯物的であると断じるのは早計です。荒唐無稽と片付けるのはお門違いでしょう。ドーキンスはものごとの一面を述べているだけで、個々人の人格、個体の意思や感情、感覚まで否定しているわけではないのですから。 利己的遺伝子論により、それまで説明不能だった生物の行動に説得力のある説明ができるようになりました。 子殺しをするチンパンジーのオス。コロニーのために自己犠牲的に働く社会性昆虫。などなど。 国内でもこの説は人気を呼び、小説やゲームにまで影響を与えたほどでした。 ですが当時国内でこの「ロボット」の部分のみクローズアップされ、生物の行動を何でも遺伝子の生き残りのためと強引に解釈する論も出てきました。 男性の浮気、三高(高学歴、高収入、高身長)がもてはやされるわけ、嫁と姑のいがみあうわけ、などを全て遺伝子の生き残り戦略として説明するのです。 流行というものは怖いものですね。 そんな風潮に待ったをかけたのが奥井さんや中村さんといった方々。 科学というのは自然を観察し、測定するひとつの方法に過ぎません。そして観察、測定で分かるのはあくまで物質的な現象。量は測定できても室は分からない、ということです。  タイトルにも挙げられていますが、ミミズが切られたりつぶされたりすると苦しそうにのた打ち回る。ただこれはいたい、とか苦しい、とか言うのではなく、単なる反射に過ぎない。ミミズの構造は単純だから、痛みや苦しみを感じるわけがない、と。これがいわゆる常識的な考え方です。 でも本当にそう言いきれるのか。 一方、サルやイヌなどの「高等」生物が傷を追い、叫んだりのた打ち回っていると、これは苦しいのだ、痛いのだと解釈してしまう。これらの生物は高等で体の構造も複雑だから、痛みも苦しみも感じ取れるのだと。 奥井さんはここで待ったをかけます。 ある刺激を受けたときにどのような行動が起こるかは観察できます。 その時どのようなことが体内で起こっているか、脳波はどうか、分泌はどうか、は測定できます。 しかし、客観的に分かるのはここまでです。イヌの「痛み」やミミズの「苦しみ」があるのかないのかは観察も測定もできません。だからといって「ない」とは言い切れない。 このくだりを読んだときは目からウロコが落ちる思いでした。 私も知らず知らずのうちに「常識」に心を狭められてきたのだなあと。 奥井さんは「ミミズは実は痛がっているのだ。科学者は無能だ」なんて事を言っているのではありません。分からないことは分からない。それを分かった気になっている怖さ、分からないことを悪しとする恐ろしさ、を述べているのです。 現場の科学者にではなく、世間の風潮に引きずられ、「科学的」と名がつけばそれを妄信してしまう我々に警告を与えているのでしょう。 本書のエピソードで特に印象深かったものは、「夕食を食べ損なったサルの話」です。 あるサルが沈み行く夕日を眺め続け、日が暮れてしまったためにエサを採集できなかったというのです。 このサルがどんな思いで夕日を眺めていたのかは誰にもわかりません。もしかしたら眺めていたのは夕日ではなく別の何かだったのかもしれません。観察された事実はサルが夕日に見とれエサを食い損ねた、だけです。そこには観察や測定では知ることのできない何かがあったのでしょうか。 著者: 奥井 一満 タイトル: ミミズは切られて痛がるか―生き物の気持ちになった生物学 著者: 中村 桂子 タイトル: あなたのなかのDNA―必ずわかる遺伝子の話

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  • 21 May
    • 坂井三郎 『大空に訊け!―戦いに勝つための至言集』

      不撓不屈(ふとうふくつ)の心を教えてくれる本です 著者: 坂井 三郎, 世良 光弘 タイトル: 大空に訊け!―戦いに勝つための至言集 坂井三郎。 日中戦争~太平洋戦争の海軍航空隊のエース。200回以上出撃し、大小64機を撃墜。 1942年、ガダルカナル沖で被弾、頭部に瀕死の重傷を負うも不撓不屈の精神で生還。 「エース」とは、航空戦で5機以上撃墜した者に与えられる呼称です。たった5機、と感じる方もいるかもしれませんが、大空の中、文字通り死に物狂いで動き回る敵味方の中でのことです。いかに困難なことであったか。私にももちろんわかりませんが、並大抵のことではなかったでしょう。 人を殺して英雄なのか、と疑問に思われる方もいるかもしれません。 しかし、戦争というまったく異常な環境の中で軍人という立場を全うしたのです。その善悪を判断するのは私にはできません。 この限られたスペースでは語れない事です。 坂井さんについて必ず語られることは、 瀕死の重傷を負いながらも生還したことと、 200回以上出撃したが、列機(一緒に編隊を組む味方の機体。坂井さんは3機編成の小隊長をつとめる事が多かった)を一度も失わなかった事です。 撃墜数なら坂井さんを上回る人が数人いますが、坂井さんが傑出した存在であるのは実にこの点においてではないでしょうか。 英雄視するのも罪人扱いするのも周囲の人達。坂井さんは決して英雄気取りな人はありません。 代表作『大空のサムライ』をはじめ数多くの著作がありますが、その中でもこの作品は異色といえます。 週刊プレイボーイ誌上で読者から寄せられる悩みに対し、回答したものをまとめたもの。連載されているのは知っていたんですが、単行本になっているとは知りませんでした。 そしてこれが坂井さんの最後の本となりました。 相談内容は多岐にわたっております。人生の目標の事、子育ての事、いじめの事、などなどなど。 それらに対し、スパッと答える回答の気持ちよさ。 何かというと自分の現役時代を引き合いに出し、過去の栄光に浸るどこかの解説者やコメンテーターとは異なります。 激動の時代を生き抜き、困難な責任を全うし、部下や裏方の人、現地の人たちにも心を配った坂井さんならでは。 ありきたりな人生相談に物足りない方、一度読んでみて下さい。 巻末で、担当編集者の世良さんが語る坂井さんへの慕情も涙を誘います。 著者: 坂井 三郎 タイトル: 大空のサムライ―かえらざる零戦隊 ↑坂井さんの代表作。数ある戦記もののはしり。 坂井さんの記憶力、記録を残そうとする意志には脱帽です。 著者: 坂井 三郎, 宮代 忠童 タイトル: マンガ 零戦の撃墜王 ↑『大空のサムライ』の一部を漫画化。坂井さんが亡くなった日のことも書かれています。 ボールペンを一本使い切るごとに死んでいった仲間たちに祈る姿が心に響きます。

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    • 豊臣秀吉とジャンヌダルク  その1

      いきなり勉強の話から始まるけど、今日から社会科で日本の地理を勉強することになった。 日本は小さい国だ、といわれているけれど面積はけっこうあること(約38万平方キロメートル)。大小沢山の島(6852島もある!)から成り立っていること、などを習った。自分の国のことだけど、知ってるつもりであることが多かった。反省。改めて教えられると、なるほど、と思う。結構面白い。 とひとりで感心していると、秀才のT君がさっと手を挙げた。 「先生、竹島は本当に日本の領土なんですか?」 竹島? そりゃ何だ? とざわめく生徒多数(ボクを含む)。先生が地図を指し示しながらていねいに次のことを教えてくれた。   「竹島」という名前の島はいくつかある、愛知県にもある  日本海に浮かぶ、島根県の竹島。この島が日本の領土か、韓国の領土かでもめている  韓国では「独島」と呼んでいる  日本は自分の領土だと主張しているが、日本人は住んでいない  日韓にかぎらず、国境でもめている国は多い 地図で見ると確かに韓国の近くに浮かんでいる。でも地図帳には竹島の、日本から見て外側に国境線が書かれている。日本の学校で使っている地図帳だから当たり前か。 そこから先は韓国のこと、北朝鮮のことでもちきりになった。 北朝鮮がミサイルを撃ち込んできたことや、韓国で反日感情が強いこと、などを取り上げ、非難する子もいれば、ワールドカップや映画、ドラマ、など文化の交流があり、そんなに悪い国ではない、という子もいた。 先生は日本と韓国には過去不幸な歴史があったことを教え、また次の機会にこの問題を考えよう、ということになって授業が終わった。 なんだかややこしい話になってきた。こんな時、伯父さんならどんなことを言うだろう。久しぶりに寄ってみようかと考えていたら、意外なところで伯父さんと出会ってしまった。 「よう。今帰りかえ?」 平日の夕方、何を買い込んだのか、袋を抱えた伯父さんがニヤニヤしながらボクの方へ手を振っていた。 「随分久しぶりじゃあねえか。どうだ、しっかり勉強しているか」 「伯父さんこそ、珍しいね。買い物?」 「ああ、ちょっとな。本屋へ寄ったついでにCDでも聞こうかって思って買ったんだ」 「へえ」 「そいつがな、聞いて驚け。『ジャンヌ・ダルク』のCDだぞ」 「ふうん」 それは意外だ。伯父さんは殆ど音楽を聞かない人で、たまに聞くのはボクにはよく分からないが演歌とか、昔の歌謡曲とか、そんなんばかりだ。その伯父さんがジャンヌ・ダルクのCDを買ったなんて。意外だ。 「おいら、昔からジャンヌ・ダルクは好きだったんだ。バーグマンの映画はいまひとつだったがミラ・ジョヴォビッチのはよかったなあ」 う~ん、自分の世界に入って勝手にしゃべり始めた。こうなると長いんだ、伯父さんは。 なんか分からないけど外人の名前を連ねてどうこう言っている。 「テレビドラマもよかったぞ。ピーター・オトゥールが悪役でな。。。」 「あのさ」 「でも昔の作品もいいぞお。ジャンヌの映画の歴史は古く。。。」 「伯父さんの買ったCDは、そのジャンヌ・ダルクじゃないよ」 「ええ?」 さあ、そこからが大変だった。 伯父さんは歴史上のジャンヌ・ダルクをテーマにした、女性グループかなんかのCDだと思ったみたいだった。あるいは映画のサントラ盤だと思ったのかな。ともかく、思い違いを指摘されてがっかりしたようだ。 はしゃぎっぷりも子供じみてたが、落ち込み方も大人気ない。本は立ち読みで中が確認できるが、CDは中身が分からんからだめだ、なんて文句を言う。CDも試聴できるんだけどなあ。 伯父さんの勘違いはちょっとありえないけど、「ジャンヌ・ダルク」や「リンドバーグ」と聞くとやっぱり歴史上の人物を連想する人が多いだろうな。しかも「ジャンヌ~」は男性で「リンドバーグ」は女性だ。伯父さんのような年とった人にはややこしいだろう。 そういえば伯父さん、歴史上の人物ではないけれど、「テツ&トモ」を「鉄腕アトム」と聞き違えたこともあったっけ。 ぶつぶつ言う伯父さんをなだめつつ、ボクらは伯父さんの家へと向かった。

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  • 20 May
    • 晴山 陽一 『「2行日記」で英語がカンタンにうまくなる』

      継続は力なり。わかっちゃいるんですけどね。。。 私は塾の教師。先生、先生と呼ばれ続け、いつしか思い上がっている阿呆な人間です。 それでも他の職業と同じく、教師もまたやりがいのある仕事です。 私は次の方々に勝手に親近感を抱いています。 野球の監督。自分が活躍するのではなく、選手たちによいプレーをさせ、勝利をつかむ。教師に似ている。 理容師、美容師。お客さんの希望のヘアスタイルを請負い、その出来栄えを満足していただかなければならない。失敗したら返品はきかない。教師に似ている。 また、商売がら、ある程度の強制はします。 家庭で毎日勉強する、というのも時には強制し、習慣として定着させなければなりません。 とはいえ、自分がやっていたのか、やっているのか、といわれると何ともいえません。 毎日勉強する、勉強時間を確保する辛さは学生さんより社会人の方の方がより実感できるのではないでしょうか。 英語は普段から積極的に使っている方はともかく、普通の方は覚えても忘れる、頭に入れても消えていってしまう、といったことが悩みでは。私はそうです。 そこで毎日少しずつ、継続することが望ましいのですが、その継続が難しい。 NHKのラジオ講座はそういった点でありがたいですね。 この本も継続、を主眼としております。タイトルどおり、1日2行、比較的簡単な英文で365日の一年間を通して読めば、力がつくはず、です。 とはいえ、自分で日記を書いていくという練習帳、ドリルみたいなものではありません。 とある若い女性が書いた日記、という形になっています。もちろんフィクションですが、仕事のこと、恋の悩み、海外旅行やホームステイなどが綴られており、最後まで読んでいてあきません。 日記は1月1日から始まっています。もちろん、その日付どおりに読む必要はありません。最初から1日位ページずつをゆっくり読んでゆけばよいのです。 実は私もまだ2ヶ月くらいしか続けていません。継続は力なり。1年間、ちゃんと続けられるかなあ。 ちょっと弱気になったんで、あえてここに書き、他人にさらすことで、自分の逃げ道をなくしてみました。 著者: 晴山 陽一 タイトル: 「2行日記」で英語がカンタンにうまくなる!

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  • 19 May
    • パット・マガー 『探偵を捜せ!』

      犯人が探偵を捜す、でも倒叙ではなくて本格ミステリ 著者: パット・マガー, 井上 一夫 タイトル: 探偵を捜せ 本が好きなもので「本・書評・文学」でブログを作り、はや半年が過ぎました。 初めての体験だったものですから、知人友人に吹聴して回り、そのため、今までそんな話ができなかった人たちとも読書、本を話題に話すことができるようになりました。 つい先だっても、三人の方からミステリのお薦めを聞かれました。 とはいえ、私の読むミステリはかなり偏っています。全ジャンルを満遍なく、というわけにはいかず、自然とお薦めも偏ってきます。 ここにも過去何作かを紹介いたしましたが、やはり創元とハヤカワが多いですね。別にその他のも読んでいるんですけど、人に薦めるとなると何でもよい、という訳にはいかず、結果、自然とこの2社が多くなってしまったんです。 さて、今回のパット・マガーは創元推理文庫版が入手しやすいかと。 タイトルの通り、誰が探偵かを犯人が必死になって捜すというものです。 犯人があらかじめ分かっている、というとテレビドラマ『刑事コロンボ』など倒叙ものを連想されるかもしれません。しかしこの作品はれっきとした本格ミステリなのです。 物語冒頭、若く美しいマーゴットは、財産欲しさのため夫を殺害します。 いきなりですね。犯人、殺害方法、動機、すべて最初に分かってしまいます。 ところが、身の危険を感じていた夫が生前、探偵を雇っていたことが分かります。そして山荘を訪れる4人の男女。件の探偵はその中にいるのです。 舞台は閉ざされた山荘。容疑者(?)は4人。舞台設定はまったく本格ミステリそのものですね。 物語はマーゴットの目を通して語られるのですが、探偵を特定するための手がかりはちゃんと記述されています。マーゴットはそれこそ探偵顔負けの観察力、推理を働かせてなんとか探偵を見つけ出そうとするのです。 もちろん、犯罪の方が先に発覚してしまっては身の破滅。マーゴットはあせります。 こいつが探偵に違いないと目星をつけ、一人殺しちゃうんですが、さにあらず。一体誰が犯人、いや探偵なのか。  本書はこういった本格ミステリとしての「探偵」探しと、犯罪者心理に駆られたマーゴットの心情の変化と、その二つを楽しめちゃう、一粒で二度おいしいミステリなのです。 パット・マガーはアメリカの女流ミステリ作家で、1946年に『被害者を捜せ!』でデビュー。初期の5作品(本作も含む)は、いずれも被害者、目撃者、探偵を捜すというまことにユニークな設定です。

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  • 18 May
    • 星新一 『夢魔の標的』

      ショートショートの神様が見せる、不条理世界 先日ご紹介したかんべむさしさんの『強烈・イジョーシキ大笑乱』に出てくる「あのお方」とは星新一さんのことです~。ショートショートの第一人者であり、生涯1000編以上もの作品を書いた、まさにショートショートの神様。その作品は広く愛され、読まれ続け、小学校や中学校の教科書(国語、英語)にものっているほどです。 ショートショートのイメージが強い星さんですが、いくつかの長編も書いていらっしゃいます。 その中でも異色と呼べるのがこの『夢魔の標的』。 腹話術師の人形が、ある日突然、勝手に喋り出す。しかし、その声はあくまで腹話術師当人の、今までどおりの声なのですから、その異常に周囲は気づきません。 そう、人形が、というより、人形を通して主人公の心に誰かが忍び込んでしまったのです。 これ、なかなかの恐怖ですね。 誰が、何のために、どうやって忍び込んだのか。 わかりません。 だからよけいに怖い。 日常にひっそりと忍び込み、拡大してゆく異常、恐怖。 星さんの特徴である、淡々とした文体のまま、物語が展開してゆきます。おどろおどろしい設定などない分、心のそこからひんやりじわじわとその怖さがきいてきます。 恐怖、とは得体の知れないものにこそ抱くもの。 小野さんの『屍鬼』も怖かったですが、襲撃者の正体が判明してからは彼らに対すして怖さより哀れさを感じました。むしろ、迎え撃つ人間たちの心理に恐怖を感じましたね。 星さんのこの長編は、あっさり読めてしまうので、さほど恐怖を感じない人もいるでしょう。 それでもよおく考えてみてください、そして現代という殺伐とした社会の中で生きている自分の心のうちを覗き込んでください。 怖くなってきますよ~。 著者: 星 新一 タイトル: 夢魔の標的

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  • 17 May
    • マンモスと源義経

      「センパイ、お久しぶりです」 「うわっ! ホント、めちゃくちゃ久しぶり! どこへ行ってたん?」 「実は連休を利用してフランスへ」 「シェ~!!」 「??? 何ですか、そのポーズは」 「フランスといえばイヤミ(「おそ松君」)じゃないか。で、これはイヤミの『シェー』のポーズ」 「相変わらず古い漫画やロボットのことは詳しいですね。オタクですね~」 「君のオタクの定義も古いですな」 「そおいうセンパイも久しぶりの登場ですね」 「実はこのテーマ、『歴史と人物 相似形』では既に新しいシリーズが始まっているのだ。ボクらはもう用済みなの」 「??? 何を言ってるんですか」 「いや、何を言っているのかボクにもよくわからんのだが、なぜか言わなきゃいけない気がしてね」 「何かに取り付かれてるんですよ、きっと」 「うむ。で、今まで使えなかった小ネタをここで紹介しようということで、またまた我らが引っ張り出されたわけだ」 「また取り付かれている」 「まずはコレ。『マンモスと源義経』」 「なんかムチャクチャですね~。そもそもマンモスって『人物』じゃないし」 「名古屋万博を記念してね。それに大河ドラマが『義経』だから」 「こじつけてますね~。ホントに共通点があるんですか」 「ウン。そりゃ考えてあるよ。マンモスの牙は大きいだろ」 「はい」 「義経といえば鎧兜が目に浮かぶだろ」 「はい」 「そこが似ている」 「……」 「とんがっているんだ」 「……スミマセン、日本語で説明してくれません?」 「失敬な。これから順々に説明するよ。 マンモスの牙。あれ、あんなにでっかくとんがったのって、生きていく上で必要ないだろ。あれは自分たちを大きく、強く、美しく見せるための飾りだと思うんだ」 「クジャクの羽みたいなものですか」 「そうだね。クジャクの羽、ライオンのたてがみ、などなど。マンモスの牙は種類や年代によって形が違っていたらしいよ」 「で?」 「義経の兜には鍬形(くわがた)という金色の角みたいなのがついている」 「確かに」 「あれも自分を大きく、強く、美しく見せるための飾りだね」 「目立ちますもんね~」 「以上」 「それだけですかあ?」 「そう。コレだけなのだ。だから小ネタなのだ」 「でも、それだったら、よく考えたら、義経じゃなくてもいいじゃないですか。頼朝でも義仲でも、いや、他の時代の武将でも」 「そう、その通り」 「『マンモスと兜』の方が分かりやすいですよ!」 「それだったら人が見たときに『おや?』って思われないじゃないか。それに万博だぞ。大河ドラマの主役だぞ。インパクトあるだろ」 「だったら、『マンモスとグレートマジンガー』でもいいですよね」 「う」 「マジンガーZよりとんがってますし。グレート」 「うう」 「『マンモスとシャア専用ザク』(角付き)でもいいですよね」 「ううう」 「『マンモスとエヴァンゲリオン初号機』(角付き)でも。。。」 「君の方がよっぽどオタクやないか!」 「他にはないんですか、小ネタ」 「お次はコレ。『勝海舟と福沢諭吉』」 「また勝海舟ですかあ」 「なにおう? 勝先生にはすばらしいエピソードがいっぱいあるんだぞ!」 「はいはい。で、どこが似てるんです?」 「二人ともアメリカに行った」 「そりゃそうですよ。一緒に行ったんですもん。咸臨丸(かんりんまる)に乗って。ジョン万次郎なんかも一緒でしたね」 「そのくらい、知ってらあ。それだけじゃないんだ」 「というと?」 「二人とも、息子をアメリカに留学させている」 「へえ。それは知りませんでした。それで?」 「それだけ」 「またですか!」 「だから、小ネタだって」 「まだあります?」 「おう。次はコレ。『徳川家治と徳川宗睦(むねちか)』」 「またこれも分からないですね~。誰ですか、宗睦って」 「宗睦は9代尾張藩主。跡継ぎや親族が次々と死んでいって、晩年は孤独だったんだ。特に嫡男の治休(はるよし)は21歳の若さで死んでいる。 10代将軍、家治も孤独だった。彼も嫡男の家基(いえもと)を17歳で亡くしている。 いずれの場合も急激な死で、さぞがっかりしたことだろう。毒殺された、という噂もあるよ」 「なるほど、似てますね。でも」 「皆まで言うな。わかってるよ。家治は歴代の将軍の中でもマイナーな方だ。ましてや宗睦なんて知っている人の方が少ないだろうね」 「わからないことをベラベラしゃべられても面白くありません」 「有名な人物同士の、意外な共通点を探るのが面白いんだよね」 「有名で似た人物の組み合わせなら知ってますよ」 「ほうほう。誰ですか」 「アメリカの41代大統領のブッシュさんと、今の大統領(43代)のブッシュさん」 「そりゃ、親子じゃないか! 似ているのは当たり前!」 「ほな、サイナラ~」

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    • アガサ・クリスティ 『二人で探偵を』(『おしどり探偵』)

      とってもユニークでおしゃれな短編集 ミステリの女王、アガサ・クリスティの作品には何名かの名探偵が登場します。 ポアロ、ミス・マープル、パーカー・パイン、ハリー・クイン氏、バトル警視。。。 いずれも個性的な探偵たちばかり。そしていずれも登場時点で既にかなりのご年配。クイン氏は年齢も招待も不詳ですが、 他は既に社会的地位があったり、引退していたり。そして作中の人物でありながら、彼らも作品を重ねるごとに年をとってゆきます。 そんな中でこれからご紹介する、トミーとタペンスのべレズフォード夫妻だけは若々しい姿を我々に見せてくれます。 初登場の『秘密機関』(1922年)ではまだ結婚前。二人の年齢を合わせても45にもならない、若々しいカップルでした。 そしてこの『二人で探偵を』(1929年)では新婚さんで、作品のラストではタペンスに赤ちゃんができたことが読者に知らされます。 第2次大戦中に書かれた『NかMか』(1941年) では子供たちも大きくなって、子育てから開放されたタペンスの活躍が見もの(トミーもね)。 『親指のうずき』(1968年) は二人のその後を知りたいという読者の熱望によって書かれたもの。子供たちも結婚、独立しましたが、タペンスの冒険心は変わらず(トミーもね)。 『運命の裏木戸』(1973年) 。既に孫たちまで生まれ、過去の人生を回想する老夫婦(ともに75歳!)になっています。ですが引っ越した町の過去を探る、タペンスの探究心は変わりません(もちろん、トミーも)。 5作品を通じて読者はトミーとタペンスの成長、移り変わりを眺めてゆけるのです。ですから他の探偵たちとはまた一味違った、身近な存在として沢山の人々に愛されました。もちろん、いずれの作品もミステリとしても面白いものばかり。ミステリの女王の名に恥じない作品ばかりです。 『二人で探偵を』(ハヤカワでは『おしどり探偵』)はトミーとタペンス物では唯一の短編集。  結婚後、探偵事務所を開いた二人。探偵業についてはまったくの素人ですが、古今のミステリを読破しているのが自信の裏づけ。そして彼らは文字通りそれらミステリをお手本として、数々の事件(15の短編)に挑みます。 お手本にして。 そう、自分たちが読んだ作品中の名探偵たちの方法を模倣するのです。お手本としたのは。。。かのシャーロック・ホームズはもとより、ブラウン神父、ソーンダイク博士、フレンチ警部、隅の老人などなど、そうそうたるメンバー。 つまりはクリスティによる、数々の名作のパスティーシュになっているわけですね。ミステリにあまりなじみがない方でも当時の名探偵たちの活躍が楽しめるし、マニアな方なら、元作と読み比べて楽しめます。 面白いことに、それら名探偵の中にポアロまでがちゃっかり入っているんです。なかなかお茶目ではありませんか。 全体的に明るい雰囲気で、ラストでは先ほど申しましたようにタペンスに赤ちゃんができた、との報告がなされます。本当に仲のよい、若々しい二人であります。いいな~。 著者: アガサ・クリスティ, 一ノ瀬 直二 タイトル: 二人で探偵を ↑こちらは創元推理文庫。 著者: アガサ・クリスティー, 坂口 怜子 タイトル: おしどり探偵 ↑こちらはハヤカワのクリスティ文庫。 以前のHM版の表紙、ステキだったのになあ。。。

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  • 16 May
    • 武田 鉄矢, 小山 ゆう 『THE MAKING OFお~い!竜馬』

      物を作り出すこと、語ること、伝えること 日本の三国志ブームが吉川英治さんの小説で始まり、横山光輝さんの漫画で拡大したのは多くの人が認めるところでしょう。同じように坂本竜馬の人気を決定付けたのは司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』であり、武田さん、小山さんの漫画『お~い!竜馬』でファン層が広がっていきました。 実は私は武田さんも、この漫画も苦手なのです。 坂本竜馬ファンの中にはそれこそ熱狂的な方が数多くいらして、好き、とか尊敬している、を通り越して崇拝している人すらいます。宮沢賢治や手塚治虫のファンの中にもそういう方がいらっしゃる。それが苦手なんですね。 武田さん自身も「海援隊」というグループを作ったり、金八先生の苗字が「坂本」だったりすることでお分かりのように、熱狂的な竜馬ファン。映画でもテレビでも竜馬を演じてらっしゃいましたね。それだけで苦手なのに、金八先生も苦手なものですから、困りました。それでも武田さんの語る竜馬に興味を持ち、購入。 このメイキング本は漫画連載終了時に行った武田さんと小山さんの対談をまとめたものです。 これが単なる竜馬崇拝の対談であったら、この本を買うことはなかったでしょう。お二人の対談は単に竜馬を語るのみならず、創作とは何か、歴史を伝えるとはどういうことか、教えられるところが数多くありました。 漫画のほうは全部は読んでいないものの、連載時になるべく目を通していました。NHKのアニメにもなったのでご存知の方も多いと思います。竜馬のキャラクタ、歴史的な位置づけは司馬さんのものから脱却していないものの、司馬さんの描かなかった少年期から始まり、武市半平太、岡田井蔵との交流を描くなど、虚実をたくみに織り交ぜたなかなかの傑作です。 小山さんも武田さんに劣らない竜馬ファンで、自分の漫画の主人公の中には常に竜馬を意識している部分があった、と語ります。 そして連載中のエピソードや登場人物に寄せる思いなどをお二人で語っていきます。 武田さんと小山さん、原作者と漫画家。二人のどちらかが欠けていたらあそこまで多くの人に支持された漫画にはならなかったでしょう。 武田さんの竜馬に関する知識は相当なもので、あの時代の人物のだれそれの子孫が今はどこそこにいる、とかこの人の作品の中にはこう語られている、などなど、さすがです。竜馬に惚れ抜いています。 ですが武田さんは熱すぎる。武田さんの案がそのまま通っていたら、この漫画、語って、語って、語ってしまう。金八先生のように。そこを小山さんが、漫画家としてベテランの方が、うまく薄めたり、広げたり、また絵的に見せるように変えたりするんですね。 もちろん小山さんの知識も相当なものですが、武田さんにはかなわない。ただ漫画のプロとして、押すべきところと引くべきところをわきまえているので熱くなりすぎない。描きたいところをぐっと我慢する。読者にゆだねる。 まさに絶妙のコンビだったのだなあと思いました。 創作にかける情熱。語りたいこと、伝えたいことを垂れ流したり、押し付けるのではなく、受け手のことを考えて表現することの重要性。 創作のみならず教育や対人関係でも重要なことを学ぶことのできた、素晴らしい本でした。 著者: 武田 鉄矢, 小山 ゆう タイトル: THE MAKING OFお~い!竜馬

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    • ブログのすばらしさ

      「尾張徳川17代」が一区切りつき、改めて自分の書いたものを振り返る機会を得ました。 もともとテーマとして立てるだけは立てていたのですが、  自分が知っていることをただ伝えるだけにならないか。  宗春以外は知名度が低い。ローカルな話題を取り上げても誰も読まないのではないか。 など、結構悩みました。テーマを立てたものの、半年くらいはほったらかしにしてありました。 それがhappymondayさん から名古屋の特質について質問されたことをきっかけとして、書き始めることができたのです。名古屋気質成立のひとつの解釈、これをテーマに書いてゆこう。幸運なことに万博も開催されることだし、名古屋に関心が寄せられるであろう、と思い、何とかスタートを切ることができました。 16人―14代目と17代目が同一人物なので―いた殿様たちの中で、誰から書き始めるか、も悩みでした。 こちらもissieさん のコメントがきっかけで7代の宗春から、ということになりました。方向性といい、各順番といい、誠に他人様のおかげでできたものでした。 お二人には感謝感謝、ただ感謝です。 ネットという空間、ブログという場だからできたことだと思います。 今までは自分ひとりで調べたり書いたりしていたものですから、どうしても独りよがりになってしまう。自分の中で知識が増えることのみが楽しみだったので、その広がりも限定されたものでした。 ブログというダイレクトに反響が返ってくる場だからこそ、まあ見られる文章になったのだと思います。 書き続けている間もさまざまな方のコメント一つ一つがまた自分の書くものに生かされてきました。 ここでも感謝感謝です。 不特定多数の方に発信するのはかなり勇気が要りましたが、同時にいい勉強にもなっています。手軽にでき、リアルタイムで反響のわかるブログの素晴らしさだと思いますね。

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  • 15 May
    • 13代 徳川慶臧   松平春嶽の手紙

      1845年、斉荘の死後、幕府から送られてきたのは一橋斉匡(なりまさ)の息子、慶臧(よしつぐ)。わずか10歳の少年でした。当時もう22歳になった松平秀之助改め義恕(よしくみ)も金鉄組の面々も落胆しました。自分より年下の藩主ですから、もはや自分たちの出番はなかろうと。 そんな空気を知ってか、慶臧の実兄で福井藩の養子となっていた松平慶永(よしなが)――後に幕末四賢侯の一人として勝海舟や坂本竜馬、徳川慶喜らとともに活躍した松平春嶽(しゅんがく)――が弟に手紙を出しております。 尾張家を継ぐことはまことに幸運であること。 家臣や領民が今度の殿様はどんな人か見守っているのだから、学問をおろそかにせず、家臣の言うことをよく聞きわけること。 養父母を実家の父母以上に大切にし、孝行すること。 領民には慈悲の心をもって接すること。 などを優しくこんこんと説いています。 当時春嶽もまだ18歳で、家督を継ぐ前でしたが、さすが後に四賢侯の一人に数えられるだけあって、自分の立場はもとより、弟の置かれた状況もよく分かっています。そして、幼くして藩主となった弟に対する細やかな愛情。 かのマリア・テレジアも、幼くしてフランス王家に嫁いだ娘、マリー・アントワネットの身を案じ、何度も手紙のやりとりをして、身を慎むこと、気配りをすることなどを諭したといいます。残念なことにアントワネットにはあまり分かってもらえなかったようですが。 慶臧の方は藩主の座にあること4年、わずか14歳で世を去ります。 少年藩主でしたから、これといった事績は残っておりません。 そして、ここにようやく藩士・領民待望の松平義恕が14代藩主となるのです。 とりあえずのまとめ 名古屋人が普段は貯蓄に励み、いざというときは派手にふるまう。 そんな気質の歴史的背景を、尾張徳川家の歴代を追うことで見てきました。 御三家筆頭として優遇され、豊かな土地で蓄えの多かった尾張。そこに宗春という個性的な君主をむかえ、名古屋の文化が花開きました。 そんな輝かしい治世もつかの間。いくら御三家筆頭といえど幕府には逆らえず、宗春は罰せられ、地味な、堅実な生き方がよいのだという認識がなされるようになります。 そして相次ぐ押し付け養子の50年間。幕府、お上には逆らえないけれども決して迎合しない、そんな反骨の精神が培われ、いざとなったら東京にも大阪にも負けないのだ、という現在の名古屋人の自負心につながっていったのです。 結婚や葬式などが派手になるのは、一世一代のことだから。これなら宗春のように罰せられません。 以上はあくまで一つの論に過ぎず、支配者の歴史だけを追っていって全てが分かるわけではありません。 ただ、こういう解釈もあることは事実です。 以上をもって尾張徳川家と現在の名古屋人気質との関連の考察は終わりです。 ですがこの後も尾張徳川家は14代慶勝、15代茂徳など、幕末に活躍した君主たちが続きます。 少しお時間をいただき、「幕末編」としてまた皆様にご紹介してゆきたいと思います。

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  • 14 May
    • なだいなだ 『おっちょこちょ医』

      おっちょこちょいだけどウソはつけない優しいお医者さんのお話 著者: なだ いなだ タイトル: おっちょこちょ医 なだいなだ。ひらがなばかりの名前。どこで区切って読むか、分かりにくいんですが、「なだ いなだ」。もちろんペンネームで、ご本人の解説によると、スペイン語で「何もないと何もない」という意味だそうです。 なださんはお医者さんでもあり、専門の医学のお話もたくさん書いているんですが、これはそれらとはちょっと違う、ヘンテコリンなお医者さんの物語。 小さな国、デルタ国のヘーワ町。この町の人々は自分たちが世にも不幸な人間だと思っていました。なにしろ町には一人も医者がいなかったからです。 町長のハナヒーゲ氏は(名前の通りりっぱなはなひげと、あごひげまではやしてるんですが)、選挙の公約どおり一人の若い医者を連れてきます。それが題名のとおり、人はいいんだけどおっちょこちょいのトレ・ディストレ先生。そのおっちょこちょいぶりはすざまじく、さまざまなそう動を引き起こします。 前半はそのディストレ先生と町の人々のやりとりがユーモラスにえがかれています。 町や町長の名前で分かるとおり、人々の名前も楽しいものが多くあります。 物語の語り手、「ぼく」はヤン・ドースル。お父さんは役場の職員サテ・ドースルでお母さんが楽天家のイイサ・ドースル。医院の小間使いになったのはいつもしぶしぶ仕事をこなすシブシーブじいさん。何を考えているのかアクーンじいさん、などなどなど。いいですね、このネーミング。名前を連ねるだけで楽しくなってきます。 楽しく読み進めることができる前半ですが、それでもやはり作者がお医者さんだけに、ちょっとした知識も学べます。私はこの本で健康保険というものが何なのか、どんな仕組みなのかが分かりました。 後半はうってかわってシリアスな内容に。 ディストレ先生の助手を続けるうちに本当の医学生になったヤン。青年になった彼はふるさとヘーワ町をはなれ、都会の大学へ。そんなとき戦争が始まり、ヤンは再びヘーワ町にもどりディストレ先生のもとで働くのですが。。。 戦争を仕かけ、小さなデルタ国を占領したのがドルマン国。ヒッソリーニという小男がひきいる赤シャツ隊が支配する国です。そしてヒッソリーニたちがことあるごとに差別したのがガラリヤ人。 平和ないなか町、ヘーワ町でも赤シャツ隊がおり、ガラリヤ人がいて、ディストレ先生とヤンにからんできます。 ディストレ先生はおっちょこちょいですが、とても優しい人ですから、戦争とか占領とか関係なく、ガラリヤ人でも助け、それがもとでいやがらせをした赤シャツ隊の男でも助け、本来なら敵であるドルマン兵でも助けます。 かといってそこでえがかれるディストレ先生のようすはあくまでユーモラス。ヤンやハナヒーゲ町長が戦争とそれによる占領に対抗してひそかに戦っている中で、先生一人が戦争も何も関係なく、とんちんかんなことを言いながらも医者の仕事を続けています。 ここにあるのは戦争がもたらす悲劇、とか、平和が一番、といった重々しいドラマではありません。それでも子供のころの私はおっちょこちょいのディストレ先生を通じて、人間にとって何か大切なことを学ぶことができました。 おっちょこちょいだけどウソがつけなかったために、最後には町を去っていったディストレ先生。先生がヤンに残していった言葉、たくしていった思いを私たち読者もずっしりと受け取ることになるでしょう。 この本は私が親に買ってもらった最後のものです。と書くとごかいされますが、両親ともまだまだ元気です。30年以上昔に読んだのに今でも心に残る素晴らしいお話です。 画像は文庫版のものですが、単行本のイラストも気の優しいディストレ先生の優しいイラストがとてもステキです。

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